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【憎悪と狂気】バトルROワイアル 十冊目【恐怖と絶望】
60 名前:
名無しさん(*´Д`)ハァハァ
投稿日:2007/05/14(月) 06:36:39 ID:dJEOE2r6
267.頭上の敵[3日目午前]
まずいことになった、と♀ケミは全力で脳を回転させる。
死にぞこないの逆毛が余計なことを言ってくれたせいで疑われるのは時間の問題になってしまった。
しかも顔見知りの淫徒プリまで出てきた。
考えてた中でも最悪に近い状況だ。
でも、事態はまだ混乱している。
「ん〜。ちょっと増えすぎ?できれば順番に並んで欲しいなあ」
「ふざけんなー!あんたちょっと降りてきなさいっ」
「やーだよー。そっちが昇ってきたらー?」
パピヨンは急に数の増えた『ごちそう』を警戒して少し高度を上げていた。
その高さから地上の♀アコと口げんかしている。
こうしてみると知能のあるパピヨンというのは実に厄介だ。
人の手の届かない高さから中〜遠距離の攻撃ができるのだから。
弓使いがいない今、有効な反撃をできるのは魔法使いだけだろう。
彼女は♂セージと♀マジに視線を向ける。
「魔法使いさんたち、あのパピヨンを撃ってください!」
「あ。ちょっとムカ。そこのおばさんからに決〜めた」
「誰がおばさ――」
ヒュヒュヒュヒュンッ
♀ケミの言葉をさえぎって血色の魔力球が殺到した。
「きゃっ」
「ソウルストライク!あんた、挑発してるんじゃないわよっ」
「ソウルストライク。まあやることは一緒のようですが」
パパパンッ
左右から飛来した半透明の魔力球が血色のそれと空中で交錯する。
ほとんどは相殺しあったが、弾幕をすり抜けた赤光が一発♀ケミの眼前へ迫る。
「ちっ」
命中直前、グラサンモンクの掌が割り込んで受け止めた。
彼も♀ケミに対する疑念を増してはいたが、目前の敵に攻撃を受けてる最中にそんなことは言ってられない。
薄く煙を上げる手のひらを握り締め、彼は毒づいた。
「思ったより痛いぞ」
「あったりまえでしょ!むちゃするんじゃないわよっ」
悪ケミに叱られるグラサンモンクを横目に♀ケミは考えを素早くまとめる。
どうやら『仲間』達はまだ彼女を見捨てていないらしい。
♂プリの言葉を聴いて全然疑わないはずもないだろうが、これなら挽回の余地はある。
「プリーストさんが危ないです。あの人から引き離さないと」
彼女はそう言って飛び出した。
「ちょっとあんた、まだそんなこと」
「戦えないのに前出るなーっ」
叫ぶ♀マジと♀アコの間を抜ける。
前へ。一気に♂プリの元へ。
「ちょっとー。無視すーるーなー」
木々の間を縫ってパピヨンが襲い掛かった。
中空から再び真紅の光弾を放とうとする。
だが今度はそれが撃ちだされる前に消滅した。
「スペルブレイカー」
「あ、あれっ?ちょっと、邪魔しないでよっ」
「そう言われましてもねえ」
「む。次やっつけるのあんたに決定ー。いーもん別のコトだってできるし」
つかみどころのない笑みを浮かべる♂セージに頬を膨らませ、パピヨンは羽を大きく羽ばたかせる。
「寝ちゃえー!」
その蝶の羽からキラキラ輝くものが広がった。
「きれい…」
「のんきですね。息を止めて」
「鱗粉?…げ、やば」
「何が?」
♂セージや♀マジらはその意味に気付いて息を止めたが、♀アコや♀商人、グラサンモンク達は舞い散るそれを吸い込んでしまった。
「ちょっとしたぼく!ねるなー!」
「…ぐ」
足元をふらつかせたグラサンモンクを悪ケミが叩き起こす。
♀商人も♂セージが肩を揺さぶって意識を取り戻させた。
睡眠毒も体へ直接打ち込まれた場合と違って広範囲に散布したのでは効き目は薄いようだ。しかもこの人数なら眠らなかった者が起こせる。
「もういっかーい」
「同じことやったって無駄よっ」
再び輝くものが宙に広がるのを見て全員が息を止めた。
だが、その様子にパピヨンは笑う。
「なーんちゃって」
瞬刻の後、触角の間に真紅の光弾が生まれ♀ケミへ向かって殺到した。
息を止めていた♂セージはスペルブレイカーに間に合わない。
「――しまった!」
「きゃあっ!?」
どぱぱぱんっ
鈍い着弾音が連鎖する。
その衝撃に突き飛ばされるように♀ケミの体が転がった。
「ああもうっ」
♀マジは♂セージとアイコンタクトを取り詠唱の態勢に入る。
「ソウルストライク!」
「邪魔っ」
ほとんど同時にパピヨンは魔力球を生み出し、自分がやられたのと同じように相殺しようとする。
その出鼻を♂セージが押さえた。
「スペルブレイカー」
「ええっ!?うわわわわっ」
撃ち出される前に赤い光球だけが消滅する。
当然のように♀マジの魔法はパピヨンに命中しようとした。
彼女はとっさに羽を閉じて落下しながら身をよじり、直撃を回避する。
それでも避けきることはできず、魔力に弾かれた羽から鱗粉が散った。
「んもうあぶなっ!って、きゃーっ!?」
「とうっ」「逝け」
地上すれすれで羽を広げ、地面への激突を回避したパピヨンへ2つの影が殺到する。
鋭い拳の連打が左右から襲った。
スピードを殺した直後で飛び立つには間に合わない。避けようにも挟み撃ちで逃げ道が封じられている。
とっさにパピヨンは地面を蹴り、同時に触角を上へ放った。
鞭のように枝に巻きつかせ、一気に体を引き上げる。
「まだだ」
拳が空を切ったグラサンモンクは体を急停止させ、パピヨンへ右の人差し指を向けた。
その動きに合わせて青白く光る気の塊が飛ぶ。
急いで枝から触角をほどいて羽ばたくが、逃げ切るには間に合わない。
かすった肩口から薄黄色の体液がしぶき、羽にピンポン玉大の穴が開いた。
「いったーい!なにすんのよ寄ってたかってー!いじめかっこわるいっ!」
「…どこでそんな言葉覚えたのよ」
「あれで落とせないとはな」
魔法も届かない高度へ離れたパピヨンを睨みつつ、グラサンモンクは気を練り直す。
その間に淫徒プリは♀ケミの元へ向かっていた。
見たところあのパピヨンの能力は通常よりかなり高い。
魔法の直撃を受けたとすればかなりひどい傷を負っているかもしれない。
「あんたも無視すーるーなー」
その動きを見とがめたパピヨンは急降下し、魔法の射程に淫徒プリを捉える。
だがそれは地上にいる者たちにとっても同じことだった。
「今度こそっ」
♀マジがソウルストライクを詠唱し、♂セージはパピヨンの動きを待つ。
しかしパピヨンは闇SSで相殺しようとはしなかった。
「おんなじ技はきかないよーだ」
手近な巨木の幹を巻くように降下し、魔法の射線を切る。
半透明の魔力球は木の表面でむなしくはじけた。
「それではそちらも撃てないでしょうに」
♂セージは即座にスペルブレイカーの準備をやめて素早く別の呪文を詠唱する。
「ナパームビート」
その術はパピヨンではなく、彼女が回り込んでいる木の枝で炸裂した。
軽い破裂音が上がり、衝撃波が四方に放たれる。
衝撃は幹の陰へも回り込み、狙いどおりに蝶の羽を打った。が、パピヨンは軽く顔をしかめただけで爆圧に乗ったかのように加速する。
目標は彼女のほぼ真下で待ち構えるグラサンモンクと♀アコ。
「いっくぞー」
「来い」
すでに気を集め終わったグラサンモンクはその流れを指先へ集める。
飛び込んでくるのが剣を握った人間なら指弾を撃つほうが早かっただろう。
しかしパピヨンの一撃は鞭の間合いを持っていた。
バチッ
鈍い音が上がり、彼の肩から背中にかけて服がはじける。
もちろんその程度の打撃で気を乱すような甘い修行は積んでいない。
指先へ集められた気は霧散することなく撃ち出された。
なのにその気弾はパピヨンをかすめもせず、あらぬ方へ飛ぶ。
(睡眠…攻撃かっ)
急激な眠気でグラサンモンクの腕が下がり、膝が落ちていた。これでは当たるものも当たらない。
暗くなる意識の隅で彼は歯ぎしりした。
だが、パピヨンも自身の突撃速度が速すぎて止まるにも次の一撃を入れるにも間に合わない。
衝突を避けてグラサンモンクの脇をすり抜けようとしたその時
「せぇいっ!」
止まりようのないパピヨンに♀アコの拳が振るわれた。
狙い打ちに突き出したジャブは正確に相手のボディを捉える。確かな手ごたえが拳に残った。
ところが本命の右ストレートは空を切る。
「ちょ、逃げるの!?」
「ばーかばーか暴力女ー」
ワン・ツーの間をすり抜けられた♀アコは飛び去る後ろ姿に叫ぶが、パピヨンは子供じみた悪口を返しただけだった。
落下のスピードをほとんどそのまま飛翔速度に変えた彼女は地面すれすれを滑るように飛ぶ。
逃げ出したわけではない。次の標的は別にあった。
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