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自分の使っているキャラに設定を付けたりして萌え燃えするスレ

[174:>>1氏に捧ぐ(2006/12/04(月) 20:06:06 ID:C8zTMqoU)]
「え……?」

 グラリ、と天地がそのままひっくり返るような感覚。
 痛みは一瞬。刺し貫かれた体は、そのまま地面に崩れ落ちた。
 喧騒の中で、また一つ、戦士の命が消えてゆく。

――――――――――――――――――◆――――――――――――――――――

 血臭に塗れた王都の中央通りを、異形の者達が踏み鳴らしていく。
 死体などには目もくれず、ただひたすらに命あるものを求めて行進する狂気の塊達。
 そして、それを平然と眺めている自分に違和感を感じた。そうだ。そういえばさっき、死んだんだっけ。
 大鎌を持ったヤギの化け物に蹴っ飛ばされて、自分の体が宙を舞う。民家の壁に叩きつけられてそのまま情けなく突っ伏した。

――あーあ、あれじゃお嫁にいけないよ。

 体の原型が保たれているだけ、マシな死に方だったんだろう。傷は致命傷となった腹のみだ。
 青ざめた自分の体を、外側から眺めるのはあまり気分の良いものではないが、未練とでも言うのだろうか。その体から目が反らせなかった。
 喧騒が単なるBGMとなって、彼女の気持ちを揺さぶる。実感を持たない感情が、浮かんでは消えていく。
 最後は何もなくなるのかなと思いかけて、これが死ぬことなのだと悟った。
 薄れ行く意識の中、視界が白くなっていくことに気がついた。真っ暗になるものだと思い込んでいた彼女には、少し不思議な暖かい光。
 光は、やがてその輝きを増して彼女を埋め尽くしていく。もう少し安らかなものだと思っていたが、眩しくて敵わない。
 ガラスが割れるような音がして、光は一瞬で弾け飛んだ。その凄まじい音に、消えかけた意識が引き戻される。
 目を開ければ、そこには人影。空中で胡坐をかく、どう見ても悪人面の男がいた。
 どこぞの民族衣装か何かは知らないが、白い装束に身を包んでいる。

「……パ○ウェーブ?」
「ちげーよ」

 どうやら、スカラー電磁波が云々で星が滅びちまうぜ!などと声高に叫ぶ怪しい連中ではないらしい。
 まあ、流石に死人を信者に加えたいとまでは思わないだろう。

「あんた、誰?」
「見りゃわかんだろ。神様だよ、か・み・さ・ま」

 どうやら、スカラー電磁波云々で星が滅ぶとわめき散らす怪しい連中よりも厄介なヤツらしい。
 彼女は頭を抱えようとして、自分に体がないことに気がついた。

――ああ、そうだよ。私の体はあそこでた○パンダみたいになってるあれだよ……。

「もうちょっとマシな走馬灯見たかった」

 さりげなく嫌味をぶつけておくが、神様を名乗る男からの反応はない。
 それどころか、それをスルーした形で、斜め上方向の返事が帰ってきた。

「あれだ。単刀直入に言うぞ」
「はいはいなんですか神様」
「命やっから、体貸してくんね?」
「……ッ! か、かかか体を……!?」

 何故だか、話が急に現実味を帯びてきた。
 要するに死体を蘇生する実験だか何だかを行うつもりだろうか。
 死して尚安らかに眠ることが許されないのか。
 いや、そんなことより体貸せってあんなことやらこんな……っ!!

「そういういやらしい意味じゃ……まぁ、なくもないんだが」
「だ、断固断るっ!!」

 彼女達の声を掻き消すように、獣達の行進が続く。

「あー、まあとりあえず、あいつらを一通りブッ殺すまででいいから、その体貸せ」

 神様とやらが指差した方向には、飽きることなく血塗れの王都に新しい赤絵の具をばら撒き続ける怪物達の姿。
 悲鳴すらかき消されるそのおぞましい行進の脇で、一人の少女が恐怖に目を見開いていた。首から上だけで。
 四肢が焼け焦げ、頭が勝ち割られて元の形が人間であったなどと想像すら出来ない者までいる。

 突然、彼女の心に何かが浮かび上がってきた。
 沸々と溢れてくるそれは、生前に感じた最も激しい感情。
 自分は剣士。その剣を何のために振るってきたというのか。
 力なき者を、このような悪魔どもから守り抜くためではなかったのか。
 そうだ。再び剣を振るうことが出来るのなら、まだ救える者もいるはずだろう。
 あんなところでたれパ○ダになっている暇など、ない。

「……それまでだからね」

 凄まじい光が視界を包み込む。眩しすぎるが、しかし目を閉じることすら許されない白銀の抱擁。
 神の奇跡とやらだろうか。全身に熱い感覚が行き渡るのがわかった。
 気がつけば、彼女は剣を握って立っていた。
 燃え盛る熱い闘志は、紛れもなく生前感じたそれと同じ。

 血塗れの王都に、神の力を宿した剣士が舞い降りた。

――――――――――――――――――◆――――――――――――――――――

 翌朝。窓から差し込む朝日の眩しさに耐えかねて、うっすらと瞼が持ち上げられる。
 夢の中から強制的に呼び戻された意識は、完全に覚醒しきらない。
 寝ぼけ眼のまま、起き上がって目をこする。

「よぉ、クマさんパジャマたぁ以外に可愛いシュミしてんじゃん?」
「んー……?」

 ビッグフットが可愛らしくデフォルメされてプリントされた大きめのパジャマに身を包んだ彼女が、目の前に現れた白装束の男を凝視して硬直すること十数秒。

「……えええええっ!?」

 あまりの衝撃に、彼女はベッドから転げ落ちた。

「どうせだから、俺の代わりに異端者の始末しといてもらおうと思ってな」
「ちょ、ちょっと! 約束が違うじゃない!」

 打ち付けた頭を抑えて涙目になりながらも、必死で抗議してくる。
 そんな彼女の様子をさして気にも留めないで、男は面倒くさそうに頭の後ろをかきながら答えた。

「ほら、あれだ。とりついてるだけで、別に体を借りてるわけじゃねーし?」
「……さ、最悪」

 かくして、神の力を宿した剣士は目くるめく悪霊退治の日々に身を投じることとなるのである。
 余談だが、彼女は風呂に入るときには必ず全身にタオルを巻くようになったとかならなかったとか。


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