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アコたんvsメカアコたん Part6
- 147 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/08/21(日) 19:45:18 ID:cp1vRVUA
- >>94の続き
トリスがほくほく顔で黒猫を拾っていると、背後でメカ悪たんの声が響いた
「カカカカカッ!!ろーどおぶですダカ何ダカ知ランガ私ニタテツクトハイイ度胸ダ!褒美ニブチノメシテヤロウ!!!」
少しそちらに目をやると、大きな軍馬に乗った白い騎士がいた。その体は、絶え間なくちらつく青白い焔に包まれている
確かにそこにいるのだが、その巨大さにも関わらず、トリスは全くその接近に気づかなった
まるで亡霊のように・・・
「喰ラッテ跡形モナク散レッ・・・ふぁいなるすてーじ!!」
その言葉を皮切りに、メカ悪たんのあらゆる兵装が火を噴いた。両腕からはガトリンクが絶え間なく打ち出され、
胸部からはロケット弾が、口からは火炎が吐き出され、そして辺りは爆煙で包まれた
「熱っ!」
「うはwwwwやりすぎwwwwwwっうぇ」
トリスとアサシンの二人は危うく巻き込まれかけ、慌ててその場を飛び退く
時間にして数十秒といったところだろうか、えらく長く続いた炸裂音がやっと途絶えた時、トリス達の目の前は一面
硝煙に包まれていた。と、それまで腕組みをして突っ立っていたアサシンが、ジャッキッっとカタールを腕に嵌める
「決まったなwwwww」
「?」
勝負がついたのなら今更戦闘体勢を取る意味はない。アサシンの行動に怪訝そうな表情をトリスが返した時、白煙の
中から、人間の頭程のモノが転がってきた
「え・・・!?」
「む」
トリスとウスラーが言葉を失う。それはメカ悪たんの頭部パーツだった
そして一人の風が辺りを吹き払った。煙の中から悠々と歩み寄ってくるロードオブデスの姿が見える
「『白い影』かッ…」
トリスは自分の呻くような声が、メカ悪たんの頭部から発せられたような気がした
- 148 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/08/28(日) 17:56:32 ID:JzpGOLeI
- 「うはwwwおkwwwwwwwっうぇ11!!1!!!!」
なにやら奇怪な叫び声をあげながら、アサシンがLODに飛びかかっていく
「いや、おkじゃねーだろ。メカ悪たん壊れてるし」
思わず呟くトリス
しかし、メカ悪たんですら一瞬のうちに解体されたというのに、彼の動きには怯みの色はない。まるで自分に攻撃が
当たる事はないとでもいうかのように、大胆にLODに肉薄する。それに合わせて突き出されるLODの槍は、必殺の
鋭さだったが、しかし
「wWw」
どこか余裕さえ感じさせる笑いを浮かべたまま、アサシンもまた人間外の動きで避ける。
「全て完全回避とは凄いな、さすがオーラバトラーだぜ」
「要約するとまぐれ、だと?」
「いや、ここまで続くとまぐれというより実力なのかも…」
「ふむ、運も実力のうちということか」
そう、アサシンはその素晴らしいリアルラックにより、敵の攻撃を完全に無効化していた。その動きを感心して眺める
トリスとウスラーが揃って小さな声をあげる。
『あ』
それはLODの乗る馬の足が、アサシンの回避した先に踏み下ろされた瞬間でもあった
ぷちっ、と踏み潰されるアサシン
別に馬に攻撃の意志があったわけではないのだろう。ただ足を動かしただけだ
トリス「・・・・・・」LOD「・・・・・・」馬「・・・・・・」
やや、沈黙に気まずさを感じたのだろう。LODが気を取り直すように槍を構える
それに答えるように、トリスも槍を構えた
「メカ悪たん、アサシンさん。仇はとるぞ!」
そしてLODに突進したトリスの胸を槍が貫くまでに、そう時間はかからなかった
「私が出るまでもなかったかもな・・・しかし、これで邪魔は入らないというわけだ、ゆっくりと仕上げるとしよう」
そう言ってLODは踵を返し、その居城へと消えた
- 149 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/04(日) 12:15:23 ID:gJE20Vvc
- 焦土と化した地を、紫の法衣に身を包んだ一人の女が歩いている。法衣自体は普通のものだが、着ることを許された者は少ない、高僧の証
女は美しかった。長いルビー色の長髪、ゆるやかに切れた目尻、固く結んだ赤い唇。均整の取れた長身と相まって
絶世の美しさを醸し出している。
しかし、この地では美しさになんの意味もないのかも知れない。全てが死んでいる死者の町では
そして女は破壊が最も激しい場所、つまり焦土の中心に着き、頭を巡らした。それに合わせて揺れる髪がサラ…と音を立てる
焦げた土とばらばらの金属部品と…死体。それがそこにある全てだった
女はやや不機嫌そうに眉をしかめたが、それらに女は歩み寄った
死体の内、一つは騎士だった。身につけた鎧の形でプロンテラ騎士団のものだと分かる。その鎧は胸部が粉々に砕けていたが
その原因は容易に知れる。騎士の胸に突き立った巨大な槍が背中まで貫通し、大地に刺さっている
そのため騎士は仰向けに倒れていながら地面に背が付いていない。さながら昆虫の標本のように串刺しにされている
女プリーストは、ヒールを唱えるでもなく、冥福を祈るでもなく…いきなりその槍を蹴飛ばした!
「さっさと起きなさい!」
衝撃は気体より液体、液体より固体の方がよく伝わる。騎士はそれを実感していた。プリたんの蹴りの衝撃は槍を伝わり
騎士の体にも容赦なく伝わった
「…!…!?…がっ!…ごふっ?…が、がはぁっ!?」
いまだ標本状態のまま盛大に喀血するトリスを、プリたんは観察者の表情で冷ややかに見守った
「…な…何、しやがる…んだ…?」
「やっぱり生きてたのね。さ、アコたんを助けにいくわよ」
「さ、…じゃねーだろ!死ぬかと思ったぞ!」
「胸を貫通されて死んでないほうが驚きだわ…それより、それだけ元気ならもう立てるんでしょ?」
「まぁ、…一応…」
どうにも納得できないまま頷くトリスにプリたんは優しく手を差し伸べた
「ほら、起こしてあげるわ」
「ああ…ありがとう…」
半信半疑でトリスも手を伸ばすが、その手は空しくすれ違った。プリたんはトリスの槍に手を伸ばすと、そのまま引き起こした!
トリスを引き起こしたプリたんが、軽々と巨大な槍を引き抜く。当然穴が開いているトリスの胸と背中からは、勢いよく血が溢れだす
「ぐはぁっ…がっ、…っ……ウスラーッ…!」「む」
血まみれになりながら、破れかぶれに叫ぶトリスの声に応えて、右腕のウスラーがその再生能力を発動させる
トリスの胸から出血が止まり、次に急激に肉が盛り上がり胸の穴を埋めていく
「おお、人体の驚異…じゃなかった、人外の驚異よね。むしろバケモノ?」
「死ぬ…もう死ぬ…今度こそ本当に死ぬ…」
- 150 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/04(日) 12:16:35 ID:gJE20Vvc
- ひとまずトリスが息を吹き返したことを確認すると、プリたんはその歩をもう一つの死体に向けた
地面にぺったんこに張り付いている。こちらは衣装からしてアサシンのものだった
トリスによるとLODの攻撃を避けていて、馬に踏み潰されたのだという
「こいつって運がいいんだか、悪いんだか分からないわねー」
そういいながら、どこからともなく取り出した自転車用の空気注ぎをアサシンの口に捻じ込む
しゅこ、しゅこ、しゅこ…
空気が注がれるとともに膨らんでいくアサシンの体。プリたんは無心に空気を注ぎ続ける
しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ……
そしてはたと手を止める
「あら、入れすぎたかしら?」
気が付くとアサシンの体は、元の二倍の体積に膨らんでいた。まるでカエルのようなアサシンの腹に向けて、
プリたんは強烈なボディーブローを放つ!
「ぐwwwwwwっうぇ」
それこそカエルのような奇怪な声をあげ、アサシンの口から声と、空気が漏れる。そのまましゅるる〜とジェット風船の
ように空気を噴出して、アサシンは飛んでいった
「そこまで入れてない!」
「うはwwwwおkwwwwwっうぇ」
アサシンは今だ宙を飛んでいたが、ともかくOKらしい事を確認して、プリたんは残った金属部品に目を向けて、目が合った
「悪たん…」
「ガ…ガガ…」
異様な音を発しているメカ悪たんの頭部を掴み、手に提げる。
「壊れてるっぽいけど、目から怪光線位でるかも知れないわね」
「……」
それきり沈黙するメカ悪たん
そしてプリたんは唇を一舐めして、走り出した
「さーて、皆行くわよ。今助けてあげるからね、アコたん!」
「うはwwwwwまってwwwwwwwプリたん」
「ウスラー、俺達も行くか」「さっき敗北したばかりだというに、これだから人間は…」
そして一行はLODの居城へ向かった
- 151 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/19(月) 19:43:29 ID:19Y8zCW2
- 死者の街ニプルヘイムの中心にその城は佇んでいた。LODの居城を前にプリたんは気を引き締めるように声を出した
プリたん「ここね、アコたんの捕らわれている場所は」
アサシン「うはwww小さい城だwwwww」
アサシンの言う通り、その城は死者の王が住まうには小規模だと思える。戦用の砦程度だろうか。だが、城は時折脈動
しているかのように揺らぎ、その全容ははっきりしない
トリス「まさか、生きている城か?」
ウスラー「矛盾が二つ。城は無機物だ。そしてここは死の世界だ」
トリス「それもそーだな」
ウスラーの返答に本当にトリスは納得したらしい。まるで誘っているかのように開放されたままの城門から、無警戒に
すたすたと城に向けて彼は歩きだす。その襟首をプリたんが慌てて掴んで止めた
プリたん「何考えてるのよっ!見つかるじゃない!」
トリス「いや、時間がないって言ってたから」
アサシン「うはwwww騎士wwww単純杉wwww修正されないねwwwっうぇ」
ウスラー「既に見つかっている。後方に生体反応多数」
ウスラーの言葉に全員が振り向いた先には、数えるのが大変な位のブラッディーマーダーがそれぞれの獲物を振りかざしている
『殺セェェェ!』
『うわわぁっ!?』
一同は慌てて全速力で走りだした。すぐに開きっぱなしの城門をくぐり、それを閉めにかかる。が、両開きの巨大な
扉はなかなか動いてくれない。本来は兵士数人で動かすものだから当然だ
トリス「ウスラー、頼むよ」
ウスラー「よかろう」
右腕のホムンクルスがそう答えると同時に、トリスの全身に人間を超えた力が満ちる。ゆっくりとだが淀みなく、扉の片方が閉じていく。
プリたん「ん〜〜〜〜!」
アサシン「うはwwww流石だなwwww」
プリたん「あんたも手伝えっ!」
なんとかプリたん達の方も扉を閉めることに成功し、ほっとした時扉の向こうから凄まじい衝撃が叩きつけられる!
ドガアァッッ!
プリたん「くっ…」
城門が内側に10cm程押される。先程のブラッディーマーダーが体当たりをしているのだろう
ウスラー「相手の方が力が上なのだな。このままでは持たないぞ」
トリス「そうか、困ったな」
アサシン「うはwwwこいつらwww困ってやがるZEwwwwっうぇ」
プリたん「困ってるのはあたし達もなんだけど…」
- 152 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/19(月) 19:43:58 ID:19Y8zCW2
- 少し思案した後、トリスはふと思いついた。自分の獲物が決して壊れない事を
[+8ソリッド ウルヴァリン ハルバード]
これをかんぬきにすれば少しは持つかも知れない。少なくとも、他の二人がアコたんを助けに行く位の時間は
トリス「というわけで、俺がここを支えてるから」
プリたん「支えるって…一人じゃ無理よ…」
アサシン「馬鹿ヤロウwwwwお前www死ぬねwwwww」
トリス「時間がないんだろ?それにさっきアサシンさん言ってたでしょう、騎士は単純だって。なら俺は正面から行く」
ウスラー「それでお前達が奇襲組というわけだ」
プリたん「…わかったわ」
アサシン「うはwwwプリたんはwwww任せろwwwww」
トリス「頼むよ、アサシンさん。アコたんにもよろしく」
軽く二人に手を振ると、トリスは背中から長大な槍を下ろし城門の閂に引っ掛ける
トリス「ひとまずはこれでよし、と。後はあいつらがなんとかするだろ」
ウスラー「それまで我等が生きていればよいのだがな」
全速力で、建物棟へと走るプリたんの表情に辛そうな色が浮かぶ
アサシン「彼がwwww心配か?・?・???」
プリたん「少しね…」
アサシン「大丈夫wwwwあいつはwwww死なない」
プリたん「知ってるわよ!でも…!」
今のプリたんに出来ることは全速力で走る事だけだった。一刻も早くアコたんを取り戻す、そして帰る。みんなで
プリたん「もっと早く走るわよ、アサシン!」
アサシン「うはwwwwwおkwwwwwっうぇっうぇ」
後ろでまだかすかに騒音が聞こえている。その音が聞こえるうちは大丈夫なのだと自分に言い聞かせて、プリたんは
走り続けた
- 153 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/10/20(木) 05:08:28 ID:61ms6ZHM
- 久々に萌板見たら真っ青だったから落ちちゃったのかと思ったよ
- 154 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/10/28(金) 13:26:32 ID:nvgVJFzY
- 長閑な昼下がり、お昼寝メカアコたん
メカアコたん「むにゃ・・・・むにゃ」
メカアコたん「当たれ〜!!」突然叫ぶ!!
はるか遠方より聞こえる爆撃音と男性の悲鳴
アサシン「なにwwwwwwwこれwwwwwwうはぁwやばいじゃんwwwしぬうぅぅwww」
メカアコたんの寝ぼけたフェンネルの一撃一斉射撃により
なぜかアサシンは消し炭に
それでも起きないメカアコたん、果たしてどんな夢をみているのやら
- 155 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/11/04(金) 06:12:51 ID:rf0B71fk
- パート6にして初めて見に来たけど面白杉
>何Mあってもダメなときはダメ
テラワラスwwww 職人さんGJ
- 156 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/12/06(火) 08:48:12 ID:oeSQkDRE
- >>152の続き
LODの居室,その巨大な扉はプリたんを迎えるかのように,音もなく開いた
まずプリたんの目に飛び込んだのは,巨大なLODの姿ではなく,その奥,石棺に鎖で拘束されたアコたんだった
アコたん「ぁ・・・お姉様ぁ…」
その弱々しい声とやつれた表情から,ひどく衰弱しているのだと知れる
プリたん「よかった。生きていてくれたのね,アコたん。すぐに助けてあげるから待ってなさい」
そしてLODを真っ向からにらみ据え,メカ悪たんの生首を床に置く
メカ悪たん「生モノジャナイゾ?」
つかつかと歩み出すプリたんの前をアサシンの背中が塞ぐ。その背中は再戦の意志を語っていた。
アサシン「決着をWWWつけようぜw我がライバルwwww」
馬「ヒヒーン!」
LODの白馬もそれに応えるかのように,鼻息荒くアサシンに相対し,軽く蹄で床を掻いた
なぜか自然な対決姿勢を見せる二匹の珍獣をよそにプリたんはLODに向き直った
プリたん「ありがとう,アサシン。これで・・・思いっきり殴ってやれるわね」
馬から下りてみれば,LODもさほどの大きさではない。プリたんの拳も十分届く。そしてプリたんはゆっくりと古武術の構えを取った
プリたん「さて,審判の時間よ!」
そして一息でLODとの間合いを詰めた
低く構えたプリたんの拳が伸びる前に,巨大な槍を軽々と繰り出すLOD。その一撃は騎士の金属鎧すら軽々と打ち抜く威力を持っている
が,プリたんは軽く手のひらで槍を弾く。下手をすれば手の骨が粉砕しかねない威力を,完全にコントロールし直撃を避けた。
狙いを外したLODの槍は,プリたんの赤い髪を数本千切り,横に流れた
プリたん「…はぁっ!」
そのまま踏み込んだプリたんの左手がLODに迫りー,拳を叩き込んだ!
ーが,プリたんの拳をまともに食らったにもかかわらず,LODはさして気にするでもなく佇んでいる
メカ悪たん「私ノ全力射撃デモ効カナカッタカラナ…ドウスルノダ?」
プリたん「知っているわ。そのための用意もしてきたし」
プリたんは法衣の内ポケットから,小さなケースを取り出した。パチンと留め金を外すとケースの中には液体の入ったガラス管が
数本並んでいる。その内の一つを取り出し,栓を開けると拳に液体を振り掛けて囁く
プリたん「…アスペルジオ」
清めの力を帯びたプリたんの拳が薄く輝き始める
- 157 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/12/18(日) 20:41:54 ID:FnK6f0i6
- ∧∧ ∧∧ ∧∧ ∧∧
ヽ( ゚∀゚ )人( ゚∀゚ )人( ゚∀゚ )人( ゚∀゚ )ノ
へ( ) ( ) ( ) ( )へ
く / \ / \ ノ
- 158 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/01/01(日) 22:35:07 ID:SI3WHEb2
- 息を吸い,止めると同時に踏み出す
相手の獲物は長大な槍だ。当然こちらの攻撃より先に当たるであろうその攻撃を読み,プリたんは拳を突き出した。
ほぼ半身の姿勢はLODの目標を失わせ,槍はプリたんの法衣を掠めて後方に伸びる
「はっ!」
聖なる力を込め,裂帛の気合いとともに突き出された拳が,今度こそLODに突き刺さる
LODの巨躯が揺らいだように見えた次の瞬間,プリたんを横薙ぎの槍が襲った。大きく飛び退きたい衝動に抗いながら,さらに
プリたんは踏み出しLODに密着する。獲物が長大な分,こうして接近していればそうそう攻撃は喰らわないだろう。反面プリたん
の素手の間合いは接近戦に極意がある。
「そろそろ・・・終わりにするわよ!」
そして零距離から,更に一歩踏み込み擦れ違いながら思い切り,その『凶拳』とも呼ばれる拳を,LODに突き刺した
そしてそのままプリたんは後ろに吹き飛ばされる
「ーっ!?」
確かに拳は通したはずだ。その手応えはあった。しかし・・・LODはそのまま体当たりしてきたのだ
動きを妨げられる事を嫌って,ほとんど防具を付けていないプリたんはそのまま地に崩れ落ちた
内臓を痛めたのだろうか,激しく咳き込んだ口の端から一筋の紅が流れた
「かっ・・・は・・・!」
「嫌ァ,お姉様ー!」
アコたんの悲鳴が虚ろに室内に響く
そのとき,首だけになっていたメカ悪たんが作動音を立て始める!
「じゅのーノ科学力ハ・・・世界一イィィイ!」
「メ,メカ悪たん!?首だけで何をしようっていうの?」
アコたんの心配をよそに,メカ悪たんの眼部が開き中から複雑な形状の銃架が伸びる
「紫外線照射装置作動ォォォオ!」
「GUUUUU!」
紫の光線がLODに命中し,そこからLODの鎧がひび割れていく。膝を着くLODを見やり,メカ悪たんは側に倒れているやはり
紫の服をまとった人間に声を掛けた
「瞬間的ニダガ,コレデ十分ダロウ?紅ノ薔薇ヨ」
「ええ,ありがとうメカ悪たん」
そしてプリたんは立ち上がった。まだ足はふらついて,先程痛めた腹部を左手でかばっているが,それでも歩を踏み出す
- 159 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/01/01(日) 22:37:36 ID:SI3WHEb2
- 「もう動けないでしょう。私の拳はね・・・特別製なの。旧式殴りプリの拳は降魔の拳。加えてメカ悪たんの紫外線・・・・・・そして」
ゆっくりと歩きながらプリたんは法衣の内から,大降りの十字架を取り出した
「プロンテラ大鐘楼の鐘,溶かして創った銀十字。こいつを喰らって平気な化け物なんていないわ」
もうLODの眼前に迫り,大きく十字架を振り上げ・・・一気に振り下ろす!
十字架はLODに深く刺さり,ぞぶりと嫌な手応えがプリたんの手に伝わった
「私のアコたんを返しなさいっ!!!」
プリたんの拳が十字架を撃ち込み,完全に体内にめり込ませた
「あ,お姉様・・・怪我が・・・」
「良いのよ,それより少し休みなさい。さ,背負ってあげる」
プリたんに背負われてアコたんは,目を閉じた。背中から伝わるぬくもりを感じながら,アコたんはそっと呟いた
「ありがとう・・・ございます・・・」
「で,あんたは何やってんの」
気がつけば傍らに,巨大な白馬に乗ったアサシンがいた
「うはWWWこれ俺のWWWwWw」
「ふぅ,会話にならない相手というのは,疲れるわね」
「乗れWWWWっうぇ」
更に色々と疲れてきたので,プリたんはアサシンの言うとおりにすることにした。が,馬は動かない
「ちょっと,早く帰らないの・・・?」
プリたんが土を掘る音に目をやると,馬がLODの骸に土をかけている。それを優しい目で見つめるアサシン
「LOD・・・俺以外にお前が背を許した唯一の男,その気持ちは分かる・・・!」
「さっきまであんたが対決していたの,自分の馬だったんかい!」
城門前の広場で,一人の騎士が佇んでいた。彼の右腕には適当に布が巻き付けてある
「生きてるみたいね?」
「なんとかね」
辺りには無数の,数えるのが面倒な程のブラッディマーダーが転がっていた。どれの死体もひどい傷跡がある。槍でめった打ちに
したような傷が。そしてなぜか騎士の足下には,黒い砂のようなものが人型に落ちていた。
「貴方が・・・これを?」
「だいたいは俺が」
プリたんのこれが何を指しているのか分からなかった訳ではないのだろうが,騎士ははぐらかすようにそう答え,プリたんもそれ
以上は聞かなかった。いつになく騎士が疲れているように見えたからかも知れない。
「帰りましょう,みんなで。私たちの街,プロンテラに」
- 160 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/01/01(日) 23:31:55 ID:SI3WHEb2
- お正月ネタ
「もう1月なのね・・・やはり私が・・・行かないと・・・」
「ふふふ,無理しなくてもいいんですよ,紅薔薇。貴方は怪我が治りきっていないでしょう」
「お姉様,私が行きます!立派に紅薔薇のつぼみとして代役を果たしますからっ」
「私も,私も〜・・・って何するんだっけ?」
「そうね,じゃ頼んだわよ。『巫女バイト』」
IN アマツ
アコたん達は紅白の巫女服に着替えていた
「白薔薇様,素敵〜」「ありがとう,アコたんもよく似合ってますよ」「私も着てみたの!」
初めて着る和服にはしゃぐ3人。そして仕事が始まった
境内の掃除,商品の搬入,アマツ式の礼儀作法等々・・・もともと神職だけあって呑み込みは早い
「でも,よその神様奉ってていいのかなぁ,メカアコたん?」「いいと思うよ。たぶん」
根拠はない
「ま,まぁ,たまにならいいでしょう。それにここアマツなら,みーちゃんもきっと見てくれるはず・・・」
動機が不純だ
そうこうしている内に,初詣客がちらほらと訪れ始めた
「ええと,まずお清めの塩だよね。いってきまーす!」
カタパルトなしの垂直離陸を行い,バーニアを吹かしたメカアコたんが空から塩を撒く。それは撒くと言うより『散布』だった
「メカアコたん,撒きすぎだよ〜」
「なんか農薬撒いてるみたいですね・・・」
「ありがとうございます,おみくじ一回100zです」
「大吉20%,中吉20%,吉20%,末吉20%,凶5%,大凶15%の確率なんだよ〜」
「メカアコたん,それは風情が無くなるからしゃべっちゃダメだって」
「次は御魔払いですね。この一年間,悪いものから家を守ってくれた破魔矢を焼くんですよ」
「じゃ,悪いものをプラズマキャノンで分子レベルまで滅却するね!」
「火炎放射器で焼いたほうがいいんじゃないかな?」
そして一日が終わって
「結構バイト代頂けましたね,白薔薇様」
「そうですね,だけどみーちゃんは・・・。仕方ないです。アマツ名物のあんみつでも食べて帰りましょう。」
「わーい♪」
- 161 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/01/12(木) 23:23:18 ID:uRiDLuxY
- >>159
アサシンは白馬の王子様だったのかw
- 162 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/01/12(木) 23:23:56 ID:uRiDLuxY
- ageちゃった、ゴメン
- 163 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/03/03(金) 21:32:35 ID:8I85j0tU
- 今日は雛祭り
RO内じゃ特にイベントなさそうだけど
いつもの時事ネタの方降臨希望
- 164 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/03/05(日) 01:50:55 ID:Ein3QAMo
- 〜アマツにひな壇が設置されました〜
アコたん「メカアコたん,知ってる?アマツにひな壇が出来たらしいよ」
メカアコたん「ひな壇ってなに?」
アコたん「さぁ?私も知らないの。だからね・・・見に行こうよ!」
メカアコたん「うん!」
プリたん「ふぅん,そう。アコたん達はアマツへ行ったのね…」
白薔薇「紅薔薇は心配じゃないのですか?彼女達はあの『ひな壇』を見に行ったのですよ!」
プリたん「別に。私は私の妹を信じているわ。それに私たちだって8歳で修了したじゃないの。貴方と私で」
白薔薇「わ,私だって自分の生徒を信じていますよ!アコたんは才能のある生徒だから,きっと…」
プリたん「だから,ね。貴方の授業の成果ってやつを見に行かない?」
白薔薇「やっぱり行きたかったのですね…」
アマツ
海の果てにあるこの国に,そのひな壇は不思議と調和していた。
道ばたに脈絡もなく現れたこの巨大なひな壇を,街ゆく人々がそれぞれの表情で眺めている。
もちろんアコたんとメカアコたんも,ひな壇を見上げていた
メカアコたん「大きいね〜」
アコたん「うん。でも少し不気味なお人形…,それに真っ赤だし…」
大陸育ちのアコたんにとって,アマツ風の人形は馴染みがなかった。人形は薄笑いを浮かべており,壇の敷物は血の色だ
しかし,メカアコたんはそんなことお構いなしに,もっと近くで見ようとしてひな壇に近づいていく。その姿にアコたんが
何となく不安を覚えたとき,パンッという軽い破裂音とともに,メカアコたんの頭部が軽く揺らいだ
アコたん「メカアコたん大丈夫!?」
メカアコたん「うん,かすっただけだから。でもどこから…」
メカアコたんの熱感知センサーがめまぐるしく動き,一点を捉えた。三人官女の持つ柄杓から硝煙が立ちのぼっている
メカアコたん「まずっ…アコたん私の後ろにッ!」
アコたん「う,うん!」
アコたんが慌ててメカアコたんの後ろに隠れた一瞬後,アコたんのいた空間を,残り二人の官女が放った銃弾が切り裂いた
アコたん「何なの,これー!」
メカアコたん「分からないけど,やるしかないみたいだね!」
そしてメカアコたんは,担いでいたパニッシャーを一振りし,戦闘モードのスイッチを入れた
- 165 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/03/05(日) 01:54:06 ID:Ein3QAMo
- メカアコたん「多目標対空防衛機構『イージス』展開ッ!」
プリたん「あー,やってるわね。やや押され気味かしら」
白薔薇「全く,貴方は呑気なものですね。下手をすれば死ぬかも知れないんですよ!」
アコたん「あ,お姉様〜。助けてください〜TT」
プリたん「それは出来ないわね。この『ひな壇』は,女の子の『健やかな成長』を願って作られたものなの。だから勝ちなさい。
勝って強い子に育ちなさい!」
アコたん「育つ前に死ぬかも知れないんですけど〜」
確かにメカアコたんも押されていた。三人官女や五人囃子の銃弾を防ぐだけで手一杯だ。
メカアコたん「まだ,お内裏様もお雛様もいるのに,これじゃやられるよ」
アコたん「ごめんね,メカアコたん。私が弱いから…」
そしてついにお雛様人形が動き出す。キリキリと真っ赤な唇が裂け,言葉を紡ぐ「中々保ッタホウジャガナ,トドメじゃ。雛弾『ひなあられ』!!」
メカアコたん「も,もうダメだよ。ア,アコたん逃げて…」
アコたん「そんな出来ないよ,どうしたら…」
「戦い方は教えておいた筈なんですけどね」
アコたんの背後から苦笑混じりの涼やかな声がした
アコたん「白薔薇様…」
白薔薇「知らないことは無いでしょう。私たちINTプリーストの戦い方を」
アコたん「でも,私人を傷つけるような攻撃なんて出来ないです…」
白薔薇「そうね,でも貴方が助けてあげないとメカアコたんが壊れますよ?攻撃はまた,人を助ける手段であることも知っていてください。」
アコたん「…分かりました,白薔薇様…。私,やります!」
アコたんはお雛様に正対し,唱える
アコたん「主と精霊と子の御名の元に・・・・・・ホーリーライト!!」
そしてアコたんが放った純白の光が,視界を白く塗りつぶした。
手を取り合って喜ぶアコたんとメカアコたん。それを満足そうに見つめる白薔薇と不満げなプリたん。
プリたん「なんであんただけ目立ってるのよー。私が来た意味ないじゃない〜」
白薔薇「いいじゃないですか。アコたん達が無事だったんだから。それに貴方じゃだめですよ」
プリたん「何でよ」
白薔薇「だってひな祭りは女の『子』の日ですもの」
プリたん「ほぅ,すでに私が女の子ではないと・・・。って,見た目がロリっぽいだけで,あんたと私は同い年でしょーが!!」
そしてプリたん必殺の右ストレートが,得意そうに人差し指を立てている白薔薇を3メートルほど吹き飛ばした。
- 166 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/03/17(金) 20:15:49 ID:Nz56UI7w
- 時事ネタ『プリたんのホワイトデー』
チョコレートを両腕に抱えたプリたんを,白薔薇が半ば感心したような視線で見ている
「相変わらずすごい人気ですねー」
「いや,まあ。はは…」
送り主は主にプロンテラ教会のアコライトの女の子達からだ
それが一ヶ月前,バレンタインデーのこと
「お返しかぁ。妥当なところだとクッキーかケーキよね」
プロンテラ教会武装神官隊の隊長という職位を考えると,手作りホワイトチョコを作る暇は無さそうだった。
かといって,何もお返ししないというのも悪い。チョコレートはどれも力作揃いだったし
「仕方ないわね」
一人ごちてプリたんはポケットの中の青ジェムを取り出し,ルティエへのポタを開きはじめた
おもちゃ工場に入ると,プリたんを懐かしい空気が包んだ
「んー,久しぶり。昔はよくここで修練したものだけど」
慣れた足取りで工場内を歩くプリたん。そして目当てを発見する。機械仕掛けの小さな人形,クッキーだ。
彼らの中にはその名の通りクッキーが内蔵されている。プリたんは無造作に近づくと,右足で思い切り踏み込み人形を蹴り飛ばした
堅い外装の感触がプリたんの左足に伝わって,次の瞬間意外なほど軽いその人形は手近な壁に叩きつけられた。
キリ,キリ・・・と緩慢に歯車が軋む音を立て動きを止めた人形の中を探りクッキーを取り出す,つもりだった。
サラサラと乾いた音を立てて,小麦粉の固まりがプリたんの手をすり抜けていく
『粉砕したクッキー 1個獲得』
「あ,あら?」
どうやら力加減を誤ったらしい。昔の調子で殴ってしまった
「オーバーキルかしら?時間がかかりそうね…」
手加減の具合を考えて思案顔になるプリたんの目の端に,赤い服を着たおもちゃの兵隊が映る
「くっ!」
なんとか背を反らして敵の弾丸を避けたプリたんの背後の壁が,ばちっと爆ぜる。おもちゃの銃とはいえ威力は本物だ
接近戦しかできないプリたんは間合いを詰めなくてはならない。プリたんが走り出すその一瞬前,2種類の詠唱が聞こえた
「ニューマ」「ソウルストライク…」
プリたんの目の前で,弾丸が見えない壁にぶつかったように止まり,からんと床に落ちる。と同時に,念弾がクルーザーの
銃を叩き落とし,次弾が胴体,頭部,頸部にそれぞれ着弾する。クルーザーはその場で停止し崩れ落ちた
- 167 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/03/17(金) 20:17:22 ID:Nz56UI7w
- 今の詠唱から感じるに両方とも相当な使い手だ。ミッドガルド大陸でもほぼ最高クラスの。そして声に聞き覚えがある
「白薔薇,貴方ね?そして…青ちゃん?」
プリたんの声に答えるようにして,壁の陰からひょっこりと幼なじみのプリーストとウィザードの二人が現れた
青ちゃんと呼ばれたオペラ仮面で素顔を隠しているウィザードが遠慮がちな声をかけた
「あの,できればその呼び名は止めてほしいのだが…」
「いいじゃない,呼びやすくて。大体『だが…』って,その口調はなによ格好つけちゃって,もー」
青髪のウィザードの提案は,無情にも肘打ちと共に却下された。オペラ仮面の裏にキラリと涙が見える
「それにしてもうまくいってないようですね,紅薔薇」
「べ,別に…。これから…そう,これからうまく行く予定だったのよ!」
冷や汗をかき弁解するプリたんをよそに,白薔薇は粉々になったクッキーを見て嘆息した
「だから手伝ってあげますよ。私たちが」
確かに,彼女達は最高クラスの術者だ。ここは素直に手伝って貰うべきだろう
「そうね,有り難いわ。お願いできるかしら」
ザッー,応えて白薔薇が得意げに一歩を踏み出す
「ふふふ,紅薔薇にそこまで懇願されると断り切れませんね。主のお力をこんなことのために使いたくはないのですが」
「いや,別に懇願までしてるわけじゃないわよ?」
プリたんのつぶやきを聞き流されてし,白薔薇が手を合わせ,祈り始める
「父と子と精霊の御名において,主よ,お守りください。主の忠実なる下僕に邪悪を切り裂く力をお与えくださいー
父と子と精霊の御名において…ホーリーライトッ!」
白薔薇が放った純粋な「力」が容赦なくミストケースを打ちのめす。
白薔薇がミストケースの上蓋を取り,中からケーキを取り出そうとして,固まった
『粉砕した一口ケーキ 1個獲得』
「あら?変ですね」「あら,じゃないわよ。あんだけ勿体ぶった詠唱しといて,あんたも私と同じじゃないの!」
心底不思議そうに白薔薇が小首をかしげる。彼女の容姿の幼さと相まって,かなり可愛らしい。その彼女の頭をプリたんがはたく
そのやりとりを見て,青薔薇が嘆息した
「ふぅ,力を制御できていない証拠だな。制御できてこそ力には意味があるというのに」
そして軽く息を吸い詠唱する
「ファイヤーボルト!」
『炭化したクッキー1個獲得』
難しい顔で黒こげになったクッキーを見つめる青薔薇
「むぅ」「他に言いたいことがなければ,私の拳で沈むがいいわ」
- 168 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/03/17(金) 22:38:43 ID:eihcEmXU
- 「あれだけ大見得きっといて,何やってるのよ!少しは加減したらどう?」
「紅薔薇こそ一番手加減しやすそうな素手プリじゃないですか!」
「氷系魔術ならアイスクッキーが・・・」
体術,神術,魔術それぞれ最高位の術者三人が不毛な論争を続けているところに,とてとてと歩み寄るアコたん
「お姉様〜」
「アコたん?どうしたのこんなところで?」
アコたんはその小さな手を開いて,クッキーをプリたんに手渡した
『よく焼いたクッキー 3個獲得』
「あ,これ・・・」
「お姉様がクッキー集めてるって聞いたんです。だから私も手伝おうって,メカアコたんと」
見れば遠くでメカアコたんが,速乾性粘着弾を放っていた。動きの止まったところでクッキーを回収している。瞬く間に増えるお菓子
「これだけあれば大丈夫ね。アコたんありがとう」
「え,えへへ〜」
プリたんに感謝されたのがうれしくて,アコたんが照れ笑いする横で,白薔薇と青薔薇が頷いている
「やはり私たちの功績が大きいな」「ええ,ご飯一食作ってくれるくらい大きい功績です」
「あんたらは何もしてないでしょーが!・・・・・・まぁ,いいわ。手伝って貰ったのは確かだし,ご飯くらいなら作ったげるわよ」
一同はほくほく顔でおもちゃ工場を後にした
その日の晩
なんとか全員にお返しを済ませたプリたんは,自室に帰り少し思案してからまた部屋を出た。そして,アコたんの部屋の扉をノックする
「アコたん,いるかしら?」「はいー」
ぱたぱたと走り寄る音がして,木製の扉が開かれる。キィと軋む音と共にアコたんが顔を出した
「今日はどうもありがとうね。助かったわ,本当に」
そのアコたんに,プリたんは苦笑しながら簡単にラッピングされた小箱を手渡す
「いえ,そんな!そんなに気を使って貰わなくても私・・・ご飯まで頂いちゃって」
少し慌てて返事するアコたんを,プリたんは微笑ましく思った
「あの,これ私が採ったのは確かだから…じゃ,おやすみアコたん」
「はい,お休みなさい。ありがとうございました」
ローブの裾を翻したプリたんの背後で,再度扉の軋む音がした
箱の中には,粉砕したクッキーと流麗な文字で綴られた短い手紙が一通
「ありゃりゃ,これじゃ食べられないね」
「うん。でもいいんだよ,メカアコたん。私の宝物にするだもん」
小箱を嬉しそうに抱きしめたアコたんを,メカアコたんは不思議そうな顔で見ていた
- 169 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/05/16(火) 20:35:07 ID:oIqs7p7w
- プリたんがロードオブデスと戦っていた頃,城門の前には無数のブラッディマーダーの死体が積み重なっている
その死と破壊の中心に立っているのは一人の騎士。そしてその騎士トリスも,彼が作った死体と同様の重傷であった
「ぜぇ・・・はぁ・・・俺も死ぬかも・・・」「お前に死なれると困る」
このような状態でも至極冷静な右腕の声に答える余裕もなく,彼は死体から残った敵に向けて視線を上げた
「ハハハハハハ!うめぇ,うめぇ。大したもんじゃねえか。やっぱりやるなぁ」
ぱちぱちとからかうように拍手をしながら,他より二回りほど大柄なブラッディマーダーがトリスの前に歩み寄る。相手の表情は
仮面に隠れているが,ありありとその表情は想像できた
「だが,それもここまでかよ。もう傷を塞がないのか?俺を鎧ごと引き裂かないのか?騎士様よぉ」
正直敵の言うとおりだった。ウスラーの『再生』にも限度がある。動力源であるトリスの血も流れすぎていた
「・・・でもな,お前は殺す。アコたんを殺したお前は許さない・・・」
気を抜けば一気に崩れそうになる膝をハルバードで支えながら,トリスは相手を睨み付けた。
「ハハハ!」
笑いながらその顔面に手斧が振り下ろされた!ガチッ,と鈍い音がしてヘルムが吹き飛び,そのままの勢いでトリスは地面に叩き伏せられた
「殺す?許さない?そのセリフは俺に勝手から言えってんだよ!」
「ぐぁっ!」
次々と降り注ぐ斬撃を槍であるいは鎧でなんとか逸らせ,かろうじて致命傷を避ける
「死ねよ,あのアコライトと同じようにな!」
「・・・アコたんを泣かせたんだな・・・」
「ああ,いい声で鳴いてくれたぜ。七回,いや八回だったなぁー。何度殺しても飽きねぇ,最高にイイ声だった。てめぇも・・・」
がきんっー,ブラッディマーダーの声は彼の手斧が弾かれる音で中断された。そして
「ほう,これは・・・」
いつになく感心した声をトリスの右腕が上げる。その腕が握ったハルバード,これがブラッディマーダーの手斧と仮面を吹き飛ばしていた。
「これが精神力でカバーというものか。人間とは不思議なものだ。もう我を作動させることは出来ないのかと思っていたぞ」
「くっ・・・そ,感心してる場合かよ・・・それにさっきのが最後の一撃だって・・・の」
「なら一撃で止めを刺せ。致命傷には程遠いぞ」
「・・・しょうがないだろ,体が勝手に動いたんだから!」
ふと,攻撃が止んでいるのに気がついてトリスが目をやると,ブラッディマーダーは大した傷もなく,まだその位置に立っていた
「やっぱりだ,やっぱりお前はやる。あの時と同じだ」
「え,お前・・・まさか!?」
トリスの普段あまり使うことのない脳が,珍しく迅速な答えを出す。彼が以前捕縛した大量殺人犯,ゲフェンの農村部を中心に
猟奇殺人を繰り返した男と同じ顔だった
「忘れてねぇみたいだな,嬉しいぜ。そうだよな,なんせてめぇが殺した男の顔だもんなぁ,ハハハハハハ!」
- 170 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/05/16(火) 20:35:35 ID:oIqs7p7w
- 「じゃ,他のマーダーも・・・」
「そうよ,ぜーんぶ今までお前が殺してきた奴らだぜ。全く罪深い騎士様だ,俺の殺した人数の何倍だよ?」
ショックを受けるトリスに囁く
「でも・・・でも俺は自分の愉しみで殺したんじゃない・・・騎士として,民衆のためにやっただけで・・・」
「てめぇの都合なんざ,死んだ方は関係ないぜ。てめぇを殺して,恨みを晴らすのさ!」
そして,うなだれるトリスの頭上にブラッディマーダーの手斧が振り下ろされた。ウスラーが警告を発する
「避けろトリス!」
次に来たのは,横殴りの凄まじい衝撃だった。巨大な拳がトリスの,そしてブラッディマーダーの横面を張り飛ばす!ゴミのように
錐揉みし大の男二人が転がっていく。斬られたほうが痛くなかったかもしれない
「う・・・おあぁっ・・・!?」「だから,避けろと・・・」
脳震盪を起こしかけているのだろう,定まらない視界に移ったのは・・・虎だった。白銀の虎がにらんでいる。プロンテラ騎士団の
最高幹部『白の騎士』の一人,白虎将軍の衣装を着たその男が吼えた
『貴様,それでも戦士かぁっ!』
脳に響く声に意識が遠のきそうになる。少し声を落とし,しかしその鋭さは変えぬまま声は続く
「情けない,情けないぞおっ!戦士がいちいち死んだ人間の事を気にしてどうする。そんなものは僧侶にでも任せておけぃ!
罪人は殺せ,それだけの事をしてきた奴らだ。犠牲者の恨みを代行できるのは戦士だけだ!戦は仕事だ,相手もお前を恨んでは
いない。恨むのは腰抜けだけだ!」
そして,返事を待たず大股で歩み去る白虎が背中越しに語る
「戦士なら,漢なら常に前を見ろ!自分の信じる道を,振り返ることなく前へ進め!では,さらばだっ!!」
トリスはなんとなくこの声に,それにましてこの拳の力強さに覚えがあった。ぐらぐら揺れる視界は無視して一気に立ち上がる
「あんたは・・・まぁ,いいや・・・。よし・・・!」
さっきの殴打で体力は限りなく0に近かったが,不思議と体は軽くなっていた
「ウスラー,最後の一撃いけるか?」
「さっきのが最後だった気がするが・・・いいだろう,もう一度力を貸そう」
そしてウスラーはトリスの手甲を外し始めた。ばちん,ばちんー,と皮のベルトを外し,右腕を顕わにする,と同時にずるりと
30pほど爪を伸ばした。
「どこでも良い,我の爪で相手を傷つけろ。それで終わる」
「・・・?・・・わかった」
本当はウスラーの考えている事は分からなかったが,それでもトリスはウスラーを信じることにした
- 171 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/05/16(火) 20:41:05 ID:oIqs7p7w
- 頭を押さえながらブラッディマーダーが呻く。辺りにはすでに白虎の姿はない。その代わりに敵の騎士が立ち上がり歩みを進めていた
「死に損ないがぁ!俺を殺したことを償わせてやる!」
そして今度こそ,騎士の脳に手斧を振り下ろした。騎士も答えるように槍を振るが,全く間に合っていない。受けることも出来ずに
騎士の手から槍は落ち,振るわれたのは素手のみ。その先端がブラッディマーダーの手を掠める
「くっ・・・浅かったか・・・」「いや,我らの勝ちだ」
そしてー,ブラッディマーダーの手は崩れ落ちた
サラサラと音を立てて黒い粉が降る。右手から始まった浸食は既に二の腕にまで達している
「うおおおっ!?これは,なんだ!俺の,俺の腕がぁ!?」
「『再生』の応用で,細胞の分裂を極限まで早め壊死させる。この作用を我の制作者は『腐敗』と呼んだ」
「やめろ・・・死にたくねぇ・・・・・・」
「細胞の寿命を使い切ったのだ。もはや,我にも止められぬ」
冷徹なウスラーの声に,耳を傾ける余裕もなくブラッディマーダーは崩れ落ち,地面には人型の黒い粉が残された
「・・・本来なら,他人の怪我を治すための能力だったが,成功しなかった・・・」
ウスラーの声を聞きながら,トリスも地面にへたり込んだ
>>159辺りに続く
自分設定満載で出しそびれてたけど,最近カキコないので投下〜
- 172 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/10(火) 09:46:59 ID:r7s7Uh8Y
- ドラゴンサンダー!
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