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【憎悪と狂気】バトルROワイアル 十冊目【恐怖と絶望】

140 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 03:04:15 ID:E4swxibU
「なっ!!?」

驚きはどちらのものであったか。GM森と♀WIZが気が付いたときには、
♂シーフはGM森の1m手前に近づいていた。GM森があわてて剣を抜こうとしたとき、
異変に気が付いた。左の腰に差した剣が無くなっている。しかも鞘ごと無い。
♂シーフが♀WIZの方向に何かを投げた。それが自分の剣だと気が付いたがもう手遅れだった。
悪態をつく暇も無い。♂シーフのグラディウスがGM森の喉元に向かって突きこまれる。
体を左にひねってかわす。突きこんだグラディウスをそのまま避けた方向に切り払う。
GM森はこれを仰け反って凌ぐ。今度は切り払いの勢いを利用した左のハイキックがGM森の顔面に迫った。
GM森は相手の意図を読み取り背面とびで距離をとりつつ体勢を整える。本来なら♂シーフの蹴りなぞ、
避ける必要が無い。GM森は自他共に認めるマッチョだし、♂シーフは女装したら似合う位線が細い。
逆に蹴りを喰らって相手の体勢を崩すくらいのことをやってもおかしくないのだが、
つま先で目を狙われたら話は別だ。いくらGM森とはいえ、避けるしかない。

(くっ、こいつ本当にシーフか?対人に特化したローグやアサシンとしか思えねぇ。)

今更自分の浅慮さを呪っても遅い。愛剣はいまや♀WIZの手元にあるし、予備の武装は、
あまり使わないブレイドだ。最大まで鍛えてあるが、特にカードは挿しておらず、
まさしく飾りとなっていた。が、今はそんなことは言っていられない。素早く抜き放つと、
♂シーフを迎え撃つ。攻撃をかわされた♂シーフは躊躇うことなくGM森に突き進む。
これをGM森は袈裟懸けに切り払う。♂シーフはしゃがんでかわす。切り払ったブレイドを
腕力で強引に左から右へと薙ぎ払う。しゃがんだ♂シーフの胸辺りの位置を狙っている。
それをバックステップで避ける。GM森は飛んで避けた場合の切り上げを考えていたが、
開きすぎた間合いのため中止する。今度はGM森が間合いを詰める。ブレイドを上段に構え、
一気に振り下ろす。♂シーフはそれをGM森の左側に回り込んで避けようとする。その際、
GM森の脇腹をグラディウスで切り裂こうとする。それを無視してGM森はブレイドを地面に叩き付けた。

脇腹を切り裂いた♂シーフは突如発生した爆炎に吹き飛ばされた。グラディウスを放り出し、
地面に転がり動かなくなる。GM森は大振りを誘いダネとし、攻撃を喰らう覚悟で短期決戦に踏み切った。下手に長引かせれば間違いなく♀WIZの攻撃がやってくる。
予想以上に痛む脇腹を押さえ、GM森は♀WIZの方を見る。♀WIZはすでに何かの魔法を詠唱していた。
GM森は舌打ちし、♀WIZに駆け寄る。が、♂シーフにやられたダメージがその足を鈍らせる。

141 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 03:04:54 ID:E4swxibU
焦りがその一撃を鈍らせた。なんとか間合いに入り、ブレイドを一閃させる。しかし♀WIZは、
紙一重で攻撃を見切ると、そのまま攻撃に転じた。青白い雷球がGM森の体を包むと、
朽ちた家具まで一瞬で吹き飛ばす。信じられなかった。BR参加者は例外なく能力を制限させられるのに、
なぜ、この女の魔法はそのままの威力なのか。吹き飛んだ際にブレイドは手放した。
ウィザードスタッフによりさらに威力が上がったユピテルサンダーで体が痺れて思うように動けない。

「こ、こんなところで死ねるかよ・・。」

GM森は体を起こし、家具を遮蔽物にして通路から逃げようとした。自身でヒールは使えるが、
♀WIZの火力と比べると、自分の回復力は余りにも低い。幸い吹き飛ばされたおかげで、
♀WIZとの間合いはかなり開いた。この通路にくるまで、いくつもの廃棄された家具を確認しているため、
遮蔽物は事欠かない。うまくすれば、遮蔽物にまぎれて追ってきた♀WIZを仕留められるかもしれない。

だが、そんな甘い事を♀WIZが許すわけがなかった。
立ち上がり逃げようとしていたGM森の目の前に絶望という名の氷壁が立ち塞がった。
その壁は即座に背後にも出来上がる。簡易擬似ファイヤピラーである。これの対処法は唯一つ、
マグナムブレイクで氷壁の隙間を広げ、ファイヤーウォールをやり過ごすしかない。
GM森はすぐにマグナムブレイクでアイスウォール間の隙間を広げた。
そして、素手によるボーリングバッシュでアイスウォールの一部を吹き飛ばして退路を確保するつもりだった。
だが、♀WIZは動じることなく出来た隙間を埋めるようにアイスウォールを重ねてきた。
驚愕するGM森。マグナムブレイクは気を溜めて炎と衝撃に換える技、そのため連発ができない。
それを見越してのアイスウォール。♂WIZに一度破られた教訓を活かさないはずが無い。
そして、足元から吹き出る炎。

「ウオオオオオオオオォォォォォォォ・・・・・。」

氷の壁の中から絶叫が聞こえる。が、それも長くは続かなかった。
♀WIZは氷壁の中で、GM森が崩れ落ちるのを確認してから♂シーフに駆け寄った。

142 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 03:05:19 ID:E4swxibU
「♂シーフ君、しっかりして!!」

♀WIZは♂シーフの体を抱き上げながら言う。♂シーフの傷の状態が良く分る。
左腕と左足は炭化しかけてる。吹き飛ばされた衝撃で右腕は間接が一つ増えたようになっている。
頭部からは今も血が流れている。♀WIZの呼びかけに目を開けたことが奇跡に近かった。

「♀WIZさんは・・、無事ですか・・・?」

「私は大丈夫、♂シーフ君が頑張ってくれたから傷一つ無いわ。」

「・・・そうですか・・・、よかった・・・・。」

消え入る声、♀WIZは♂シーフの体を強く抱きしめる。

「あぁ・・・、あの嫌な声も聞こえない・・・。これならゆっくり休める・・・。」

「♂シーフ君、しっかりして!♂シーフ君っ!!」

♀WIZの目に涙が浮かぶ。♂シーフの体から熱がどんどん失われていく。

「じゃあ・・・、♀WIZさん・・・・、お休み・・・なさい・・・。」

「・・・・・。えぇ、ゆっくりお休みなさい。ぐっすり眠れるようにおまじないしてあげるから・・・。」

♀WIZはそう言って♂シーフの頬に口付けした。GM森に挑みかかった時の顔はしておらず、
歳相応の穏やかな寝顔だった。そっと♂シーフを横たえると、涙をぬぐい立ち上がった。
GM森は倒したが、この通路の奥にはもっと多くのGMがいるだろう。
そして、そのGMがGM森と同じように愚かとは思えない。

♀WIZはGM森の残骸を見下ろしながら、今後の行動を練っていた。


<♂シーフ>
現在地:謎の地下室
所持品:多目の食料 +7トリプルハリケーングラディウス 囚人の腕輪?
容 姿:栗毛
備 考:ハイディング所持 盗作ローグ志望でちょっと頭が良い ♀WIZと同行
    呪詛に苛まれるが開放される GM森との戦闘により死亡

<♀WIZ>
現在地:謎の地下室
所持品:クローキングマフラー ロザリオ(カードは刺さっていない)
    案内要員の鞄(DCカタール入り) ウィザードスタッフ GM森の愛剣
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HPは半分くらい?
    希望が見えてきて気持ちが前向きになるも♂シーフと死別して不安定に

<GM森>
現在地:謎の地下室
所持品:不明
外 見:逆毛 筋肉質だった
状 態:ファイヤーウォールにて死亡

143 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 12:50:41 ID:jZ9pqtVs
さよなら森

144 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 19:14:00 ID:xZAlwsXo
もうスティール使えるやつ生き残ってない気がした

145 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 00:08:42 ID:99xc34eQ
スティール使えるやつ消しちゃったらハッピーエンドフラグが吹き飛ぶんだが(汗)

・・あたらしいフラグをたてる必要がでてきちゃったな

146 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 00:27:26 ID:6yYKeRTo
もうジョーカーによる皆殺し展開でいいんじゃね

147 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 05:04:19 ID:lEd1ogQM
森のGM武器は♀WIZが持ってるからそれで大丈夫だと・・・・・思いたいけど(´・ω・`)

148 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 06:00:34 ID:rqbNBAhI
少なくともスティールに関してはまだ2つ可能性が残ってると思うけど?
ついでに言えば必ずしもスティールは必須じゃないと思うし。

149 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 07:36:06 ID:lV17F/x6
この場合はこの場合で、新展開じゃないですかっ。
って、もう佳境ですが。
如何にして巧く話を進めるか、期待期待です。

150 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/14(金) 02:18:15 ID:g2NX44Vk
274.ロシアンルーレット[3日目午前]


「……」
「……」
2人が去ったあと、残った淫徒プリらの間に沈黙が落ちる。
あの叫び声は一体誰のものか。
見に行った2人は大丈夫か。
思惑が交錯する。
♀ケミは思う。悲鳴の主が♀ハンターならいい。
そのまま死んでいてくれればもっといい。
♀マジは考える。たぶんこれで♀ケミの話の真偽がはっきりする。
悲鳴の主が生きていてくれれば。
そして♀アコは思いついたことをすぐ口に出した。
「あたし達はどーしよ?」
「どうするかって、あとは侍ってるしかないでしょ」
当然のように言って悪ケミが肩をすくめる。だが♀アコは首をかしげた。
「そうかな?絶対間に合わないって決まったわけじゃないし、2人を追っかけてもいーんじゃない?」
「あ、うーん」
「キミ、時々すごく鋭いこと言うよね」
それぞれに声を上げて淫徒プリと♀マジは考えこむ。
ときどきってなによ、と♀アコが抗議するがそれは華麗にスルー。
やがて♀マジが賛成した。
「…誰か怪我してればすぐ戻ってこれないかも知れないし、追いかけた方が早く合流できるね」
だが淫徒プリは同意しかねるといった表情で首をかしげる。
「ですが皆でついていっては偵察の意味がなくなります。敵が本当に危険だった場合、強くて速度も掛かっている2人だけのほうが逃げやすいでしょう」
「でもさ、ヤバい相手とはいつか戦わなくちゃいけないでしょ?今やっても同じじゃない?」
「同じではありません。多少なりとも精神力を回復して挑みたいところです」
職業的な考え方の差だろうか。
積極策を主張する♀マジや♀アコと慎重策を主張する淫徒プリの意見が対立する。
その様子を見て♀ケミはちょっとだけ悩んだ。
彼女達に死んでもらうなら喧嘩になるよう煽るところだが、人手がこれだけあれば悪ケミの言った脱出の可能性も現実味を帯びてくる。
その可能性を今ここで消してしまうのは損ではないか。
「あの…先に♂プリーストさんの遺品を確かめてみませんか?何か役に立つものがあるかもしれませんし」
そう言って少し離れた場所に作られた土饅頭をちらりと見る。
「…ああ、そうだね」
♀マジは一瞬何か言いたそうな顔をしたが、すぐにうなずいた。
代わって淫徒プリが答える。
「でも装備は一緒に埋めてしまいましたよ」
「いえ、装備のことではなくて」
♀ケミはかぶりをふる。
せっかくの支給品を埋めるなんてもったいないとは思うが、「使える」装備を埋めてしまうほど馬鹿ではあるまい。それほどたいした物ではなかったのだろう。
それに装備を誰が持つかと言う話になれば、戦力外の彼女に回ってくる可能性は低い。
「精神力や体力を回復できるものとか、足の速くなるものを持っていないかと」
「なるほど」
淫徒プリは♂プリのものだったらしい鞄を引き寄せた。そして他の面々に鞄の中を見せる。
覗き込んだ一同はそれぞれに声を上げた。
「うわ、なにそれ」
「…干し肉?そんなにいっぱい?」
「喉が乾きそうね」
「わふ」
最後のは肉を見せられて尻尾をバタつかせた子デザである。
「食料はちょうど無くなった所ですし、これはありがたくもらいましょうか」
そう言って淫徒プリは干し肉の束を10個に分け始めた。
もっともさすがにそれだけの人数で分けると二食そこそこにしかならない。
受け取った♀アコは小首をかしげ、
「じゃああたし達のも分ける?」
鞄からペットフードを取り出した。
一瞬期待する顔を見せた悪ケミがペットフードを見て顔をしかめる。
「肉があるのにどーしてばけもののえさなんか食べなきゃいけないのよ」
「それペットフードだよ」
「わ、わかってるわよそんなことっ。直約しただけじゃない」
「直訳…かなあ?」
干し肉の束から一本選んで口にくわえ、残りを空っぽの鞄へ収めながら♀マジは首をかしげる。
同じく鞄を開けた♀ケミは、そこである物に気付いた。
(そう言えばこんなものもあったわね)
♂ローグから奪った菓子包みの状態を確かめる。
二つのうち一方はいつの間にかつぶれて泥に汚れているが、もう一方は大丈夫そうだ。
干し肉やペットフードもあったところを見ると、これも誰かに支給された食料なのだろうか。
首をかしげていると、早くも肉を一枚食べ終わった♀アコが目ざとく見つけた。
「なーにそれ?」
「たぶんお菓子だと思います」
「へー」
♀アコは身を乗り出した。
そして物欲しそうに言う。
「干し肉ばっかりだとちょっと飽きちゃうなー」
「そうですね。でも1つしかありませんし…」
♀ケミはちょっとだけ考えるポーズを見せた。
そして失望を顔に浮かべた相手に秘密めかして小声で続ける。
「今のうちに女の子だけで分けちゃいましょうか」
「やった」
柔らかめのビスケットのようなそれを♀ケミはおおまかに六等分する。
そして5人に勧めた。
空腹のときの甘いものや小さな秘密の共有は、仲を深める簡単な手段の一つである。
どうも視線の厳しい少女達を懐柔し、障害を減らしてから男性陣を篭絡しよう。とっさにそういう計算をしていた。
「なにこれ?」
「デザートです」
不審そうな♀マジへいたずらっぽく笑って見せ、さっそく手に取った♀アコと共に一片を口に入れようとする。
「待ってください」
淫徒プリがそれを止めた。そして♀ケミにたずねる。
「これの効果は?食べてみましたか?」
「効果、ですか?」
淫徒プリの質問に♀ケミは首をかしげた。
食べてみたことなどないのに分かるはずがない。
ちょっと困った様子の彼女を観察しながら淫徒プリは説明した。
「お菓子の中には茶菓子のように集中力を高められるものや、チョコレート類のように精神力を回復できるものがありますよね」
「あ、そんなんだったらいいね」
つかまれていた手を振り払って♀アコは手元の一片を眺める。
淫徒プリは思慮深げにうなずきながら続けた。
「もしそういった効果があるなら食べずにとっておくべきではないでしょうか」
もちろん真意はやや異なる。♀ケミの差し出した食料を怪しみ、とりあえず食べずに済むよう理由をこじつけたのだ。
一方の♀ケミはどう答えるか少しだけ迷った。
だが嘘をついても食べればすぐに分かってしまうことだ。ここはある程度事実に沿って答えるしかない。
「私も食べてみたことはないんです。特別な物かも知れないなんて考えませんでした」
「ふーん。ってことは箱から?」
「はい」
♂ローグを殺して奪ったとは答えにくいのでそこだけ嘘をつく。
「効果について何か説明のようなものは?」
「ありませんでした」
「それじゃ食べてみないと分からないよ?」
「そうですね」
♀アコの言葉ににっこりと笑い、淫徒プリは♀ケミに対する攻撃のカードを切った。
「ですからまず、ひとかけらだけ食べてみて効果を確かめておくべきでしょう」
「誰が食べるの?」
よだれを垂らさんばかりの顔で♀アコがたずねる。
淫徒プリはしれっと答えた。
「ここは当然持ち主の♀ケミさんにお願いしましょう」
もし彼女が毒を仕込んでいればこれで困るはずだ。
淫徒プリは♀ケミの反応を慎重にうかがった。
だが、そこには毛ほどの動揺も見られない。
「ではお言葉に甘えて」
「あ、待ってください」
まだ疑いを解いていない淫徒プリはさらにもう一押し。
「私の分の方が小さい気がするのでこちらを。なるべく多く残したいですし」
「はあ」
♀ケミの分だけ毒が入ってない可能性もある。そう考えて交換を要求したのだが、彼女は多少困惑した様子を見せただけだった。
それもそのはず、♀ケミは毒が入っている可能性に思い至っていなかった。
これまで他人を陥れることはあっても自分が仕掛けられる側に回ることなどなかったせいだろう。
「それではお先に」
どうも警戒されてるらしいと感じながらも、今度ばかりは何もしていない♀ケミは返してもらった欠片をあっさり口にした。

151 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/14(金) 02:18:38 ID:g2NX44Vk
「…どう?」
まるで恐れる様子もなく菓子を食べた彼女に♀マジが恐る恐る声を掛ける。
「格別おいしいと言うほどではないですね。堅パンみたいで」
「味より効果が聞きたいのですけど」
淫徒プリも考えすぎだったのかと少しだけ安心し、意識を次の問題に切り替えた。
問われた♀ケミは微妙な表情をする。
「特に感覚が鋭くなったとか元気が出たと言う感じは…」
「精神力は?」
「特に使っていませんからわかりません」
「ああ、そうだよね」
♀マジは手元の菓子片を見下ろす。
「ボク達が食べてみるしかないか」
それでもまだ完全に信用し切れない彼女の横で、♀アコが口をもぐもぐさせながら嬉しそうに言った。
「結構おいしいよ?」
「ってキミどうして食べてるんだよっ」
「あたしも魔法使い切ったし。回復するならいーじゃない」
当然のように言われて♀マジは頭を抱える。だがこうなったら仕方ない。
「で、どう?ちょっとは回復した?」
ため息混じりに聞かれて♀アコは首を振る。
「よくわかんない」
「ああもう、まったく」
♀マジは腹立ち紛れに自分の分を口に入れた。
そしてゆっくり吟味しながら味わう。
確かに菓子と呼ぶには素っ気のないしろものだが、かすかに塩気と甘みがあって、おいしいと言った♀アコの気持ちも分かる。
しかしそれだけだ。
「うーん?わかんないね」
「回復剤でもないということでしょうか。何の意味があるのでしょう?」
♀ケミから改めて一片を受け取った淫徒プリが首をかしげる。
すると悪ケミが分析結果を告げた。いつの間にか細かく分解しながら食べていたらしい。
「小麦粉のほかにもいくつか、穀物とかハーブ使ってるわね。なんかどっかのけんこー食品みたい」
それを聞いて♀マジがうなずく。
「そっか、あくまでも食料なのかもね。これ1つ食べれば丸一日飲まず食わずで平気だとか」
「ありそうな話です」
淫徒プリもこれだけ他の面々が食べては自分だけ無視もできず、手元の欠片を口に運ぶ。
ずっと黙って話を聞いていた♀商人も皆の顔を見回してから菓子片を食べ――
「う、ううっ!?」
次の瞬間、腹を押さえてカートごとひっくり返った。


<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:不明

<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 ♂スパノビ・悪ケミらと同行 首輪や地図の秘密を知り悪だくみ中 淫徒プリと再会
状 態:脇腹に貫通創(治療済)

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている ♀ケミ・悪ケミらと同行 仲間を見つけた?
状 態:HPレッドゾーン・ヒールでやや回復 気絶中

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 支給品一式 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
思 考:脱出する。
備 考:サバイバル、危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用?
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用?
状 態:デビルチとの戦闘で多少の傷

<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
   首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに疑念 レズ疑惑
状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し

<♀商人>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    淫徒プリ・悪ケミらと同行 ♂プリとの再会だが・・・

<淫徒プリ>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料六食
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
    ♀商人・悪ケミらと同行 ♀ケミを警戒

152 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/17(月) 11:06:43 ID:cBld2QaE
275.魔なるものの邂逅[三日目午前]


「あーもーっばかばかばかばかばかうまのけつーっ!絶対絶対ぜえぇーったい許さないんだからっ!」
誰の声も届かない空の上でパピヨンは器用に地団太を踏んでいた。
圧倒的多数を相手にしてとはいえ、勝負を挑んで撃退されたことがよほど気に入らなかったらしい。
「今度会ったらぎったんぎったんのぐっちょんっぐっちょんのけちょんけちょんにして、もんのすごぉーっく恥ずかしいイタズラ書きしてやるーっ!お・ぼ・え・て・ろーっ!」
両手を突き上げ、ひとしきり吠えるだけ吠えた彼女はやがて急にがっくりうなだれた。
引き締まった腹を押さえて情けない声を出す。
「それにしても・・・おなか減ったなあ」
心なしか触角も力を失って垂れ下がっているようだった。
「どっかにご飯落ちてないかなー。今ならむさい男でも死体でも我慢するのになー。若くて元気な子の生き血がいーなー」
ふらふら飛びながら一貫性のないことをつぶやく。
その目がふと細められた。
「あれ?なんだろ、食べれるかな?」
ちょっと遠くの地面に動くものを見つけたパピヨンは小首をかしげる。
ただし迷っている時間は短かった。
「まいっかー。試してみれば分かるよね」


地上をトテトテ歩くそいつはときどき立ち止まり、周囲を見回していた。
だが頭上はまったく警戒してなかったらしい。
物音ひとつ立てずに滑空で忍び寄るパピヨンにはまるで気付かず、
「フぎょっ!?」
いきなり脳天めがけて落下すると奇妙な悲鳴を上げて動かなくなった。
「よ〜っし、かんぺき」
みごとなまでの座布団状態にした相手を確かめてパピヨンは自画自賛する。
息はあるしどうやら大した外傷もない。ダメージよりはショックのあまり気絶しただけのようだ。
これなら新鮮な生き血を心ゆくまで楽しめる。
「いっただっきま〜す」
彼女は実にうれしそうに手を合わせ、口をつけた。
かぷ
そのまま一秒、二秒・・・
「ぅホわじャー!?ナニするカ貴様ーっ!」
「うえーっ、ぺっぺっぺ!まっずーいっ!」
双方同時に悲鳴を上げて跳び離れた。
「ヒトの血を勝手ニ吸うテおいて何ヲ言うかっ」
目を覚ました黒くて小柄な生き物は地面を叩いて抗議する。
もっともな言い分だが、パピヨンはまるで取り合わずに憮然とした声を出した。
「人間の血じゃなかったー」
「当タり前だ。我はデびルチ、悪魔なのダからな」
デビルチと名乗ったその生き物は自慢げに胸を張る。
ところがパピヨンはきょとんとするばかりで驚くそぶりも見せない。
「悪魔ってなーに?」
「知らヌのか。悪魔トは魔界に住む最強ノ種族のコとダ」
デビルチはさらにそっくり返る。
だがパピヨンの答えはにべもなかった。
「うそだー」
「ナにガ嘘か」
真っ向から否定されてデビルチは不満そうにする。
パピヨンは当たり前のように答えた。
「黒塗り毒まんじゅーなんかより虫のほーが強いもん」
「誰がドク饅頭ダっ!無駄のナい完成さレたボディと言ワぬか!」
ひどい言われようにデビルチの頭の噛み傷から黒い血が噴き出す。
「えー。丸ければいいんだったらダンゴ虫が一番えらいことになるじゃなーい」
クスクス笑われてデビルチはついに身構えた。
「よカろう。ナらバ悪魔の強サを思い知るがイい」
「へー。やってみればー?」
パピヨンは鼻で笑ってふわりと浮かび上がる。

相手が手の届かないところへ逃げたのを見てデビルチは即座に詠唱を始めた。
雷球が徐々に形成されてゆく。だがそのペースは人間の魔術師に比べても早いとはいえない。
のんびり眺めていたパピヨンはその完成直前に赤い魔力球を生み出す。
「おっそ〜い」
殺到したSSは身動きの取れないデビルチに一発残らず命中し、
――消滅した。
「あれ?」
呆然とするパピヨン。
その隙にデビルチの雷が完成する。
「食らエ」
「ふーんだ。効かないもーん」
バヂバヂバヂッ
パピヨンは片手を突き出してJTを受け止めた。
その反動でさらに上空へ跳ね上げられ、そのままの位置で滞空する。
「・・・ぬウ。思っタよりやルではナいか」
「・・・ふっふ〜ん。おどろいた〜?」
お互いに余裕ぶって相手の様子をうかがうが、その声には隠し切れない動揺がにじんだ。

デビルチはど肝を抜かれていた。
普通、JTを素手で受け止めたりはしない。
たとえダメージは小さくても腕が痺れてしばらく使えなくなる恐れがあるからだ。
それを恐れないということは、当たったように見えたJTも実は効いていないのか。
まして相手は空中。
あっちの魔法も効かなかったとは言え、石でも投げられれば手も足も出ない。
パピヨンも少なからず困惑していた。
彼女は生まれ持った能力を本能的に駆使することで歴戦の冒険者とも対等以上に渡り合ってきた。
しかしその一方、知識と経験は決定的に不足していた。
そのためデビルチの体とJTが闇の属性を持つとは知らず、JTなら自分には効かないと本能的に考えてしまった。
それが小なりとはいえダメージを受け、しかも自分のSSは効いた様子がない。
こんな相手とどう戦えばいいのか。

やがてデビルチが槍を下ろした。
「・・・やメよウ。これ以上やりアってモお互い意味あるまイ」
「負けをみとめるのー?」
「引キ分けにせヌかと言ってオるノだ!」
「ふーん?まいっかー。やっつけても食べれないんじゃ疲れるだけ損だしー」
一瞬だけ考えたパピヨンは羽をたたんで降下する。
そしてそのままデビルチの目前にぺたんと座り込むなり駄々をこねた。
「おーなーかーすーいーたー。なんか食べ物もってなーいー?」
「さっキ集めた若芽ならバ少し残っテおるゾ」
デビルチが差し出した樹の新芽にパピヨンは首を振る。
「そんな力の入りそーにないものじゃなくてー。人の血とかー、家畜の血とかー」
「蝶のクせに蜜デはないのカ?」
遠い同族の好物を思い出してたずねるとパピヨンは目を輝かせた。
「持ってるの?今ならハチミツでもローヤルゼリーでも我慢するよ」
デビルチは首を振る。
「贅沢言うナ。持っとラん」
「なーんだ。期待しちゃったじゃないー」
「ふむ?」
つまらなそうに頬を膨らませるパピヨンを見上げ、デビルチは何やら首をひねった。
そしてちょいちょい、と手招きする。
「モノは相談ダが」
「なーにー?」
ぶーたれた顔のままやる気なさそーに答えるパピヨン。
それでもデビルチはくじけず提案した。
「我ト手を組マぬか」
一瞬の間があってパピヨンは座りなおし、デビルチの顔をまじまじと覗き込んだ。
「一緒にやろってこと?なんで?」
デビルチは考えておいた理由を口にする。
「我の知ル限り、この島にオる人間たチは集団で行動しテいる者ガ多い。一対一ならバともかク、多数を相手にスるのハ危険であロう」
その多数相手に散々な目にあったばかりのパピヨンは思わずうなずきかけ、すぐに強気をとりつくろった。
「んー。そんなこともないけどー」
デビルチは気付かないふりをして説得を続ける。
「少なクとモ我々の利害は対立セぬ。お主ハ好きなだケ血を飲メばよイ。我は魂ヲもらう」
するとなぜか急にパピヨンが顔をしかめた。
「なんかだまされてる気がするー」
「どこガだ?」
デビルチの目が泳ぐ。
1人では戦う自信がないのは主にデビルチの事情だ。相手の力を頼りにする度合いが違う。
だがパピヨンが疑いを挟んだのはそこではなかった。
「もしかして魂ってすっごくおいしいんじゃないのー」
「アほカっ」
デビルチは思わず全力でつっこんだ。
「食っタりはせヌ。我ら悪魔にトっテは人の魂を持つコとに価値があるノだ」
「どーゆーこと?」
どうやら本当に分からないらしい。
デビルチはちょっと考えて分かりやすそうな例えをひねりだした。
「人にトっての宝石のヨうなものかナ。よリ強く純粋な魂ホど価値がアる」
するとパピヨンはあっさり興味を失った。
「なーんだ。食べれないならいーやー。魂はあげるー」
「・・・そレは手を組ムといウ意味に取ってイいノか?」
確認するデビルチにパピヨンは無邪気な笑顔を向けた。
「うん。頑張っていーっぱいやっつけよー!」


<パピヨン>
現在地:E-7
備 考:ミストレスの魔力を一部受け継ぐ ノーマルより強い デビルチと同行
状 態:あちこちに軽症 撃退されてご立腹中?

<デビルチ>
位 置:E-7
所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用)
備 考:悪魔 パピヨンと同行

153 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/19(水) 22:24:58 ID:LhO1G/mg
暫く見ない間になんか投下がたくさん来てる
どの書き手もGJ

154 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 09:03:35 ID:9B2KGO5g
276. 嘘 [3日目午前]


♀商人は激しくえずき、背を丸めて全身を震わせた。
「どうしたんですか!?」
「どいてっ」
驚く♀ケミを半ば突き飛ばすようにして淫徒プリが少女の傍らに膝をつき、丸まった体を無理矢理引き起こす。
「吐いて!早く!」
そう言って少女の顔をのけぞらせると有無を言わせず喉に指を突っ込んだ。
さらにみぞおちへ膝を当てて強く押す。
「ぇうっ、うぶぇえええぇぇぇっ」
少女の口から食べたものと胃液があふれ出した。
さらに彼女の口に水筒を押し付けて強引に水を流し込み、もう一度吐かせる。
毒物に対する素早い処置。
♀ケミへの疑いを完全には捨てていなかったからこその反応だろう。
次いで自分も吐こうとする様子を一瞬見せるが途中でやめる。
食べた順序と時間経過からして、同じ毒が入っていたならとっくに効果が出ていなければおかしい。
代わりに淫徒プリは周囲に問いかけた。
「緑ポーションかそれに類するもの、ありませんか!?」
即座に悪ケミが答える。
「したぼくがもってたはず」
「そうですか」
淫徒プリは激しく咳き込む♀商人を背負おうとした。
「追います」
毒薬を飲まされたのだとすれば助かる可能性は低いが、見捨てるわけにも行かない。
それを悪ケミが呼び止める。
「これに乗っけて」
悪ケミはひっくり返った♀商人のカートを起こし、しっかり握った。
「おんぶするより早いと思う」
「お願いします」
ひとつ頷き、淫徒プリは少女の体をカートに押し上げた。


「いったいどうして…」
今回に限り本当に心当たりがない♀ケミは狼狽する。
だが彼女に向けられる視線は厳しかった。
「まだしらを切るっ!?毒入れれたのはキミしか居ないだろっ」
♀マジはその手を♀ケミへ向けまっすぐ伸ばす。
疑っていたのに防ぎきれなかったという後悔が頭に血をのぼらせている。
「ま、待ってください。毒なんて」
「だまれ」
♀マジはファイアーボルトの詠唱をはじめた。
その表情に本気を感じて♀ケミは身を翻す。
ヒュドドドドドドンッ
木の後ろへ隠れるのに一拍遅れて炎の弾丸が着弾した。
細めの木では止めきれず、2発ほど肩先をかすめる。手加減はまったく感じられない。
「やめてくださいっ」
呼びかけながら鞄をさぐり、彼女はクロスボウを取り出した。
濡れ衣で命を落とすなんて馬鹿らしすぎる。
一戦して逃げるか。あの2人ならうまくすれば殺せるかも。
クロスボウを構えて様子をうかがうと、♀アコが♀マジの背をつついていた。
「あの人何かやったの?」
いささかのん気な質問が聞こえる。事態の急変についてこれてないらしい。
♀ケミは思わず少し期待した。なんとか♀マジを止めてくれないだろうか。
撃つのはやめて声を掛けようとする。
「私はなにも――」
「♀商人のお菓子に毒仕込んだんだよっ。あれ見て、ボク達に矢を撃ったのもきっとアイツ!」
説得しようとした言葉は♀マジの早口にさえぎられた。
しかも後半は事実なので思わず詰まる。
その間に♀アコは説明を要約した。
「つまり悪者ってことね」
「そう。わかった?」
「わかった」
♀アコはうなずき、そして♀ケミへ向けてびしりと指を突きつけた。
「正々堂々と勝負しなさいこの卑怯者っ」


「ちょっ…まっ…」
ガタガタとゆれるカートの上で♀商人は細い声を絞り出した。
「動かないでよっバランス悪いんだから」
カートを引く悪ケミが文句を言い、後ろで支える淫徒プリも彼女を寝かそうとする。
「じっとして、少しでも毒の回りを抑えてください」
「ちが…」
ひどい揺れで吐き気が止まらない。
胃にほとんど何も入ってない状態で無理矢理吐かされたために喉も痛い。
それでも♀商人は淫徒プリの手を押し切って体を起こした。
「うわ、ちょっとっ」
その動きで一気にバランスが崩れ、カートがかしぐ。
なんとか支えようとする2人の努力もむなしく、カートはそのまま横転して♀商人の体が投げ出された。
「♀商人さんっ」
淫徒プリは慌てて彼女の元に駆け寄る。
「大丈夫ですか」
「ごめんなさい…」
あちこちに擦り傷を作り、少女は泣いていた。
「謝んなくていいから。早く乗りなさいよ」
「揺れるかもしれませんけど我慢してくださいね」
悪ケミと淫徒プリはもう一度彼女をカートへ乗せようとする。
その優しい声に♀商人の嗚咽が深くなった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんさい…」
首を左右に振って謝罪を続ける。
「それはもういいですから」
「ちがうの」
なだめる淫徒プリの言葉にさらに強く首を振る。
悪ケミはだだっこを叱るように腰へ両手を当てて言った。
「今はいいとか悪いとか――」
「毒じゃないの」
「……え?」
小さな声だったので聞き間違いかと2人は顔を見合わせる。
だが♀商人は続けてはっきりした声で言った。
「みんなをびっくりさせようと思っておなかが痛いふりしただけなの。毒なんて入ってなかったのっ」
淫徒プリと悪ケミの顔から一瞬表情が消えた。
それが理解と同時に驚愕の表情に変わる。
「あんた、どうして」
「あの人♂セージさんに色目使ってたし、みんな怪しんでたから…」
「ドッキリはすぐネタばらさないとシャレにならないのよっ」
悪ケミが思わず声を高くすると♀商人はぽろぽろ涙を流した。
「言おうと、思ったけど、苦しくて…」
「…そうでしたね」
有無を言わせず処置した淫徒プリは唇をかんだ。
胃の内容物がない状態での嘔吐は胃が痙攣するため非常に苦しい。
しかも飲ませた水か逆流した胃液が気管に入ったらしく、ついさっきまで激しく咳き込んでいた。
しゃべれという方が無理だ。
そこまで考えて淫徒プリは首を振った。
「彼女を責めても仕方ありません。それより急いで戻らないと」
「そうね。罪をにくんでイタズラにくまずって言うし。…あんた、自分で歩けるわよね」
悪ケミの確認に♀商人はこっくりとうなずく。
それを見て淫徒プリは即座に歩き出した。
「急ぎましょう」
来た道を戻る足取りはすぐに小走りになる。
残された♀商人はしばらくぐすぐすと鼻を鳴らしていたが、やがて残されたカートを握った。
そして来た方角と向かっていた方角を見比べ…、トボトボと歩き出した。

155 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 09:03:55 ID:9B2KGO5g
♀アコに非難された♀ケミは顔をしかめる。
(冗談じゃない)
卑怯者呼ばわりは別にかまわない。だが非力な彼女が真っ向勝負なんてありえないし、ましてや今度のことは完全な濡れ衣だ。
「2人がかりは卑怯じゃないんですか」
思わず言い返してしまった。
「どの口が言うっ」
案の定逆上した声と地を蹴る音が聞こえ、盾にした木がズドンと鳴る。
「きゃっ」
♀アコの掌打で揺さぶられた木に♀ケミは弾き飛ばされ、地面に転がった。
すかさず幹を回り込んできた少女へ倒れたままクロスボウを向けて牽制。
だが距離が近すぎて発射前に先端を蹴り払われた。矢は見当違いの方向へ飛ぶ。
「こないでっ」
♀ケミには実戦経験が圧倒的に足りない。
とっさにグラディウスを抜くことも思いつかず、次の矢を探しながらクロスボウを振り回した。もちろん♀アコはやすやすと避ける。
がつ、と肩口を蹴り飛ばされてまた地に這う。
そうやって♀アコが動きを封じている間に♀マジの詠唱が進んでいた。
小さな赤い魔法陣が彼女を捉える。
「やめて!助けて!」
パニックに襲われた♀ケミは演技ではない悲鳴を上げた。
その声は怒れる少女達には届かず、だが別の男に届く。
「ちょ、なに?うわっ」
「ながま……助ける」
突然背後から腰に組み付かれて♀マジは狼狽の声を上げた。
急いで振り払おうとするが、凄まじいまでの力で強引に引きずり倒される。
体格、腕力の差が大きすぎてまるで勝負にならない。
うつぶせに頭を押さえつけられ、背中に体重を掛けられた。息がまともにできない。
(――しまった、♂スパノビ!?)
必死にあがく彼女は相手の正体に気付いた。


「どうしたの!」
いきなり声を上げて詠唱を中断した♀マジに気を取られ、♀アコはつい振り返る。
その瞬間、♀ケミが必死の反撃に出た。
「痛っ」
何かを脚に突き刺されて♀アコは跳び退る。
そのときにはもう♀ケミは転げるように逃げ出していた。
「逃がさ…あれっ?」
すかさず追おうとした♀アコの視界がかすむ。
刺された傷はそれほど深くないのに。
不思議に思って見下ろすと腿に矢が刺さっていた。
矢尻へ結び付けられた変色した布に見覚えがある。
「って、これも毒!?もー絶対許さないんだからっ」
刺さった毒矢を急いで抜き、傷口を絞って♀ケミの背をにらんだ。
よほど慌てているのかあちらも足がもつれている。まだ追いつけない距離ではない。
だが♀マジもピンチらしい。
彼女はどっちを優先するか一瞬だけ考えた。


そして、騒ぎにもう1人の男が目を覚ました。
「う…」
もともとの強面にさらに傷が増え、凄みの増した男はうっすらと目を開く。
空が狭い。密度の濃い茂みの中に寝かされているらしい。
彼はゆっくり全身の調子を確かめ始めた。
(どう…やら生きてやがるか。案外死なねえもんだ)
自分が死んだことにされ、墓まで作られているとは夢にも思わない。
と言っても彼が死んだと思っているのは♀ケミだけである。
♀ケミの本心を確かめるためと、さらには身動きの取れない彼の安全のため、♂セージがそういう嘘を提案したのだ。
とはいえその結果、手厚い看護を受けたとは言いがたい状態になったのは間違いない。
傷口はふさいであるようだが、かなりあちこちが痛む。
しばらくは動くのもやっとだろう。
(それでも寝てるわけにゃいきそうにねえな)
にやりと笑い、♂プリーストは動き出した。


<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:HPSP共にレッドゾーン

<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 毒疑惑により♀マジ達から逃走
状 態:脇腹に貫通創(治療済) 寄生虫ロシアンルーレット状態

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている 仲間を襲う奴を止める
状 態:HPレッドゾーン脱出?

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
備 考:サバイバル・危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミをやっつける ♀マジも助けたい
状 態:多少の傷 SPほぼ枯渇 寄生虫ロシアンルーレット状態 毒状態

<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
   首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに敵意 ♂スパノビに押さえられている
状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し 寄生虫ロシアンルーレット状態

<♀商人>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    悪ケミ・淫徒プリと同行 嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中

<淫徒プリ>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料二食
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
    ♀商人・悪ケミと同行 ♀ケミを信じるべきか?
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態 SPほぼ枯渇


<残り15名>

156 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 16:50:21 ID:j6.cI532
この現状で♀商人の行動は突拍子なさ杉なんじゃ

157 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 20:17:11 ID:Iv6iWvyQ
そこの辻褄合わせもリレーなのでは?
何にせよ、ちょっと活気が出てきたみたいで嬉しい限り
書き手の皆様GJでござます

158 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/29(土) 00:54:34 ID:z7fJi5.U
277. 失われた剣(三日目午前)


(この通路、どこまで通じているのかしら)
慎重に奥へと進みつつ♀Wizは首をかしげる。
GMが現れたということは、やはり彼らの本拠地まで通じているのか。
確かに今朝の放送で本拠があると言っていたE-5までそれほど遠くはない。
だけど。
(そうするとこんな物があった理由がわからないんですよね)
右手の杖を一回転させる。
隠れ家の入り口に侵入者のための武器を置いておく馬鹿は居ない。
腐乱死体を放置したりもしない。
不衛生だし、誰だってそんな悪臭のする物を近くに置きたくはないだろう。
かといって参加者を近づけないための細工にしては死体が白い衣装を着ていたのがおか

しい。
GMの死体と見れば調べたくなるのが当然だ。実際彼女達がそうしたように。
つまり、ここは本拠ではない。
(じゃあ、誰がなんのために?)
元の島民が残したと考えるのはあまりにも馬鹿馬鹿しい。
冒険者には資材やモンスターを持ち込む手段がない。
やはりGMか、あるいはBR賭博のイカサマに加担する兵士の仕業か。
(そういえば)
そこで彼女はさっき倒した男を思い出した。
(GMもジョーカー1人ではないのですね)
ということはイカサマに関わってる者がGMの可能性もあるのか。
ありそうな話だ。装備を持ち込んだり邪魔な参加者を抹殺したりするのも兵士より容易

だろう。
そういったGMがこの地下道を作って何か画策し、利害の対立する誰かと争ったのではな

いか。
(さっき倒した男もたぶんそうなのでしょうね)
当たり前のようにそう考える。
その瞬間、何かが引っ掛かった。
何か大事なことを忘れている気がする。
なんだろう。
考えがすぐにまとまらない。冷静なつもりでもまだ動揺しているらしい。
(落ち着きなさい)
彼女は自分に言い聞かせた。
そしてどこに違和感を感じたのか思いだそうとする。
(…さっきのGMもイカサマに関ってると考えたところよね?)
別におかしくはない。合ってる保証もないが。
気のせいかしら。そう思いかけて♀Wizは首を振った。
いや。違う。
問題は内容じゃない。
理由だ。
なぜあの男がイカサマに関与していると感じたか。
(――――!)
思考のベクトルを変えたとたん、雪崩のように推測が進んだ。
彼女と♂シーフは自分達の陥った状況についてはっきり口にしていない。
にもかかわらずあのGMが現れた。
それもいやに素早く。
だからGMはこの場所に関係していると感じたのだ。
だが彼は明らかに♂シーフの異常や♀Wizの力が戻っていることを予想していなかった


つまりこの地下室とそこにある物について知らなかったことになる。
ならば、なぜ彼は来たのか。
♀Wizは地図を引っ張り出した。
相変わらず自分の位置表示は消えている。
これだ。
彼女達はGM側の地図からも消え、その異変を調べるためにあの男が来たのだろう。
当然ジョーカーや他のGMも知っているはず。
(いけない!)
♀Wizは♂シーフとの最後の会話を思い出しながら元来た方向へ走り出した。
派遣したGMが死んだと判断されるまでどれぐらい余裕があるだろう。
それまでにしなければならないことがある。
彼女は戦いのあった場所まで戻るとすぐにひざまずいて何かを始めた。

ほどなくして。
「そこまで。手を上げなさい」
♀Wizは背後からの声に動きを止めた。
両手をゆっくり肩まで上げ、そろそろと振り返る。
「…また新しいGMですか」
そこには白い衣装に身を包み、剣を握った銀縁眼鏡の男が立っていた。
しかも今回は左右背後に弓を構えた兵士を連れている。
兵士に守られて眼鏡の男は言った。
「そのまま。動けば撃ちます」
弓使いを含め複数。悔しいが勝ち目はないに等しい。
♀Wizはあふれ出しそうになる殺気を押さえ、つとめて静かに尋ねた。
「なぜGMがこれほど手出しするのですか?最初の説明と違うでしょう」
「反抗すれば処刑するとも言ったはずです」
眼鏡のGMは鼻で笑い、剣を突きつけた。
「GM森から奪った剣を置きなさい」
「…仕方ありません」
♀Wizは腰の後ろに差していた豪華な剣を鞘ごと抜き、しぶしぶ地面に置く。
GMはそれが間違いなく森の下げていたものであることを確認して一歩壁際に寄り、背後

へ向け顎をしゃくった。
「出口まで下がりなさい」
ジョーカーやさっきのGMに比べると無駄口がない。
質問を禁じたことと言い、これ以上情報を与えたくないということだろうか。
それなら。
「これで島に残るGMは2人だけになってしまいましたね」
すれ違いざま、♀Wizは皮肉っぽく言った。
「なに」
男が鋭く反応する。
「なぜ人数を知ってるんです」
ビンゴ。
彼女は挑発ぎみに笑ってみせた。
「あなたが他のGMではなく、戦力としては劣る兵士を連れてきたのでそう思っただけで

す」
要するにカマを掛けたのだ。
言外にそう告げられてGMはわずかに顔色を変えた。しかしすぐにそっけなく答える。
「関係ありません。ここでは兵士でも同じです」
その答えを聞いて今度は♀Wizが眉根を寄せた。
『ここでは兵士でも同じ』?
確かに弓を使えば兵士でも充分彼女を制圧できる。
だが『ここでは』という一言は、この場所では能力制限が解かれ、しかも彼がその事実

を知っているということを示してないか。
その可能性に思い至りながらも彼女は意味を取り違えてみせた。
「隠れる物もない直線通路だから、ですか」
口を滑らしたにしても不用意すぎる。カマを掛け返してきたのかも知れない。
下手に追求すれば能力制限とGMの力の秘密について知っていると白状することになる。
それは彼女ばかりではなく、♂セージ達へも危険を及ぼすだろう。
今はそんな危険を冒すわけに行かない。
彼女の『勘違い』を聞いて眼鏡の男は肩をすくめ、追い払うように剣を振った。
「外へ出なさい。ここは破壊します」
その宣告に♀Wizは今度こそ顔色を変える。
「♂シーフ君はきちんと埋めてあげたいのですけど」
だが男は彼女の顔を見て薄く笑っただけだった。
「却下。こちらで処理します」
「…ではせめて遺品を」
彼女はGMの顔をにらみつけ、うなるように言う。
GMは少し何かを考える様子を見せ、やがてゆっくりとうなずいた。
「まあいいでしょう。ですが動かないように。私が取ります」
男は剣を下ろし、兵士に♀Wizから目を離さないよう指示して♂シーフの遺体に歩み寄

った。
そして少年の遺体から短剣と鞄を奪う。
だが手首に巻きついた腕輪には触れようともしない。
♀Wizの眼が一瞬光った。やはり、この男は何か知っている。
だが鞄の中をあらためていたGMはその視線に気付いた様子もなく、短剣を鞄に入れ彼女

の足元へ投げよこした。
「それでいいですね」
「……どうも」
♀Wizは敵意と不満を表情に浮かべながらもおとなしく♂シーフの鞄を拾った。
残念ながらここまでらしい。
彼女は竪穴の壁に作りつけられた梯子を登って地上へ出る。
その後を追って地下から呪文の詠唱と崩壊音が連続して響きだした。
ヘブンズドライブで直接地下を破壊しているらしい。
(同じやり方で埋めてあげようかしら)
ちらりと物騒なことを考えて穴をのぞきこむ。
だが兵士たちの弓がしっかり彼女を狙っていた。
ということは魔法を使っているのはあのGMなのだろう。
今はまだ無理に戦うときではない。
その前に誰かに伝えておかなければいけないことがある。
♀Wizは小屋を出た。
♂シーフが森から奪った剣を持ち出すことはできなかったが、GMに関していくつかのこ

とは分かった。
それらはきっと戦うとき役に立つ。
(あ、でも1つ忘れてました)
ふと振り返る。
(今のGM、名前はなんて言うんでしょう)

「ハックション!」
舞い上がる砂埃を吸い込んで橘は派手にくしゃみした。
奥の実験室と腕輪は完膚なきまでに破壊し、地下道の入り口は崩した。
本物の橘の遺体は小屋ごと燃やしてしまおう。
それで制限解除効果も消えるはずだ。
彼が何をしたか立証できるだけの証拠はもはや存在しなくなる。
もちろん断片から推測することはできるだろう。だが物証がなくなり、彼がなぜそんな

ことをしたか分からなくなればそれでいい。
あとはジョーカーに粛清される前に適当なところで姿をくらますだけだ。
任務にかこつけて証拠を隠滅した橘はうっすらと笑った。
しかし証拠を消すことに気を取られるあまり橘はいくつかのことを見落としていた。
GM森はその最期において愛剣を奪われ、予備の剣で戦ったということ。
にもかかわらず黒焦げの遺体はその手に何も握らず、腰の質素な鞘に剣が収まっていた

こと。
そして剣のつかと刀身を固定する目釘が抜け、床に転がっていたこと。
それらは♀Wizの残したある細工を示していた。


<♀WIZ>
現在地:謎の地下室
所持品:クローキングマフラー 未挿sロザリオ
    ウィザードスタッフ DCカタール +7THグラディウス 多目の食料
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HPは半分くらい?
    希望が見えてきて気持ちが前向きになるも♂シーフと死別して不安定に

<GM橘>
現在地:謎の地下室
所持品:剣(バルムン?) GM森の剣
外 見:銀縁眼鏡、インテリ顔
備 考:殴りHiWiz ガンバンテイン ヘブンズドライブ

159 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/29(土) 00:56:06 ID:z7fJi5.U
しまった改行で切れたorz

160 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 00:40:11 ID:SrbfZZpU
278.BlockBuster[3日目午前]


まばゆいばかりの緑あふれる森の中、毒々しい紫色の触手がうねっていた。
空中をのたうち、あるいは地中を貫いて突き上げ。
2人の騎士を取り囲もうとする。

「マグナムブレイクっ」

♂騎士は四方へ衝撃波を放ち、取り囲む触手の波を吹き払った。
その瞬間に生じた触手の隙間へ飛び込み、大剣を振るう。

切り飛ばせたのはわずかに2本。
傷ついた触手は断面から不気味な粘液を撒き散らしながら素早く引かれる。
だがそれ以外の触手が再び別方向から襲い掛かってきた。

きりがない。
馬防柵と弓兵・槍兵で固められた防御陣を突破しようとするのに似ている。
援護なしでの強攻は無謀と言っていい。一度引く方が賢明だ。

そんなことは分かっている。
だが飲み込まれたハンターに果たしてどれだけの余裕があるのか。
今さら下がる道はない。

「あぶないっ」

警告の声と共に♀騎士の剣が突き出され、彼の死角から迫る触手を切り裂いた。
さらに盾でもいくつかを受け止める。
しかし安心する間もなく2人の足元が不気味に震動した。
とっさに跳び分かれた彼らを真下から飛び出した触手がかすめ、態勢を崩した所へさらに何本かがまとめて襲い掛かった。

♂騎士は身をかがめて頭上にかわし、幅広の剣身を盾にして受ける。
しかしさばききれなかった触手に胴を強く薙ぎ払われた。
からみつかれこそしなかったものの、衝撃で数歩押し戻される。

「くそっ」

怪物の本体までわずか10歩ほど。
走れば数秒しか掛からないその距離が今は果てしなく遠い。

それでも彼は諦めずに押し戻された間合いを詰めた。
大剣を振り回し、取り残された♀騎士に絡みつく触手を叩き切る。
さらに残りを吹き払うため再びマグナムブレイク。

「きゃっ」

余波を浴びてよろめいた♀騎士が小さく声を上げる。
距離が近すぎたようだ。

「すまんっ」

味方を巻き込んだことに気を取られ、踏み込みが遅れる。
その間に吹き払った触手が戻ってきてしまった。
突き上げ振り下ろされるそれらに追われ、2人そろって数歩下がる。
仕掛けなおすタイミングを計りながら彼は♀騎士に改めてもう一度謝罪した。

「悪かった。大丈夫か?」
「…ええ、平気です」

返答までにわずかな間があった。
♂騎士はそれを苦痛の表れと取って表情を固くする。

「怪我させたか。すまん、無理するな。さがっててくれ」
「あ、いえ。そうではなくて」

♀騎士が盾を構えて彼に並ぶ。
そして追ってきた触手を切り払いつつ言った。

「今のでひとつ手を思いつきました」

♂騎士は驚きに眼を見開く。
そして早口に問い返した。

「ハンターの子を助ける手か」
「ええ」
「教えてくれ」

急かすと♀騎士はなぜか少しだけ迷う様子を見せた。
だがすぐに決心した様子で告げる。

「ボウリングバッシュの用意をしてください」
「なんだって?しかし…」

両手剣を得意とする彼は確かにその技を使える。
実際に使ってもみた。
だが軽い上に自在にうねる触手はその場で爆ぜるばかりで、吹き飛んで別の目標に衝突するという効果が発生しない。
それは♀騎士も見ていたはずなのだが。

「議論してる暇はありません。お願いします」
「お、おい!」

一声残し、これまでどちらかといえばサポートに徹していた♀騎士が一直線に突入する。
途端に殺到する触手。
慌てて♂騎士も追うが、タイミングがずれた上に彼女の踏み込みが深すぎてカバーしきれない。
♀騎士の体を触手が打ち据え、あっという間に四肢を絡め取った。

「くうっ」
「今助ける!」

追いついた♂騎士は♀騎士を捕らえた触手へ剣を振るうが、1本断つと2本が、2本を断つと3本が絡み付いてさらに絞り上げる。
それどころか♀騎士の解放に気を取られた彼の体にも触手が伸びた。
それでも触手を断とうとする彼に♀騎士が叫ぶ。

「私にBBを!」
「な…!?」

♀騎士は身動きの取れない体を必死によじり、絶句した彼へ盾を向ける。
それで♂騎士はやっと理解した。
たしかにボウリングバッシュを直撃させれば彼女を怪物のところまで飛ばせるかもしれない。

「しかし――」
「早く!」

決意に満ちた眼の色を見て♂騎士は反論の言葉を飲み込んだ。
彼女は議論している暇はないと言った。
その通りだ。
危険だとか、自分が受けるとか言いたいことは山ほどあるが、そんな暇はない。

なのに♀騎士へ剣を向けることを意識した瞬間から腕が震えだした。
また死なせてしまうかもしれない。
♀アーチャーの命を奪わなければならなかったのとはまた話が違う。
今度は殺してはいけないのだ。

(俺は……また……?)

♀プリと♂アルケミの顔が、消しきれない後悔の念と共に脳裏をよぎる。
だがその瞬間。
トン、と背中を押す力を感じた。

『なにグズグズしてるのよ。助けるんでしょ?さっさとやりなさい』
『大丈夫、俺たちがついてる。死なせやしないさ』

2人に笑われた気がした。

気のせいかもしれない。
触手が当たっただけなのかもしれない。
でも、それで充分だった。
腕に力が戻る。

「歯を食いしばれっ」

♀騎士と自分自身に言い聞かせるように叫んで、剣を思い切り振りかぶった。
体をひねり、それを妨げようとする触手の弾力さえも利用して、
横殴りの豪打を爆発させる。

「おおおおおおおおおおおおおおおっ!」

轟音。
♀騎士を縛る触手が束になって千切れ、すらりとした長身が弾丸となる。
瞬時に空間を横切った肉体は剣の威力そのままに怪物へ激突した。

ミギィイイィィィイィィッ

怪物は衝撃で口から粘液を吐き出し、耳障りな悲鳴を上げて身もだえた。
その動きに振り払われて♀騎士が転げ落ちる。
♂騎士はひやりとする。
手加減はうまく行った感触があった。
だが剣と怪物に連続して激突したのだ。ダメージは軽いはずがない。

「おい、大丈夫かっ」
「え……え。な…ん…とかっ」

それでも♀騎士は体を起こした。
右手の剣を重そうに持ち上げ、突き下ろす。
ず、と鈍い音を立てて怪物の体に切っ先が埋まった。
同時に気合い一声。

「マグナムブレイク!」

突き刺した剣を中心に衝撃波が生まれ、傷口を裂き広げる。
それは怪物の体腔奥まで届いて体液とは別のさらりとした液体を吹き出させた。
辺りに刺激臭が立ち込め、怪物が今度こそ絶叫する。

ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!
「くうっ」

ほとんど超音波のような悲鳴に身をすくませた♀騎士は滅茶苦茶に振り回される触手に跳ね飛ばされた。
同時に♂騎士に巻きついていた触手も暴れだし、投げ出されるように解放される。
彼は急いで♀騎士に駆け寄った。

「よくやった。あとは休んでてくれ」

しかし♀騎士は剣を杖に立ち上がろうともがいた。

「…まだ、やれます」
「無理するな。ここからは俺1人でなんとかなる」

彼は♀騎士を制した。
どう見ても連続でダメージを受けすぎている。これ以上は危ない。
それに消化液が抜けて空気が入った分、飲み込まれたハンターの命にも余裕ができたはずだ。

ただ、1人で何とかなると言ったのは気休めに過ぎない。
怪物は防衛本能なのか、付近のもの全てを跳ね飛ばそうとする勢いで触手を振り回していた。
今までより危険は少ないが、近付くのはさらに難しくなった。
さっきみたいにスキルで強引に接近したとしても攻撃する前に弾き返されるだろう。

何か投げられるものでもないか。
♂騎士は周囲を見回した。

161 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 00:40:53 ID:SrbfZZpU
<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、錐 、ツルギ
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:JT2発被弾 背に切傷 BBその他でグロッキー気味

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 戦闘場所より少し近くで気絶中
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状

<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
   できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
   両手剣タイプ
状態:痛覚喪失? 体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
   必要とあらば殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい

<♀ハンター>
現在地:E-6(寄生虫体内)
所持品:スパナ、古い紫色の箱、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3]
スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング
備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり
状 態:被捕食中 消化の危険は減少 ♀スパノビと離れ、再び誰も信用できない状態 ただただ恐怖

<ふぁる>
現在地:E-6
所持品:リボンのヘアバンド
スキル:ブリッツビート スチールクロウ
備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇
状 態:JTによる負傷で気絶中

<寄生虫(寄生磯巾着?)>
現在位置:E-6
外 見:大きい紫色のヒドラっぽいもの(ペノメナ?)
備 考:♂ローグから孵り、捕食 両生類?
状 態:♀ハンター捕食中 捕食嚢に達する重傷 狂乱中

162 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 02:01:37 ID:89F1YIQ.
なんか久しぶりに見たら地味に話が進んでるなー
書いてる人乙ー

163 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 09:19:26 ID:WQlQ9dr6
続きを期待してますー。

164 名前:ドドリア 投稿日:2007/10/15(月) 13:04:42 ID:lY088Ccs
俺様TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEええ
(と意味不明に叫ぶドドリア)

165 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/18(木) 11:09:39 ID:7lNWf/n6
無名RO小説家とは感激した。(リレーで進んでるのかな・・)
攻城戦だの晒しだのしか見てなかった俺ってバカだな・・。
次回期待してますぜ!!

166 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/23(火) 00:06:08 ID:E4i5E6PE
書き上げたはいいけど、ちとグロくなった。。。
グロ禁止だっけ?
ひとまず投下して様子見ー

167 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/23(火) 00:06:37 ID:E4i5E6PE
279.救うべきもの[3日目午前]


彼女は暗闇の中でもがいていた。

苦しい。
痛い。
怖い。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわい怖いこわいこわいこわいこわいコワいコワイコワイコワイコワイコワコワコワコワ

ずどん

突然の衝撃。
そして光が差した。

眼が痛む。
闇に慣れた彼女にとって光は新たな刺激に過ぎなかった。

無意識に逃げようとする。
だが周囲の壁に束縛されて動けない。
ごぼり、と気泡が上がった。

もがく。
壁にこすれた皮膚から激痛。
痛みにまたもがく。
激痛。

繰り返しの中、不意に腕が自由になった。
周囲に空間ができている。
外界の乾いた空気が肌をなでた。

次に感じたのは全身の痒み。
それが次第にチクチクとした痛みへ変わる。

耐え切れなくて体をかきむしる。
何かがべろりと剥がれた。

電流のような痛みが脳を貫く。
獣のような声をあげて彼女は周囲の壁に爪を立てた。

柔らかい肉壁を爪が引き裂く。
するとそれは逃げるように蠕動した。

逃げてゆく。
彼女が逃げるのではなく。

彼女は悲鳴じみた狂笑をあげた。

*****

『――!』

♂騎士は動きを止めた。
妙な声が聞こえた気がする。

「誰だ?」
「♂モンクさん…ではないようですね」

同じくおかしな声を聞いたらしい♀騎士は♂モンクを振り返っていた。
だがやはり目覚めた様子はない。

「じゃああの怪物か?」
「もしかすると――」

中の♀ハンターさんかも。
♀騎士はその言葉を発することができなかった。

突如として紫色の怪物がいびつに膨れ上がる。
サボテンでも飲み込んだかのように四方八方へ鋭く突起を作り、すぐにそこから体が裂けた。
裂け目から何本もの矢が落ちる。

声もなくのたうつ怪物。
そして裂け目を押し広げてヒトが這い出した。

「お、おい…?」

♂騎士の声が尻すぼみに小さくなる。
出てきたのは飲みこまれた♀ハンターのはずだ。
そう頭では分かってはいても実感がついてこない。

凄惨としか言いようのない姿だった。
露出した皮膚は焼け爛れたよう変色し、ところどころ剥がれて垂れ下がっている。
髪の毛も半分近くが抜け、まぶたや唇といった柔らかい部分は赤黒く腫れ上がって血をにじませていた。

果たして生還したといえるのか。
むしろニブルヘイムで見た死者の姿に近い。
正体不明の液体にベットリと濡れ、残った髪や衣服の残骸がまとわりついて不気味さを増していたが――細部が見えないのはかえって救いだったかもしれない。

イヒィ、イヒヒヒイイィィィ

ゆらり、と立ち上がったその人物は引きつるような声を出して体を揺らす。
そして断末魔の動きを示す怪物へ

ズババンッ

視線も向けずに矢のニ連射を撃ちこみ、ついでとばかりに蹴飛ばした。
地面に縫いとめられた怪物はそれで完全に沈黙する。

ウヒィ

『彼女』は天を仰いで満足そうに声を漏らした。
姿だけではなく行動も明らかに異常だ。
だがその手の弓を見るかぎり♀ハンターに間違いないらしい。

「よ、よかったな。あんまり無事じゃなさそうだけど一応助かっ――」

♂騎士は声を掛けながら歩み寄ろうとする。
その途端、腫れたまぶたに半分隠れた眼が、ギロリ、と動いて彼を睨んだ。
そこに宿る異様な光。

イィイイッ
「っておいっ!?」

♀ハンターは彼らに弓を向けて矢をつがえた。
その動きに何のよどみも躊躇もない。

♂騎士はとっさに剣を盾にしながら身を投げ出し、直撃を避ける。
首筋をかすめてヒヤリとしたが傷は浅い。

同時に反応した♀騎士も身を翻して木立へ隠れようとした。
だが、その動作が一瞬止まる。

ドッ
鈍い音を立てて彼女の背に矢が刺さった。

「♀騎士!」

♂騎士は思わず叫ぶ。
彼には♀騎士がなぜ動きを止めたのか見えていた。

彼女は身を翻した瞬間に気付いてしまったのだ。
自分が♀ハンターと♂モンクを結ぶ直線上に位置してることに。

「くそっ」

♂騎士は2人の盾となるべく飛び出した。
しかしそれより早く次の矢が飛ぶ。

矢は♀騎士の右肩に刺さった。
正面から。

彼女はその場を逃げることではなく、攻撃を全て受け止めることを選択していた。
片膝をつき、ツルギを地面に突き立てて体を支える。
そしてシールドを体の前に。

イヒィ
「くぉっ」

次の矢は体ごと割り込んだ♂騎士の大剣が弾いた。
しかしそれを見た♀ハンターは数本の矢を一度に放つ。
着弾の衝撃で♂騎士の体が横へ弾きとばされた。

アローシャワーの威力は♀騎士にも及んだ。
だが地面に剣を突き立てて体を固定した彼女は動かない。
そんな彼女に♀ハンターは連射を浴びせかけた。

半数以上は盾に突き刺さって止まる。
だが隙間から♀騎士の脇腹や腕、脚へ命中する矢もあった。
それでも彼女は姿勢を崩さない。

「やめろっ!」

♂騎士はもはや我慢できずに♀ハンターへ突進した。
彼らは命がけで彼女を助けようとしたのだ。
その当人に殺されようとするなんてこんな理不尽はない。

だが♀ハンターは余裕を持って次の矢から矢じりを外し、彼の胸元を狙い撃った。
♂騎士はそれを大剣で受け止めるが、威力に数歩分押し戻される。

「くそっ、くそぉっ」

彼は我知らず涙を流していた。
人を助けようとした結果がこれか。
自分には誰も救うことができないのか。

♀ハンターの弓が再び引き絞られた。
一発か、運がよければニ発ぐらいは避けられるかもしれない。
だがそれ以上は無理だ。
たぶん♀ハンターへたどり着くまでに致命傷を受けるだろう。

覚悟と言うより諦念に近いような気持ちに襲われつつも彼は走った。
と、♀ハンターの眼が一瞬横を向く。
次の瞬間、矢は彼の足に向けて放たれた。

「うわっ」

痛みは感じないものの、いきなり足に打撃を受けて彼は転倒する。
慌てて跳ね起きたときには射手の姿は消えていた。

「いったい…」

理由が分からず周囲を見回す彼の耳にガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえた。


<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、錐 、ツルギ
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:JT2発・BB・矢多数被弾 背に切り傷

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 戦闘場所より少し近くで気絶中
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状

<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
   できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
   両手剣タイプ
状態:痛覚喪失?、体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
   必要とあらば、人間を殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい

<♀ハンター>
現在地:E-6(寄生虫体内)
所持品:スパナ、古い紫色の箱、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3]
外 見:全身の皮膚が半分溶けた異様な姿
スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング
備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり
状 態:発狂?全てを敵視

<ふぁる>
現在地:E-6
所持品:リボンのヘアバンド
スキル:ブリッツビート スチールクロウ
備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇
状 態:JTによる負傷で気絶中

<寄生虫(寄生磯巾着?)>
現在位置:E-6
外 見:大きい紫色のヒドラっぽいもの(ペノメナ?)
備 考:♂ローグから孵り、捕食 両生類?
状 態:死亡

168 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/23(火) 00:25:54 ID:hIcNKvoA
お、新作投下乙でありますー。
しこしこチェキしてますぜ。

これくらいならいいんでないですかねー?
バトロワ物ってのは前提にあるんだし、許容範囲だと思うです。
で、ハンター崩壊キタワァ
ここにきてマーダー追加かっ。

169 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/23(火) 19:18:36 ID:YP2N3KGI
個人的には許容範囲だが・・・。
グロテスクというよりも、何か♀ハンタを同情せざるを得ないorz
というかなんていったらいいか日本語がでてこないよlllorz

170 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/23(火) 21:44:16 ID:jHnVh64c
ずっとROMだったけどあまりの凄惨さに衝撃を受けたので書込み。
前々から割りとライトな雰囲気なゲームと対比して
あまりにも残酷な世界観とストーリーと企画が興味を引いたので見ているのだけれど、
流石に今回は度肝を抜かれますた。@@;

一度は重圧に押しつぶされた騎士が再び立ち上がって
皆を救おうとしたのだけれども、救った者はあまりの過酷な状況で発狂し、
悲劇への序曲へと誘っていくのだろうかっていうところですね。
状況の描写が圧倒的に上手で、次の話に繋げるトスもしており
作者の描写力に驚嘆しますた。

何か私では文章にうまくまとめることはできないのですが、
私個人の願いとしては、マーダー及び参加者いやこの世界に登場する登場人物全体が
かなり悲惨な目にあっているのが可哀想すぎるという気持ちから、
いつかどこかで幸せになってもらいたいという気持ちがあります。
しかしどうなるかはこの作品の描く人たち次第なので、
私はまたROMに戻り、この物語を見届けたいと思います。

171 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/24(水) 04:52:10 ID:WHTTQLIM
しかしよく考えるんだ、たとえグローに爛れてる姿とはいえ

♀ハンタさんは今 いっしまとわぬすがた というやつなんじゃないかっ

と空気読まない発言

172 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/24(水) 09:50:00 ID:jcY9bM9M
>>171
その発想はなかったわwww
まぁでも、いまのハンタ子は原爆直後の格好みたいな感じだと想像してみると、
口が開いたままで閉まらなくなる・・。
ペノの中ないし触手に絡まれてるとしたら、きっと髪の毛もあまり残ってないだろうに・・。

しかし、そのあたりの表現の仕方は、うp主に脱帽せざるをえない。
触手=エロと結び付けていた俺にとっては、あまりにショッキングな内容だったのは言うまでもなく。

173 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/27(土) 17:14:00 ID:0zm.f0XU
グロ云々の前にキャラ設定無視がなんとも
過疎中なら何書いてもGJ言われるのか・・・

174 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/27(土) 23:03:38 ID:dnmsNP92
> キャラ設定無視
気付かんかった。具体的にどこ?

175 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/28(日) 05:48:13 ID:s.xZcTu.
♀ハンターの暴走っぷりなら精神不安定気味でああなってもおかしくはないと思ったが。

176 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/29(月) 01:15:13 ID:dtu1/.QM
♀ハンタは最初からずっと一貫して人見知り、甘えん坊、人を憎まない殺せない性格だっただろう?

そんな人間がいくら恐慌状態に陥ったからって、無差別に攻撃するのは突拍子もないと思うぜ。
♀ハンタの性格なら、狂うより先に自殺するのが自然じゃないか?

177 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/29(月) 02:10:21 ID:auzTKSjg
あの状況でなら「狂う」は不自然じゃない気がするけどなぁ。
キャラ設定からして矛盾は感じなかったけど・・・。

178 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/29(月) 03:54:19 ID:VEl9AR6U
>>176
解釈の違いかねぇ、人見知りってことは
つまり他人と深くかかわれないから殺せるって思う奴も居そうだ。
特に慕ってたスパノビ死んだしな。

179 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/29(月) 04:31:57 ID:NmdYOrxw
>>176
恐慌ではなくて発狂だと思うのだが・・・?
発狂する前は寄生虫(?)の中で身動き取れなかったんだから自殺はできないだろし。
ついでに言えばおとなしい人間がストレスのあまりいきなり暴れ出すなんて現実にもよくある話。
そんなに不思議かな?

180 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/29(月) 12:29:08 ID:YC8gWxZg
狂う展開はありにしても、それ=殺人鬼ってのは安易過ぎないか
理性もなく力も制限されてるのに技連発してたりとか、>>176の理由もあって不自然さが拭えない

181 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/29(月) 21:51:56 ID:P4ydM6js
キャラ設定を言うなら♀ハンターは登場当初からかなりの人間不信ですよ
つまりは他人の存在を拒否する性格です
そのアプローチが逃避から攻撃に変わっただけかと

182 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/30(火) 12:39:09 ID:wagbEcu.
 結局のところNGにするかOKかどっちにするべきだと思う?

 でも狂ったという表現であっても最後に♂騎士を牽制して場を離れるだけの
理性は残ってるわけでしょ、この場合(いや、トスなのはよくわかるけどさ)
 殺人に向けての衝動ならある意味回り見えてない状態になってるんだと思うし、
周りの危険(?(最後のトス))を察知できるぐらいの狂い加減なら、騎士たちを攻撃するのは
なんかちょっと狂いの度合いが高すぎる気もするし、
離れようと行動するのはなんかな、とも思うんだが……。

 でもその辺含めて狂ってる、なら話は矛盾しない。
 個人的にはOKサイン、NG出すほどの矛盾はないと思います。>>167

183 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/30(火) 13:48:59 ID:8gxK2yP2
矢や弓、弦も、肉までどろどろになるくらいの寄生虫の酸の中にあったわけだし、機能するとは思えない。

一番大事なことだが、理性が無いってことは禁止区域に気付けないってことだ。

地図の位置や書き手によっては、首輪による爆死で終わる可能性を否定できない。ちょっとマーダーとしてこれは不味いだろ?

184 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/30(火) 13:53:42 ID:haWiy9yM
繋ぎ的観点だけで考えると、シーフ退場にふぁる無効化まで重なるとBADEND以外なくなる気が
ハンターいなくなると誰も喋れないよね

185 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/30(火) 18:14:35 ID:WmoCqsWI
>>183
事故死する危険が結構ある、ってのは間違いないねえ
でも、だから?って気もする
167は既存のマーダーを発狂させたわけじゃなくて1人増やした話なんだから、マーダーの増減を問題にするならむしろ歓迎するべきでは

武器の状態に関しては繊維質は消化しにくくてほとんどそのまま排出される、ってのが答えになるかと

>>184
そういえばふぁるは箱から出たわけじゃないから「どんな武装も使うだけならできる」ルールは適用されないのか
まあふぁる(と♀ハンタ)がいないから即アウト、ってこともないんじゃ?
ってーかふぁるの立場で考えると別の可能性もあるよね

>>182
これはそもそもNG論議なのかな?
結局好き嫌いを言ってるだけにも見える

186 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/30(火) 22:53:54 ID:sWE0Kxws
確かに、NGにする理由が無いのでは、と。
よく出る話の繰り返しになりますが、これはリレー小説なんだから。
ルールを無視しているわけではないのだし、次の書き手さんが全然フォローできる範囲だと思いますが。
確かに、自分も弓矢が溶けてなかったのはちょっとアレ?って思ったんですけどね。

187 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/31(水) 01:18:26 ID:oB0NW9Og
実は矢ではなくて、ファンタズミックアローを使用したなんてだめだよな・・。
集中力要りそうだもんな・・・。設定上、♀ハンタが使えるかどうか怪しい線だと推測するが・・。
このあたりがリレー小説の難しいところなのだろうか・・。
次の書き手さんか、今回書いた書き手さんのリベンジ期待age

188 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/31(水) 02:40:57 ID:I2mB6LxI
リレーとはいえ引き継ぐ人が困りそうな点は改善するべきだと思うが
書いた人も様子見といってるんだし、苦情出たら即NGってものでもない

189 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/02(金) 09:32:05 ID:6akpG3c2
>>182
理性が残ってるというより本能だけで攻撃してるからこそ危険察知して退避とかしてるんじゃないかい?
生きたまま溶かされて苦痛がありすぎて、気絶しようにもできずに発狂してるなら理性残ってるとも考えにくいし

190 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/07(水) 11:40:10 ID:Krzo08eI
また停滞しちゃったね…
今回はストーリーにケチつける人が多くて嫌だな
ストーリーが気に食わない人がいるなら、その人が書けばいいのに
ハッピーエンドにしなきゃだめなんてことはないんだし、キーになる人物だからこうしないほうが…なんておかしいよ
助けたいなら自分で書いて助ければいいじゃん
自然な流れで自分のペースに持ち込むのもリレーの醍醐味でしょ

191 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/07(水) 17:32:33 ID:jaccy6eA
>>190
なるほど。
自然な流れで自分のペースにっていうのは、俺も同感ですわ。
今回は話しが話しなだけに荒れてるからなぁ・・。
文才がなくてどうしようもない俺にはどうすることもできないのが悔しいわ。
しかも書き出しても、必ず途中で行き詰るという欠点付きだしなlllorz

途中から読み出した俺には、リレー小説に乱入するなんて恐れ多いというのが本心です。
唯一できることといえば・・・次の方が書いてくれる話を期待しながら待つことか・・。

192 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/08(木) 16:09:33 ID:YOwyQZzE
>>180
技連発ってDS1回とAS1回だけに見えるんだが違うん?

193 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/08(木) 16:48:36 ID:2fhWCENo
CAらしきものも使ってるがそれでも三つですな

194 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/08(木) 17:01:25 ID:YOwyQZzE
>だが♀ハンターは余裕を持って次の矢から矢じりを外し、彼の胸元を狙い撃った。
>♂騎士はそれを大剣で受け止めるが、威力に数歩分押し戻される。
ここかな?
気付かなんだ、教えてくれてありがと

195 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/08(木) 20:53:33 ID:WTf6TMVM
どうせ駄作だし好きなように書けば
このままじゃ終わらんし

196 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/13(火) 13:46:38 ID:Ckjeb9PQ
マーダーがいなくて進め辛いから狂化はありだと思う。
だけど、今までふぁる〜とか言ってたハンターがイヒイヒ言ってるのに違和感…
好き嫌いの話になっちゃうけど、もう少し言葉なんとかならないかなーと思った。

ぷち電波受信…したけどスパノビの致命傷見ちゃってるんだよなぁ
知らなかったらペノ内部で意識朦朧としてる♀ハンターにジョーカーがあることないこと
吹き込んで、♂♀騎士'sにけしかけることもできたんだけど。
ジョーカーもマーダー少なくてつまらないと思ってテコ入れはしそう。
ふぁるから情報引き出させないようにハンターの精神破壊ってところかな。
♀ハンターの過去だと痛みではそんなに即狂ったりしなさげ。
一時期感じて失った心の温かみのあたりをじくじく攻めると落ちそうだ。

妄想吐き出すだけで文にできないのが恨めしい。
楽しみに読ませてもらってます。
書き手の人にありがとう&これからも頑張って〜

197 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/23(金) 01:18:17 ID:okCBtgSs
下がってたのでage

198 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/12(水) 11:55:27 ID:DJrMNIH2
がっつり止まってるので279話までwiki更新
277話が改行で切れたとの事なので、気が付いた所だけ繋げ直しました。書き手様確認お願いします。

199 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/16(日) 07:12:52 ID:vNcnAPTs
GJです。

200 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/18(火) 02:30:09 ID:4DYN3pys
番外編? NG? 抗う者共

「やれやれ。貴方のお陰で今度のゲームは大波乱でしたよ。私共にとって、ですが」
白装束にピエロ帽の道化。
顔にはスペードやハートが塗られてあった。
「そりゃ良かったじゃねえか。こんな幸せゲームなんざ終わっちまうにこしたこたぁねぇ」
対する赤い髪の男は、チェイサー。
顔には目立つ傷があった。
「ですが、貴方は最早一人。他の皆さんは――おっと、私共の手駒は別ですが――他の管理者と相打ちにほぼ討ち取られてしまった。王手詰み――実に惜しかったですが、残念ながら貴方もここまでです」
瞬間、道化は短剣を投げる。
男は、それを走りながら叩き落とし、剣を振り下ろす。
だが、それは道化に止められる。
男が瞬間に繰り出したのは、足払い。
突然の足下への攻撃だが、道化はそれを後ろに飛んでかわす。
そして、着地と同時に、男を薙ぎに行く。
男は、それを受け止め、体当たりを食らわせた。
思わず体勢を崩し、道化はよろける。
そこに、斬撃が襲う。
道化はそれを紙一重でかわしつつ、お返しとばかりに腕を突きにいった。
思わず、男は腕を引き、後ろに飛んで間合いを取った。
沈黙。
ふと、男が笑いながら。
「本当にそう思うか?」
と聞いてきた。
同時に一気に踏み込んで突きに行く。
道化はそれを先読みして避けた。
すれ違い様に剣を叩き込もうとして――男は突然方向転換をし、道化に体当たりして行く。
予想外の攻撃に、思わず横に飛んで間合いを取る。
「勿論。チンピラ如きに負ける道理はありませんよ」
男の問いに、道化はそう返した。
同時に、一気に間合いを詰め、薙いだ。
男はそれを止め――突然、顔面目掛けて飛んできた短剣を避ける。
その僅かな隙に道化を追撃を試みるが、その瞬間に剣を弾かれて追撃の機会を失った。
男は、そのまま後ろに飛んで間合いをとる。
再び沈黙。
そして、男はまた笑い、言った。
「じゃあお前はここで死ぬな」
それに対し、道化は軽く首を傾げて聞き返した。
「どうしてです?」
男はにやりと笑いながら。
「お前が目の前の相手を見間違えてるからさ」
男の雰囲気が変わった。
殺気を撒き散らしながら。
「俺はチンピラなんぞじゃねえ」
ゆっくりと剣を構え直し。
「――『騎士』だ」
レイピアの様に鋭い眼光で、道化を射抜いた。

――男は一歩及ばず、腕に重傷を負ってしまう。
――だが、男はそれで終わらない。

男の決死の反撃は、道化の左目を切り裂いた。
突然視界が狭くなり、道化は思わず男との間合いを取る。
男はにやりと口の端をつり上げ。
「俺がここでくたばったとしても手前等は、いずれ死ぬさ」
男の息は荒かった。
「手前等に向けられてる剣は、俺達だけじゃねえ」
顔も蒼白だ。
切り裂かれた腕からは、大量の血が流れている。
「生まれる前からの付き合いだしな」


――結局、男は道化に敗れた。
――だが、道化は男が最後に放った言葉の意味を知らない。
――曰く、「ある男は強くなる為に魂を差し出したという。俺にはその覚悟がなかった。その差がこれさ」


「……行くのか?」
薄暗い部屋の中、騎士らしい男が赤毛の男に言った。
「まあな」
返答はそれのみ。
そして、グラスに入っている酒を口に含めた。
「心配してんのか? 珍しいこともあるんだな」
赤毛は、にやつきながら、肩を竦めてそう言った。
「お前の事じゃない。組織のことだ」
それに対し、騎士が真面目な表情で返した。
「お前、今の今の自分の立場を分かって言ってるんだろうな?」
鋭い眼光を、赤毛にぶつける。
「国最大の反政府組織『剣』のリーダー、だろ?」
赤毛は表情を崩さず、言った。
「分かってるなら尚更だ」
騎士は、表情を緩めない。
止めろと言わんばかりに、更に続ける。
「死んだらどうする? 後継者は? 最強の『剣』はお前だろう?」
赤毛は、それにまともに応えようとしない。
「なあに」
酒を一気に飲み干し、笑いながら、
「最強の『剣』は実質、お前だろ? 問題ねえよ」
騎士に納得いかない、という表情で更に問い詰めようとして――遮られる。
「例え、俺が死んだとしても、お前がいりゃ組織はまとまるさ。俺より長生きしてんだろ?」
経験豊富な奴の方がまとめた方が良い結果に繋がる、と言わんばかりにそう続けた。
「呆れたな」
騎士は、溜息をつき、酒を口に含める。
そして、赤毛に言った。
「いつもの場所で待ってるぞ。必ず、帰ってこい」
赤毛は立ち上がり――手を振りながらドアに向かう。
「生まれる前からの付き合いだろ? まあ期待しとけよ」
ドアを開け、部屋から出た。
残されたのは、騎士の男一人。
「……普通の人間の問題は、普通の人間が解決すべきなんだが……」
誰に言うまでもなく、呟いた。
「まあ、いい。トリスタンも、こんな政治は望んではいないだろう」
何かを決意したような表情を浮かべ、立ち上がる。
「トリスタンがまとめ上げた国を、見捨てるわけにはいかないからな」
騎士は酒を飲み干し、ドアに向かう。
「戦乙女ヴァルキリーよ、加護を与えたまえ」
そのまま、部屋を出た。

――だが、赤毛の男が戻ってくることは無かった。
――そして、騎士の男はある決意をすることになる。

201 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/19(水) 00:31:23 ID:n8J2DCQU
直近の感想は書けないんだが、今、最初から読んでる
割とみんなで脱出しよう!って雰囲気なのがどう進むか楽しみな所

ふぁる〜な♀ハンタ、カワユス

202 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/19(水) 00:32:21 ID:n8J2DCQU
ageようとしてdameしてしまった…

203 名前:sage 投稿日:2007/12/26(水) 17:06:30 ID:mdmNj.Sw
>>200
前作♂ローグとDOPの転生体かな?
DOPさん何企んでるんだろう。

第2回も長くなってきて話の流れとか把握するの大変になってきたなぁ
書き手さん少ないのそのせいなのかな?
キャラごとの移動経路とかまとめたもの作りたいけど、思うだけで行動に移せていない…

204 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/26(水) 17:07:23 ID:mdmNj.Sw
きゃーごめん名前に入れちゃった。
IEから書き込むものじゃないわ

205 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/01/13(日) 10:43:58 ID:iHiochvI
280. 迷走 [3日目午前]


「ふはは、俺様復・活!」
眼を覚ました♂プリはとりあえず大見得を切りながら登場してみた。
自他共に認める悪人顔の彼を治療してくれたのだ。そこで戦ってるのはきっと知り合いに違いない。
仲間の危機に颯爽と登場。俺様かっちょいー。
などと妄想していたのだが。
そこにいたのは♀マジに♀アコ、♂スパノビと逃げてゆく♀アルケミ。
全部知らない顔だった。
「・・・えーと。お前ら、誰?」
さすがにちょっと恥ずかしくなって頬をかきながらたずねたりしてみる。
もっとも答えが返ってくるとはあんまり期待してなかった。
「それどころじゃないっ!手伝えーっ!」
「むぐ〜〜〜〜〜〜っ!!」
♀アルケミを諦めた♀アコが♂スパノビの腕を引っぱりながら怒鳴り、顔を上げられない♀マジは地面をバンバン叩いて抗議する。
「ま、そうだよな」
なんとなく納得しながら彼は三人に歩み寄った。
♀アコの反対側から♂スパノビの肩を押し、♀マジの上からどけようとする。
「うお。なんだ?えらい馬鹿力だな」
♂スパノビの体はびくともしなかった。
いくら本調子ではないと言っても殴りアコプリ2人がかり(プラス♂スパノビの靴に噛み付いて引っ張る子デザ)で動かすこともできないというのは相当に非常識な力だ。
「図体もでけえし、巨人族の血でも引いてんのかね」
「のん気なこと言ってないで、もっとが・ん・ば・れーっ!」
思わずつぶやいた彼を、♀アコは顔を真っ赤にして力を振り絞りながら非難する。
だが♂プリは♂スパノビから手を離して一歩下がった。
「ちょっと!」
「まー言いたいことは分かるがちょっとまて。こういうときはな」
抗議する♀アコにニヤリと笑って見せて♂スパノビの正面へ回った。
そして軽い掛け声一発。
「おらよっと」
♂スパノビのひじの内側、やや上の辺りを思い切り蹴り上げた。
曲がる方向へ力を加えられた関節がカクンと折れる。
突っ張っていた腕を曲げられて♂スパノビのバランスが崩れた。そうなってはさすがに♀アコの力に抵抗しきれない。
♂スパノビの巨体が横倒しになり、その下から♀マジが這い出した。
「っぷは〜っ、鼻が潰れるかと思った」
「そこかよ」
「随分余裕じゃない」
♂プリと♀アコは思わずツッコむ。
「だってさ、ボクの鼻がぺちゃんこになったら世界の損失じゃないか」
地面に押し付けられてよほど痛かったのか、♀マジは赤くなった鼻をさする。
♀アコはジト目を向けた。
「つぶれるほど高くないでしょ」
「キミよりは高い!ってどこ見ながら言ってんだよっ」
「胸」
「ソコの話はしてないっ!」
「・・・あー、ちょっといいか」
救出が終わった途端口げんかを始めた少女達に頭痛を覚えながら♂プリは仲裁に入った。
なんだかこの島に来て以来こんな役ばっかりの気がする。
「とりあえずお前らとこいつが何者か教えてくれ」
彼はそう言って♂スパノビを見下ろした。
♀アルケミが無事逃げ切ったと確認したためか、♂スパノビは倒れたままそれ以上暴れる様子を見せずにおとなしくしていた。
ただし今度は♂プリと♀アコの足首をしっかり握っていたりする。
「んーとあたしはカピトーリナ修道院行こうとしたら、白服の奴に今すぐモンクになる方法があるって誘われて」
「ソレ信じたのかキミ。て言うかどっから説明する気だよ」
島に来たところから自己紹介を始めようとする♀アコを相方が止める。
「んじゃお願い。あたし説明って苦手」
「キミね」
あっさり投げ出した相棒に呆れ顔を見せつつも♀マジは♂プリに向きなおった。
「・・・このおつむの鍛え方が不足してる子が♀アコ、ボクは♀マジ。とりあえずキミの敵じゃない。んで逃げてったのが♀アルケミでボク達をだまそうとした敵。こいつはそのツレで♂スパノビ」
「む。あたしの頭突きは結構効くのに」
「・・・なるほどな」
ぶつぶつ言う♀アコをちらりと見た♂プリは妙に納得顔でうなずく。
「けどよ、どうして俺が敵じゃないって分かった?正直俺のツラ見たら身構えるか逃げるかする奴の方が多いんだが」
「さっきまでキミの仲間が居たからだよ」
「仲間?」
オウム返しに聞き返したとき背後から足音が近付いてきた。
素早く向き直ろうとするが♂スパノビに足首をしっかり握られたままではうまく行かない。
「ちょ、おいコラ放せ」
慌てていると足音の方向、つまりは彼の背後を♀マジがひょいと覗いて
「噂をすれば帰ってきたみたい」
安心したように手を振った。
「帰ってきた?」
「だからキミの仲間」
♀マジのセリフに背後からハスキーな声が続けた。
「♂セージさんはまだですけどね」
やっと知り合いの名が出た、と♂プリは警戒を解く。
足首をつかんでいた♂スパノビの力もなぜかゆるみ、新たな人物を茫洋とした目で見つめる。
♂プリは不思議に思いながらも振り返り、そして想像もしてなかった美人を見つけて驚いた。
「あんたは?」
「淫徒プリと申します。あなたのあとで仲間に加えていただきました」
「そ、そうか。よろしくな」
淫徒プリが微笑みながら会釈すると彼は実に嬉しそうに挨拶を返した。
♀マジたちに対するのとは明らかに態度が違う。
美人と見て精一杯の笑顔を作った・・・のだが彼の場合それがかなりコワい。
「よ、よろしく」
淫徒プリの腰が引ける。
それを押しのけるようにしてサングラスを掛けた少女が早口に問いただした。
「そんなことよりっ。♀アルケミどーした?」
「逃げられた」
「追い払ったよ」
♀マジと♀アコはそれぞれの表現で答える。
悪ケミは、あちゃーとでも言いたげに天を仰いだ。
「やっぱりやっちゃったか」
「犠牲者が出てないだけよしとするべきでしょう」
とりなすように淫徒プリが言った。
思いがけない反応に♀マジ達は不思議そうな顔をする。
「何かまずかった?」
「さっきのお菓子、毒は入ってなかったんだって」
「ええっ!?」
♀アコは驚きの声を上げて問題の♀商人を探す。
そして首をかしげた。
「じゃあ、あの子どうしたの?いないけど」

◇◇◇◇

206 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/01/13(日) 10:44:17 ID:iHiochvI
◇◇◇◇

♀商人はいつしか♂セージ達のあとを追っていた。
♀アルケミ達のところへ戻らなくちゃいけないとは思う。でもそれはあまりに怖かった。
そう。ただ怖かったのだ。
♂セージが行ってしまった時から。
不安と恐怖はこの島に送られてからずっとつきまとっていた。
当たり前だ。何の覚悟もなしにこんな場所へ送り込まれたのだから。
だけど♂セージと一緒にいる間はそれを忘れていられた。
彼はいつでも道を示してくれたから。
彼はいつでもマイペースを崩さなかったから。
その♂セージがいなくなって、不安に襲われてみて初めてどれほど頼っていたかが分かった。
もちろん彼はそうした方が安全だと思うからこそ置いていったのだろう。
でも。
♂セージは言っていた。
♀アルケミの行動には少々疑問がある。と。
具体的に聞く時間はなかったけど、♀マジや♂モンクも同意してるようだった。
その二人にしても♀アルケミをパピヨンからかばっていた。グルじゃない保証はない。
一度疑いだすと疑念はどんどんふくれあがり、しまいには淫徒プリまで信じられなくなってきた。
不安を打ち消すには敵味方をはっきりさせるしかなかった。
そして毒に当たったふりをすることを思いついた。
そうすれば全部解決する気がした。
少なくとも怪しいお菓子は食べないで済むし、みんなの反応を見ればたぶん誰が敵で誰が味方か分かる。敵だらけならそのまま♂セージが戻ってくるまで死んだ振りしてればいい。
それにどう転んでも♀アルケミとは別れることになる。
彼女が悪人だとはっきりすれば追い払うことになるし、そうじゃなければ気まずくなって別れることになるはずだから。
どっちにしても不安を抱えたまま一緒にいなくてすむ。
それはとてもいい思いつきに思えた。
うまく行ったときどういうことになるか、きちんと考える余裕などなかった。
悪ケミが自分を助けようと必死になり、♀アルケミが本気で驚いた顔を見せたときになってやっと自分のしたことに気が付いた。
それがどれほど卑怯でひどいことだったか。
どうしてと聞かれても説明なんてできるはずがなかった。

思い悩みながらとぼとぼ歩む♀商人はやがて異様な叫び声を耳にした。
びくりと身をすくませ、あたりを見回す。
息を殺して耳を澄ますと騒々しい気配を感じた。
戦いの気配。
♂セージが戦っているのだろうか。
そう思っても足は進まない。
違ったらどうしよう。
違わなくても今出て行けば邪魔になるかもしれない。
してしまったばかりの失敗の記憶が体を縛る。
どうしよう。
進むか引くか迷っていると足音が近付いてきた。
息を殺していなければ気付かなかったかもしれないほど静かな足音。
下生えを踏み分ける音も、風に茂みのざわめく音とほとんど区別がつかない。
よほど山歩きに慣れた人か。
なんだかとても怖くなって♀商人は藪に身を隠した。
そしてそれは正解だった。
たいして間を置かずに恐ろしいモノが姿を見せる。
♀商人は悲鳴を漏らさないようにするだけで精一杯だった。
焼け爛れたような姿の・・・人間なのだろう。
左手に弓を握り、獣じみたしぐさで周囲を見回しては素早く歩を進める。
来ないで。来ちゃだめ。来るな。
心の中で呪文のように唱える。
バクバクと高鳴る心臓の音がうるさい。
相手に聞こえてしまいそうな気がして体を丸め胸を抱きしめる。
早く。早く行って。
ただひたすらに願った。
だが願いもむなしく、足音は突然ぴたりと止まった。
心臓が跳ね上がる。
気付かれた?
逃げなきゃ。そう思っても四肢は動かない。
時間の感覚が間延びし、数秒が数時間にも感じられた。そして
カサッ
草を踏む音。
♀商人は全身を石にする。
しかし歩み寄って来るかと思ったそれは進む方向を変えて離れていった。
彼女は全身が激しく震えだすのを止められなかった。


<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:HPSP共にレッドゾーン 意識回復

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている 仲間を襲う奴を止める
状 態:HPレッドゾーン脱出?

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
備 考:サバイバル・危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る
状 態:多少の傷 SPほぼ枯渇 寄生虫ロシアンルーレット状態 毒状態

<♀マジシャン>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
    首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀アルケミは敵?冤罪?
状 態:軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し 寄生虫ロシアンルーレット状態

<淫徒プリ>
現在地:E-6
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料二食
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
    ♀マジ達の所へ戻る ♀ケミを信じるべきか?
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態 SPほぼ枯渇

<♀商人>
現在地:E-6
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中


<残り15名>

207 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/01/14(月) 12:11:37 ID:RKBqfKAw
続きをありがとうございますー。
話がようやく動き出してうれしいです。

208 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/01/17(木) 03:34:03 ID:/EOAVjvo
>>207
GJ!
今後は寄生虫ロシアンと♀ハンタが目玉イベントかな

209 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/02(土) 21:33:51 ID:O4nwUA02
281.噛み合わない歯車[3日目午前]


遠くからかすかに言い合う声が聞こえた。
一瞬そちらへ気を取られた♂騎士は注意を目の前の茂みへ視線を戻す。
「そこの奴、出てこい」
騒ぎが聞こえると同時にそこでもはっきり気配が動いた。
誰かが隠れている。
しかし声を掛けてもすぐに出てくる様子はなかった。
剣を構え一歩踏み出す。
「来ないならこっちから行くぞ」
ゆっくり待っている暇はない。
聞こえた騒ぎが♀ハンターの引き起こしたものなら止めに行かなくてはいけないし、一方的に撃たれまくった♀騎士の具合も気になる。

すると茂みの向こうの誰かが口を開いた。
「出てもいいのですが、その前に質問です」
意外にも落ち着いた男の声。聞き覚えはないがとりあえず敵ではないらしい。
半ば戦う覚悟を固めていた彼は軽く意表をつかれて足を止める。
「…なんだ」
「そちらのお二人はどうしたのですか」
「二人?」
一瞬質問の意味が分からなかった。
だがすぐに♀騎士と♂モンクのことと気付く。
連戦の傷で気を失ったか、♀騎士は盾を構えてうずくまったまま動かない。
「ミストレスと…♀ハンターにやられた」
「ふむ?」
答えた途端に相手の声が不思議そうな調子を帯びた。
そして別の質問をする。
「相手の姿をはっきり見たのですか?」
「ああ。間違いない」
「ほう」
今度はわずかに考えるような間。
どうも疑われているらしい。その態度に彼はだんだんムカついてきた。
自分の正体も明かさず一方的に質問しておいて、こっちの答えを疑うとはどういうつもりか。
「いい加減にしろ。信じないならさっさとどっか行け」
彼は腹立ちを隠さずに言った。
だが次の質問で頭にのぼった血が一気に引く。

「姿が見えるならなぜ♂アルケミストさんを手に掛けたのですか?」

頭の中が真っ白になった。
違う。
いや違わない。
「あれは…あのときは本当に…」
「誰だか分からなかったと?」
言葉を先取りされた。
こいつは彼についてよく知っているらしい。
だが、声にも口調にも聞き覚えはない。
いったい何者だ
何もかも見透かされているような気がして恐怖がじわりとこみ上げてきた。

*****

「ではいつ、どうして分かるようになったのです?」
♂騎士の様子を茂み越しに見ながら、♂セージはやや詰問口調に問い重ねる。
いつものような余裕がない原因は後方から聞こえてきた騒ぎだった。
仲間達に何かが起きたのだ。
すぐに戻りたかったが♂騎士と接触してしまったあとではそうも行かない。
彼が危険人物であった場合、ただ逃げたのでは仲間達のところまで追って来られる可能性がある。
逆に味方にできるなら何も言わず逃げては後の信頼回復が難しくなる。
だから敵か否かだけでも確認したかった。
とは言っても事情を細かく問いただす余裕もなく、
「…♀アーチャーにとどめを刺したときだ。…理由は分からない」
♂騎士が苦しい声で釈明したのに対して一歩踏み込んで確認することができなかった。
「♀アーチャー?確かですか?」
「…ああ」
相手がはっきりと頷いたのを見て♂セージはため息をつく。
「では残念ながらあなたを信用するわけにはいきません」

「……そうか」
♂騎士も重い息を吐いた。
頼まれてとはいえ罪もない少女の命を奪ったのは事実だ。
♂アルケミストとのことも知られている。
ならば人殺しの自分を信用できないのも当然だろうと思ってしまった。

だが♂セージには別の理由があった。
彼は♀アーチャーがミストレスに憑依されていた事実を知らない。その一方で2日目夜の放送で彼女が死んだという情報は聞いている。
放送と♂騎士の言葉の両方を事実だとすれば♂アルケミストを殺害した時点で彼は正常だったことになる。
そんなはずはない。またジョーカーが死亡者の名を偽る理由もない。
つまり♂騎士が嘘をついている、あるいはまだ何かの異常を残している疑いが濃い、という結論になる。
何か事情があるのかもしれないが、それを聞き出して真偽まで確かめるにはどれだけ時間が掛かるか分からない。
かと言って不安要素を残したまま連れ帰るわけにも行かない。
残念だが今は諦めるしかなかった。

*****

「で、俺をどうするつもりだ。殺すのか」
騎士がどこか捨て鉢につぶやくのを聞きながらグラサンモンクはかがめていた腰を伸ばした。
どうやら決裂したようだ。これ以上ここに居る意味はない。
「いえ、私たちが離れるまで動かないでいただければ充分です」
「私たち?」
意図的にだろう、♂セージが複数形で言ったセリフを♂騎士が聞きとがめる。
それと同時にグラサンモンクは茂みから♂騎士の背後へ出た。
万一に備え、♂セージが会話で注意を引いている間に回り込んでいたのだ。
いきなり背後を取られた♂騎士が驚き顔で振り返る。

「戻りますよモンクさん」
彼の行動に♂セージも慌てたらしい。早口に呼び止めた。
それはそうだろう。この状況で姿を見せる理由は普通に考えれば戦うため以外にはありえない。
だが正直彼にも戦っている暇などなかった。
姿を見せた理由は別にある。
「そのモンクを連れて行かせてもらう」
グラサンモンクは身構える♂騎士へ淡々と告げた。
悪ケミの作戦を成功させるにはGMに対応されるより早く全員の首輪を無効化しなければならない。それには気奪を使う人間が彼1人では無理がある。
目の前にモンクが倒れているのに置いてゆく手はない。
「まて、そいつは」
抗議しようとする♂騎士の目をグラサンモンクは真っ向から睨み返した。
「仲間だというならなおさらだ。お前に治療はできまい」
「だが」
「くわしい話はこいつに聞く。当人が戻ると言えば止めん」
目を合わせたままジリジリと膝を落として♂モンクの体をかつぎ上げる。
しかしさすがに♂騎士もそれを黙って見過ごしはしなかった。
「やめろっ!」
「フロストダイバー」
♂騎士が実力で阻止しようと踏み込む。その瞬間♂セージが茂みを飛び出し呪文を唱えた。
完全に背後をつかれた♂騎士はとっさに身を捻って避けようとするが、右半身を氷に閉じ込められる。

グラサンモンクは無力化した♂騎士を無視して♂モンクを背負う。
♂セージは彼に歩み寄って仕方なさそうに言った。
「女騎士さんも連れて行きましょうか」
言外になぜ危険を冒して♂モンクを連れ帰ろうとするのか、♀騎士はいいのか、と聞いている。
だから彼は即座に断言した。
「そっちは無駄だ。諦めろ」
目的は♂モンクだけだという返答。
実際に♀騎士の傷が助からないほど重いものかどうか分からない。
だが連れて帰ったところで皆ヒールする力は使い果たしている。可能性があるのは♂プリだが、彼だけでは2人とも治療するのは厳しいだろう。
まして彼と♂セージの両方とも怪我人を背負っていては、帰り道に襲われた場合反撃できない。
それは危険すぎる。
ところが♂セージは平然と言い返した。
「何とかなるでしょう。彼女も居ますし」
そして自分が出てきた茂みをちらりと見る。
「そうか」
グラサンモンクは調子を合わせて頷いた。
こちらが複数だと匂わせたのと同じ。伏兵を警戒させて追跡をためらわせるためのハッタリだ。
♀騎士を連れて行くのもそれだけ余裕があるという一種の示威行為になる。

まあいいか。
グラサンモンクは冷徹に計算した。
戦力は多いに越したことはないし、万一の場合には捨てれば済むことだ。

*****

「待て、くそっ」
♂騎士は左手で体を縛る氷を殴りつけた。
利き手じゃない上に態勢に無理があるためうまく割れない。
「くそっくそっくそぅっ!」
拳や氷の縁でこすれた部分の皮膚が破れ、血がにじむ。
それでも痛みを感じないことがいっそ悔しい。
氷から抜け出せたときには4人の影も形もなかった。
「くそぉ…」
無力感を噛みしめながら溶け残った氷の欠片へ力まかせに拳を叩きつける。
「…ん?」
うなだれる彼の目が地面の一点で止まった。
氷の破片に混じって何か落ちている。
それは♀騎士が持っていたはずの物だった。
「錐か!?」

210 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/02(土) 21:34:19 ID:O4nwUA02
<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、ツルギ
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:気絶 負傷多数 重篤?

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状

<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、錐、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
   できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
   両手剣タイプ
状態:痛覚喪失? 体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
   必要とあらば殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい

<ふぁる>
現在地:E-6
所持品:リボンのヘアバンド
スキル:ブリッツビート スチールクロウ
備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇、置き去り?
状 態:JTによる負傷で気絶中

<♂セージ>
現在地:E-6
所持品:ソードブレイカー 島の秘密を書いた聖書 口紅
容 姿:マジデフォ黒髪
スキル:ファイアーボルト ファイアーボール ファイアーウォール ナパームビート ソウルストライク フロストダイバー
備 考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? GMジョーカーの弟疑惑
    ♀騎士を背負って仲間の所へ

<グラサンモンク>
現在地:E-6
所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス 種別不明鞭
容 姿:csm:4r0l6010i2
スキル:ヒール 気功 白刃取り 気奪 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳
備 考:特別枠 右心臓 したぼく二号 悪ケミを護る ♀ケミに疑念 デビルチ・♀ハンターを警戒 ♂モンクを拾って仲間の所へ
状 態:掌と肩に打撲 SPほぼ枯渇
参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)

211 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/05(火) 00:31:31 ID:T1ZpnmbU
おー、暫く見ない間に進んでいる。
書き手さんおつかれさまですー

212 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/05(火) 10:47:11 ID:QkXzUbsE
久しぶりに見たら進んでた!嬉しいなー
♂セージが♀アチャ=ミストレス知っていたら推理さっくり終わったのに…
そうそううまくいかないのがバトロワの面白さでもあり。

読み専だけど時系列とかすっかり忘れちゃってる。
キャラごとの知識しっかり把握してる書き手さんは凄いなぁ
また初めから読み直してみよう

…しかし♂プリは一部でも二部でも長生きさん。
何気に二部ではアコ系残ってるね。
二次女性陣は早々に脱落していっちゃったけど。

213 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/25(月) 02:55:37 ID:hmTGKf9A
書き手おつー
楽しませてもらったよー

214 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/25(月) 12:52:52 ID:A0bDnk7Q
281話までwiki更新
wiki管理人様、見ているようでしたらTOPの八、九冊目のリンク先の変更をお願いします。

たまには参加したいけど話追うので手一杯な元書き手
MAPまとめ無いとこうも移動経路追うのが大変だとわ…orz

215 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/01(土) 16:22:49 ID:.vKkhEPo
今ある動画って3つだっけ?

216 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/03(月) 02:23:18 ID:WU8jqbus
チラ裏だが二年前に大好きだったスレがまだ残ってるとは!
とりあえず第二回一気読みしてくる

217 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/03(月) 14:27:22 ID:AVplZYSs
今Wiki全部読み終わって、第二回のNG集見てる
上腕二等筋にふいたww

218 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/07(金) 12:40:09 ID:RHCeFzWQ
あぅぅ〜…話結構進んでてなかなか書き手になれない;;
第三回始まったら自キャラ出そうと思うんですが^^;
今度じっくり読んで頑張って第二回の続きを書きたいと思います

219 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/07(金) 14:55:11 ID:yx1RwipY
>>218
そういうのはやめた方がいいよ<自キャラ出したい
たぶん、3回目があっても名前は付けない、職名のみの慣習は続くはずだから

220 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/07(金) 14:59:44 ID:074Z2eeM
そろそろ2回目もまとめたいもんだがまとめにくいからなぁ、今の流れ。
あと3回目あってもあんまり自キャラとか出さないほうがいいぞ。

愛着あるキャラがあっさり死ぬ様子ほど欝展開は無いし、
たまにそういうので無理やり展開で生き延ばしたり、かと思えばやっぱり死にました展開とか引っかかるからなぁ。

221 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/07(金) 22:27:41 ID:dU5DU76s
いや、自キャラが死ぬシーンが一番の見せ場だろ
出来るだけ生き延びて欲しくはあるが

222 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/08(土) 00:17:53 ID:z0Q6F2EM
てっきりみんな出してるもんだと思った
違ったのか

223 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/10(月) 05:39:14 ID:dIR1cXMo
モデルにしたのは認めるが身びいき入るのは嫌だったので主に他の人に任せてた
いい死にっぷり書いてもらえたので満足している

224 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/10(月) 10:22:36 ID:D5potv62
いかに格好いい死に様を見せられるかがポイントだしな
身贔屓で死亡フラグバキバキ折るような主人公キャラはいらん

225 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/11(火) 16:55:56 ID:PZ4OtINs
218=222だが…。
私も自キャラモデル予定で出したいと思ったわけですよ^^;
もちろん、皆さんに託しますが

226 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/14(金) 05:19:07 ID:bKdNahMo
バROを最近知って、第一回から読み続けてようやく追いついた!
書き手さん尊敬します。
序盤の事故死があっけなくて好きです。なぜかリアリティ感じる自分。。。
(枝折>深遠出現死とかランダムポタ転落死とか)
自分も書けるかなぁ。

227 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/18(火) 17:25:58 ID:5wHAY.oA
終盤戦は本当に難しいね。
第一回もルート分かれちゃったんだっけ?
分からなくなってきたのでぷちメモ

・現在単独行動中
♂騎士、♀ハンター、♀ケミ、♀Wiz、ふぁる(気絶したまま放置?)

・モンクたち
♂セージ、♂モンク、♀騎士、グラサンモンク

・大所帯
♂プリ、♂スパノビ、♀マジ、♀アコ、淫徒プリ、悪ケミ、子デザ

・モンスターズ
パピヨン、デビルチ

首輪つき14人、イレギュラー気味なのが4匹
そう考えるとまだ結構残ってるのかな?

228 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/21(金) 03:56:27 ID:yZWf6qe.
たまには♀商人のことも思い出してあげてください

229 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/23(日) 02:39:57 ID:LwEGKuvc
かなり久しぶりに来たけどまだ人がいてよかった。これから書き手になるのは無理だから大人しく読んでるけど
もし第三回があったら少し書いてみたいな
……まあ出来が悪くてやってもNGになるかもしれんがwww

230 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/26(水) 12:50:27 ID:309pPXYs
>>228
失礼。書いてる途中に消えた模様
15人+4か
どう収束させていくんだろう
楽しみな反面、このまま停滞しないかと不安でもある

231 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/26(水) 15:21:06 ID:8IcLkBfk
さて、久々にちょっと書きたいんだけれど流石に終盤になってくると、
状況がややこしくなってきて把握しづらいぞっと。
各々の指向と指針の把握がてら、ちょっとメモ挿ませて貰いますね。


♂騎士:状態安定。人を護る騎士になる。グラサンモンク達と敵対??
♀ハンター:錯乱中。自我崩壊。全身ぼろぼろ。
♀Wiz:
♀ケミ:あわあわどうしやう
♀商人:皆に合わせる顔が無い、♂Sageに会いたい

♂Sage:♂騎士、♀ケミに不信感。
♂モンク:気絶中、
♀騎士:気絶中、
♂プリ:状況把握
♂スパノビ:♀ケミを護る
淫徒プリ:
♀アコ:♀ケミを敵と認識→勘違い?
♀マジ:♀ケミを敵と認識→勘違い?
グラサンモンク:♂騎士に不信感? ♀ケミに不信感
悪ケミ:

やーんまとめるの下手。
補足誰かお願いしますっ。・゚・(ノД`)・゚・。

232 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/26(水) 17:23:21 ID:8IcLkBfk
282.Who is Helper?[三日目午前]

 どうしよう。どうすればいい。
 はぁはぁと弾んだ息を抑えようとしつつ、木陰に隠れて♀アルケミストは現状の把握と整理に必死で頭を回転させていた。が、すぐにその思考には余計な感情が入り混じってくる。
 ――今までの人生も巧く立ち回らなければここまで生きてこれなかったのは確かだろうが。こんなに疲れる頭の使い方をしたのは、この島が初めてだ。もう嫌だ。
 駄目だ。考えろ。諦めるな。考えなければいけないのは、ここだ。今考えなければ、後悔しても遅い。死にたくなければ、考えるしかないのだ。そうやって今までも考え続けてきたじゃないか。
 ♀アコライトと♀マジシャンには、完全に敵と見做されたに違いない。いずれ戻ってくる淫徒プリら仲間達も、最早♀アルケミストの安全を確保してくれる駒にはならないだろう。元から、淫徒プリや♂セージには自分の行動は怪しまれていたようだったし。
 残っている参加者は何人だったか。その中で、自分が取り入れそうな奴は果たしてどれだけいるのだろうか。あの大所帯以外で生き残っている奴らなんて、もうこのゲームに乗った殺戮者しかいないんじゃないのか。

 ――もう、自分の身は自分で守る以外に術は無いんじゃないか。

 はっとする。
 自分の味方は、もうこの島には居無い。
 居無いんじゃ。そうだ、きっとそうだ。
 ひとりの心細さはもう、この島に来てからだけでも何度も経験してきた。それでも、誰かが――使える誰かが、何処かにいるだろうと思っていた。利用できるものを探して、どうにかしようと、どうにかなると、どうにかできると、そう思っていた。
 でも、もう、自分は、本当にひとり――

 ながま、助ける。

「・・・・・・あいつ」
 ♂スーパーノービス。そういえば、♂スーパーノービスはどうしたのだろうか。
 私の仲間だと思われて、ほかの奴等にやられてしまったのか。
 否、あいつ等は馬鹿だ。殺し合いのこの場に置いて、まだ甘さがある。あの♂スーパーノービスが悪い奴ではないということは、私にだって解る。それが解ったとして、私の仲間というだけで殺したりなんかするだろうか。
 ・・・・・・あの集団を追い出されることはあっても、殺される可能性は低い筈だ。ならば、私はあの♂スーパーノービスを拾いに行かないと。
 もしかすると、あの集団の仲間に入ってしまっているかもしれない。或は、本当に殺されてしまっている可能性だって無い訳じゃない。
 それでも。それなら。
 今の私には、否――私には、きっとあいつが必要なんだ。


 鳥の鳴き声がまばらに聴こえた気がした。
 そして、かさり、と。
 何かの音に気づいて、♀アルケミストははっと息を呑んだ。
 誰だ。♂スーパーノービスか? そうであって欲しい。否、そうでいて。
 木陰からちらりと顔を出す。向こうから、何かが歩いてくるのが見えた。

 ――何、あれ。

 人には見えなかった。
 人の形を成してはいるが、それは人ではない。
 グール。そうだ、ゲフェンの地下洞窟に棲む屍人があんな風な姿をしていた。
 どういうことだと、♀アルケミストはまたも頭を抱える。このゲームの敗者の誰かの亡骸が黄泉返って、真っ昼間から島を闊歩しているとでも言うのだろうか。・・・・・・ああ、もうそれでいい。何が起きても不思議じゃないんだ、この島は。
 だが。
 少なくとも、アレは味方ではない。味方である筈がない。
 だが、よろよろとしたその屍人は♀アルケミストの方に近付いてくる。気づかれているのか、偶々か。よく見れば、屍人はぼろぼろの曲がった棒のようなものを片手に持っている。あれは・・・・・・弓、か?
 どうすればいい。♂スーパーノービスはいない。今は♀アルケミストひとりしか、ここにはいない。

 ――自分の身は自分で守るしか無いんじゃないか。

 そうだ。グール程度、ひとりで倒せなくてどうする。私だって、アルケミストの端くれなんだ。
 武器だってある。グラディウスも、クロスボウも。どちらも普段あまり使い慣れない得物だけど、戦える。誰かに、♂スーパーノービスに頼り切ってるばっかりじゃ駄目なんだ。
 唾を飲み込むと、毒を含んだ矢を一本、クロスボウに番える。
 屍人は、ゆっくりと歩いている。疲れ切ったように、ふらふらと。
 こいつを倒して、♂スーパーノービスを探しに行こう。♂スーパーノービスと一緒に、守り、守られ、生き残ろう。その先なんて、考えるのはもう疲れた。

233 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/26(水) 17:23:58 ID:8IcLkBfk
 とすり、とグールの左脇腹に矢が突き刺さった。ぐらりと屍人の身体が傾ぐ。
 よろよろとした動作のままで、漸くその存在に気づいたという風に屍人は視線を己が脇腹に落とすと、緩慢な動作でそれを引き抜き、自分の持っていたぼろぼろの弓を構えてそれに番えた。
 ♀アルケミストは焦り、木陰から次の矢を装填しようとしながら屍人に目をやり、――視線が合った。
 その瞬間、屍人の口がぱっくりと裂け、三日月の形を作った。ヘケ、と。
 嗤った。
 怖気立つ。そして、♀アルケミストは悟った。

 ――こいつは、グールなんかじゃない。
 ――もっとおぞましいモノだ。

 次の瞬間、己が放ったばかりの毒矢が♀アルケミストの喉元に突き立った。
「・・・・・・っ、か」
 手から力が抜け、クロスボウも番えようとしていた矢も地面に転がる。数秒の間を置いて、♀アルケミストの身体も。
 熱い。痛い。悲鳴さえ出ない。起き上がれない。
 何だ、これは。どうして屍人がこんな正確に矢を射ってくるんだ。どうして屍人が弓なんか持ってるんだ。アレは、何なんだ。
 首に矢が突き刺さったというだけでも致命傷なのに、この矢には自分が仕込んだ毒が染み込んでいる。・・・・・・お笑い種だ。
 不気味な液体を滴らせながら、ソレが近付いてくるのが倒れている♀アルケミストの滲む視界に映った。
 ああ、私の意識よ、どうせもうすぐ掻き消えてなくなるんなら、早く遠のけ。あいつが来る。
 早く、

 この恐怖をどこかにやってくれ。
 ――――――・・・・・・・・・・・・


「この『寄り道』、正解だったのか」
 ぴくりと、ソレは反応した。最早意識を失い、放っておいてもいずれその命尽きるであろう♀アルケミストよりも、新たな闖入者の方が危険と判断――するだけの思考能力がソレに残っていたのかは疑問だが、兎も角現れた二人――正確には四人――に視線を映し、ソレは弓を構えた。
「何かの体液と足跡・・・・・・危険なものがいるのであれば確認しておく必要があると思ったのですが。本当に危険だったようですね」
 ♂セージの口調はどんな状況であろうと変わらない。つくづく冷静な男だ、とグラサンモンクは感心するが、実際のところグラサンモンク自身も似たようなものだ。
 ソレは矢を放つ。いつ折れてもおかしくない、いつ弦が切れてもおかしくないぼろぼろの弓で、次々と矢を放つ。
「どうする。この二人を守りながら戦うのは不利だ」
 矢の攻撃を避け、少しずつ退きながらグラサンモンクは問うた。戦うとすれば数の上では二対一だとしても、それぞれ大の大人をひとりずつ担いだままでの戦闘などは無茶だろう。それでなくても、今は万全ではない。
「一旦退くのがベストなのでしょうが。しかし」
「あれはどうする」
 グラサンモンクはちらりと♀アルケミストに視線をやるが、サングラスの下の視線の移動などが伝わる筈はない。しかし、もとより「しかし」と続けた本人である♂セージにも当然彼の言わんとする事は呑み込めたもので、矢の射程から逃れるためにグラサンモンクよりも更に半歩以上身を退きつつ、さて如何するべきでしょうかと思案する。
「このまま矢の雨を避けつつ誘って誘って、♀アコライトさん達と合流すれば――安全に戦えますが」
「彼女は放置しても問題はないのか」
「首に矢が刺さってるように見えますね」
「・・・・・・全く。どれだけ怪我人を拾えば気が済むんだ」
「助けられる可能性は低いと思いますが。この♀騎士さんも急いで治療する必要がありますし」
「解っている。ヤバそうなら撤退だ」
 グラサンモンクは、担いでいた重い荷物を地面にどさりと置くと、今にも形を失って崩れ落ちてしまいそうな弓を構えたままじりじりと迫ってくる、ソレの眼をサングラス越しに見据えた。
 狂気。絶望。悲哀。何が宿っているのかを読み取ろうとしたが、それは不可能だった。焦点のぼやけたその虚ろな瞳には、何も宿ってはいなかった。
「・・・・・・こいつは何だ」
「変わり果てた姿ですが――人間ですね。恐らくは、件の♀ハンターさんであると思われます」
 じり、と♀ハンターであったモノはにじり寄ってくる。その弓の射程圏内に気を失っている二人を入れぬようにと、グラサンモンクは自ら歩を進めた。ケヒ、という嗤い声が耳に入った。
「救うべきモノなのか、潰すべきモノなのか――と訊いている」
 やれやれという呟きと共に、どさりと背負った♀騎士を地面に寝かせる音がして、この場合それは同義ですよ――と、グラサンモンクの隣に並びつつ♂セージは答えた。

<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 ♂スーパーノービスと合流したい(ひとりは怖い)
状 態:脇腹に貫通創(治療済) 寄生虫ロシアンルーレット状態 喉元に矢 毒 気絶 瀕死

<♀ハンター>
現在地:E-6
所持品:スパナ、古い紫色の箱、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3]
    (所持品は全て寄生虫の体内にいたため痛んでいます)
外 見:全身の皮膚が半分溶けた異様な姿
スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング
備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり
状 態:発狂 自我崩壊

<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、ツルギ
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:気絶 負傷多数 重篤?

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状

<♂セージ>
現在地:E-6
所持品:ソードブレイカー 島の秘密を書いた聖書 口紅
容 姿:マジデフォ黒髪
スキル:ファイアーボルト ファイアーボール ファイアーウォール ナパームビート ソウルストライク フロストダイバー
備 考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? GMジョーカーの弟疑惑 ♀ハンターと対峙

<グラサンモンク>
現在地:E-6
所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス 種別不明鞭
容 姿:csm:4r0l6010i2
スキル:ヒール 気功 白刃取り 気奪 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳
備 考:特別枠 右心臓 したぼく二号 悪ケミを護る ♀ケミに疑念 デビルチを警戒 ♀ハンターと対峙
状 態:掌と肩に打撲 SP微妙に枯渇
参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)

234 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/30(日) 02:06:04 ID:0HHyF.Lc
うお、久しぶりに来たら話が進んでる。最後のグラサンとセージがシブくてかっこいいなぁ

235 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/30(日) 15:32:31 ID:BubtheLU
グラサンモンクとセージが良い味だしてるじゃないか。

236 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/04/01(火) 10:35:21 ID:bH1w3JzM
グラサンとセージかっこいいなぁ
最後のやり取りとか大好きだ
♀ハンタさん完全に遠い世界に旅立ってしまっている
ふぁると仲良くしてた頃が懐かしい…ってふぁるいつまで寝てるんだー
ケミさんは可哀想に思えてきてしまった
本当は一人で寂しかったのを「利用する」って建前で人に近づいてたのかな

純鷹vsFCAS+指弾阿修羅となったけれどハンタさん不利?
グラサンのステ忘れちゃったけどSPないと苦しそうだなぁ
久々のバトルシーン、どんな熱い展開になるか楽しみ。

237 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/04/02(水) 11:16:53 ID:.sNm1r8s
戦闘力的に♀ハンタには勝ち目はないだろうけど
グール状態だからこそ何かしでかしてくれると思ってるぜ!

238 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/04/03(木) 01:01:50 ID:lHuKYOx2
♀ハンタをなんとか救ってあげたいなぁ…
ふぁるも大変だが寝てる場合じゃないぞ、頑張れ!

239 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/04/05(土) 15:42:01 ID:zyRiETVM
なあなあになってきてるこの企画も終結へとまとめたいんだけど、
書き手さんって何人くらいいるんだろう。
私もいち書き手としてちみちみ書いてはいるのですが、
進行速度がこれだと自分ばかり書いてしまっても・・・と、
なかなか筆を進め難い現状なのです。

今でもこのスレ覗いてて、意欲のある書き手さんはほかにどれくらいいるのかな、とちょっと気になる所。
ある程度の人数がいるのであれば、ちょっとスパートかけて完結まで漕ぎ着けてみませんか・・・!
と、拙いながらに舵を取ろうとしてみる。

出過ぎた真似であったら申し訳ない・・・・・・(´・ω・`)

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