【自己犠牲】クルセ娘を愛でる会 その2【神々の守護】
[664:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/05/11(木) 20:41:36 ID:XO0IvZ5g)]
「はー。暇ね〜」
「そうだね、姉さん」
「そんな時は、あれだ。アレ。しりとり!」
いくら暇だからといっていきなり双子の弟としりとりをはじめようとするダンサーは、この世界でひとりしかいないだろう。
「そんな事するくらいなら狩りにでも行って、箱あつ」
「シヤラツップ」
「なんか今すごい変な発音じゃなかった?っていうか、ツ二回言ってなかった?」
「シャララップ。いい、いくわよ!」
問答無用である。そして大きく息を吸い込むと、悲鳴にも近い絶叫で第一声をあげた。
「ラーメン!!!!11!1!!」
その場にいた通りがかりの数十名を巻き込んで、回りはその瞬間、凍りついた。隣にいたバードは思いっきり卒倒している。
「……なんでスクリーム……;」
「違うの。私、おなかが空いちゃって、ラーメンが食べたいの。本当よ?」
「意味がわかんないよ姉さん」
プロンテラ噴水広場を覆い尽くす、妙な空気。
「じゃあみそラーメン!無かったら、しおでもいいわ!」
「お前に食わせるラーメンは無ぇ!」
「なんですって!」
「ち、違うよ。今のは……」
「ん?あっ!お姉さま!」
「……なんだこの惨状は。みんなふらふらじゃないか、何をした貴様ら」
「いや、俺は何も;どっちかっていうと、姉さんが」
「な、なんて事いうの!お姉さまの前で!バッカん!」
「ぶべらヴォふ!」
ダンサーは、踊りだけでなく、歌もこなす。発声練習の賜物で、その声は軽く一山を越えるほどだという。
そんなダンサーの鋭い声は時に、聞いたものを一瞬気絶させるほど強烈なダメージを与える事がある。バードのそれとはまた違った『声』はダンサーのひとつの武器だ。
伝導は手に持っていた鞭を器用に弟バードの後頭部にヒットさせると、まるで人が変わったようにしおらしくなった。
「私たちは新しいコントの練習をしていただけなんです〜。ね、電磁」
目配せした伝導の鋭い眼差しにびくっと跳ねる様にして、冷や汗まじりに頷く電磁。今は大人しく従った方が得策だと考えたのだろう。
「だが、だからといって、人に迷惑をかけるような真似はするんじゃない」
「は〜い、わかっていますわ、お姉さま。ね、電磁」
電磁は必死で首を縦に振り続けた。ここでミスれば、壮絶なお仕置きが待ち構えている。
「でも姉さん、そろそろお昼でも食べない?おなか空いたんでしょ」
「あ、そうね。もちろん、電磁のおごりで、ね?」
「な、なんで……ヒッ!は、ふぁい!ラーメン食べに行こう!ラーメン!」
「あっははラーメン!ラーメン!」
「ラーメン!ラーメン!」
ふたりは肩を組みながら二人三脚のような構えですっ飛んで逃げていってしまった。掛け声は、もちろんラーメンラーメンだ。
ラーで右足、メンで左足である。
逃げ出してしまった双子雷鳥の残したものは、結局大量の気絶者と、それを看る六子たちの姿だった。
「久々に見かけたと思ったら、こんな大惨事に出くわしちゃうとは、あの二人。やっぱりちょっと変な人たちですね」
「ところで、ラーメンって何だ?」
「六子さん、ラーメン食べた事ないんですか?何だっていうことはそもそも知らないんですね」
「うむ。いや、しかしだな、食べ物だという事は、理解した」
「それじゃあ、僕らもラーメン食べに行きましょうよ。きっとあの二人もラーメン食べに行ったんでしょうし、行ってみましょうよ」
「にがいか?私はにがいのは苦手だぞ。コーヒーとかダメだ。にがくてダメだ」
「ラーメンは全然苦くないですよ。っていうか六子さんが苦いものが苦手なんて今はじめて知りました」
「そうか?それじゃあ私たちも行ってみるか、よし、肩を組め!」
「は?え?うわ、体格差あるのにそんなしたら……」
「ラーメン!ラーメン!ラーメン!ラーメン!」
「うあ、ちょ、まって、め、メン……ラー……メン」
六子はラーメンを食べに行く時は双子雷鳥のようにラーメン二人三脚をするものだと理解したらしい。少年はぎくしゃくした動きで六子に引きずられるように連れまわされ、プロンテラを後にした。
その後、プロンテラではラーメン二人三脚が静かなブームになっていたらしい。
特に献身カップルなどに人気の技(スキル)として。
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