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【憎悪と狂気】バトルROワイアル 十冊目【恐怖と絶望】

[492:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2010/08/30(月) 21:29:44 ID:/OMKaVBA)]
301.動き出す、世界(第4回開催少し前〜三日目・昼)

そこは暗い、暗い部屋であった。
細長いテーブルを大きな大きな長方形に並べ、それぞれに複数の椅子を置いたその場所はどこかの会議室の様であった。
そこにはテーブルと椅子しかない。
家具のようなものも、灯りすらも。
窓すらなく、ただただ息苦しいその空間は大きな部屋というよりももしかしたら洞窟の奥深くかも知れなかった。

うっすらとした明かりもないその暗闇の中に、人間の気配があった。
それはひとつではない。
その暗黒の空間に、おそらくは十人を軽く越える人数が、そこにいたのである。

「それで、これからどうしようというのだ?」
男の声が響く。
その声は深く沈んだ、低い低い初老の男のように聞こえた。

「前置きはいいさ。さっさとはじめとくれよ。時間がないんだろ?」
女と思しき声が暗闇に響き渡る。

おそらくこの暗闇では隣に座っているのが誰なのか。
それが男性か女性かすらわからないであろう、そんな中に人々は集まっていたのだった。

「そうです。私達は急がなくてはなりません。彼らを救うために」

おそらくは部屋の一番奥。
会議であれば議長が座る場所あたりから、澄んだ、非常に澄んだ女性の声が響いた。

「私に協力していただけませんか。このバトルROワイアルを終わらせるために」


時は大きく遡る。


大司教…いや、前大司教は悩んでいた。

このような神の教えを踏みにじる、いや、それ以前に人としての道を踏み外した行為を許してはならない。
だが、浅慮な自分はその場で諌め、そして地位を追われた。
このまま静かにしていれば、それまでの地位や国への影響度を考えれば自分の身は安泰である。
だが、そんなことはどうでもいい。
なんとかして止めなくてはならない。
彼は、王が最後にこの国を旅立ったときに、託されたのだ。
この国を、この国民を。

滅ぼさせるわけにはいかない。
国民を殺させるわけにはいかない。
それがかつて王が愛した女性の手であったとしても。
それはかつて王であった友との約束でもある。

だが、彼はその力を失ってしまった。
大司教という国を動かせる地位を。
彼を慕ってくれる人は多い。
だが、敵は大きすぎるのだ。
力を失った彼に手を貸してくれる者は少ないだろうし、そういった人々を守ることはできない。

そこに、その女性の声が聞こえたのだ。


「まったく、あの国は自ら滅びるつもりなのか」
シュバルツバルド大統領は呆れてしまっていた。
報告を聞く限り、王妃は狂ってしまったのではないかとしか思えなかった。

政治を司る者たちの冒険者への危機感。
増えていく魔物たちへの脅威。
それはわかる。
だが、BR法はそれだけが目的ではないはずだ。
いや、目的はどうあれ、これは国を滅ぼす最悪の法であり、方法だ。

その硬い髭をさすりながら、彼は考え込んでいた。

あの国が滅びることそのものはあまり問題ではない。
だが、最大の国家の滅亡は間違いなく各国の情勢を狂わせるだろう。
それは自国を危険にさらすことにもつながる。
しかも、魔王復活の可能性も豊富な情報網を駆使している彼の耳には届いていた。

「彼ら、冒険者の力はむしろ必要だというのに」

今そのような状態には決してできないのだ。
彼には、戦わなければならない相手が内にいる。
彼は全てを投げ打ってでもこの国のためにその敵と戦わなければならない。
でも、その前提をひっくり返すようなことを看過するわけにはいかない。
なんとかして止めることはできないだろうか。

「だが…」と彼は唇を噛んだ。

彼は大統領である。
彼の行動は国そのものに影響を与えてしまう。
だから今まで慎重に慎重に行動してきたのである。
愚かな闘技場で戦わされている戦士達を救おうとすれば、ヘタをすれば戦争になりかねない。
アルデバラン方面の軍備が、かの国を警戒して出来る最大限のことなのだ。
彼にとっては地位は、彼らを救うためにはもっとも邪魔なものなのかもしれなかった。

そこに、その女性の声が聞こえたのだ。


大神官ジェドは、その報告を聞いて歯噛みをしていた。
狂信派がルーンミッドガッツであの件に関わっているのではないかという、報告であった。
あの件というのは、もちろんBR法のことである。
この報告は他の大神官は知らない。

もともとジェドにとってはBR法は唾棄すべき行為だとは思うが、関係のないことだと思っていた。
それよりも、大事なのは自国のことであり、教皇のことであり、裏で動いているフレイヤ狂信派のことであった。
自国の問題は自国で解決するのは当然のこと。
それはBR法についても、同じことであった。
だが、狂信派が動いているなら話は変わる。
彼らが動くということは、絶対にこの国にとっていいことではない。

止めなければならないが、どうしたものか。

そう思案を始めたところで、その女性の声は聞こえたのだ。


「私に協力していただけませんか。このバトルROワイアルを終わらせるために」


その声を聞いた者は皆一様に驚いた表情をし、そして辺りを見回した。
周りには誰もいない。
彼女は彼らに直接、語りかけたのだ。
特殊な方法で。
だが、それを知らない彼らは皆一様に狼狽している。

彼女はその様子がちょっとおかしくて思わず笑みを浮かべてしまう。
しかし、すぐに硬い表情になる。
彼らに直接語りかけるのは本当はルール違反なのだ。
だが、そうも言っていられない。
彼女の力だけでは、全てを無かったことにはできない。
そして、強権をもって終わらせることも、参加させられた人々を救うことも出来ない。
できるのは、これが終わらせられるようにほんの少しだけ力を貸すこと。
生き残った人達が生きていけるよう、その可能性を用意すること。

何とかして終わらせなければならない。

これは彼女にとっては職務であり、思いであり、そして、誓いでもあった。

あのときは全てが終わるときになって初めて知った。
だから間に合わなかった。
今度は、救いたい。
1人でも多く。
そして繰り返させるわけにはいかない。
もう、これ以上。
だから、わたしも戦います。


こうして、彼女の声を聞いた者たちが、彼女が用意した会議室へ転送されたのだった。


彼女は見回した。
ここに集まっている人々を。
暗闇だから彼らにはお互いが見えないだろう。
だが、彼女は違う。
彼女の話を聞き、決意に満ちた彼らの姿は頼もしかった。
彼女自身が選んだ、あの男に弄られていない者達。
そして、BRを終わらせるために必要な力。
そのために協力する理由のある者達。

それは、各ギルドマスターであり、大司教であり、隣国の重職にいる者であったりカプラサービスの者だったり。
おそらくはこの世界を揺るがすこともできよう大同盟が、そのとき密かに結ばれたのだ。

ただ、あの狂った即興劇をやめさせる。
それだけのために。

そして、彼女は彼らを通じて種をまいたのだ。
この闘いをやめさせるための種を。

全てが芽吹くわけではない。
芽吹いてもすぐに摘まれてしまうものも多いだろう。
蕾まで育っても、花が咲くかはわからない。
それでも、花を、一つでも多く花を咲かすことがあれば。
きっと終わらせられると、彼女は信じているのだ。

あの勇敢だった、優しかった、強かった彼らがそうであったように。


これは第4回大会、つまりこの闘いが始まる少し前の出来事。
集まった者は元の場所に戻り、そして何事もなかったかのように過ごしている。
ある者は自身が選んだ者の無事を祈りながら、ある者は密かに生存者の受け入れの準備をしながら。

彼女…♀GMは遠くから、この闘いを眺めていた。
直接的には何も出来ない自分に歯噛みしながら。
でも…、とここまでの闘いをみて彼女は思う。

わたしの蒔いた種は芽吹き、まだ順調に育っているみたい。
あなたが知ったら、きっとわたしは一生恨まれるのでしょうね。
でも、あなたを信じている。
全てが終わったら私はあなたに殺されてもいい。
だから生き延びて、最後まで。
ね、♀Wiz…


ジョーカーも、橘も知らない。
残酷な種をまいたのが自分達だけではないということを。
闇の種ではなく、光の種もまた、同じように蒔かれていたということを。


<♀GM>
現在地:不明(わからない所)
所持品:剣(バルムン?)
外 見:未設定
備 考:BRを終わらせるために暗躍。大同盟は参加者選出や事後の生存者保護以上のことはしない(直接関与できない)。
    ♀WIZになんらかの種を蒔いた?

<♀WIZ>
現在地:E-6
所持品:クローキングマフラー 未挿sロザリオ
    ウィザードスタッフ DCカタール +7THグラディウス 多目の食料
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HP/SP中回復
    デビルチのユピテルサンダーを受ける。
    ♀GMに何かされている?


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