【自己犠牲】クルセ娘を愛でる会 その2【神々の守護】
[667:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/05/12(金) 23:45:18 ID:Othtms8U)]
「うう……呑み過ぎた; うっ、あぶねぇ。今のは危なかった」
首都プロンテラの早朝。連日飲み明かした酔っ払いがそこら中に汚物を吐いて街を汚していた。
いつも通りの光景といえば、いたって普通の光景ではあるが、それをよく思わない者も大勢いる。
どちらかというと、それらを処理するのは吐いてしまった本人ではなく、首都の美善化を目指す大聖堂の修道女やプリースト見習いのアコライトの仕事であったりするのだ。
それを知ってか知らずか、彼は既に自身の限界を軽くオーバーし前後不覚となって、まだ人の通りもまばらな裏通りをふらふらの千鳥足で歩いていた。
「おうっぷ……い、今のはやばかった、すぐそばまで来てたぜ……ふぅ……水、水……」
かろうじてプロンテラ中央、噴水広場にやってきた彼は、おもむろにその水面に頭ごと突っ込んで。
「何をしているんです、こんな朝早くから」
「ん?お前はー……えー、っと……どなた様でしたっけ」
「何を言ってるんですか、僕ですよ。以前あなたに助けてもらった」
「あん?なんだ、お前……僕僕詐欺でもしようってのか?俺はお前なんて……うっ」
「う?何ですか、お察シンさん。どうかしたんで うわ!やめーてー!僕の服にかけないーでーぇ!」
「な、泣くなよ悪かったよ、ちょっと酔っ払っててよ……な?この通り!」
「ぐすっぐすっ……僕、人に寄りかかられたまま吐かれた事なんて……ひっくひっく……」
ブリーフ一枚でさめざめと泣いているアコライトの前で、長身で黒ずくめの男が頭を掻いていた。アコライトの制服は一枚だけ、晴天のプロンテラを泳いでいる。
陽が真上近くなったころ、ようやく乾いた服を着なおして少年はそれでもまだ、ふくれ面だった。
「大体お察シンさんは毎日毎日呑み過ぎなんです。いくら狩りに疲れた体を癒そうとお酒をのんでも、体を悪くしたらそれこそ本末転倒ですよ?わかっているんですか」
「お、おう」
「それに、吐いた相手が僕だったからまだよかったものの、他、知らない人にそんな事したらどうなるか」
「わ、わかってるって;」
「いいえ。わかっていません、わかっていたら僕の事まで忘れちゃうまで呑んだりしません」
ダブルスコア程度も離れていそうな年の差の少年に、正座させられて説教を受けているのは、聖職者である少年とは相反する暗殺集団、アサシンギルドに所属するアサシンだった。
「そこまでにしておけ、聖職者たるお前がこんな男と付き合う事は無い」
「あ、六子さん」
「で、こいつは何をしでかした。事によっては我らが処分するが」
「え、あ。違うんです、この人は僕の命の恩人で、アサシンさんなんですけど。いっつもお酒を呑んでは酔っ払って狩りに出たり、狩場で嘔吐してベナムダスト代わりにしたり、スプラッシャーしたりするんです」
「……ひ、酷ぇ;俺はそこまでしねぇよ!」
「お前は黙れ」
「で、ついたあだ名がオールウェイズ(常時)お察しのアサシン、略してお察シン(おさしん)さんなんです」
「ふむ。相変わらず的確な通り名を考える奴だな」
「まてまてまてまて!どこが」
「黙れと言っている、それとも何か。貴様、この場で私が」
「まぁまぁ、お二人とも落ち着いてください。とにかくお察シンさん。もう他の人に迷惑をかけてはいけませんよ?」
「ああ、悪かったな」
「レイ。お前、まさか、何かされたのか?」
「あ、いえ、ちょっと服に吐かれてしまって、汚れたので服を洗っていたのです」
「……お察シンとか言ったか。貴様、よくも聖職者を……許さん!厳重処罰を行なうッ!グゥゥゥランドォォ!」
「うわー!な、やめ、あ!足痺れた!正座で足、あ、うお!やめ、うぼあああああああああああああ」
「六子さん、やりすぎですよ。街中であんな高レベルのグランドクロスなんて」
「ま、アレくらいで許してやったんだ。それでも少しは懲りただろう」
その後、遥か彼方にすっ飛ばされたアサシンの行方を知る者はいなかったという。
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