【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】
[1:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2005/02/02(水) 19:44 ID:eNgSWhIE)]
LiveROの時計塔スレがdat落ちしてしまったのでこちらに立ててみます。
こちらに立てる事で再び活性化する事を祈って…
とはいえdat落ちする程放置されてたスレなのでもう需要が無いかもしれませんが…
[254:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/03/22(水) 00:34:10 ID:c4yQnhXM)]
>253
なるほど。
それはそれでここの面白みのアイデアやSSなどのネタとして使えそうですね。
SSでよければ、私では力不足ですがそのネタ頂戴して書いてみたい・・・。
あと、ちょっとそういうのとは違いますが、
以前からあったほのぼのするSSや絵の系統を意識して駄文書いてみました。
お時間ある方は読んでいただければ幸い。
<ライドワードねえさんメインのSS>
バレンタインもホワイトデーも過ぎ去った、なんでもない日。
ジョーカーはライドワードの部屋へと呼び出されていた、それも秘密裏に。
それはイベントというにはむなしい、2人にとってこの時期の恒例行事の為だった。
「時期的に気付いてるかもしれないけどね、また今年も、よろしくッ!」
ライドワードが合掌しながらジョーカーに懇願する。
テーブルに肘をつき、頬杖をついていたジョーカーがあきれた声で答える。
「毎度毎度、渡さないくせによく作りますわね」
目線の先はテーブルの上、みかん箱大の箱と溢れたチョコレートの山。
それはバレンタインデーの敗戦の証。
渡せなかったチョコレートとその試作品の山だ。
依頼内容は例年と同じく、これの廃棄処分。つまり完食。
嗜好としてはむしろ好きなのだが、食べるにしては度を過ぎた量だった。
2人で手分けするにせよ、見ているだけで満腹になりそうで気持ち悪い。
「…まぁ、それはそうなんだけど…だってさぁ…」
ライドワードはそういうと、しょげて見せた。
反論の余地もなく、恒例行事になっているだけに言い訳も思いつかない。
ライドワードは普段の凛とした様子のかけらも無く、小さくなっていじける。
「義理だって言って、てきとぉ〜〜に配ればいいんですわ〜」
試作品らしき形の崩れたチョコレートを頬張りながら、ジョーカーが言った。
「うん、それもわかっているんだけど…」
ライドワードはジョーカーの言うそれを想像でシミュレートする。
小動物のようにチョコレートをつまむライドワードの顔が、みるみる赤くなった。
「…けっ、妄想の中で乙女ちっく全開してもしかたありませんわ〜〜」
あきれたようにジョーカーが言うと、我に返ったライドワードは恥ずかしさにさらに赤く、小さくなった。
「あ、これ、もしや本命チョコですの?」
ジョーカーは箱の奥深く、切り崩した山の隙間から小箱をみつけると、それを取り出すさま、ライドワードの目の前へ突きつけた。
「・・・ほぇふわぁっ!!」
ライドワードが口にチョコを含んだまま、動揺する。
答えになっていなかったが、赤らんだ顔とその動揺がそれを物語っていた。
小箱を奪い取ろうと手を伸ばしたが、すかさずジョーカーがその手を避けてかわした。
「いや〜ん、渡すに渡せず、捨てるに捨てられない未練がここにぃぃw」
ジョーカーは高笑いながら、その身をくねらせる。
「かわいーですわー、乙女ちっくですわ〜w」
奪い取ろうとするライドワードの手を避ける、避ける、避ける。
幾度目か、テクニカルにフェイントを織り交ぜ、ライドワードはそれを奪い取ると
息を切らせながらそれを抱きかかえた。
「あ、の、ああ、アレよね、もう食べあきたよね、ホットチョコにでもして、食べ方変えてみよっかっw あはははははッw」
あからさまに照れ隠しとわかるそれをしながら、ライドワードが調理場へと消えた。
「味のほうは、思い出の効いたビター味で〜♪」
遠くから自分の言葉に笑うジョーカーの声が響いていた。
ライドワードはちぃっっと舌打ちすると、小箱から取り出したチョコレートを溶けやすいように小さく砕いた。
なべにかけた牛乳が人数分よりやや多かったが、あまり見たくはないチョコレートを溶かして消してしまうには充分な量だった。
「……はぁ……」
思い出は解けて消えると、ホットチョコレートがそこに出来ていた。
ライドワードはそれを2つのカップに移し変え、ジョーカーの居る部屋へ戻る。
ふと見たジョーカーのよこにアラームがいつのまにか座ってた。
「もが・・・んが・・・おじゃましてまーすっ!」
ライドワードに気付いたアラームが口いっぱいにほおばったチョコレートを一飲みにして言った。
「いい加減、食べ飽きたので、強力な助っ人を呼びましたわ〜。」
少し食べ飽きてげんなりした様子のジョーカーが答えた。
その間もアラームは忙しそうにチョコレートをほおばっていた。
「ライドお姉ちゃん、チョコレート美味しいねぇw」
幸せそうな表情をしたアラームの顔ががライドワードに向けてられた。
ライドワードはアラームの口の周りについたチョコレートを優しく拭い、その横の席へとついた。
「ほらほら、急いで食べるから口の周りにチョコがついてるっ。ゆっくり食べれるの。
あと、これ、飲む?」
そういって、ライドワードはホットチョコレートをアラームとジョーカーの元へ差し出した。
「わーいw」
「うぇ、やっぱりもう胸やけしそうなのでチョコは結構ですわー」
差し出されたホットチョコレートに対象的な反応を見せた。
何も知らないアラームは無邪気にホットチョコレートを飲んでいた。
その様子に、ライドワードから微笑みがこぼれる。
「お姉ちゃん。どうかしたの???」
「ホットチョコにひそかに込められた大人の苦味に気付かない、そんなおこちゃまぶりを笑ったんですわー」
これまでの経緯を暗に隠しながら、ジョーカーが悪戯っぽく言う。
「なにそれー、アラームおこちゃまじゃないもんっ!それにこれ苦くなんかないよー?」アラームが見せるようにカップを差し出した。
「その空気の読めなさが、おこちゃまなんですわ〜w」
ジョーカーがさらに笑う。
ライドワードはそれを見ると、もう一度、小さく笑った。
カップにはすでにホットチョコも、チョコレートの片鱗もない。
チョコもチョコを渡すことも、所詮、消えて無くなってしまうようなことで、
本当に大切なことはそんなことではない、そう思うとチョコレートやその思い入れに固執していた自分に軽く自嘲した。
―トントン。
不意を付くようなノックの音が部屋に響く。
「はい、どなたです?」
ライドワードが問いながらドアを開けた。
「すまん、アラームのやつ来てるか?あいつ、MAの掃除当番をサボっ…あ、居たっ」
荒武の声がすると、他の人より頭ひとつ分程度、大きい彼の視界がアラームを捉えた。
「こら、アラーム、お前、MAの掃除当番だろっ!」
ライドワード越しに荒武が言った。
「レディのお茶会を野郎が覗くものではないですわ〜」
「あ、ごめんなさい。私達がアラームを呼んだの」
ジョーカーが顔も向けずに言い、ライドワードが言葉を付け足す。
「えへへ、ごめんなさい、忘れてたw
でも、チョコレート美味しいよっ! 隊長もどうですかぁ?」
チョコレートで幸せを充填しきったアラームがホットチョコレートの入ったカップ、
―ちょうど、ジョーカー用のカップだ―を持って隊長に駆け寄った。
「いや、俺は甘いものは…」
苦手だ、という表情をするが、アラームは無理に薦めた。
自分が好きなものはみんなも好き。少しそういった勘違いもあった。
「…あ、その、疲労回復とかにもいいから…」
ライドワードもおずおずと上目使いで、そして目線が合うと、すぐさま目線を
はずしながら付け加える。
わかった、わかったと言いながら、カップを手に取り一口だけ荒武はホットチョコレートを飲んだ。
押しの強いアラーム薦めと、珍しいライドワードの薦めに負ける形だった。
「・・・すまん、気遣いはありがたいが、やはり甘いのは苦手だ・・・」
荒武はライドワードに飲みかけのカップを渡した。
ライドワードは赤くなった顔をうつむいて隠し、カップを受け取ると、こくこくと首だけで頷いて返事をした。
「アラーム、すぐ掃除当番に戻るようにッ、いいなッ!」
アラームに向き直し、連絡だけを告げると荒武は、邪魔したとだけ告げて部屋を去った。
「じゃあ、お姉ちゃん、私、当番だから行ってくるね、チョコレートご馳走様〜w」
カップを両手でもったまま、赤面・硬直するライドワードの横を通り、アラームが荒武のあとを追うように部屋を出て行った。
「友人として、『遅くなったけど、チョコ渡せたね♪』とか、こそばゆい言葉もありましょうが、どっちかというと、この後にそのカップに口つけて、間接チス(キス)とか乙女全開シーンをやってもらって、それを激写したい…ところなのですが、まぁ、今日のところは前者でカンベンしときますわ〜、よかったね〜っと。」
と、ジョーカーは言いたいことだけ行って部屋を去った。
ライドワードは一人静かになった部屋で、後片付けを始めた。
渡せなかったチョコレートが、意外な形で渡った動揺が自分でも新鮮で、
片付けの間、度々思い出しては、うれしくも恥ずかしくなり、そして、小さく笑った。
ライドワードは以前読んだ物語の一文を思い出していた。
曰く、"チョコレートは人を幸せな気持ちにしてくれる。"
今日はそんな幸せの魔力を少しだけ感じた、そんな日だった。
「来年こそは」
―大切なことをなにかを遂げたい―そう思うのは例年と同じだったが、
少しだけチョコレートの魔力に背を押され、少し前へ踏み出せた感じがした。
<end>
read.cgi ver4.20 by GlobalNoteScript (2006/03/17)