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【憎悪と狂気】バトルROワイアル 十冊目【恐怖と絶望】

[412:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2009/04/05(日) 00:55:01 ID:h2uU.IaM)]
296.泥仕合(三日目・昼)

ブォンッ!!!

重量200を誇る両手剣カッツバルゲルが、数瞬前までパピヨンがいた空間を引き裂く。
「逃げるんじゃない、この薄汚い虫けらが!!!」
ブォ……ズガシャッ!!
「ひぃぃぃぃぃ!!」
再び剣が振り下ろされたため下の地面が砕け散り、またも間一髪で避けたパピヨンの体に泥が飛び散る。
だが、それが目立つことはない。何故ならば、パピヨンは既に大量の泥と自身の血によって美しい体を汚していたのだから。

恐怖におののいたパピヨンの攻撃は、あっさりと♂騎士に回避された。強力な攻撃を行うことのみ考え、ろくに照準を合わせないがむしゃらな攻撃だったのだから、当然だ。
そして、初撃を失敗したツケは大きかった。
右翼の損傷。
自由に空を舞い敵を翻弄する、ヒットアンドアウェイスタイルを主とするパピヨンにとって、これは大きな痛手だった。
飛べない蝶は芋虫と同じ。
今のこの瞬間まで、パピヨンはただただ♂騎士の攻撃を避けることしかできていない。

「うおおおおおおおおおおおっ!!!」
ブン! ブン! ブンッ……ズンッ!!!

凄まじい重量を持つはずの鉄塊にも関わらず、カッツバルゲルは怒涛の勢いで攻撃を仕掛ける。
それは鍛え抜かれた♂騎士の肉体・技術だけで実現できる代物ではない。
♂プリーストを殺された怒りが、極限を超える力を、♂騎士に与えた?
それも、違う。
実は、GMが♂騎士に事前に投与した薬品の中には、精神に異常を与えるだけでなく、肉体の反応速度を向上させる薬品『バーサークポーション』が含まれていたのである。
イグドラシルの実により若干中和はしているものの、未だに一部の異常は♂騎士の肉体と精神を蝕んでいる。人間には不可能とも思える攻撃の裏には、このような事情があったのである。
だが、それにも関わらず、既に20撃以上の攻撃を放っておりながら、未だに♂騎士はパピヨンに致命傷を与えられずにいる。
それは、パピヨンが身軽であり、羽が負傷していてもある程度の回避力を持っていることもあるが、それ以上に♂騎士への精神が乱れていることにある。
なんのことはない。バーサークポーションの効果により攻撃速度は増したが、精神が正常を見失っているため、攻撃がずさんになっているのである。
そして、いつまでもパピヨンを殺せない苛立ちはさらなる怒りを呼び、さらに攻撃は苛烈になるが、避けやすくもなっていく。
重要なのは――そのことを、♂騎士だけでなくパピヨンも理解していないことだ。

「死ねッ! 死ねッ! 死ねッ! うおおおおおおおおおおおっ!!!」
フォン! ズガッ! フォン! ズガッ! フォン! ズガッ!

苛烈な攻撃は、パピヨンを捕らえられずに地面だけを耕す。
パピヨンは回避し生き延びることだけに夢中で、反撃を行おうとすら考えない。
それは、見た目だけが派手な、ただの泥仕合だった。


しかし、いつまでもそれが続くはずもなく。
終わりは、あっさりと、訪れた。

「あ」

ずるり。
カッツバルゲルによって破壊された地面に、パピヨンが足を取られた。
パピヨンの体を地面に沈み。
鉄の刃が、パピヨンの頭部目掛けて振り下ろされる。

フォン……グシャッッッ!!

カッツバルゲルは、木っ端微塵に打ち砕いていた。
パピヨンが、一瞬前まで倒れ付していた、その地面を。

そのパピヨンの姿は、♂騎士の視界にはない。
代わりに♂騎士の脳裏に浮かぶのは、眼前に刃が迫ったパピヨンの体を、一瞬淡い光が包んだ光景。
テレポート。
そう、♂騎士達冒険者は首輪と能力制御装置によってスキル能力などを封印されているのだが、パピヨンは部外者であるため、テレポートの規制から外れていたのである。
それを理解した♂騎士は、弾かれたように動いた。

「うおおおおおおおお、糞、このやろう、どこだ、でてきやがれえええええええっ!!!!!」

ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!

♂騎士の剣が、そこらへんの茂みをなぎ払う。だって、そこにパピヨンが隠れているかもしれないじゃないか!!

ズゴッ! ズゴッ! ズゴッ!

カッツバルゲルが、斧のようにそこらへんの樹木に叩きつけられる。だって、そこでパピヨンが休んでいるかもしれないじゃないか!!

周囲には何者の存在も感じられないのにもかかわらず、それでも♂騎士は剣を振るう。

あのパピヨンが今も生きているなんて、許されるはずがない。世界中の全ての人類が許したとしても、俺が許さない。
奴にはただの死すらも生ぬるい。奴は頭以外を完全に破壊して、二度と再生できなくしなくてはならない。
そして残った頭部に、♂プリーストの遺体の前で謝罪させなければいけない。
盗蟲は頭部のみの状態でも生きているし、あいつだってそれくらい不可能じゃないだろう。
文句はどんなのがいいか。ごめんなさい、と一万回言わせるのだけでは生ぬるい。
『この卑しく矮小な私は生きる価値もありません。私は今すぐに死を選び、そのまま二度と現世に戻らず永遠に地獄で貴方にお詫びしつづけます』
そして、それを言い終わった直後に奴の頭を木っ端微塵に砕き、それを♂プリーストの弔いとするのだ!
それには、まずパピヨンを探さなければ。どこだ、どこだ、でてこい、今すぐ俺がその頭を体を切り離してやる。
うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!

ギッ……ギリギリギリ……ズンッ!!!!!

♂騎士の攻撃によって、木が切り倒され、周囲に轟音が巻き起こる。
そこで……♂騎士は、ようやく我に返った。
そしてそれは彼に、パピヨンの討伐に失敗した、ということを知らしめることとなる。
大事なチャンスを逃した。その事実に、♂騎士の体が崩れ落ちる。
大の字に寝そべり、♂騎士の意識もまた、深遠の闇の落ちていった……


と、不意に♂騎士の意識が覚醒した。
周囲には何者の存在も感じられない?

「あの娘は……♀商人は何処だ!?」

<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、錐、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
   できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
   両手剣タイプ ♀商人を見失う。
状態:痛覚が完全に喪失 体力は半分以下? 精神は安定? 個体認識異常を脱する
   必要とあらば殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい 若干暴走状態

<♀商人>
現在地:???
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中 装置を探しに行く 失踪

<パピヨン>
現在地:E-6
備 考:ミストレスの魔力を一部継承 ミストレスの持つ虫達を統べるカリスマ継承 ノーマルより強い スピードも速い
    デビルチと寄生虫を一部咀嚼 右翼損傷 テレポートで逃亡


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