【自己犠牲】クルセ娘を愛でる会 その2【神々の守護】
[662:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/05/09(火) 21:02:06 ID:vKeqSGpc)]
「六子さん、今日は元気そうですね。この前はどうしちゃったのかって心配しちゃいましたよ」
「うむ。すまなかったな……色々あって、な。ああ、それよりも最近詠唱ポーズをだな、少し新しくしたいと思って考えてきたんだ。丁度いい、せっかくだから見てくれないか」
「新しい詠唱ポーズ?」
「まあ見てくれ」
自信満々とばかりに、呼吸を整えると、姿勢を正し静かに構えはじめる六子。
「いくぞ!荒ぶるッ!鷹のッ!ポォォォォォォ」
「荒ぶりすぎ。ダメですよそんな安定感のなさそうな構え。だいたい、詠唱中に囲まれたりしたらどうするんですか」
「だ、ダメか?結構必死に練習したんだぞ?それとも構えが甘かったか?」
「意味がわかりません」
「ふむ、そうか。それでは今度はどうだ?荒ぶるッ!」
「だから荒ぶりすぎですって。そんなに荒ぶらなくていいんですよ、普通にしてください普通に」
「何を言う、このたぎる思いを形にしようというロボ心がわからんか!」
「わかりません。というか、うなされながら、そんな事しか考えていなかったんですか、六子さん」
「むむっ。私だってな、こう、新しい風。略して新風をだな、取り入れたいと思って……」
「そんな事しなくたって、六子さんは魅力的ですよ。荒ぶらない、普通の、普段の六子さんでいいんです」
せっかく編み出した新ポーズを否定され、しゅんとしている六子に慰めの言葉をかける少年。
「あ。そうそう、あの後六子さんがやるはずだった内職。あれ、やっておきました」
「な、なぬ!?」
「いやー、意外と作っている間に熱中しちゃって。一心不乱っていうんですかね、とにかく、千羽鶴を折るような気持ちで頑張ってみました」
「あ、あれをお前がか?まさか、全部」
「えぇ。僕にも意外な才能が眠っていたみたいです。これで六子さんと一緒の生活をしても内職のお手伝いができますよ!」
「いや、お前。そこは稼ぎに行くとかじゃないのか……;」
「ま。それはおいといて」
「ツッコミ役だけで飽き足らず、今度はボケ担当か」
「何を言っているんですか。六子さんが通年ボケ担当に決まってます。不動のエース級ですよ」
「お前……段々私に対してのツッコミが容赦なくなってきてるな」
「いや、どっちかっていうと、六子さんが天然だから助かっている部分もあるんですよ?感謝してます」
「感謝されるところでもなければ、フォローにもなっていないのだが。それはともかく、どれ、どんな出来か私が見てやろう」
「はい。どうぞ見てください!僕の自信作ですよ!」
えへん、と胸をはって見せびらかす少年の自信作。
それを見た瞬間。六子は、絶句した――。
「六子さん、どうしちゃったんだろう。あんなに涙をうかべて、箱ごと持って走って行ってしまった。きっと喜んでくれたんだな、いやあ、一日一善って素晴らしいです。これも神のお導きですよ」
やり遂げた男の表情で、六子の背中を見送る少年。健やかな笑顔は、いつも以上に晴れやかだ。
「ぜ、全部やり直しじゃないか……どうしよう、今日中に終わるだろうか;」
瞳にうっすらと涙を浮かべながら、六子は全力疾走で修道院別院に戻っていった。
段ボール箱いっぱいに詰め込まれた、見るも無残なボロ造花の束を、今は怖くて直視できない。
「あいつには、もう、絶対に、触らせん!」
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