【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】
[343:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2010/02/04(木) 00:23:21 ID:lhcEuDuA)]
「・・・ぉおい・・・無事かー?」
塔内図書資料室の門にもたれ掛かる吟遊詩人の気遣う声が響いた。
崩れた本の山を横へ避けながら、吟遊詩人が体を起こそうとしている。
幾度目かの振動―これまでの揺れの中で、一際大きかったもの― により、
避難中の本の山が大きく崩落し、吟遊詩人に襲いかかった。
その本か、地面か、どこかに体を打ち付けたのか、その体は酷く重く感じ、上半身を起こし、扉へもたれ掛かるのが精一杯だった。
同じく大切な本を避難させていた司書の女性とは、図書資料室の門を隔てて内と外に分けられ、崩れた本の山が互いの姿を隠し、その行き来をも阻むようだった。
「・・・あ・・・うん・・・なんとか・・・大丈夫・・・」
扉と本の山の向こうから司書の返事があった。
扉の外、通路側からの塔内の駆動音に紛れた為か、その声はひどく弱々しかった。
「・・・でも・・・」
司書の言葉はそこで終わり、続かない言葉を待って静寂の間があった。
「でも・・・って! 本当に大丈夫なのかよっ!!」
静寂に不安を覚えた吟遊詩人が、がなるように言った。
駆けつけたい気持ちを阻む重い自らの体が、その声を荒げさせる。
「まってろ・・・今・・そっちいくから・・・・」
その答えは帰ってはこなかった。
床のカーペットをずる音と、体で払い除けた本の崩れる音をさせながら、
吟遊詩人は腕の力だけで這い、司書の元へ駆けつけようとした。
「こないでっッッ!!!!!!!!!」
慟哭のような司書の声が辺りに大きく響く。
「・・・その・・・いま・・・動けないのだけど・・・・・」
司書は無意識のうちに出た自らの大声に我に返り、声の調子を落とすが、
その声には隠しきれない動揺を含んでいた。
「その・・・今は・・・こっち・・・こないで・・・・・」
吟遊詩人に声を掛けながらも、司書の眼はただ一点を見つめていた。
顔に何時もよりも青白さを浮かべ、その表情は不安と動揺に呑み込まれ、揺れていた。
見つめるその先に、そのすべてを語る理由が鎮座する。
そこに降り積もった本をどかそうとも、動かない自らの足。
その足の膝から下が―――――――ない。
膝からつながるその下の感覚だけを頼りに膝を折り曲げて体へ引き寄せようとする。
追従するように体に引き寄せられる一回り分厚く見開いた一冊の本。
膝から下が、まるで、その本に喰われているか、吸い込まれているように―
――――――――――在った。
<続く もしくは引っ張るw>
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