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【憎悪と狂気】バトルROワイアル 十冊目【恐怖と絶望】

[404:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2009/03/20(金) 02:15:18 ID:cT0xx5Vg)]
295.GMのお仕事(三日目・昼)

意外なことかもしれないが、GMの仕事は決して楽なものではない。
例えば、不正者が現れないよう、首輪の盗聴器から取得する会話内容をログにとり、内容をチェックする。
また、冒険者達の各々の移動推移や死亡記録などもログにとり、いつどこで、誰が何をしたかを詳細に記録するのもまたGMの仕事である。
もちろん、直接幹部たるジョーカーやGMがそのような雑用を行うわけではない。
あくまで行うのは下級兵士達であり、GMはそれをチェックするだけである。
チェックするだけ、であるが、その量も膨大である。
特に現在はGMは幹部であるジョーカーを除いて一人となってしまっているため、GM橘の作業量も跳ね上がっていた。

「ご報告いたします。先ほど、♂プリーストが亡くなりました。死亡原因は――またも、パピヨンの仕業です」
「また、モンスターですか……」
既に、ジョーカーによって、パピヨンの素性は明らかにされている。
その上で、GM橘は頭を抱えていた。

死者がでるということは、通常ならば喜ばしいことである。
が――死亡原因が冒険者でなく、それ以外の要因にある。これは好ましいことではない。
何故ならば、BR法の狙いの一つには、最期の一人まで冒険者同士を争わせることで、王国の脅威となる冒険者の結束を崩すという目的があるからである。
しかし、冒険者以外の脅威が現れると、冒険者の特性としてかえって結束を強めてしまうこととなるのだ。
もし残った冒険者が全員結束し、GMに反逆を起こせば、GMとしては冒険者を皆殺しにしてはいけなくなる。しかし、それは当初の目的を達成できなくなるということにもなるのだ。
GM橘(林)は今、GM橘として行動している以上、この事態に早急に対処をしなくてはいけない。
元はといえば研究をしたいがためにこの島に潜り込んだ彼にとって、その作業は非常に厄介で面倒くさい仕事であろうと思われたのだった。
(第一、どうしろっていうんだ?)
今更パピヨンを参加者として登録しても、手遅れである。
会話ログを見ても、今や冒険者達の注意はマーダーよりもモンスターに向かっている。
そう、問題といえば、マーダーの存在もまたGM橘の頭を悩ます案件だった。
BRを実施するにあたって、運営側は参加者の中にマーダーとなりうる人物を送り込んだり、支給品に殺人を促進させるようなアイテムを仕込んだりして、結束意識の強い冒険者たちが殺し合いを行われるように促している。
だが、現在――マーダーとなりそうな人物が、いないのだ。
強いて言えば、精神異常を仕込んだ♂騎士がいるのだが、その♂騎士は現在、格好の獲物である♀商人と仲良く同行中である。
となると、♂騎士は精神異常をどうにかして解除したことになる。
これも会話ログを遡れば判明するかもしれないのだが、果たしてそれがどれだけ時間がかかるやら。
終末が近い以上、暢気なことは言ってられないのだ。


「で――私の判断を仰ぎたい、というわけですか」
「ええ。正直、私一人では手一杯です」
「そうですか。ご苦労様です。いえ、皮肉ではなく、本当に感謝しているのですよ」
GM橘が眉を顰めたのを見て、笑顔でジョーカーは否定した。
実のところ、GMジョーカーは女王の側近中の側近であり、他のGMよりも多くの権力をもっている。
そのため、この島でのジョーカーの仕事はGMの意思の最終決定を行うことと、他のGMが確認したログの簡単な報告を聞くこと、そしてあとはイレギュラーの対応くらいだけなのであった。
冒険者も運営側もてんやわんやに動いているこの島で、唯一ジョーカーだけがわりとのんびりとしているのである。
こういうときくらい、働いてもいいものではないか、とGM橘は糾弾したいのを必死で抑えているのだ。
ジョーカーは、ほんの少し思案して――言った。
「別に、問題はないでしょう」
「良いのですか?」
「この島に来た以上、冒険者たちの最期は2つです。最期まで生き残るか、死ぬか、です。
死ぬ状況も、そう多くのパターンはありません。他殺、自殺、事故死。あとは餓死とBANです。
このうち、ようは最期の冒険者がBANにならなければよいのですよ。それで、問題は解決です」
「ああ、なるほど」
そこで、ようやくGM橘もジョーカーのいわんとしようとしていることを理解した。
「つまり――大量の不正者が出た場合、二人を残してBANすればよい、ということですね?」
「そのとおりです。いくら冒険者とはいえ、所詮は人間。二人きりになれば、自ずと結束は離れ、殺しあうことでしょう」
「了解です。不正に関しては、そのように。ただ、パピヨンの扱いはどうします?」
パピヨンは、既に調査によって崑崙島のそれを遥かに超える能力を持っていることが確認されている。
もし彼女が冒険者を全員殺してしまっては、生存者がいなくなってしまう。
「それも問題ありません。確認したところ、どうもアレはミストレスほどの能力は持ってはいないようです」
半分、人間の血が混ざっているからかもしれませんね、とジョーカーは笑う。
「冒険者達が全員アレに倒されるとは考えられません。彼女には適当に冒険者達の脅威になってもらえばよいでしょう」
「万が一のことがあっても、冒険者が仲間を置いて逃げる光景がきっと見られるでしょう。それはそれで女王さまの慰みになるに違いない」
「クックック。わかっているではないですか」
薄暗い事務室に、ジョーカーとGM橘が響き渡る……

「橘様、ご報告いたします」
ジョーカーへの相談を終えたGM橘に、さっそく次の報告が回ってきた。
厄介ごとがやや晴れて気分が軽くなったGM橘は、さああと少しだ、と気合を入れなおすのだった。
「先ほど、パピヨンと♂騎士が戦闘に入りました。♂騎士は随分と興奮しているようです。また、ほぼ同時刻、♂セージと同行していた♂モンクが死亡しました。会話ログから、♂セージに殺害されたものと思われます」

<GMジョーカー>
位置:不明(管理本部)
所持品:ピエロ帽、他不明(バルムン?)
外見:ピエロ
備考:女王イゾルデの意向を最優先

<GM橘>
現在地:謎の地下室
所持品:剣(バルムン?) GM森の剣
外 見:銀縁眼鏡、インテリ顔
備 考:殴りHiWiz ガンバンテイン ヘブンズドライブ

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷
状態:死亡

<♂セージ>
現在地:E-6
所持品:ソードブレイカー 島の秘密を書いた聖書 口紅
容 姿:マジデフォ黒髪
スキル:ファイアーボルト ファイアーボール ファイアーウォール ナパームビート ソウルストライク フロストダイバー
備 考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? GMジョーカーの弟疑惑 ♂モンクを殺害?


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