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【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】

[307:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/08/20(日) 02:12:18 ID:oTC3NPCc)]
ならば、お目汚す。
萌え無しですまんが、その部分は各自の想像力で自給自足されたし。

アラームには大好きな歌を忘れた時期がありました。
バドスケがこの時計塔を旅立っていった頃のことです。

いつも隣で伴奏してくれた彼は旅立ちました。
アラームは歌を歌うたび、いるはずのない彼の存在を感じました。
まるで彼が帰っているような、この時計塔のどこかにいるような不思議な感覚です。

でも、時計塔のどこを探せども彼の姿は見えません。
口ずさむ歌は次第に小さくなり、アラームは彼がいないことを再確認します。
耐え切れず涙がこぼれ落ち、それを見た周りの仲間達はいつも心配顔です。

いつものようにアラームに微笑みかけてくれた笑顔。
その笑顔をかすかに曇らせる心配の影。

―――アラームはそのわずかな機微を敏感に感じ取っていました。

アラームは歌うことを止めました。
むやみに思い出しては心配をかけないように。
ふと、うつった鏡の前でアラームは微笑み、自らの表情をチェックします。
心配をかけないように。そして悟られないように。

それからしばらく、アラームは大好きな歌を忘れました。

アラームはいつもかわらない笑顔で誰にでも接したつもりでした。
ですが、いくらアラームが鏡の前で練習しようとも、
接する相手のに心にうつった自分の姿は見ることは出来ません。

―ときおり見せるさびしげな表情を。

――耐えて強がるけなげさと優しさを。

時計塔の仲間、―――いえ、「家族」が見落とすことはありません。
あるときクロック爺様が言いました。

「悲しくなってしまうなら今は歌わんでもええ。
アラームの好きしたらええ。

だけどもな、歌はやめんほうがええ。
その歌はあやつが残していった、いつか帰る約束じゃろ?

歌にはな、みぃ〜んな、『忘れない約束』が込められておる。
忘れてはならない悲しみを、胸躍った喜びを、信じる思いのたけを、な?

素直に歌うことは、その約束正しく表現し、正しく伝え守る、ということじゃ。
だから、悲しかったら悲しく、嬉しかったら嬉しく歌えばいいんじゃ。

約束を忘れられていたら、また一緒に歌おう!・・・というあやつの約束が、
悲しく伝え守られては、・・・あやつ、帰りづらいじゃろ?」

アラームの心の雲の隙間に小さな光が差し込みました。
光は少しずつ染み渡るように広がり、心の雲を追い払います。
その光の暖かさに溶かされた感情があふれ出し、じわじわと心に染み渡ります。
心に広がる暖かなものを小さな両手で受け止めアラームは小さく答えました。

「・・・うん」

流れ落ちそうな涙をぎゅっと目を閉じて堪えましたが、大粒の涙で溢れかえります。

「―それでええんじゃ」
コツリ、と額に硬質な感触が一度ありました。
アラームが目をあけるとクロック爺さんの優しい顔が目の前にありました。
泣き出したアラームに額をあわせて、クロックなりに慰めてくれたようです。

「これは、わしとの約束の証じゃ」
それだけ言うと、クロックは泣き止むまでアラームの傍にいました。

―荒武が手荒にアラームの頭を撫でました。

―ライドワードがアラームを優しく抱きしめました。

―ジョーカーとアラームが互いに微笑みあいました。

事情を知った時計塔の皆に会った後、アラームは以前と同じように歌い始めました。
その歌声が時計塔を満たし、誰もが舞い戻った天使の歌声に聞惚れました。


それから幾日がたったことでしょう―。
今日――。
安息の日に、アラームは再び約束の歌を歌っていました。
何故かその日、ちょっとだけ冒険者の出足が遅かったようです。
もしかすると、その歌声に惹かれたため―――なのかも、しれません。


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