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◆みんなで創る小説Ragnarok ♂萌え2冊目◆
- 69 名前:殴りプリとアサシン(1/3) 投稿日:2006/07/04(火) 15:13:47 ID:.bHY9Esw
- じっとりと湿って淀んだ空気。
監獄に比べればマシとはいえ、カタコンベも長居をしたいとこじゃないな。
俺はまとわりついてくる蝿を叩き落としてため息をついた。
アルケミストの弟が透明な布を欲しがってたので取りに来たのだが、いまいち気
がのらない。
「出直すとするか」
呟いて懐から青石を取り出した時、轟音が響いた。
立て続けに鳴り響くそれは、おそらくダークロードのメテオストーム。
ひょいと下を覗けば、ちょうど逃げ損ねたアサシンが直撃をくらって地に伏せるところだった。
カプラの魔法が働き、止めをさされる前に彼の姿は消え失せる。
その跡に残るは1枚のカード。
あれに気を取られて逃げ損ねたのか。
「たしかゲフェンあたりで見かけた顔だったな」
余計なお節介だと自嘲しつつ、俺はありったけの支援魔法をかけて、駆け降りた。
魔法都市ゲフェン。
GH最寄りの街なだけに、魔法職以外の冒険者も多い。
痛む体を叱咤しつつ、周囲を見回す・・・見つけた。
カプラ倉庫からちょっと離れた木陰で手当をしているアサシン。
「よぉ、災難だったな」
声をかけると、胡乱な目付きでじろりと睨まれた。
まぁ、自分で言うのもなんだが、ゴールデンヘッドギアにアラーム仮面のごっついプリなんて怪しいよなぁ。気に入ってるんだが。
「忘れモンだ」
さっきなんとか拾って来たイビルドルイドのカードを差し出すと、アサシンの瞳が大きく見開かれた。
「わざわざ、拾って来てくれたんだ?そんなケガまでして?」
「見過ごせない性分でなぁ。ほれ、とっとと受け取れ」
俺はカードを押し付けると、自分とアサシンの体を見比べた。
どっちもけっこうな傷だ。
「ちょっとそこまで付き合え」
手近な路地裏に誘うと、アサシンは素直についてきた。
- 70 名前:殴りプリとアサシン(2/3) 投稿日:2006/07/04(火) 15:14:21 ID:.bHY9Esw
- 人がいないのを確かめた上で聖域の呪文を詠唱して座り込んだ。
ふわり、と優しい光が満ち、速やかに痛みが引いて行く。
「えーと、もしかしてこの為に誘ったのかな?」
結界の端にちょこんと座ったアサシンが首をひねりひねり尋ねてくる。
「俺は殴りなんで、ヒールは苦手なんだよ。かといって人の多いとこでこれ出すとわらわらたかってきやがるしなぁ」
答えながら仮面を外し、ワインを取り出して喉を潤す。
メテオの熱気でひりついていた喉には慈雨のようだ。
「なんだ、てっきりカードの礼に一発ヤらせろってことかと思ったのに」
げほ。
信じられないような台詞に思わず吹き出す。
あぁ、もったいない。
せっかく奮発した高級品が・・・じゃなくて!
「なんだって?」
「いや、人気の無い路地裏に誘って来るからさー」
俺の狼狽っぷりがおかしいのか、アサシンはけらけらと笑った。
ひとしきり笑い転げて、ひたりとこちらを見据える。
「ま、お礼はしないと、ね」
神よ、「プリさん美味しそうだし」、なんて物騒な呟きが聞こえたのは気のせい
でしょうか。
アサシンはじわりと四つん這いでこちらににじり寄って来た。
やや吊り気味の瞳とあいまって、猫のようだ・・・いや、そんな可愛いもんでもないな。
むしろ、獲物を狙う黒豹か。
いや、まて、自分。
そんな感想抱いてる場合じゃないだろ。
深呼吸ひとつ。
「落ち着こう。俺は男だ」
「見りゃわかるよ。プリの衣装はセクシーだね」
ぺろり、とアサシンは舌なめずりする。
とてもとても楽しそうな顔・・・からかわれてるんだよな、うん。
そうに違いない。
どん、と背中が壁に突き当たった。
無意識のうちに後ずさっていたらしい。
- 71 名前:殴りプリとアサシン(3/3) 投稿日:2006/07/04(火) 15:15:52 ID:.bHY9Esw
- 「俺上手だから、大丈夫だよ。キモチヨクさせてあげるよ?」
俺の両膝に手をかけて、妖艶に笑うその顔は、しかしまだ幼さを残していて。
いくつだろう?まだ少年といっていいくらいの年頃で。
それなのに、「体でお礼」がさらりと出て来るのが無性に悲しいと思った。
ひょいと抱き上げて膝の上に乗せてみる。
軽い。
「えとな、お礼をって気持ちはありがたいんだけど、体は大事にしないと駄目だぞ」
軽く抱き締めて髪をなでると、アサシンは暗い声で呟いた。
「キレイゴトだね。さすがプリースト様だ」
アサシンはするりと俺の腕から抜け出して立ち上がった。
「萎えちゃった。もういいや」
拗ねた表情は、やっぱり子供で。
放って置けないと思うのは・・・父性本能ってやつだろうか。
「お礼はしてくれないのか?」
「お礼しようとしたら嫌がってたじゃないか。金は無いし」
「おいおい、礼=体なのか」
「・・・そう、教えられてきたよ」
こいつの師匠に会うことがあったら絶対殴る。
泣くまで殴る。
つーか、殺す。
密かに決意しつつ、俺は努めて明るく言った。
「俺の弟がアルケミストでな。材料集めを手伝ってくれないか?」
「そんなことでいいの?」
「あぁ。助かるしな。で、返事は?」
「・・・わかった、手伝うよ」
「ありがとな」
わしわし、と頭をぐしゃくしゃにすると「子供扱いするな」と唇を尖らせる。
うん、さっきみたいな表情よりこっちの方がずっといい。
「俺はジンガだ。お前の名は?」
「シアンって呼ばれてる」
「OK、シアン。まずは飯食いに行こう」
さて、どの店に連れて行こうか。
懐具合と相談しつつ候補を検討していると、風に乗って後ろから聞こえてきた呟き。
「いい人だね、ジンガ。…お礼とか抜きにしても、欲しくなってくるなぁ」
うん、空耳空耳。
・・・そういうことにしておこう。
俺はそこはかとなく腰のあたりにうそ寒さを感じながら、歩きだした。
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