【BS】テキサス娘への愛情を発露するスレ3【WS】
[407:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2004/11/11(木) 04:09 ID:IXEFf7.k)]
その隙をついて書き逃げだ。
「理想の自分って、遠いな」
呟いた俺の鼻の頭を、彼女はぱちんと指で弾いた。
「…痛ぇ」
涙目になった俺を見て、彼女は愉快そうに笑う。
「そういう台詞はね、もう十くらい齢を重ねてからにしなさいな、お子様」
悔しいがそう姉ぶられてしまっても仕方ないところがある。
彼女は俺より少しばかり年上で、冒険者としての技量も、これまた少しばかりでなく上なのだ。
おまけに付き合いも長い。子供の自分から近所のお姉さんだった訳で、こればかりはなかなか変わらない。
俺としては、いつまでも近所のガキのままじゃあないつもりなんだがな。
「いやでもさ? 天才の俺でも壁に当たる日ってのがある訳よ」
ばちん。
「…結構本気で痛かった」
「つまんない事言うからよ」
ふん、とばかりに言い捨てて、彼女はジョッキを傾けた。
「飲みすぎじゃねぇ?」
「今日はキミの奢りでしょ?」
「いやだからこそ飲みすぎじゃねぇ?」
ま、確かに奢るから飲みに行こうぜ、と切り出したのは俺な訳だが。一定量超えると絡み酒だからなぁ。
気にしない気にしない、と手を振って見せる彼女は、間違いなく自分の酒癖を理解してない。
「で?」
「ん?」
杯を置いて顎の下で手を組んで、彼女はじっと俺を見詰める。
卓に乗り出した体勢でそういう格好をされると、腕とテーブルの間に挟まれて寄った部分がすげぇ気になる。
戦闘も製造もそこそここなす彼女の体つきはけれどやっぱり女性のもので。何がと口に出すと命がないが、元々かなりのボ
リュームをお持ちな訳で。見たいけど見せたくないというか。なんというか、その、なあ?
「キミがわざわざ呼び立てたんだから、なんかあったんでしょ? お姉さんに話してみ?」
「いやなんというか、まあ愚痴だ。夢破れて山河ありっつーか。手が届かなくなっちまったっつーか」
だらーっと俺は卓に伸びる。みっともないから詳細は話さないが、長い人生、嫌な事が重なる日ってのもあるもんだ。
「あーもー、君の胸で泣きたいよ?」
またぴしりとやられるかと思ったが、意外にも彼女は俺の頭に手を乗せただけだった。
そのままぐりぐりと乱暴に撫でる。ガキの時分もよくやられたっけな。
「夢なんてね、やり直しがきくものよ。材料さえあれば、それこそ幾度だって」
にふ、と笑って見せた。元気出せよという励ましと、説教が似合わないなという感慨と、両方が合わさって出た笑みだろう。
「もう届かないなんていうの、自分への言い訳でしょ。頑張ってみなさいな。世の中ね、わりと甘くできてるんだから」
「…さすがホルグレンの愛弟子だな。折れた後のアフターケアがお得意だ」
「失敬だな、キミは」
ごす、と手刀を振り下ろされた。予期していたので顎を打ちつけるような無様はしない。
「で? 見栄坊のキミだから何があったかは話さないとして。次の夢っていうか、目標は決まってるの? 言ってごらん、
手を貸してあげるから」
「んー、とりあえず今の夢はだな」
考え込むふりをして時間をとって、
「目の前の美人のおねーさんを、どうやって口説き落とすか、かな?
言うと彼女は、即座に俺の鼻をぱちんと弾いた。
「ま、頑張るだけ頑張ってみたら?」
今度のは殆ど痛くなかったってのと、その後自料理を摘まむ彼女の頬が、酒気だけじゃなく赤かった、ってのを余談として
付け加えておく。
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