◆【18歳未満進入禁止】みんなで創る小説Ragnarok ♂萌エロ 第2巻◆
[109:駆魔の一族(の中というか背後にいる的な)(2019/05/15(水) 22:59:10 ID:.z4DsLRY)]
またノリと勢いで…
濡れ場は無いけどこちらの方が適切かとおもいこちらに。
日の差さぬ散歩道
フェイヨン地下迷宮深部。
巨大な地下墓地空間の中に再現された、死者のための村落。
「ふむ…」
誰が付けたかもしれぬ篝火が照らし出す一軒家。
それを眺める一体のヒェグン。
家の戸も窓も板切れで閉ざされ、隙間から覗くほのかな明かりがそれらの輪郭をぼんやりと映し出している。
「まだですか?」
煙立ち上る香炉を掌中で弄びながら問いかける。
「うるさい!こんなモン着た事ないんだからしょうがないだろ!」
ヒェグンが静で穏やかな、しかしよく通るこえでの呼びかけに、中から少年のものだろう大声が返ってくきた。
「手伝いますよ。それの扱いは心得があります」
ヒェグンが申し出るが、返事は無い。
「やれやれ…これは、お仕置きですかね」
しばし反応をまってから肩をすくめるヒェグン。
しばらくして、けたたましい音を立てて引き戸が開かれる。
姿を現したのは緩いウェーブのかかったブロンドのショートヘアにガラス玉のような碧眼、女性用の青いハンター装束に身を包んだ…少年であった。
「お待ちしてましたよ、ハル君。アーチャー装束同様、素敵です」
ハルと呼んだ少年の方を向き、感嘆の声と共に小さく拍手をするヒェグン。
篝火に照らされる姿は少女そのものだ。
「頼んでみるモノですね」
目を細め微笑むヒェグンとは対照的に、ハルは仏頂面を仏頂面だ。
「言われたとおりに着たぞ…この…変態野郎」
顔を茹でパドンのように真っ赤にしながら、ハスキーな声を絞り出すハル。
「言葉遣いがまだまだですね。せっかくのデートを台無しにする気ですか?」
「ふざ…けるな」
「私は微塵もふざけてはいません」
「嘘つけ!だいたい…げほっ!」
さらに続けようとしたハルが盛大にむせる。
同時に視界が歪み、激しい動悸とめまいがこみ上げてくる。
「な、何だよその香炉は…っ!」
彼の右手にある、白い煙を立ち上らせる香炉を指さしながら言う。
「ああ、失礼。生者には刺激が強すぎたようですね」
謝罪し、香炉に蓋をするヒェグン。
「ご心配なく、媚薬や麻薬の類いではありません」
「じゃあなんだよ」
というハルの問いに、ヒェグンは『死者には死者の嗜好品があるのですよ』と答えるにとどまった。
「さ、狭いダンジョンの中ですが、のんびり歩きましょう」
いきり立つハルに、ヒェグンは涼しげな顔で左手を差し出した。
「………」
ハルは表情そのままに、その手に己の右手を重ね合わせる。
「素直でよろしい。出来れば言葉遣いもこれくらいであってほしいのですが…」
彼の手を握りしめ、ヒェグンは歩き出した。
ハルには姉がいた。
優秀な弓手にして、罠師だった。
だが、フェイヨン地下迷宮で消息を絶ち、死亡扱いとなった。
「君のお姉さんはとてもいい人だった」
ハルの手を取り歩きながらヒェグンは言う。
彼女は彼らの手に落ち、慰み者になった。
もっとも、ハルが知るのは『死者達の手に落ちた』という事実だけだが、彼自身が置かれた立場を鑑みればどのような仕打ちを受けたかは想像に難くなかった。
「いろいろな事情で手放さざる得なくなりましてね…まあ、事情と言っても縄張り争いのいざこざなんですが…」
要は魔物同士のいざこざの手打ちとして他のダンジョンに移されたのだ。
その後、姉にそっくりな弟が身の程をわきまえず探索にやって来た。
「だから、貴方が来た時は神の存在を信じてみようかって思いましたよ。妙な話ですが」
人間が生み出した、魔物達からすれば悪夢でしか無い『キューペット技術。
だが魔物もまた知性ある生き物。
恐れ憎むだけでは無く解析し、独自に進化させた『約束』と呼ばれる概念によって彼をモノにすることに成功した。
そして今に至る。
「…俺は神って奴を呪いたくなった」
ハルは言う。
姉の行方を追いかけるのに、まっとうなダンジョン探索をしていたのでは時間もアテも無い。
そんなハルの事情を察したヒェグンは、彼に提案を持ちかけた。
彼女が見つかるまで『私のために姉の代わりを務める』のなら、探す手伝いをしてやる、と。
勿論、生存は保証できないしむしろろくな死に方をしていない可能性の方が高い、とも付け加えた。
それでも彼は約束を受け入れた。
彼は『約束』という物を甘く見ていた。
それを交わした今となっては、彼は命令1つでこの通り女装までするようになった。
しかも、着ているのは姉の着ていたハンター装束。
形見ともいえるものだ。
どれだけ怒りや不満を抱き、拒絶しても最後には根負けして命令に従ってしまう。
「まあまあ。とりあえず怒りを静めて下さい。深呼吸深呼吸」
目を細めた笑顔のまま、深呼吸を促すヒェグン。
「………」
暗示なのか呪いなのか、それとも自分の思い込みか…
ハルは右手の冷たい感触に嫌悪感を覚えつつ、呼吸を整え始めた。
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