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ときめきラグナロク Episode4.0

[91:88(2004/05/14(金) 06:20 ID:2HzLkyJw)]
しくじった挙句スレを止めちまったっぽいので、詫びになるかは知れないが>>84からの選択肢を書いてみた。
賑やかしになれば幸いだが、気に入らなかったらスルーしてくれ。


6.アチャたんと組む→七不思議之六へ

「よし・・・行こう、アーチャー」
「えっ、僕!?」
 驚いたような声を出して自分を指差すアーチャー。
 彼女は勘も鋭いし目もいい。何かやばい事があっても事前に察知してくれるに違いない。
 それに悪霊退治には銀製品と相場が決まっている。つまり何かあったとしても銀の矢を扱える彼女がいれば大丈夫なはず。
 ・・・いやびびってなんてないぞ、全然。ほんの少し慎重なだけさ。うん。
「あ、うん、それじゃ行こう」
 ちょこりと他のメンバーに目礼して、彼女は俺について歩き出した。

----------癌ばってます---------

 七不思議の六番目。ゆらゆら。
 学校の裏庭には自然が繁茂している。その中でも一際大きな木の枝で、昔首を括った女生徒がいたそうだ。
 自殺の理由は噂毎に違うので定かでは無い。
 恋人への面当てだとも、友人に裏切られたからとも、魔物に誑かされた所為とも言われている。
 ともかくその首吊りを生徒。彼女はその間際に死ぬのではなかったと悔いたらしい。
 もう死んでしまった今になっても月の明るい晩には、
「やめておけばよかったやめておけばよかったやめておけばよかった」
 そう呟きながら枝にゆらゆらとぶら下がるその姿が現れるのだという。

「…居ないね」
「居ないな、何も」
 きょろきょろと見回すアーチャーに、胸を撫で下ろしつつ応える俺。
「まー所詮は噂だからな、噂。そんなもん本当に出る訳ないって」
 我ながら実に現金な発言を追加すると、彼女は悪戯っぽく笑って、
「主人公君、ニガテ?」
「な、何を根拠におっしゃいますかっ!?」
「あ、ニガテなんだー」
 くすくす笑う彼女。男の威厳を守るべく咳払いして、
「そういうアーチャーは平気そうだな。女の子って、もっと怖がるモンじゃないのか」
「うーん、僕はなんか慣れちゃってるから。フェイヨンは多いんだよ、そういうの」
 言いながら胸の高さで揃えた両手の、手首だけを垂らして見せる。
 幽霊とかそういったものを現す仕草だとは判ったが、彼女がやるとむしろ可愛らしい。
「この学校に来るまで、ずっと向こう暮らしだったから」
「ずっと? じゃあ一度もフェイヨンから出た事なかったのか?」
 何気なく訊くと、彼女はかすかに頬を赤らめた。
「ううん。あるよ、一度だけ。昔プロンテラのお祭りに来たこと」
 とても大事な思い出らしくて、まるで宝物を転がすように彼女は語る。
「すっごくにぎやかでね、はしゃいでて僕、家族とはぐれちゃったんだ」
 子供にとって、首都は絶望的なまでに広い。初めての土地で途方に暮れて彼女が泣き出しそうになった時。
「僕と同い年くらいのね、男の子が声をかけてくれたんだよ」
 事情を聞くとそいつは「俺に任せろ」と駆け出していってしまったそうだ。子供らしいというか、無鉄砲馬鹿というか。
「それでね、本当に見つけてきてくれたんだ、その子」
「おー…随分ガッツのある小僧だったんだなぁ」
 俺が言うとアーチャーは小さく微笑んだ。
「うん。すごく元気が良くて、優しいかったよ」
 結局その子とは名前も聞かずに別れてしまって、それきりだった。
 その後弓手になった彼女は首都の学校へ編入して、そこに偶然が待っていた。
 迷子の彼女を助けてくれた少年もまた冒険者を志して、同じ場所へやって来ていたのだ。
「でもね」
 不満顔で彼女はため息をつく。
「会った時、判らなかったんだよ。僕は一目で判ったのにさ」
「そりゃ相当鈍い奴だな」
「・・・ほんっと、そうだよね」
 頬を膨らませて、アーチャーはうんうんと同意した。
 はっきり言って、彼女は相当可愛いと思う。そんな娘に好かれていながら気付かないなんって、全く間抜け極まりない奴だ。
 思いながら俺は少しだけ、少しだけそいつに嫉妬する。
「でもね、そのひともう鈍くてどうにもならない感じなのに、妙に人気あるんだよ」
 無性に鼻がむず痒くなってくしゃみをすると、彼女は何故だか吹き出した。

 結局その後も俺達はすっかり話し込んでしまい、他の仲間達を大いに心配させてしまったらしい。
 慌てに慌てた剣士が宿直室に駆け込んで、お陰で俺とアーチャーは、夜間不法侵入の廉で説教を喰らう破目になった。
 でもまあ隣に立たされている“共犯”の彼女が何故だか嬉しそうな様子なので、俺も良しとしよう思った。


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