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【アブラ】セージ萌えスレ【カタブラ】

[98:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2004/12/22(水) 04:48 ID:d1vkRJq6)]
俺は巷で大流行のサンタ生埋めレースに参加する気にもなれず、
人のいないPvPルームで、海を眺めながら煙を飲んでいた。
ここは俺のお気に入りで、それと理由が無ければそうそう人がこない場所だ。
だってのに――背後でカチャリと小さな音がした。

「先輩…キャストキャンセルって、できる?」

背中から声。胸中で嘆息。
居場所は気分で決めたってのに、どうしてこういつもいつもバレるもんかね…
音の主は俺のギルメンで後輩のsage娘。
気配殺して近づいても、座るときにリング鳴らしたら意味無いだろうに。
ちなみにこのリング、術式の補佐を初めとして様々な役目を担う。
魔力の循環や反動を受けとめる役目を持っているので外せないのだ。

「いきなりだな。俺の専攻(タイプ)知ってるだろうが、できるに決まってる」
「そっか…そだよね」

振り返りもせずに返した言葉に、返るのは気持ち沈んだ声。
ん? 驚かそうとしていたのかと思ったが、違ったのか?

「CCがどした?」
「えと……」

煙を吐き、太陽を見上げる。サングラスをしていても目が痛い程の快晴。
普段のコイツはこの太陽のように元気な奴だ。
俺をマイトスタッフで小突き回してくれるのは勘弁だが。

「どーした? CCのコツ教えて欲しいってんならギルメンのよしみだ、格安で――」
「違うよっ。違くて、そじゃ、なくて…」

話が見えない。
CCってのは、知っての通り発動しかけた術を暴走させずに納める技術だ。
慣れれば魔力を還流させて無駄を減らす事もできる。
実は無くてもそう困らないのだが、基礎的な物でもあるしあればあったで便利な術だ。

「CC使うと、その…ヘンに、ならない?」
「――――は?」

搾り出すような声。
潮騒を2周期程聞いてから、自分でも間が抜けた反応をしてしまった。
そんな話は賢人議事録でも知合いからでも聞いた事が無い。

「ヘンって? まあ、確かにしゃっくりが出かけて止まったような感じになって気持ち悪いが…
 多少の個人差はあるそうだから、多少の事なら別に気にしなくてもいいと思うぞ?」
「使ったら…――…でも?」
「ん?」

よく聞こえない。
2本目の煙草をつけながら振り返る。

「使ったら、トコロ構わず感じちゃうって言ってもっ?!」
「ぶっ」

ピンクがかった長い髪に隠れた顔を真っ赤にして叫ぶsage娘。
吹き出した煙草が建物屋上の端から下に落ちて行く。
気まずい沈黙。
海鳥の暢気な声と潮騒だけがあたりを占める。
8周期程潮騒を聞いて、深呼吸。

「なるべく使わないってのはどうだ?」
「私がCC使える事は皆知ってるもん…急に使わなくなったら変だよ」

そりゃ確かに。遊びで使う程度ならよくあるしな…街中でも。
でもホントこのフィールドで良かった、ヨソでこんな話できたもんじゃない。
くらくらする頭を静めていると、その様子を信じていないと見たのか、実演しようと詠唱しだした。
慌てて止めたが、確かにまあ色っぽい声を出してくれる。

「しかし、どうする? 戦闘中ならともかく遊びで使っててそんなんじゃ身体持たないだろう?」
「先輩、顔赤い」
「うるさい、お前のせいだ」
「ごめんなさい」
「ったく。…ただ実際、取れる手段はそう多くない。CC自体を使わない、鎮痛剤でシカトする、
別の感覚――痛覚とかだな――で誤魔化す、あとは…」
「いっそ諦めて受け入れる」

思いつく方法をそのままに口にして、途切れたトコロでsage娘が危険なことを口走る。
そういえばコイツ、微かに息が荒いような。
更に言えば顔が赤いのはともかく瞳がやけに――

「sage娘!? おいまさかおかしな事考えてないだろうな?」
「…………封縛せしめよ」

総毛立つような気を放ちながら立ちあがるsage娘、同時に俺の周囲に渦巻く魔力。
冗談抜きに身の危険を感じて蝶を――動けない! これはストーンカースか!?

「先輩、私考えたんだ。人間、どんな感覚もいつかは慣れてくるじゃない? だから…」
(よせ、落ち着けっ、考え直せっっ)

うわ言のように呟きながらゆっくりとsage娘が近づいてくる。
わざわざ後ろに回り、背後からしっかりと抱きすくめられた状態で石化が解ける。
だが、俺の背のリングは既にsage娘の手の中で――

「先輩の身体で、耐性つけさせて下さいね…」

リングに課せられた様々な役目の中で、男性にこれが無い理由の一つ。
それは、このリングは機構的に無理のあるこの服を無理やり固定する為の魔力媒介だったりする。
sage娘はそれをディスペルしたわけで。
つまり、その。


                 あびばびば〜!!
 +                \\  過疎の町ワッショイ!!   //       +
    +   +       \\ 超過疎町ワッショイ!!/+
                   +      +      +          +     +
  +   *            +
       /■\        /■\    /■\   /■\ + * ∩/■\     +
      ( ´∀`)   *  (, ´∀`)∩(´∀`∩) (,, ´∀`)     ヾ( ゚Д゚)
   + (( ( つ  ~つ )) (( (つ    ~ノ (つ  丿 (つ  つ ))   /   ⊃ )) +
 +    乂  ((⌒) )) + ヽ (⌒ノ  ,( ヽノ     ) ) )    0_ 〈
    +  (__) ̄      (_)U  し(_)    (_)_)      `J   +   *


「先輩っ『CC反動の分類と考察』終わりましたっ!!」
「よし、じゃあ次は…『スペルブレイカーの直/間接法の差異と効率』」
「えぇー!? お腹空いたよぅ〜」
「ど・の・口・が! そんな事言うかな? 人に伝染しておいてお前はっ」
「た、直ちにとりかかりますぅ〜」

――そう。結局、色々されたりしたりしたものの、CCの反動の耐性なんて付かなかった。
それどころか、そういう連想をしてしまうせいかこっちまでそんな反応が出てくる始末。
今は俺をこんな事にまきこんだ罰として論文を書かせてるワケだが…

「…なんでこんな港町で資料があるんだよぉー。無ければ先輩だってこんな事言い出さないのにー」
「ホレ、愚痴ってる暇があったら手を動かせ。大体資料なんざ無くても平気だろう。
1回は書かされたはずのテーマだぞ?」
「そんな事言われても〜」

頭を抱えて机に潰れるsage娘を見ながら、俺は視線をずらす。
窓の外には相変わらずの太陽。
その日が差し込む脇には天涯付きの大きなベッド。
…視線を戻せば目の前には、頭を抱えるsage娘の背中。そしてリング。
さて――。


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