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【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第14巻【燃え】

1 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/15(金) 17:18:15 ID:0fDIHQ5k
このスレは、萌えスレの書き込みから『電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』ではない萌えな自作小説の発表の場です。
・ 共通ルール(ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1063859424/2n)
・ リレー小説でも、万事OK。
・ 萌えだけでなく燃えも期待してまつ。
・ エロ等の18禁小説は『【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ』におながいします。

▼リレールール
--------------------------------------------------------------------------------------------
・ リレー小説の場合、先に書き込んだ人のストーリーが原則優先なので、それに無理なく話を続かせること
・ イベント発生時には次の人がわかりやすいように
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ
・ リレーごとのローカルルールは、第一話を書いた人が決めてください。
  (たとえば、行数限定リレーなどですね。)
--------------------------------------------------------------------------------------------
※ 文神ではない読者各位様は、文神様各位が書きやすい環境を作るようにおながいします。


前スレ【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第12巻【燃え】
ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1136792603/l50

保管庫様
ttp://f38.aaa.livedoor.jp/~charlot/pukiwiki/pukiwiki.php

2 名前:神の人・後編 10.5/13 投稿日:2007/06/15(金) 17:20:20 ID:0fDIHQ5k
要領オーバーしてしまい途切れてしまいました。申し訳ありません。

それでは続きを投下させていただきますね。

3 名前:神の人・後編 11/13 投稿日:2007/06/15(金) 17:21:05 ID:0fDIHQ5k
                     11


 最初にうっと呻いて、次に身を捩じらせて手の甲で目蓋を擦る。目を開ければそこは熊だった。

「そうか……。これは夢だムニャムニャ…」

 再び目を閉じようとして所へ、天井の一部からにゅっと手が伸びて、毛むくじゃらの肉球ハンド
でぺちぺちと叩かれた。叩かれた方はうーうー唸って漸く上体を起こし始める。
 そして目を開けて認識した。ああ、ここは熊の中なのだと。

「熊太郎達……、助けてくれたのか?」

 まだぼんやりとした眼を天井に向けると、其処には五つの毛むくじゃらフェイスが天井を作って
いた。見慣れた顔だ。それも当然、この熊たちは彼女の下僕であった。ルティエ雪原の白熊ビック
フットの熊太郎一号から四号と紅一点の熊子さん。五つの巨体がスクラム組んで寒さと雪片防ぐ即
席のカマクラを作り上げていた。いやこれはむしろ、クマクラ?

「ん……。五号、お前も暖めてくれていたんだな」

 傍らの存在感に目を向けて、ぽんと頭に手を載せたのはふわふわもこもこ小熊の五号。なるほど
これは良い防寒具である。ふと、五号の座っていた辺りを見咎めてみると、その下敷きになる形で
あの女服の侍際が転がっていた。目は閉じられていて意識も無いようで、しかしその頬には赤みが
差しており程よく暖められて居たのが良く判る。命に別状は無いようだ。

「う、あいつが居ない……」

 五号を胸元に抱き上げながら、きょろきょろとクマクラの中を見回す。そう広くない空間だ、目
当てのものが居ない事など直ぐにわかる。
 あの小憎らしい自分相手では本気を出さない嫌で嫌味な背高ノッポ、一体全体何処へ行きおおせ
たか。寝起き眼が不機嫌に吊り上っていく。唇もむーっと幼くへちゃむくれだ。
 するとクマクラの一角に出入り口が開かれた。探していたものの元へと導くかのように。ひっそ
りと出入り口は作られる。
 外は一面の雪景色であった。最初にこの雪原へ降り立ったときの様に、空は美しく雲ひとつ無い
大快晴。さんさんと降り注ぐ陽光が、雪原を鏡に照り返す。
 雪原に視線を戻すと、その先に何かが蹲っていた。
 大きい、けれど雪原に溶け込む目立たない氷の体毛。異常気象を招き寄せて、顔見知りの自分を
襲ったあの銀狼だ。今は力なく雪原に倒れ、牙並ぶ口元からだらしなく舌を垂れさせていた。
 一瞬死んでいるのかと硬くなったが、微弱に腹部が上下しているのを見て弛緩する。生きていて
くれた……。それだけの事なのに頬を涙が伝うのに驚いた。
 そして視線が横に流れる。雪原を、倒れる銀狼に向けて近づくものがあったのだ。
 その姿は巨体だった。彼女の知る憎らしい奴も背丈が高いが、アレはその上を行っている。そし
て、その身体は半分氷に覆われて凍結していた。ばりばりと氷と己の体を砕きながら、その巨体は
前に進んでいる。
 ボロボロと毀れていく氷と肉片。煩わしげに巨人の手が顔を覆う己の顔ごと剥ぎ取った。皮のつ
いた氷を投げ捨てて、そして掌を再び顔に翳すと淡い光が浮かび上がる。癒しの聖光の慈愛溢れる
輝きが、砕けて剥がれた肉体を再生していく。中身がむき出しだった顔にも肉と皮が戻っていく。
そこに探していた顔があった。
 ギギギっと錆付いた音が聞こえた。巨人の表情は今にも昆虫をバラバラにしようとする子供の様
な笑顔に満ちて。一歩一歩、雪原を踏みしめ歩みを進めていく。
 それを見咎めた娘は悲鳴を上げた。言葉にならない叫び声を巨人に向けて浴びせかけた。けれど
も喉が震えない。声は喉から迸らなかった。感情は爆発しているのに、恐怖と静止を必至になって
叫んでいるのに。もどかしさと悔しさが胸の中に溜まって、ぽろほろと瞳から感情の結果が流れ落
ちる。けれども声は出なかった。
 ついに、巨人は銀狼の下へたどり着いた。その丸太の様に膨れ上がった腕が巨獣の首に絡みつき、
がっちりと頭を沸きに挟み込んでしまう。両手を組み合わせて広背筋を膨らませぎりぎりと音が立
つ。頭蓋が、口蓋が、圧迫され軋んで行く破砕音。一番単純で一番危険な技、ヘッドロック。ぼん
やりと、そんな知識が脳裏をよぎる。
 本来は意識を刈り取るだけの技。しかしこれは違う。これはもう意識をなくしている相手に繰り
出している。砕くつもりでかけている。もう直ぐ、砕けて死ぬ。見知った人が死んでしまう。

「あ……ぐっ…ぅ…ぁぁっ……」

 涙は出るのに。止め処なく出ているのに。声だけが出ない。

「やめ…やめろ……、ぉぉ…っぐ…」

 あんなものは見たくないのに。見たくないのに。見せて欲しくないのに。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!」

 あんな、あいつが悪魔の様に振舞う姿なんて、見たくなんかない。

「やめてぇ…、殺さないで……」


 気が付けば両手から力が抜けていた。

「……………………ちっ……」

 舌打ちを一つして、取り落としてしまった獲物を一瞥する。息の根はまだある微かにある。今に
も止まってしまいそうな灯火だが、そこには確かに命があった。
 忌々しげに掌が伸びて、嫌そうに唇が聖句を紡ぐ。掌に生まれたいやしの力が、銀狼を瀕死から
小康へと立ち直らせていった。
 癒しを唱えながら視線を雪原へと走らせる。仰ぎ見た視線の先では格闘娘が倒れていた。顔中を
涙でくしゃくしゃにしながら、再び熊達に引きずられて熊製のドームの中に連れ戻されていくのが
見える。どうでもいいが面倒見の良い熊たちだ。舎弟はどっちなのだか判りはしない。
 信じられない事に、神罰を迷わず代行するはずの司祭両手は、この小さな小娘の言葉で止まって
しまった。

「……姉め、二代に渡ってまでこの私を苦しめるのか……」

 誰にもわからない呟きがぼそりと毀れた。それもまた青空に抜けて直ぐに消えてなくなる。
 どうしたものかと思案に暮れる。原因を見つけたが駆除できなくなってしまったとなると、何か
それに変わる手柄でも上げなければ組織に示しがつかない。BSにも散々と愚痴と嫌味を言われて
しまうだろう。既にもう小娘に恥をかかされている。上塗りはごめんこうむりたい。

「どうしたものか……、…?」

 ふと、視界の端に何かが移りこむ。吹雪が晴れて遠くまで見渡せる様になった為に、地平の先か
ら此方にかけてくる一団が見て取れた。
 どこかで見た顔だと思えば、アルデバランにて端から叩き落された一団であった。一様に武器を
構えて叫び立てている。何か獲物でも追っているのだろうか?

「おや、あれは……」

 雪原をかけている一団の先に、彼らの追う獲物が見えた。それは小さな小さな銀狼の子供達。も
しやアレは、傍らに倒れる銀狼が隠したと言っていた最後の小銀狼達であろうか。
 シーフやローグの一団は大人げもなく、子供達に石を投げ弱らせ集団で追いたてていく。確かに
珍しい神獣の子供達、捕まえてどこかに売りさばこうとでも言うのであろうか……、!?
 そこまでぼんやりと考えていたが、不意に司祭の唇がにぃぃぃぃっと三日月に歪んでいった。
 決断すれば後は早い。ずんずんと大股で雪原を歩みだし、向かってくる小銀狼と盗賊団へと迫っ
ていく。
 よくよく考えれば簡単な話なのだ。原因のまえには元凶がある。くさいものには蓋が必要であり、
諸悪の根源は今正に目の前から近づいてきていた。

4 名前:神の人・後編 12/13 投稿日:2007/06/15(金) 17:22:29 ID:0fDIHQ5k
                     12


 正面から近づいてくる司祭の姿を見咎めて、必至で駆けていた小銀狼達がびくりと震える。だが、
司祭はそんな子供らの脇をすり抜けて後ろの一団へと対峙した。子供達はキャンキャン言いながら
雪原に倒れる親の元へと一目散に賭けていった。

「あんだオメエはぁぁぁあああん?!」
「じゃましてんじゃねぇぞおあぁぁぁっ!?」

 等々、独特の未開言語が立ちふさがった司祭に浴びせかけられた。今は姿が余りにも違うので、
早朝に自分達が襲おうとした相手とは気が付いていないのかもしれない。まあ、そんな事はどうで
もいい些事である。
 ぎゃんぎゃん犬の様に吠え立てる連中へ、指を突きたて一つだけ確認を取ってみた。

「貴様ら、ハティの子等を捕らえて何処かへ売り飛ばしていたな?」
「それがどうしたんじゃこるぁぁぁぁああっ!?」
「まだアジトでかっちょるがそのうちまとめて売り飛ばすんじゃおらぁぁぁぁっ!!」
「つーかどきやがれつーんじゃうんどりゃぁぁぁぁっ?!」

 なるほど。
 なるほどなるほど、と何度も首を上下させて納得の表現を見せる。これで全ての辻褄があった。
子供が居なくなって怒り狂うハティ、それは氷雪を振りまいて人間に復讐を果たそうと企んだ。そ
して、その子供達を誘拐した犯人がこいつら盗賊団だという事だ。つまり――

「つまり、てめえ等全員俺様の仕事を増やしやがったクソ野郎共ってことで良いんだよなぁー!?」

 その時、司祭の正面に居た盗賊団達は、この世で最も恐ろしいものを見てしまい、四十人程も居
た人員を半数に見えるほどに縮み上がらせた。身を寄せ合い、理由は自分でも判らないが後悔する。
とりあえず、生まれた事をでも。
 雪原に、人の形をした修羅が再び光臨した。


 結局、異常気象の原因は子供を取られたハティで間違いはなく、しかしてその元凶たる窃盗団の
壊滅によりもう気象の変異は起こらないものと判断されそれ以上の調査は打ち切られた。
 窃盗団アジトにとらわれていた小銀狼達も一匹たりとも欠けることなく救出され、人と魔物の一
方的な狩猟関係は打ち崩された。今後とも共存すること無く争い合う関係かもしれないが、歪んだ
形にはならないであろう事を切に願う。

「と、まあこんなものだな」
「あーそーかいそーかい、そいつはハッピーエンドだなぁああ!!このやろう!」

 激昂して応接間のテーブルをガンガン叩くのは、冒頭からお馴染みの青髪の鍛冶師、守銭奴BS
である。そして向かい合わせに司祭がソファーに座り、脚を組みながら紅茶の香りを楽しむ。その
姿が余計にBSの怒りに油を注いでいた。

「確かに! 原因を調査してその元凶を断てとは言ったがな。誰が組織の時計塔支部を壊滅させて
来いと言ったんだぁぁぁぁ!!」
「ふん、組織に黙って使い込みに内職に密輸までするダニ共を一掃しただけだろう」
「だからって支部一個丸々はやりすぎだろうが!! お前には加減とか思慮とか采配とか言うもの
はないのか! 超人ハ○クか!? 暴れて元に戻るまでそれっきりなのか!?」

 やかましい奴だ、と言わんばかりに目の前で溜息を長く吐く。ブチブチブチン、と頭の中で何か
太いものが引きちぎれる音が連続する。

「もう報告する事はないから、帰れ」
「っっっっっっっっっっ!!!!! おう、帰るわぁ!! その前にギルドの損失さっぴいたぶん
の報酬でも食らえ!!」

 乱暴に胸元から貨幣の詰まった袋を取り出して司祭に投げつけ、青髪守銭奴がぷりぷり肩を怒ら
せて出口へと向かう。正確に顔面を捉えた豪速のつぶてを、造作も無く片手で受け止めて視線だけ
でその背中を見送った。

「はわっ! あ、すみません、もうお帰りですか? って言うか今日もお怒りモードですか!?」
「ああ!? あー……。よし、脱げ。むしろ色々着ろ。お前の身体で損失補てんだウラー!!!」
「きゃー!! 司祭様の言ったとおりですー! 司祭様? 助けて司祭様ー!?」
「写真と動画で一攫千金じゃーー!! 俺の為に花を売れーー!!! がはははははははは!!」

 ドアの直ぐ外で鳴り響く騒音に、思わず目頭を押さえる事数秒間。
 立ち直ってソファーに深く座り直すと、思い浮かぶのは神罰の手を止めたあの時の瞬間だった。

「我が身…、我が血…、我が命…、か……」

 背もたれに身を預けて、うつろに天井を見上げながら呟く。捧げ切れていないのだと、頭の中の
狂信者が叫んでいた。
 そんな事は判っているよと続けて呟き、ぽーんぽーんと貨幣袋を片手で投げ受ける。

「足りない…、足りない、まだ足りない」

 貨幣袋を胸に押し付けて、開いた手を中空へ――その先の空へ――神の御許へ差し向ける。

「今日も貴方が、遠ざかる……」

 この思い、届くのかさえ、正に神すら知りはすまい。


                                        終わり

5 名前:神の人・後編 13/13 投稿日:2007/06/15(金) 17:25:35 ID:0fDIHQ5k
前回より、だいぶ間が開いてしまいましたが『神の人』後編を貼り付けさせていただきました。
まさか途中で容量が足りなくなるとは…。次はこのようなことがないように気を見計らうことにします。

それではささやかでも楽しんで頂ける事を願って、この辺で失礼いたしますね。

6 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/15(金) 17:28:28 ID:0fDIHQ5k
失礼、前スレを13にするのを忘れてしまいました。
ここで一応誘導してきますね。申し訳ありません。

前スレ【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第13巻【燃え】
ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1155280580/l50

7 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/16(土) 11:26:34 ID:72IU1bZ.
槍の人・神の人前編に続き楽しませていただきました。
次作も楽しみにまっています。

8 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/17(日) 15:11:06 ID:gX9lwjds
司祭様きれてるきれてる!ナイスじょ〜わんにと〜きん!
雪の中黒光りしてにっこり笑う司祭様がまざまざと脳裏に浮かびますた。(黒光りはしてないか)
自作はなんの人の話になるのか、楽しみにしてますね。

9 名前:百物語1/4 投稿日:2007/07/23(月) 20:50:45 ID:9PpmHOT.
「……またありきたりな話ですみませんが、ゲフェンの宿屋の――」

バードはいつもとは違う、ぼそぼそとした声で話し出した。
俺は内心舌打ちする。今日はLVが上がって転生して廃剣士になるはずだった。
何を血迷ったのか今こうしてギルメン全員がニブルの武器屋の棺桶を囲み
100本のロウソクを立てて東の国の肝試しとやらをしている。クソ。

「でね、夜中に目を覚ましたら、部屋中にいるんですよ、ナイトメアが」

道騎士になったら俺はこのギルドを抜ける。こいつらとは長い付き合いだったが
野郎5人のむさい、弱い、貧乏なレーサーギルドにいつまでも居る気はない。
この間勧誘してくれたハイプリさんのギルドに入って俺もゆくゆくは……
と、妄想に耽っているとほどなくバードの話が終わる。

「そんなわけでゲフェの宿屋の奥の部屋は気をつけてくださいね。ふぅっ」

バードはロウソクの火を吹き消した。残りはあと2本。

「次はお前の番だ」

向かいに座るギルマスは暗いせいか、ぞっとするほど冷たい瞳をして俺を促した。
俺は無意識にお守り代わりのナイフに触れる。無機質な柄の感触が俺を落ち着かせた。
さて、何を話そう。もうネタはない。作り話は苦手だ。とすると……

「これは、俺がまだノビで修練場に居た頃の話だ――」

10 名前:百物語2/4 投稿日:2007/07/23(月) 21:00:41 ID:9PpmHOT.
 俺は弱かった。頭も悪いし、剣士としてどうなのかというくらい屁たれてた。
ファブルを殺すのも躊躇い、さんざん落第した。それでもカッコつけて自力で合格したがった。
その日の試験中俺はどこかでナイフを失くした。もうだめだと途方に暮れた。
実家に帰って家業を手伝おうか……などと考えて居たら、いつものアイツが来た。

「また落ちたのか。キミは本当に優しすぎるね」

そういって俺に冷たいミルクと芋を手渡す。いつもどこから調達しているのか。
この赤髪の男は俺とは違い頭もキレ体力もあった。出ようと思えばいつでも出れたはずだ。
気になった俺は実家に帰る前にと理由を訊いてみる事にした。

「ん。ボクの兄はね、腕のいいプリーストだったんだ」

そいつは少し考えてそう切り出した。

「兄は気のいい仲間達と冒険したり、観光したり、楽しい話をたくさんしてくれたんだ。
ボクもいつか兄みたいなプリーストになりたくてここへ来たのさ。
でもね、その頃くらいかな。兄の仲間達が大きな利権を手に入れて、それを取り合って争い出した。
狩りに急いで挨拶もなし、良心を捨てて人を騙したり、時には傷つけたり……
兄はすっかり変わってしまった仲間達に絶望して自殺したんだ」

目を伏せて泣きそうな顔をする。そんな顔見たくない。

「ボクはね、迷ってるんだ。このまま外へ出て、プリーストになって、気の合う仲間に会えたとして
彼らがいつまでも変わらずに居てくれるのか。ボクにはわからない」

11 名前:百物語3/4 投稿日:2007/07/23(月) 21:09:11 ID:9PpmHOT.
 俺は多分、こいつの事が好きだったのかもしれない。男同士だが。
その時確かに思った。こいつには笑っていて欲しいって。

「俺は……俺なら変わらないぞ! だからさ、一緒にここを出て旅しようぜ」

どんなにきつい道だとしても進みたかった。行ける気がした。
だがそいつは嬉しいような困ったような顔で言った。

「ん。ありがとう。でもできれば考える時間が欲しいな。
キミは先に出ててくれないかな? コレを、ボクの代わりに連れて行って」

 そういってアイツは俺に自分のナイフを差し出した。
それはファブルCが三枚刺さったナイフだったが、俺は体力以上にたくさんの勇気を貰った。

 修練場を出た俺は10日程待ってみたがアイツが出てこないのでレオに訊きに行ったんだ。
アイツの名前と特徴を詳しく伝えるとレオは顔を青くしてこう言った。

「そいつなら……2年程前に……修練場の屋上から飛び降りて死んだ……はずだ」

 俺はそれでも不思議と寂しいとか怖いとか思う事は無かった。
このナイフの中にアイツが今も生きてる気がしてたから。
それから一人で修行を積み、騎士になるときにこのナイフに誓ったんだ。

12 名前:百物語4/4 投稿日:2007/07/23(月) 21:23:10 ID:9PpmHOT.
 俺はナイフをかかげ誓いの言葉を口に言おうとする。

「俺は……っ! どんなにカッコ悪くても、金が、なくて、もっ、弱くても!!
な、仲間だけは、絶対……に……」

 その先はこみ上げる嗚咽で言えなかった。
しゃくりあげながらなんとか99本目の火を消した時、ギルマスはいつもの優しい顔をしていた。

「本当はな、俺がここで最後の話をして、その後お前を道連れに連れてくつもりだったんだ」

 優しい口調のギルマス。腕のいいBSで、自分のモノは失敗しても他人の依頼は100%成功させる。
失敗してもカートからこっそり材料を出して成功するまで打ち続ける、貧乏なお人よし。
彼の両腕は肩口から削ぎ落とされ、二度とハンマーは振るえないだろう。
拳聖もバードもプリも、みんな致命傷を負っているのに穏やかな顔をしてる。
俺は今日、死を恐れて真っ先にこいつらを捨てて飛んだ。一番堅いはずの俺が。
そんな俺にこいつらは許しの言葉を与える。

「でも、お前は最初の気持ちを思い出した。俺たちと出会ったあの頃のお前だ」
「お前ならまたやり直せるさ。遅すぎるなんて事はないんだ」
「お前は本当の騎士になれたんだから」
「俺たちの事、忘れないでいてくれるよな?」

俺は薄れていく仲間達を目に焼き付けながら、ナイフの柄を強く掴む。
それは何故か暖かく、力強く俺の手を握り返してきた。

「お……俺っ! お前らを……絶対にっ……」

 言葉は出なかった。しかしそれは伝わったようだった。
にじむ視界の中、彼らは確かに笑って消えていった。

 一週間後、俺は転生し伊豆の町で約2年肌身離さず持っていたナイフを受け取り
しっかりとかかげ再び誓う。
「俺は!どんなにカッコ悪くても!金がなくても!弱くても!!
仲間だけは絶対に守りぬく!」

13 名前:百物語5/4 投稿日:2007/07/23(月) 21:25:22 ID:9PpmHOT.
文法おかしいですね。申し訳ない。
ホラーを書こうと思ったらいつのまにか普通の話になってました。
何かが憑いたのかもしれません。
これで100話目ですね。ふぅっ。

14 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/25(水) 18:46:19 ID:1/HYMO2Y
つまんね

15 名前:ある少女のレポート 投稿日:2007/08/12(日) 03:36:00 ID:MBViPv6U
初めて書いてみますので駄文ですが勘弁を・・・


生態研究所にはヴァルキリーに祝福された人間と同じ姿のモンスターがいる。
それは、研究によって生まれたものだといわれている。
しかし、人間によって生まれた神の力を模した技術があそこまで力を持つのだろうか・・・
聖なる力やその技量、魔力・・・人間をベースにしたとしては強すぎる。
現に数々の歴戦の転生をした騎士でさえも同じ姿をしたモンスターには力及ばない。
なぜそこまで強い力を得ているのだろうか・・・
そこまで考えたときにふと思いついた、
あくまで想像でしかないが逆ではないかと・・・
「神の力」ではなくヴァルキリーそのものが「人の力」によって生まれたものではないか、
あの神々しさは唯の演出で本質は機械ではないかと、
それならば説明が付く、
唯の「人間の技術」ならば模倣は簡単だ、それは理論でしかないならばその次も作れるはずだ、
奇跡ではなく技術、それが神の正体かもしれない。
私はまだ転生の儀式を受けれない、ならば集めよう知識を!
そして神と対峙し、本当の真実を探してみようと思う・・・

16 名前:ある少女のレポート2(転生考察) 投稿日:2007/08/14(火) 15:52:01 ID:4ABcZqxE
もし転生が技術なのだとしたら転生とは何なんだろうか・・・
本当に、生まれ変わって強くなるにしてもそれには理論が必要だ。
いろいろな遺跡や資料、伝承を調べてるうちに1つの結論にたどり着いた。
それは私たちが造られたものではないかという結論である。
神が機械なのだとしたら創造主とは何か・・・
想像するに、それはかつてグラストヘイムなどに見られる巨人族ではなかったのだろうか。
巨人族が私たちを創造したとしたら説明が付く。
普通の人間がいろいろなものを満遍なくこなせるように作られているのなら、
転生した人間はそれに特化した能力を与えられた人間
そして生態研究所にいるのは失敗作ではなく兵器として特化された人間なのかもしれない。
転生というシステムを経る事によって
例としてアサシンが摂取できないような毒性を持つ強化薬物もアサシンクロスなら摂取できる。
他にも同様の能力増加は確認されている。
ただ勘違いしないでほしいことは、作られた物だとしても創造主に従う必要性はないということだ。
神が機械ならば創造主が人間ならば生きる権利は誰にもあるはず、
それは同じ人間でも侵してはならない領域なのだから・・・

17 名前:ある少女の日記 投稿日:2007/08/14(火) 16:12:31 ID:4ABcZqxE
この日記を読んでいる人がいたらよく考えてほしい・・・。
もし自分が今死ねないと思い、そして危険を避けたいのならこのまま日記を閉じて元の場所に置いてほしい。
もし危険を伴っても好奇心だけでこの先を読むのもやめたほうがいい。
そして、生態研究所に何かしらの想いがある人は読むべきだと思う・・・


私は、姉に反発して色々な地を巡る旅をした。
反発ついでに姉がウイザードだったからセージに転職したりもした。
セージになってから過去の遺跡、過去の城、現代の町を色々回った。
ある日、姉が行方不明と知らされ姉妹の家へ戻った、
中には姉が私宛に書いて出せなかった手紙やお金、アイテムなどが山のように置いてあった。
しばらく涙が止まらなかった。
数日泣いてから、部屋を片付け始めたときそれを見つけた。
それは、玄関外の石の下に袋に入って埋められていた。
中を読んで驚いた、姉がある研究の被験者としての記録であった。
そのリストには姉の友人の名前もありそのデーターは膨大な量と難しい専門知識の山であった。
セージとして各地を巡っていた私はそれを何とか読み解くことができた。
そして、姉とその友人ががもう人間として助からないことそれによる副産物のことも書かれていた。
そして最後に、私にこのデーターを燃やしてほしいとの一文が姉の字で書かれていた・・・
私は迷った、セージとしてコレは絶対に残さねばならないデーターである。
そして、間接的には姉の最後をつづった書類でもある・・・
そして私は決めた、
このデータだけじゃ足りない、あらゆる情報を集めて記録して公開する。
それが、セージとしてと妹としての私が姉にできる唯一のことだから・・・
データーは完全に暗記をして燃やした、そして色々な書き方を通じてデーターを残した。
旅を続け、さらに多くの知識を手に入れた。
ただ、この情報を送ってくれた姉の事を残しておきたかった。
だからこの日記を残します。
姉とその友人ソリンさんに感謝と謝罪を・・・

ケイロン

18 名前:ブルー&ジェット0/4 投稿日:2007/11/27(火) 23:38:49 ID:OlhyQDOY
『我が名は』とか『〜の人』を書いたものです。
最近すっかり寂れてしまったこのスレに久々に投下してみます。

此度の話は短編書き捨て。
どこかで見たようなキャラの織り成す快刀乱『魔』。
一時の暇を潰せれば行幸に思います。

それではお目汚し失礼いたしますね。

19 名前:ブルー&ジェット1/4 投稿日:2007/11/27(火) 23:40:01 ID:OlhyQDOY
                   1

 絹を裂くような乙女の悲鳴……。
 等と描いてみれば聞こえはいいが、実際には乾いた雑巾を無理矢理引きちぎる音に近い。現世の
なんと風情の無い事か。まったく、現実こそが正に儚いものであって欲しいものである。
「そんな事を言ってる場合でもないな。ゆこうか、相棒」
「クワーッ! クエックエッ!」
 大型の鳥類の返しの鳴き声と共に、その男は悲鳴の元へと歩みを進めた。
 その井出達はナイト――堅牢な鎧を纏いて颯爽と戦場へ躍り出る騎士である。頭にヘルムとサン
グラス、腰には無骨な大太刀を帯びて、歩む姿は駆け抜ける旋風の如く明朗快活刃の如し。
 その男の左手からは手綱が伸び、傍らの愛馬ならぬ愛羽の嘴へと繋がる。飛ぶ事を忘れ、大地を
駆ける巨大な怪鳥――ペコペコと名付けられた種の一羽であった。
 一人と一匹が連れ立って家屋の立ち並ぶ裏路地から這い出し、今や様々な悲鳴溢れる大通りへと
踏み出した。ルーンミッドガッツの首都プロンテラの南の大通りである。
 そこは正に戦場。死屍累々に遺体横たわる堵殺場と化していた。
「ほらほら、逃げ回れや!」
「踊れ、踊れぇ! 踊れよォォ!!」
「亡霊海賊一家ドレイク、よろしくぅっ!!」
 嬉々として人を切りつけるのは死人の群れ。スカスカと向こうが見える白骨体が、カリブの海賊
よろしくぼろきれの服を纏い頭にバンダナを巻いている。数居る動く骨のスケルトン族の中で、ご
く一部にしか現れない海賊骨。その名もパイレーツスケルトン。カタカタ鳴るぜ。
 南通りの無抵抗な商人達を手にしたカトラスで一方的に切り裂いて、背後に控える三対の強者の
為に文字通りの血路を開いていく。
「ドレイク様ー。粗方片付きやしたぜー、ドレイク様ー?」
「……うむ」
 骨の部下の声に呼ばれて、ずいと身を乗り出したのはやはり骨。コルセア帽を目深に被り、他の
骨達よりも幾分年季の入った浅黒いスカルフェイス。装飾は豪奢だが古ぼけた上着を肩に羽織らせ、
その肩には大きなカラスが一羽停まっている。そして、その足元は生前からなのかは知れぬが、松
葉杖を強引に着けた様な義足に片足が挿げ替えられていた。
 船幽霊の巣窟、沈没船ダンジョンの主――海賊王ドレイク。不死王、悪魔王、暗黒王等に並ぶ、
海の世界を統べる覇者がここに君臨している。
 徐に両手を組んで胸を張り、海賊王は辺りを睥睨し満足そうに頷く。
「世界の海は俺の海。俺の果てしない憧れさ…」
 唐突にポツリと漏らした一言に、肩のカラスがあぎゃぁっ!っと不気味な声で一声鳴いた。その
鳴き声にあわせて、散々暴れまわっていた海賊骨達がわらわらと集まり王の前に整列する。
「世界のお宝掠め取り、金銀財宝眺めての、自由気ままな海底暮らし。けれどもそれが邪魔された。
無粋な奴らに邪魔された。これは許せんことだよなぁ?」
「へい親分!」
 ――船長と呼べ。
 そんな一言と共に応答した骨の一体が、マスケット銃でズガンと額を撃ち抜かればらばらと崩れ
落ちる。ふうっと銃口からくゆる紫煙を吹き飛ばし、王が上着のポケットへと銃をしまう。
「無粋にもこの王を呼び寄せた人間共に、骨身に染みる恐怖を味あわせてやれ」
『『アイアイ、キャプテン!!』』
 この世には、魔物を呼び出す事の出来る魔力の宿った古木の枝というものがある。人は時として
それを一時の娯楽享楽私利私欲に使い、無数の魔物を人の住む世界へと引きずり出す。その大半は
速やかに町の騎士団や冒険者達の自警団などに鎮圧されるのではあるが。
 中には、こんな当たりを引いてしまう事もある。
「まったく、普段表に出ているような影武者共を呼び寄せるならまだしも。本体を引きずり出すと
は運が無いのかどうなのか…。人生は博打だなぁ野郎共?」
『『アイアイ、キャプテン!』』
 ぱさりと上着を翻しつつ、王の右腕が部下に指示を飛ばす。命じるのは無論、虐殺だ。
 立てた親指をゆっくりと地面へ差し向ける。それだけで骨達は喝采を上げて、再び無防備な獲物
へと踊りかかった。
 命を下したものは阿鼻叫喚の渦の中で、積み上げられた死体にどっかりと腰を下ろす。老若男女、
色取り取りな悲鳴の合奏を聞きながら、一人悠然とパイプを取り出し剥き出しの歯の列で咥える。
そうして、また一人視界の端で女が部下に切り掛かられるのを見ながら、涼しげに慣れた手で火を
点けて煙を燻らせた。
 平らげた煙を吐き出すと同時に、切り取られた首がぽーんと宙に舞い足元へと転がって来る。視
線を落とすと目が合った。
「お、親分てぇへんだぁ! 何か突然剣が飛んできてあっしの首が…」
「船長と呼べ」
 ズガン!っとまた銃声が鳴り響き、足元の頭が粉微塵に吹き飛んだ。それは残念な事に瑞々しく
鮮血を滴らせる女の首ではなく、カラカラに乾いてカタカタ動く部下の頭であった。
 視界の端にあったものを正面に持ってくると、そこには確かに今しがた殺されかかった女がヘタ
レており、その前には首を失った骨が頭を探してあわあわと右往左往している。
 そして、空を舞いて放ち手へと戻る円月となりし一振りの刃。弧を描いて飛来したそれを、放ち
手は容易く掴み取り、幼子を送るように手厚く鞘の中へと導き、納める。
 その男は空高く、そして逆光の中に居た。
「安息の町に突如現れた無頼者どもめ、今すぐ悪事を止めて己が領域へと帰るが良い」
「なにぃ!?」
 立ち並ぶ家屋の一つ、その屋根の天辺に立ちて背後に太陽を従えて。両腕を組みながら淡々と語
句を連ねる。人々を襲っていた他の骨達もその存在に気が付き、うちの一体が声を上げるがそれを
気にも留めずに言葉は続く。
「さもなくば、我が剣が汝ら一切を切り伏せるであろう。救いの無い悪者に下される正義の鉄槌。
人、それを『成敗』と言う…」
「おのれぃ、何者だ!!」
 思わず聞き返せずに入られない長台詞。問われたものは組んでいた両手を解いて、腰から下げた
大太刀の柄に手を載せ叫ぶ。
「貴様らに名乗る名前は無い!! ……と、あいつなら言うのであろうが、ここはあえて名乗らせ
てもらおう。トァァァァッ!」
 掛け声も高らかに屋根から飛び立って、急降下と同時…鍔鳴り微かに剣線が走る。降下先に居た
首の無い骨に向け、走る刃がその身を縦に斬り開く。着地を果たした時には白刃は既に鞘の中にあ
り、動かなくなった躯ががらがらと崩れて瓦解した。
「来いっ、ジェェーーーット!」
「クワーッ!」
 舞い降りた騎士が高らかに叫ぶと、地平の果てから嘶きと共に一匹の怪鳥が駆け寄って来る。す
れ違いざまに飛び乗って人鳥一体、武器を各々構える骨達へ向けて駆けながら名乗りを上げた。
「転空神剣、ブルー&ジェット。見参!!」
 サングラスに重厚な鎧の騎士――ブルー、そして跨るは神速誇る地を駆ける鳥――愛騎ジェット。
悲鳴を聞きつけ駆けつけた、少々都合の良い存在である。
 見参っとばかりに怪鳥が嘶きをあげ、その背中で騎士が立膝を突き立ち上がる。そして突進の勢
いから更に跳躍を重ねて加速し、無数に集まった骨たちとすれ違い様に白刃を煌かせた。翻る刃が
一閃二閃、胴や首をなぎ払い地を削りながら騎士が着地するや刀身はまた鞘の中。速さを求めれば
二の次が無いと言われる、鞘中で剣速を加速させて放たれる抜刀術。その目にも留まらぬ刃にて、
瞬く間に四体の骨が崩れ去った。
「闇を操り心を蝕むもの達を、俺は許さん!」
 立ち振る舞いはあくまで身体を開いて力は入れない。半身になって左手が腰の大太刀に添えられ
ている。それだけで周囲に近づきがたい空気の流れを纏わせて、視線は真っ直ぐに海賊の王へと向
けられていた。
 ちなみに乗り捨てられた相棒は、奇声を上げながら手近な骨の一体を突くわ蹴るわの大活躍をし
ていた。すごく遠くの方で。
 生き残りの骨がワラワラと騎士の方に集り、円陣を組んですっぽりと取り囲む。反りの入った短
剣や片手剣を突きつけながら、そうなって喧々轟々に数での優位をかさに吠え立て始めるのは世の
条理だろうか。
「ふざけたまねしてっと、いてこますぞ!」
「やられっぱなしじゃすまさねぇ!」
「むしろこの人数だ、この勝負勝ったも同然!」
 勝ったもどうぜーん!――と揃って叫びながら骨たちが中央の騎士に群がった。不死者同士に相
打ちの概念などなく、闇雲に刃を突き出しあっと言う間に骨と白刃の絡み合う奇妙なオブジェを作
り出す。こんな物の只中に居る者が無事で在る筈が無い。

20 名前:ブルー&ジェット2/4 投稿日:2007/11/27(火) 23:41:21 ID:OlhyQDOY
                   2

「騎士団最速の男に、何をしようって言うんだ」
 本当に只中に居れば、だが。
「あれ、血とか肉とかぜんぜん出てなくね?」
「だれか中の方に頭ある奴いるかー?」
「真っ暗でなんもみえねーっつの」
「あっ、居た居た。上に乗っかってるよ!」
 言葉通りサングラスの騎士は塊となった骨達の上に立っていた。傷一つもなく健在で、今度は時
間を掛けてゆっくりと抜刀していく。
「転空神剣、白骨斬り」
 言うが速いか大太刀が振るわれ、大骨塊を縦に切り裂き一網打尽に吹き飛ばす。だがしかし、今
度は全ての骨が崩れ去るわけではなく、無傷であったものが再び人の形を取り戻して立ち上がる。
 その数五体。再び騎士の周囲を取り囲むが、騎士の口元にはにっと笑みが浮かぶ。周囲を睥睨し、
連ねる言葉にはやはり強い自信が伴った。
「さて、どなたから刀のサビになってもらおうか!」
 こんな言葉を聴かされれば、誰だって頭に血が上る。それがたとえ血も涙もない骨であっても。
五体の躯は激昂し、奇声を上げて中心の獲物へと飛び駆る。
 そこからはもう、流れる華麗な太刀振る舞いの始まりだ。
 最初に飛び掛った一体目を抜刀からの逆袈裟で切り払い、返す刀の振り下ろしで二体目を斬る。
技後直後の隙を狙った三体目は、その繰り出した刃に合わせて切っ先を突き出し頭蓋を貫き後の先
を取る。四体目にはなんと己が愛刀を投げつけて、旋回する刃で胴と首とを泣き別れにして見せた。
 あっと言う間に片付けられた雑魚たちは、一斉に断末魔の叫びを残して霧散する。
「ド、ドドドドドレイク様ぁ!」
「お前ら呪ってやる、呪って……ぎゃぁぁぁっ!」
「また出るからなぁ! 忘れんなよ!!」
「覚えとけよ! えっ! 忘れるって!?」
 しかし、手元が狂ったのか投げた刃は放ち手には戻らず、旋回するも大きく上空へと上って行っ
てしまった。
「はっはぁ!! 丸腰になりやがったぜこのばぁぁぁっかが!!!」
 それを絶好の好機と取って、最後の一体が無手の騎士へと迫る。迫られる側はあくまでも平然、
他の武器を取り出すでもなく両手を組んで待ち受ける。
 そしていよいよ白刃が獲物へと届く。深々と根元まで突き立って骨を断ち、頭頂から股間まで一
直線に刺し貫きその身体を縫いとめてしまった。
 ――上空より木の葉の様に飛来した一振りの太刀によって。
「転空神剣、虎乃刃落とし」
「こ、これが奴の本気かよ!? 本気出すなよ!」
 空高く迷走したと思われた放たれた刃は、持ち手へと迫る敵を追い越して上空で回転を止め、見
計らったように刃を下に向けて落下してきたのだ。
 縫い止められた躯ごと大太刀を引き抜いて、一閃絡まった骨を振り払う。刃より抜けた躯は最早
言葉も無く、ただガラガラと崩れて道端へとぶちまけられた。
 そうしてから視線を差し向けるのは、当然今も煙を楽しむ海賊王。不埒な態度に刃を突きつけ、
ぎらりとサングラスが陽光を弾いた。諸悪の根源ここに見たり、一切容赦するつもりもなく真っ向
から剣気を叩きつける。
 殺意にも似た気迫を叩きつけられた側は、涼しげに受け流してくつくつ肩を震わせて笑っていた。
そして、久しぶりに宝物の地図でも見つけたように嬉しげに語る。
「久しぶりに表に出てみれば、割と使える人間が居るじゃあねぇか。こいつぁ、こっちもエースを
切らないといけねぇやな」
 無手を掲げ挙げてぱちりと指を鳴らす。すると、死体の山に座る船長の背後から、すーっと二組
の影が現れて騎士との間に立ち塞がった。
 片や擦り切れたぼろの着物を身に纏い、腰には無骨な太刀をぶら提げる。身体はやはり白骨で、
肩で風切る剣客風情も諸々に、立ち居振る舞いこれ浪人であると体現する。異国情緒を振りまくそ
の者こそは、上級悪魔に名を連ねる彷徨う者であった。
 もう一方は何処から見ても寒天饅頭、夏に涼しげ半透明。底冷えするよな瘴気を纏い、恨みがま
しい表情でふよふよ空飛ぶ幽霊ポリンのゴーストリングであった。その饅頭が、ごぼごぼと水の中
で喋る様な不鮮明な声で己が主に声を掛ける。
「お呼びにより参上いたしました。あやつめの始末お任せください」
「それがしも久々の強者との相対に胸が震える……。はたして水饅頭殿に倒せる相手かな?」
「ごぼっ、馬鹿にするのか!? っていうか水饅頭って言うな!」
「何、心配しているだけよ。水饅頭愛らしくてよいではないか。ああ、ほれ、あまり先方を待たせ
るものではないぞ」
 水饅頭の言葉に躯の侍も便乗し、やいのやいのと問答が広がる。流石に長く続けるのは非礼に過
ぎるかと浪人が気付き、意識を騎士へと戻させたがなんともノリが軽い。
 待たされるほうは不機嫌そうに、踵を付けたままで脚をタシタシと鳴らしていた。ちなみに、こ
の仕草は不機嫌なウサギが良くやるらしい。
「待たせたなグラサン用心棒。貴様の相手はこのゴーストリング様がじきじきにしてくれよう」
 散々待たせて踏ん反り返るは水饅頭。何処から見ても顔だけだが心持ち上向きで、胸を張って宣
言している。狂おしいほどの雑魚キャラっぽい容姿だが、これでもなかなか倒せないBOSSとし
て有名なのだ。良く逃げるから。
 そんな思いが視線に表れていたのか、無言だった騎士に饅頭がぷりぷりと怒り出す。
「貴様! 貴様もワシの実力に疑いを持っているな! ならばとくと見せてやろう、このワシの華
麗な妖術を」
 ごぼごぼと水の底から語り掛ける様に呪文が紡がれ、ボウッと灯火が点く様に水饅頭の周囲に人
魂が現れる。青白く灯る炎の揺らめきが五つ、ぐるぐると水饅頭の周囲を回る。魂の回転は次第に
速まって行き、残像が繋がり一つとなって円を描く。太古の英霊を呼び出し弾丸と成す魔の技法。
「ソウルストライクだ!」
 回転の中から我先にと弾丸が獲物へと飛び出した。白い弾丸と貸した魂魄は、流星さながらに尾
を引きながら相対する騎士へと向かう。
 狙われたほうは堪ったものではない。飛び掛る無数の弾丸に横っ飛び一発、辛うじてかわして地
面を転がる。片手を突きながら立ち上がると、一直線に水饅頭へと駆け出した。
 無論迎撃にも人魂が飛ばされる。石畳を砕きながら騎士の駆け抜ける軌跡を作る。偉大だったり
邪悪だったりする魂が盛大に無駄遣いされていく。きっと英霊涙目。
「おのれ、ちょこまかとしおって……。ならばこう言うのはどうかな」
 ベールを被った水饅頭の内側からぱらぱらと、小さな布切れが幾つか落ちた。その布切れは地面
にぺたりと張り付くと、その中央が餅の様に膨らみ始め終いには水饅頭よりも大きくなってしまう。
すっかり大きく膨らんだ布切れには、恨めしげな簡素な穴の表情が張り付いていた。ウィスパー―
―ここまで大きな個体は巨大ウィスパーと呼ばれるシーツを被った幽霊の一種だ。
「サモンスレイブ。さあ船幽霊どもよそやつの足を止めるのだ!」
 わらわらとシーツの膨らみ達が騎士に群がる。そのシーツが更に内側から横枝の様に膨らんで、
追い縋る騎士にむけて振りぬいた。フワフワとした見た目に反してその威力はそれなりに高く、身
をかわした騎士の代わりに槍を幾つも立てかけていた露店がばらばらに吹き飛ばされた。
 撒き散らされた槍を避けながら、追い立てられるばかりでは芸がないと刀を振るう。その斬撃は
鋭く速いが、その交々が幽霊達を傷つける事無くすり抜けた。
「馬鹿目が! 我々亡霊は思念体、物理攻撃など効きはせんわ」
 そんな事は百も承知だ。刀を振りぬいた反動を利用して身体を回し、シーツの群れの只中を連続
してすり抜けていく。
 出来る事は逃げるだけ。この世界では属性の無い刀ではこの敵達は断ち斬れない。だが、この世
界には幽霊を傷つける方法がある。それは――
「ジェェーーーーット!!!」
 腹の底から力を入れて、騎士が猛々しく叫ぶ。無論呼ぶのは、己が半身とも言える怪鳥ジェット。
その名の如く飛ぶ様に地を駆けて、地平の果てから土煙を上げ現れる。
 現れ駆け抜ける相棒に、すれ違い様に手綱を掴んで引っかかり、一緒になって飛んでいく。乗る
と言うよりは引きずられる。地面と平行に身体が靡いていた。
 加速の勢いを殺さぬままに、一つになった相棒達は曲線を描いて赤い道を振り返る。靡いていた
騎士は遠心力で勢い良く壁に向かい、両足で壁に垂直に着地、反動を利用して飛び、相棒の背にま
たがった。
 嘶く様に鳴き声を上げて怪鳥が走る。その背の相棒は手綱を引いたまま身を屈めて、片手を地面
すれすれまでに差し伸ばす。そうして、打ち壊された露店から散乱した槍の一つを見定めてから拾
い上げる。

21 名前:ブルー&ジェット3/4 投稿日:2007/11/27(火) 23:42:17 ID:OlhyQDOY
                   3

「槍は、あまり趣味ではないんだがな」
 手綱で首筋を叩かれて、怪鳥が頭を低くして更に加速した。騎士は手に入れた槍を左に構えて、
切っ先を相棒の顔より前に突き出す。扱うと言うよりは据え付けるだけ。そしてそのまま一直線に
敵へと向かう。狙いは先頭、フワフワと浮かぶシーツの幽霊達のその一体だ。
 切っ先が真っ白なシーツに食い込む。その瞬間刀身から火花が散って穂先が紅蓮に加熱された。
 紅の切っ先は先程の刀の様に容易くシーツをすり抜けて、そして確かに零体に傷を刻み付けた。
肉の痛みを忘れた零体に、久方ぶりの激痛を提供し刺し貫く。穂先は次の獲物、次の獲物と貪欲に
求めて、一つの槍でシーツの幽霊を串団子にしてやる。
 零体を貫く奇跡を可能せしめるのは槍に込められた紅蓮の輝き。錬鉄に四大属性を秘めた石を混
ぜ込み、鋳造された火の属性の片手槍だった。打ち壊された露店の幟には『属性パイク各種大安売
り』と書いてある。値段自体は平均以下とは言いがたいとだけ書いておこう。
 安売りどころか無銭で手にした槍を片手で振り回し、団子の数を増やそうと切っ先は残る水饅頭
をも狙い定める。
 そして、迷い無く穿つ。敵の中心、水饅頭の顔しかない胴体を刺し貫いた。
「ぬおおおおっ、このゴーストリング様が……。馬鹿な!」
 二の句を告げさせる暇もなく、幽霊連なる槍を振り回して地面に突き立て縫い付ける。血染めの
石畳を食い破り、穂先どころか貫いた饅頭達ごと地中に捻り込ませてやった。そのままぐりぐりと
槍を捩じって、不浄霊共を無理矢理土に返して行く。
「うおぉぉぉおのれぃ忌々しい人間どもめ。だがワシはこの程度ではくたばりはせぬぞぉぉぉぅ。
あえて言おう、アイシャルリターンと! へぶっ!」
 最後まで煩かった水饅頭が全て地面に埋まったところで槍を手放す。止めとばかりに相棒が砕け
た石畳を根元に蹴りやり、完全に饅頭たちを埋めてしまった。哀れ亡者は土の中、後はもうシクシ
クとすすり泣く声のみとなる。
「いやぁ、やはり水饅頭殿では止められなんだか。見事な手捌き、天晴れ至極であった」
 一仕事終えた背中に涼やかな声が――そして、同時に静かなる太刀の一振りが見舞われた。
 首筋に涼風。肝には寒風。振り返る暇も無いと断じて、腕だけで手にしていた大太刀を背後に回
す。肩越しに突き出した刃が、振り下ろされた太刀に触れるや否や、跨る相棒の腹を踵で強かに蹴
りつける。蹴られたほうは無駄に驚かず、ただ前に突き進み背に乗せた相棒を二の太刀から離れさ
せた。
 三の太刀も振るえぬ距離まで離れると、鞍に手を置き身体を跳ね上げて愛騎を降りる。中空で置
き去りになりながら、身を捻り襲撃者へと相対して地に降り立った。
 それを出迎える襲撃者は、抜き身の刃を肩に乗せくつくつと肩を揺らして笑う和装の白骨だ。
「散々っぱら此方の駒を切り捨てたのだ、一太刀位浴びせても罰は当たらぬと思うがの」
「そいつは、虫が良すぎるぜ!」
 相対する騎士は大太刀を両手で保持し斜め正眼に構える。心中にあるのは苦々しい不意打ちへの
義憤だ。思わず露骨に嫌悪が口元に出る。
「そんな顔をするな。斬れる時に斬るのが我々の鉄則であろう?」
 まるで自分を卑怯者扱いされている様で不愉快だ――目の前の躯は暗にそう語る。真剣の持ち手
の癖に、何を甘い事を言うのかと。
 勝負において卑怯もへったくれもない。そんな事は判っている。気に入らないのは、唯一つ。
「あそこまでの腕を持ちながら、こんな虐殺に加担するとは……腕と刃が泣くな」
「泣く腕など、あった所でとうに骨。成れば後はただ魔性の性に生きるのみ」
 流す涙は尽き果てたと騎士の糾弾を切り伏せる。そして刃の方は、持ち主の肩に乗せられてその
刀身を不気味な紫に輝かせていた。怪しく紫をその明滅させる。
 まるで自ら血油を欲しがるかのように。腹が減って食わせろ食わせろと唱えるように。
「それに、今日も我が相棒は人に飢えている……。どちらも生前より変わらぬ性、貴様に言われた
程度で変わりはせぬよ」
 言って不快を切り払う様に刀を一閃、紫がぱっと散ってまた直ぐに陽炎の様に立ち上る。
「判った……」
 騎士もまた短く言って、斜め正眼にあった刀を小さく振るう。斜めに、横に振った後、静かに鞘
へと収めた。
 その奇怪な行動を怪訝に思い胡乱げな眼を送ると、騎士の方は腰を落とし足を前後に大きく開い
て鞘の口元を掴んで鯉口を切ると言う、いわゆる抜刀術の構えを取る。柄の前に広げて添えられた
右の手が、今にも白刃を抜き放たんと微かに揺れる。
 ははっ、と骨の侍が薄く笑う。構える騎士の意図を理解して、己の剣技を見せるために一歩一歩
生身へと寄っていく。
 歩み寄りながら、自信もまた手にした刀を鞘へと納めて、腰帯に差していたそれを態々外し手に
持った。下半身は歩むまま、上半身は同じ様に己が刃を抜き打つ構え。騎士の誘いに興が乗り、速
さ比べに腕比べ、挑んでやろうと自ら近づく。
「最早互いに問答は無用。後はただ、流るるのみだ」
「剣客は刀で語るもの、か。嫌いではないな、その流れは」
 人が言って骨が応える。
 その間にも待ち構える騎士に、進み行く侍が近づく。気迫は十分、気力は無尽蔵。抜けば音斬る
神速の刃が二つ、今にも弾けんと戦場を進む。
 後一歩、今一歩、徐々に間がなくなって、互いに回避も無くなる必殺の間合へと堕ちて行く。
 間合が、ついに、整った。
 しかし、両者いまだに動かない。互い向かい合わせて機を測る。揺れていた騎士の手も今は止ま
り、ただ只管に静止していた。骨も無論、微動だにせずに、ただ待つ。
 共に思う、この勝負一瞬で付くと。故に容易に動けない。先に動いた方が負けるのか、先に動け
なかった方が負けるのか。それすらも錯綜する見えない鍔迫り合いの中、無数に問答され消え果る。
 そんな折、生々しい屍の山の上でパイプを燻らせていた船長が一人、睨み合いに退屈して紫煙を
吐き出していた。ふと、パイプの中がすっかり燃え尽きている事に気が付いて、パイプをさかさま
にし、ポンと掌で底を打つ。
 燃え尽きた灰が塊のままゆっくりと地に落ちて……――
「「……っ!!!!」」
 ――ジッと灰が地に触れた途端、両者、一寸の狂いも無く同時に動く。
 瞬く間の間に数十合、刃が踊り、翻り、削り合って火花を散らす。吐く息も忘れて続いた剣舞の
果て、抜き放たれた刃が何時の間にか両手で振るわれ、大上段からの一合一閃、がっちりと鍔競り
合ってせめぎ合う。
 ぎりぎりと今までの華麗な剣戟が嘘の様に、互いに奥歯を噛み締めて押す押す押す。引いて蹈鞴
を踏ませようなどと、姑息な真似など思いも付かない。其れほどまでに真剣必至、この競りに己が
全てを賭けている。刃が離れた時こそ、終焉であるとお互いに悟っている。
 ぎりぃっと互いの剣の根が擦れ、競り合う力が逸れ合う。それを機にして両者が再び同時に跳躍
し、後方へと遠く距離を取り、着地と同機全速で前へと飛び出した。
 距離を詰めながら互いにとったのは、きしくも同じく納刀からのすかさずの抜刀術構えだ。もう、
互いの頭には、斬ると事だけが渦巻いている。
 砲弾の様に突き進む、二つの雄姿が今また重なる。
「御印頂戴!!!」
「転空神剣奥義! 華舞太刀!!」
 一瞬の交差が終わった。斬撃の応酬が過ぎた後に、ただ只管の静寂が上から叩きつける様に周囲
を襲う。静けさが身を切り、耳に痛く、じんわりと後ろ髪に広がった。
 ぴきりと音を立てて、騎士の着けていたサングラスが断たれた姿で地に落ちた。静寂の中に、酷
く騒音を振りまいて落着が鳴り響く。
 背中合わせだった両者の片方、骨の侍が抜き放つままにしていた体を動かし、ゆっくりと紫に燃
える己の刀を鞘に納めた。両手を着物の袖に収めて、満足げに空を見上げる。
「フン……、散るには良い空であったか。人の侍よ、その見事な腕、次は黄泉比良坂にて間見えた
折に、また見せてもらおうぞ」
 語った侍が、まず上下に胴を薙がれて身体をずらした。切り上げる形で逆袈裟を斬られ、加えて
交わる様に袈裟懸けにもう一閃入れていた。一瞬の交差で三撃、これぞ奥義の冴えである。
「また、つまらぬ物を斬ったか。ご免っ、ジェェーーーーット!!」
 呟いた騎士は刀をくるりと柄で一回転させて、刀の位置を鞘の側に移しながらもう半回転、切っ
先を鯉口に合わせ流れのままに鞘へと収める。そうして、呼びつけた相棒に飛び乗り残す敵へと駆
け出す。駆けながら、新たなサングラスを懐から取り出して装着するのも忘れない。
 その背後で、崩れた侍が塵となって消え去った。
「やーれやれやれ……、うちの一家はことごとく全滅か。ふがいない事だ、たった一人に、しかも
そちらは無傷と来ている」

22 名前:ブルー&ジェット4/4 投稿日:2007/11/27(火) 23:44:12 ID:OlhyQDOY
                   4

 最後に残った最大の障害が、のんきにパイプを吹かしながらつらつら語る。迫る騎士はまだ遠く、
もう一吹き二吹き位する余裕はありそうだ。しかし、海賊の王は今まで腰掛けていた屍の上から重
そうな腰を上げると、燻らせていたパイプからまだ新しい葉を底を叩いて捨ててしまう。そうして
パイプを大事そうに上着のポケットに仕舞い込みながら、血の色に染まった路地を騎兵が駆けて来
るのを眺めた。アレだけ暴れたと言うのに元気なものだと、浅黒いしゃれこうべに思わせた。
 暴徒の突撃にも似た爆走が、接敵寸前びたりと止まる。
 手綱を片手で引き上げて愛騎を停止させ、空いた手は腰の刀を鍔元を握り締めて、憎さと怒りを
込めた眼差しを海賊王に向けていた。多くの無抵抗な人を部下を使って切り裂いた悪逆として、こ
の騎士には目の前の存在が許せなかった。
 だが――
「だが、あえて問う海賊の王よ。ここで互いに引きはしないか?」
「はっ、ははははははははははははは!!!!」
 返答は爆笑だった。ちょっと待てと言う様に片掌を突き出してカタカタと顎を鳴らす。傲岸不遜
の塊だったあの王が目元を覆って背を反らし、ゲタゲタゲタゲタ壊れた様に笑い声を上げていた。
この世にこれ以上面白いものは無いと、その時の彼の空洞の頭蓋には響き渡っていた。
「はー……。笑った笑った。あれか、こっちもそっちもお互い殺し殺されしたからここら辺で手打
ちにしようじゃありませんかって訳か」
「ああ、そうだ。元より此度の事は此方の側――人の戯れが発端であろう事は用意に想像が付く。
勿論、その戯れの発端者が当に躯と成り得ている事も」
 其処まで分かっているなら行幸行幸。ぱちぱちと二度拍手して、躯の船長が死体の山から腰を上
げた。ぽんぽんと上着越しの尻を叩いて、最後に被っていたコルセア帽のずれを直す。船長たるも
の身だしなみには気をつけなくては部下に示しが付かないのだ。今部下は全滅しているが。
「ただの人間数十人とこの俺の子分共を同等に考えろと? そいつは無理な相談だなぁ。こんな、
大陸のど真ん中に呼びつけておいて、腹立ち紛れまで止められ、あまつさえ子分も幹部も皆殺しと
来た。これに怒髪天しない馬鹿は居ない。ああ、居ないね、船長的に」
 少しだけ愉快そうに、言葉に調子をつけて船長が語る。肩を竦めてやれやれと頭を横に振り、遠
くを見つめる目で騎士の背後に連なる死山血河を眺めた。とてもではないが、釣合うとは思えない。
 だが、それでも騎士はその思いを受けて直、己が心中を語りぶつける。
「其処をまげて、提案したい。双方同族を斬られて憤慨していた。どちらもこれでは足りぬと思っ
ているだろう。其処をまげて、あえて提案したい。どちらの者も不満が残る今であればこそ、ここ
までで手打ちにしていただきたい」
「ふざけるな!!」
 その提案に、返って来たのは激怒であった。
 ふざけて貰っては困る。自分達の世界は自分を残して全て奪われたと言うのに、貴様らの世界は
まだ大半が生き残り遠巻きに此方を窺っているではないか。これでは不公平なのではないか。
 そんな言葉を連ねられ、騎士が騎乗したままで微かにたじろぐ。
 世界の規模が違いすぎるなどと言う事は、目の前の王にとっては話にもならない小事であるらし
い。同じ人数ではなく、見合うだけの対価をよこせと言う。先程も言っていたが同等に考えるなど
出来はしないのだという。
 其れほどまでに部下に価値観を抱いていたとは、正直騎士にとっては意外に見えた。何人か自分
の手で粉々にしていたし。
「俺の家族に手え出しといて、そこ等の雑草幾許かと同質で手打ちにしろとたあな。海の男舐めん
のも大概にしとけや、一世紀も生きていないようなクソガキ共が」
 家族――そうか、と思わず納得した。
 納得したが今度はたじろぎはしなかった。手綱を握る手に力を込めて納刀したまま鞘の鯉口を下
げる。得意の抜き打ちを放ち易くする為に。
「互いに譲れなくなったな」
「初めから、譲り合えるもの等無い。後で元に戻るとは言え、仇は仇だ取らせて貰おう」
「ならば此方も、関係なく散っていった同胞達の仇を討つ」
 家族のカタキを同胞のアダを、それぞれが望む。本来ならば、交わる必要も無かった二つの線が、
今は奇しくも複雑に絡み合っていた。
 正義の味方の様に颯爽と現れた騎士と、悪逆非道を尽くしていた海賊達。一見すると単純な構図
も、今こうして相対していれば複雑極まりない。
 正しき義と書いて正義と読む。打ち倒された家族を思い、住処から引きずり出された事を悪とみ
なして反撃する。例えその後に行過ぎたとしてもこれは悪なのであろうか。
 悪い行いと書いて悪行と読む。無秩序に引き裂かれた人々を見過ごせず、自らの技量によって襲
撃者を撃退する。家族を踏み躙られた者にとってこれは善なのだろうか。
 正義とは生き物なのであろう。牙を持ち爪を尖らせた猛獣なのであろう。そして時に噛み合い、
殺し合い、負けた方を悪と定める。善悪とはそんな二つの名を持つ宿命の獣達なのだろう。
「転空真剣ブルー&ジェット、押して参る」
「キャプテン・ドレイク。受けて立とう」
 ここに在るのもまた獣だ。
 自信の胸に湧いたものを、ただ只管に貫こうとするだけの獣。もしかすると、善悪など区別する
事無く、漠然と暴れたいだけの獣かもしれない。が、其れもまたどうでもいい事と風と共に流れる。
 不意に。正に不意に、愛騎の腹を蹴り騎士が前進を再開した。海賊の王もまた不意の突撃に戸惑
う事無く、ポケットに入れていた銃とは違う銃を腰の後ろから取り出した。無骨で大きな二連筒の
ショットガンを銃身と銃握の丁度境目で中折れさせて、ポケットから取り出したシェルを左右の銃
身に直接収める。用意万端と銃を元に戻すと、駆けて来る騎士は丁度相棒の背の上に片膝をついて
立ち上がったところであった。
 さあ、激突までもう直ぐだ。突進の勢いそのままに跳躍して刀を抜き放ち、手にした銃で文字通
り迎え撃つ。その準備がお互いに整った。斬るが早いか撃つが早いか、後はそれだけ。
 今ここに、誰も望みはしない不軌遭遇最終戦の幕が切って落とされた。
「一つだけ感謝しよう。我々を呼び出した玩具でも町に現れた害虫でもなく、一介の憎悪と憤怒を
ぶつける敵として扱ってくれた事に。其処にだけは一家代表して謝辞を送る」
 待ち構える船長に向けて、騎士は既に愛騎の背から跳躍していた。相対者の口が何事かを紡いで
いたようだが、旋風よりも早く飛ぶこの身には聞こえはしない。返答する必要があるとも思えぬ。
放って置いて自分に繰り出せる最速を繰り出してしまえばいい。気にするまでも無い些末事だ。
 しかし、騎士は叫んでいた。向こうに聞き届けられるかなどは、思考の範疇にすらない。それで
も叫ぶ、腹の底から。
 剣客で在るならば、刀振るう剣士であるならば、この一言は宣言せねばならないだろう。
 音斬る刃に想い乗せ、技振るう度在るべき終局が待つ。
 この一振りに己の旅路を込めて、刹那の戯れを悦に濡らす。
 故に叫ぶ――

「切捨て御免!!!」

 結末、描く事こそ無粋。

                                         未完

23 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/11/28(水) 19:53:30 ID:F0shJ0ZU
なんかヒーローものの特撮かアニメのようなノリだなw
しかし結末がないのがもったいない。是非続きを!

24 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/04(月) 10:25:55 ID:g43IU5gE
sage方が分からないですが、ひっそりと投稿します。

25 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/04(月) 10:28:45 ID:HBE5IPFE
なんの名前もないただの草原。
その草原に紛れるように一本の剣が刺さっている。
美しいまでに磨かれた銀の刀身には、大小様々な傷が刻まれていた。
この剣を知る人は偉大なる英雄の剣だという人もいるし、また在る人は王族の剣だとも言う。
それらは全て間違いではなく、正解でもない。
この剣の持ち主は最後まで気高く、誰よりも優しかった騎士の中の騎士。
しかし、誰も彼を知る人は居なかった。
今この剣の前に老婆が静かに佇んでいる。
紫の法衣から覗く幾重にも刻まれたシワだらけの顔は優しげで、その人がどんな人でどんな人生を歩んで来たのかは想像にかたくない。
「あれから20年、本当に色々な事がありました」
細い喉から紡ぎ出された声は柔らかな風に乗って剣へと届く、それは諭すようでもあり語りかけるようでもある。
剣は何も語ることなく、朝日を浴び美しく輝く。
鳥の鳴き声だけがまるで老婆への返事だと言わんばかりに草原に響いた。
「貴方が最後に遺したように、私は精一杯生きました。」
老婆は瞳を閉じ、ゆっくりと再び語り始めた。
もしかしたら今までの人生を振り返っているのかも知れない。
「楽しかったこと、苦しかったこと本当にたくさんありました」
剣の持ち主が健在だった頃、老婆と剣の持ち主は夫婦だった。
最初はふとした出会いだったけど、多くの出会いや経験を通して結ばれた二人。
誰に対しても優しくそして美しい女性と、人をからかうのが好きで周りを楽しませた男性。
決して楽しい事だらけでの人生ではなかった、逆に苦しい事の方が多かったと彼と歩んだ人生を振り返りながら老婆は思う。
「でもね、私は貴方の妻になれて幸せでしたよ」
まるで愛おしい人に愛を囁くように老婆が皺だらけの顔で剣に微笑む。
「もうすぐ貴方の傍にいけそうです」
ゆっくりと老婆は剣に近寄りもたれかかる。
老婆の細い体を受けても尚、剣は倒れることなく。
老婆を支えようと地面に強く突き刺さったまま微動だにしない。
「また会えた時は、私を貴方の妻にしてくれますか?」
やがてその言葉を最後に老婆は長い眠りを迎えた。
長い長い眠りについた老婆の寝顔は余りにも穏やかで、微笑さえ浮かべている。

26 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/04(月) 10:30:14 ID:619Nae3o
老婆が目覚める事はもうないだろう。
彼女は愛する人の元へ行ったのだから。


気が遠くなるほどの長い月日が経過した。
草原だったこの場所にもやがて整備され新しい町が建ち、多くの冒険者が行き来している。
何もかも変わってしまったが、変わらないものもあった。
あの剣とその横に建てられた小さなお墓。
長い月日が経ったけど相変わらず剣は美しく、すぐ隣にある墓は毎日掃除されているのであろう事が分かるほど整っている。
「もしかして泣いているのか?」
この街に着き、この街のシンボルとも言える有名な剣を見た瞬間、ピンク色の法衣を着た少女がいきなり泣き出した。
何故泣き出したのかも分からないし、泣かすような事をした覚えのない少年だったが戸惑いつつも少女の肩を抱き寄せ頭を撫でる。
「ぐすっ……悲しい訳じゃないんだよ?でもこの剣みたら、なん、か涙が止まらなくて……」
ごめんね、ごめんねと謝りながら泣く少女を、仕方ないなぁと呟きながらも少年はよりいっそう強く少女を抱き締めると。
抱き締められた少女も弱い力で精一杯返した。
もう離さないといわないばかりの抱擁をしながら苦笑まじりの顔で少女を見る。
少女が何故泣き出したのかは検討つかないが、少年は奇妙な感覚を感じていた。
「う〜ん、なんか俺。以前ここに来た気がするんだよな……」
今日初めて来た街なのにおかしいなと少年は思う。
未だに泣き続ける少女を抱き締めながら見上げた空はどこまでも青く。
草原の香りを含んだ風が吹き抜けた気がした。


<The End>

27 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/14(木) 03:22:22 ID:iJvXoDBk
思いついたので投下致します。
乱文お目汚し失礼。


・季節モノ

前兆はグラストヘイム騎士団にて。
「っくしゅん」
前を進んでいた彼女が突然くしゃみをした。
「風邪か?」
「大丈夫、ちょっと鼻がむずむずするだけ」
グスッ、と鼻を啜り答えた。
「ここ最近特に寒いから気をつけてな。
まー、今日は大事を取って早めに切り上げようか」
同意するように彼女の騎乗したペコペコがクェーと鳴く。
それを見た彼女は少し笑って答えた。
「そうね〜。今日は早く帰るとしましょうか!」
「あいよー」
ワープポータルを開き、彼女が先、俺が後で乗り街に戻る。
二人で簡単に清算を済ませ今日はお別れ。
「「また明日」」
帰り道に吹く風は冷たく、今日の夜も寒くなる事を伝えていた。


帰り道、空気が痺れるように冷たくてペコの背にもたれながら暖を取る。
彼に言われたからと言う訳では無いけれど、少し前からぞわぞわと寒気が身体を舐めていた。
「風邪かなぁ」
ペコに聞いてもクェーと泣き声が帰ってくるだけ。
「早めに帰って休みましょうか」
またクェーと鳴いてペコは少しだけ歩調を速めた。
暫く前から取っている宿の厩舎にペコを繋ぐ。
「お疲れ様。また明日ね」
ペコの頭を撫で私は宿の中へと足を向けた。
厩舎は旅人が使う馬や驢馬、同業者が使うペコなどで賑わっている。
私のペコもさっそくのおしゃべりを始めたようでクェクェと鳴き声が聞こえてきた。
部屋に入ると狩りの緊張が解けたのかどっと疲れが押し寄せる。
いつもはきちんと装備品などを片付けるのだけどだるさが先に立ち、
(明日片付けよう)
まるで子供がするように装備品を放り投げ、服と鎧を脱ぎながらベッドに向かう。
のそのそと寝巻きに着替えて私はベッドに入った。
「おやすみなさい」
誰に言うとでもなく呟いて、目を瞑る。
少し冷たい布団が体温と同じ温度になる頃には私は眠りに落ちていた。


『ごめんなさい。体調が悪くて今日は狩りに行けそうにないの』
朝、狩りの準備をしていると彼女から念話が入った。
『どうした?やっぱり風邪?』
念話では相手の体調までは分からず、昨日の事も気にかかっていた。
『多分ね。すぐ直ると思うから、それまでは臨時パーティーにでも行きながら待ってて』
『了解。悪化しないように気をつけてな』
『はいはい。あなたも風邪引かないようにね。じゃあ』
念話が終わって手持ち無沙汰になった俺は準備の途中だった荷物を取り出して鞄の中身を軽くする。
たまには狩り以外の過ごし方もいいだろう。
あれこれと買うものを頭に思い浮かべながら部屋を出た。


朝起きるとまず身体のだるさと熱っぽさを感じ、
それでもなんとか身体を起こすと喉の痛みと出てくる鼻水に風邪を引いたんだと思い知らされた。
狩りの中止を念話で告げたまではよかったものの、食料を調達するのもこのままではままならない。
(寝てれば直る!)
と意味のない自信を持ってベッドに潜り込み、目を閉じて熱っぽい眠りに落ちる。


風邪には何が効くだろうとギルドのメンバーと話しながらプロンテラの首都を歩く。
【天津にはいい料理があるぞ】
みんなの知恵袋的な我がギルドマスター(天津人)の提案にメンバーみんなが
それがいいと言い出し、俺も作るぜ!なんて声も聞こえて来る。
【まずは土鍋を用意してだな・・・】
マスターのナビゲートに従って必要な物を揃えた上で+αを用意した時点で既に時刻は正午に差し掛かろうかとしていた。
【んじゃ、いってくる】
食材と土鍋で一杯になった紙袋を抱えて彼女の部屋へ向かった。
【グッドラック】(親指を立てる的な意味で)
【がんばれー】(・・・的な意味で)
【うるせぇよ。んじゃ切るぞ】
メンバーたちの笑い声が響くギルド会話に捨て台詞を吐いて会話を切る。
何がガンバレだ馬鹿馬鹿しい。
狩りの相棒の見舞いをして何が悪かと!
てくてくと歩くうちに彼女の泊る宿に着く。
ノックをしていることを確認する。
1回。
・・・出ない。
2回。
・・・出ない。
3回。
さすがに帰ろうかと思った所で中から物音が聞こえてくる。
びたんという音と何か硬いものが転がる音。
少し間を置いて、ドアが開いた。


風邪のぼんやりした頭でドアを開けると何かが詰まった紙袋を抱えた見慣れた彼の顔が。「やぁ、どうにも暇だから見舞いに来たよ」
成る程、道理で紙袋を抱えている訳だ。
買い物にもろくに出かける事の出来ないこの状態にはとても有り難かった。
「入ってもいいかな?」
何も言わないのを肯定と捕らえたのかそのままするりと廊下に入り込んでくる。
何だ、その聖職者とは思えない身のこなしは。
と、そこで部屋の惨状を思い出して引き止める。
「あ、待って!」
時既に遅く、彼はキッチンを兼ねた廊下を通り過ぎ部屋の中に入っていた。
「あらまー」


まるでおばちゃんのような調子で呟いた俺の言葉に彼女はバツの悪そうな顔をした。
部屋の中は入り口からベッドまで防具や衣類が点々と続き、その両側には盾や槍が放り投げられて、とても年頃の女性の部屋とは思えない惨状になっている。
「・・・今、片付ける」
のろのろと衣類を拾い始める彼女を手伝う為、まずは槍を拾い上げる。
「槍と盾はいつもの場所でいいか?」
こくり、と頷くと彼女は衣類と鎧をクローゼットに押し込み始めた。
俺はその間に槍と盾を定位置に置く。
「散らかっててごめんね」
熱のせいか、羞恥心か顔を真っ赤に染めて謝られる。
「っくしゅん!」
くしゃみを一つ、鼻水も追加で出たようでティッシュティッシュと鼻を拭く。
「それはいいから寝てろって。何か暖かいものでも作る」
食材を入れた紙袋を抱えてキッチンへ
「ありがとー」
そう呟いた彼女はベッドに横たわった。


キッチンに向かった彼にお礼を言ってベッドに寝転ぶ。
熱に浮かされてぼーっとした頭は何も考える事が出来ず、料理の音を聞きながらまた眠りに落ちた。
布団の上から揺すられて起きるといい匂いがした。
「たーんとおあがり」
ベッドの脇に置かれたサイドテーブルには湯気を立てる土鍋が置かれていて、朝から何も口にしていない私の食欲を刺激した。
サイドテーブルの前に移動するためベッドの端に腰掛けると箸を渡される。
「これは?」
見たことのない料理だ。
箸を使うのは天津の料理に多い。
「うちのマスターオススメの天津料理だ。冬になると天津の人はこれを食うらしい。頂きます、と言って食おうな」
手を合わせるジェスチャーの彼に習って手を合わせ
「いただきます」
と、料理に箸を付ける。
前に龍の城で食べた麺料理に似ているけど、麺が太い。
慣れない箸に苦労しながら一本口に入れた。
美味しい。
龍の城の麺料理とは違った味付けで言うなれば天津風?
空腹も手伝って、私はそれを夢中で平らげた。
お腹が一杯になるとまた眠気が襲ってきて、また眠りに落ちる。
今度は彼もいる安心感と満腹感から幸せな眠りが訪れた。


真夜中に目が覚めた時には幾分か身体が軽く、頭もすっきりしていた。
周りを見ると椅子に座ったまま器用に寝る彼の姿が。
部屋の何処からか引っ張り出したらしい来客用の毛布を被っている。
外に出ている顔が寒いのか時折顔まで毛布を被り、息苦しくなったのかまた顔を出すという事を繰り返していてまるで亀のようだった。
寒そうな彼にホットミルクでも振舞おうかと考え、ミルクを暖めにキッチンに向かう。
そこで今日の日付を思い出し、一つ閃いた。
ミルクを少し小鍋にかけて温まるのを待つ。
運良く買い置きしてあった板チョコを入れて完全に溶けたのを確認してまたミルクを入れてまた温まるのを待つ。
二人分のカップにそれを注いで私は部屋の中に戻った。
相変わらず彼は亀のようにしながら眠っている。
サイドテーブルにカップを置いて起こそうと近寄ると唐突に彼が目を覚ました。
「ん、起きて大丈夫なのか」
目を擦りながら欠伸をする姿が微笑ましい。
「朝よりは大分楽になったよ。それよりもあなたのその状態のほうが心配なんだけど」
椅子で寝たせいで凝ったのか首をゴキゴキ鳴らして再度欠伸。
「はい、これ。暖まるから飲んで」
まだ湯気が立ち昇るカップを彼に手渡して、私は自分のカップに口をつけた。
少し冷えて来た身体に暖かい甘みが心地よい。
彼も口を付けて何を渡されたのか気がついたみたい。
「ホットチョコか」
美味しそうに更に口を付ける彼。
ふーふー、と中身を冷ましながら美味しそうにカップの中身を空ける様子に少し嬉しくなる。
「一応手作りだからね。味わって飲むように」
「あいあい。久々に飲んだけど美味いなー」
ニコニコとチョコドリンクを飲む彼は分かっていないようで・・・
「さて、今日は何の日でしょう?」
彼はきょとんとした顔で私を見る。
「今日?」
そこでやっと壁かけのカレンダーを見て
「あぁ、あー!そうか、バレンタインか!」
やっと気が付いたか。
呆、とカレンダーを見つめる彼とにんまりと笑う私。
「ハッピーバレンタイン」


以上。
季節にちなんだ流行りモノのお話でした。

28 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/14(木) 07:20:28 ID:VvRD.beU
可愛いお話ですね。
彼の毛布にくるまってる様子にニヨニヨ(´ω`*)

29 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/21(木) 20:06:07 ID:4dbL4JaU
下がってるのがもったいないので、ageちゃいますね。

ああ、私も短編が書きたい……、でも自分の中の引き出しに何も入っていない。

30 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/21(木) 20:07:23 ID:4dbL4JaU
なんで上がらないんだろう、とか思ってしまった……。失礼しました。

31 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/25(月) 02:35:45 ID:v/Uo7A5w
GJ

32 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/12(水) 06:23:07 ID:qd1YCFms
最近ここに来たばかりの新参なわたしですが、思い切ってスレの皆さんに質問させて頂きたいことがあります。
まえに友だちに紹介されて読んだRO小説で、一作どうしても忘れられない作品があります。
主人公らしき騎士が天津から出てきた女の剣士とヴァルキリーレルムで決闘する話で、バーサクの効果で動けなくなった騎士のほうが、『しばらくバーサクは使えない』って言って終わる作品なんですが。
こちらの保管庫を漁らせてもらったんですが、それらしき作品も見当たらず困ってます。
もしご存知の方いらっしゃったら、お手数ですが教えてくださいOTL

33 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/12(水) 12:24:48 ID:8hJmBPns
>>32
あなたの求める小説はここにはありません。別の板の作品だと思います。
ここをチェックしてる人は、向こうのスレも見てると思うのでURL載せますね。
ぜひ他の作品も読んでみてください。

たぶん、これの2番目じゃないかなと。
ttp://gemma.mmobbs.com/test/read.cgi/ragnarok/1171015950/157

34 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/12(水) 23:48:40 ID:qd1YCFms
>>33さん
ああ、この作品です!ありがとうございました!
それから、スレ違い(?)失礼いたしましたOTL

35 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/03/17(月) 16:47:51 ID:2nAbuTss
久しぶりに577氏の小説を全部読みたくなったんだけど……。
引退しちゃってHP閉鎖の上にエロ部分しか保管庫にないorz
どこかに全部保管しているような場所はありませんかね?

36 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/04/15(火) 09:49:59 ID:fVuv1ljo
ROの短編小説みたいなものは、大学の授業中にこっそり書いている俺。
勝手な妄想と位置づけてめちゃくちゃなことをさせてます。

しかし、今書いてるのが生体3Fネタでしかも萌要素皆無とかスレ違いもいいところでしたわ。
ちょっと釣ってくるlllorz

37 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/04/17(木) 15:16:29 ID:sP0bDo8s
キス程度なら18禁のほうじゃなくこっちに投下なのか?

昨夜練る直前に電波キターな感じで勢いに任せて書いたものの。
18禁のほうにしか投下したことがないものより。
ちょっとガンプチかってくらぁ。

38 名前:Witch hezel 投稿日:2008/04/17(木) 16:49:12 ID:sP0bDo8s
 宿に帰り、今日の収集品や稼ぎをベッド脇のボードに置く。
 早速シャワーでも浴びよう。 そう思い立ち重い甲冑をはずし、着衣を脱ぎ始める。
 ブーツの中に、白い砂がたまっていた。
 ああ…これはあの時の…。


 思い返せば枯葉が落ち、次第に冬支度を始める季節。
 その日俺はソロに狩りに励んでいた。
 あと少しでレベルが上がるな…。
 その時。

『はじめまして、今日からこのギルドに入りましたアヤです』
 と、ギルドメンバーにしか聞こえない声で挨拶をする人が居た。
『あ、君がマスターの言ってた新人さんかな?』
『そうです、あと少しでハンターだなあって思ってた時に狩場で声をかけられて。
 支援さんとか多いんですね、このギルド』
『うん、組めるようになったら誘うといいよ』

 俺は献身型クルセイダーなので、時々誘われることがある。
 誘われたら行くけれども、それ以外の時はほとんどをソロ狩りをしていた。
 自分が頼りにされた時はうれしい。
 けれど、それに慣れすぎてはいけないと思うからだ。


 アヤはアマツ出身らしい。
 ミッドガルド周辺では見ない、サラサラで漆黒の髪。
『私の国では春になるとサクラって木の下で宴会をするんですよ』
『そうなんだ?』
『ええ、なんでも宴会をしていると神様が集まってくるから、願い事をするというのが由来らしいです』
 お互いソロをしながら、他愛のないおしゃべりをした。
『いつか行きたいですね』
『ああ、みんなで行こう』
 そう返事しながらも、サクラには興味があった。
 それ以上にアヤの気さくな性格に惹かれつつあったせいもあり、その日が楽しみだった。


 ギルドには規則がある。
 お互い大人だから性交渉するのはいい。
 しかし痴情のもつれでギルドの空気を悪くするような恋愛沙汰を起こしてはいけない。

 さすがに俺でもいくつかの恋があり、別れていった経験がある。
 その度に寂しさは残るものの、仕方がないと諦めることが上手になっていった。
 彼女らに言わせると俺は、与えることは出来ても求めない性格からか、物足りなくなるらしい。
 甘えるのは正直苦手だ。 失うのが怖い、そう思うからかもしれない。


「ミケ!」
 溜まり場でボケーっとしていたらしい。
「…アヤ、いい加減人をネコみたいな呼び方するのやめてくれないか?」
「いいじゃん、ミゲールだからミケで。
 ミケ可愛い顔立ちしているんだし」
「……」

 俺の名前は出身地の読み方で『ミゲール』という。
 国によっては『ミカエル』とか『ミハエル』、面白いのだと『ミシェール』なんていうのもある。
 顔立ちの事は散々言われていた。
 黒髪に優しげな顔――― 一見、女性に見えるほどの―――に童顔なので、
「その筋」の趣味を持つ奴らに声を何度かけられたか。
 一生懸命年相応に見えるように、ミニグラスをかけてみたりした。

「あんまりボーっとしていると…ミカいっちゃえ!」
 そういうとアヤの頭上を飛んでいる鷹―――ミカという名前をつけたらしい―――が俺の頭を攻撃する。
 あまりの事に俺はグランペコの上から落ちてしまった。
「あははっ、ミケ落っこちてるー!」
 ケラケラと笑うアヤ。

39 名前:Witch hezel 投稿日:2008/04/17(木) 16:51:45 ID:sP0bDo8s
 気さくな反面いたずら好きで。
 この前も俺が久々に臨時でもしようと広場に行った所、後をついてきていたらしく。
 アヤの仕掛けたトーキーを踏んづけた俺は、大衆の面前で顔から火が出るような自己紹介(?)をされてしまった。


「ねぇミケ」
「だから『ミケ』は止めろといってるだろうが」
 リンゴジュースを飲みながら二人で何気なくたたずんでいた。
「…キス…した事ある?」

 ぶっ!
 いきなりそれかよ…。

「当たり前だろうが…俺をいくつだと思ってるんだ」
「そっか。
 …じゃあキスしようか」
「…は?」
「いいならいいよーっだ!」
 イーっと睨み付けると立ち上がり、溜まり場を後にしようとする。
「いいのか?俺で?」
「ん…いいよ」
 そう言うと俺に近づき、軽く唇を合わせた。


 それから、たびたび人目がないところでキスを交わした。
 何度も。 時々舌を絡ませるようなキスもした。
 けど、恋人ではない。 そんな関係が続いた。


 ある日龍の城へ保護者としてついていくことになった。
 ヒールが使えるわけでもないので、最初は土精やマンフィスにプロボックをかけていた。
 が、アヤの逃げうちやダブルストレイフィングですぐ倒せることもあり、緊急時の露払い程度だった。
 グランペコから降り、徒歩でアヤと一緒に駆けて行った。

 海辺で休憩する。
 土地柄か、いつ見ても茜色に染まる海が綺麗だ。
 ぼんやりと、立ちながらその景色を見ていた。
 その刹那。
 どんっ!
「いたたた…アヤ何するんだよ」
 不覚にも前方から突き飛ばされ、仰向けになる。
「ほら。―――空が綺麗」
 そう言うとそらを愛しい様に見つめる。
「本当だな」


「ねね、もう公平組めるしオットー海岸でも行かない?」
「アヤ、回避は足りてるのか?」
「ん〜大丈夫だよ、いざとなったら罠かければいいし。
 それに、じゃーん!」
 誇らしげにヒップバックから取り出したそれはヒールクリップだった。
「良く買えたなあ…」
「うん、臨時で超レアが出て、貯金してたのとあわせてようやく手に入れたのー。
 これで回復剤いらずってことね!」
 そういうと長い髪を両側から一房取り、ヒールクリップを使ってまとめた。
「ほら、行こうよ!」
 にこっと笑うやいなや、走っていった。
「ちょ…待てよ!」
 俺はグランペコにまたがると急いで出発した。


「わー、なんかいい感じの風景よね」
 青い空。 広がる海には波しぶき。
 今は冬真っ盛りだというのに、ここだけは常夏の気温だった。
 …リゾート気分で来る様な所ではないとは思うが。

「早速オットー発見! いっくぞー!」
 走り出すアヤに急いで献身をかけ、グランペコを並足から早足にして着いて行く。
 罠をかけ、うまく処理していくアヤ。
 普段あまり飛ばないと言っていた鷹も、今日は良く飛んでいく。
 俺が一撃突付く間もなく、アヤ一人の力で次々と倒していった。

 何十匹狩っただろうか。
「あれ?罠が使えない…」
 そう呟いたアヤの背後に大量のオットーがわいた。
「後ろに下がれ!」
 急いでオットーを片手剣で切り裂いていく。
 逃げそびれたアヤに襲いかかろうとするオットーを追いかけ、斬る。

 なんとか倒し終え、一息つく。
「アヤ…常時ヒールクリップをつけてると、スキル使えなくなるぞ?」
「…みたいね、説明をよく読んでなかった」

 『スキル使用時、SP消費量が25%増加。』

「まあ注意しなかった俺も俺だが…どうするか?まだ続ける?」
「ん…なんか疲れちゃったし、ハイスピードポーションも切れたし。
 帰ろう…」
 眠たげな表情のアヤ。
「判った」
 ふらふらとするアヤをグランドペコに乗せ、二人乗りする。

 規則では禁じられている行為だが、アヤも眠たそうだし…大目に見てもらおう。
「わー、ミケって普段こういう風景見てるんだね!」
 グランペコで駆けていく速さと高さで、ちょっと興奮気味だ。
 風を斬る走り。 その時アヤの長い髪がなびいた。
 甘い花のような香り。 少しドキッとした。


 ―――そうだ、あの時の砂だ。
 なんとなく懐かしく思った。

40 名前:Witch hezel 投稿日:2008/04/17(木) 16:52:55 ID:sP0bDo8s
 数日後、俺は思い出したかのようにアヤが欲しがっていた赤いリボンを持って溜まり場へ向かった。
 実用装備を買い揃えるのが先、と言っている割には露店を見ては
「いいな…」
 と呟いているのを覚えていたからだ。
 …どんな顔をするかな、そう思うと胸が高鳴った。

 アヤは居ない。 ギルド名簿を見ると、そこには確かに居ると記されているのに。
 まあいいか…そう思い、グランドペコから降り、近くの木に手綱を縛ると、疲れが出て…。

「…ケ…ミケ」
 ?…アヤ…か?

「あ、やっと起きた。
 こんな所で寝てると風邪ひくんだから」
 上にぼろマントがかけられていた。
「ん…ありがとう…」

 顔を洗おうと溜まり場の近くにある宿屋の洗面所を借りに行く。
 …なんだ、あいつら俺の事を見てくすくす笑ってる。
 指を差してるものまでいる。
「@*#:・…!?」
 急いで「それ」を落とすとアヤのところに駆け寄る。

「あー、おかえり。
 似合ってたのにー」
 にやにやと笑う。

 寝ている間に化粧品と染料で化粧&「可愛いでしょ?」と書き込まれていた。
 いつもの悪ふざけならまだ許せる。
 けど、限界だ。 怒りをぶちまける。
「おま…いい加減にしろよ!」
「え?何でそんなに怒ってるの?
 ミケ可愛いかったのにぃ」
「やっていい事と悪いことに区別ぐらい、つくだろうが!」
 そういうと背中を向け、溜まり場から去ろうとした。

「ミケ…ごめん」
「……」
 付け上がられても困る。だから放って置いた。
「ごめんね」
「……」
 小声になる。
「ごめんなさい、もういたずらはしないから…」
 …許そうか、と思って振り返った時。
「……」
 諦めたように、うつむいて溜まり場から出て行った。
 胸がチクン、と痛んだ。


「ミゲール、それきっとアヤのことが好きになってるんだよ」
 ギルドメンバーのユーリ―――ギルドに入ってからの親友で、
腹を割って話せる仲のブラックスミスだ―――に、今までの事や、胸の痛みを相談した。
 その答えがこれだ。
「そっか…」
 判りきっていたことなのに。

 いつの間にか、本気で好きになっていたようだ。
 そういえばふとした時に肩をすくめて困った表情を見るのが、少し怖かった。

 もし、いつものように付き合い、そして別れたら。
 再び誰かと恋に落ちた時に、思い出しそうで…怖い。

 この感情を忘れていく事が成長していくことだとしたら…俺はずっとこのままで居たい。

<END>

41 名前:Addicted To You 投稿日:2008/04/19(土) 09:13:01 ID:zTNmg45w
 それは修練を積みにウルフ森と呼ばれるところに行った時の事だった。

 5匹のウルフに囲まれ、齧られ、嬲られているアコライトを見かけた。
「どうする?助けよっか?」
 わたしの呼びかけに大きくうなずく。

『バッシュ!!』
 何度か連発し、退治することが出来た。
 へなへな…と倒れこむアコライト。
「大丈夫? キミ?」
「ええ…何とか大丈夫…ありがとう…」
 そういい残すとわたしの腕の中に倒れこんだ。


「よっ…と」
 とりあえず背負う。
 わたしが常宿にしている部屋に彼を運ぼう。
 女の子かと思うぐらい軽い。

 …最近はウルフを倒した時にたまる修練の値が上がったことにより、こんな感じの人を見かける。
 素直にハエなりテレポートしてくれればおいしく処理するんだけど…。


 無事到着。
「あらアリサ。
 倒してきたモンスターにしては大きなものね」
 ケラケラと宿の店員が話しかけてくる。
「ん…冗談はともかくドア開けて」
「はいはい…食べ物も運ぶ?」
「うん、わたしのはいつものセットで、この子のは…消化が良くて滋養があるのがいいかな」
 半ば引きずるように運ぶ。

「あ…僕…」
「目、覚めた? まだあったかいしとりあえずこれでも食べて」
 野菜がたくさんのスープ。 十分おなかいっぱいになるぐらいだ。
 ベッドから上半身を起こし、スープに口をつけている。
「おいしいですね」
「うん、ここの宿は安いのに食事つきで、かつ美味しいから気に入ってるんだ」
 わたしはパンをちぎり、黙々と食べ続ける。

 食べ終わった彼がわたしの方をじーっと見つめてる。
「ん?どうしたの?」
「ありがとうございます! …これお礼に…って言っても少ないけれど」
 取引用のトレイにイチゴ5個と少しのにく、化け物のエサを彼が置いた。
「いいよ。
 わたしもたくさん倒せて、いい思いしてるんだから」
 トレイを突っ返す。

「…でも…ただ助けられてちゃ…僕も男ですし…」
「いいのいいの。
 同じ冒険者なんだから男女は関係なし!」
 ウインクして、瞬とした彼を元気付ける。
「じゃあいいよ、今度一緒に冒険しよ?
 トレイに書いてあった修練度ならわたしと一緒に組めるしさ」
「ありがとうございます!
 …男なのに力も全然無いし、正直一人で狩り続けるのは気が遠くなりそうで…」
 そう言うと友達長にお互いの名前を刻む。
「ウッディーね。 よろしく」


 それからと言うもの色々な所に行き、どんどんと修練があがった。
 回復剤を少なく積んで、多くの収集品を拾い。
 彼の支援魔法でずいぶん楽に狩れる様になった。

 いつしか、お互い惹かれあい、キスをする仲にまで発展した。
「ん…」
 いつもは強がってるわたしが、ただの女に戻る瞬間だ。
 弱弱しい彼が、逆に男になる。


 しばらく故郷に帰る事になった彼を見送り、修練に励んだ。

 前のように黙々と狩り、代理で商人系の職に売ってもらい。
 倒れるように寝て。
 起きると支度を整えて、狩る。

 子供じゃないんだからこの程度の寂しさで泣かない。
 親しい友人と恋の話をすると、同じような悩みを抱えている子がいた(もちろん二人のことは誰にも言わない)。
「新しい人見つけたほうが早いんだけど、…そうも行かないね、好きになっちゃったんだもん」
 寂しげに微笑む彼女。

 そっか、わたしウッディーの事好きなんだ。
 今気づいても遅い。
 故郷に居る間は、念話も通じない。


[ただいま、アリサ]
 借り物の水パイクで天下大将軍を狩っていたら、突然念話が飛んできた。
[おかえり、ウッディー]
 嬉しくて笑みがこぼれる…こんな顔、見せられない。
 つくづく念話で良かったと思う。
[会いたいんだけどいい?]
[いいよ?どこにいる?]
[フェイヨン]
 ここから徒歩でも間に合う距離。
 でも、一秒でも早く会いたいわたしは、蝶の羽根で帰った。

「改めて。 おかえり、ウッディー」
「ただいま」
 そう言うと宿に行き、ベッドに腰をかける。
 最初は軽いキス。 徐々に激しくなる。
「ん…」
 体の芯が熱くなる。

「ね…おねがい、キスよりもぎゅっと抱きしめて…」
「ううん…いいよ?」
 ウッディーの体温が服越しに伝わる。 …早い鼓動も。
「お願い、今はこうしてて。 …いきなりやめないで」
 寂しかったとか、泣き言は言わない。
 ただ、彼と少しでも長くこうして居たかった。

<END>

42 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/04/28(月) 23:27:07 ID:gK4eRcE6
二つの話。
かゆいとこに手が届きそうで届かない…かゆい…かゆいー!orz
もの凄く続きが読みたいです。

43 名前:Wikiの中の人 投稿日:2009/12/08(火) 23:10:07 ID:6CHTUPL6
長期に渡りROにも触れておらず、スレからも離れて幾星霜。
保管庫トップの放置ぶりに我ながら涙が出ました。保管庫管理人です。
パソ子のの整理をしていて、色々見つけて懐かしくなり、拙作の後日談などを書いてしまいました。
さすがに、今からROに復帰とかは無いと思います‥‥。が、保管庫は閉じずに置いておきますね。
これからの皆様のますますのご発展を祈念しておりますです。

44 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2010/09/30(木) 17:55:56 ID:vyLAT6SU
Q.ロージーについてどう思っていますか?
A.もう長いつきあいだよ。と言っても、俺が騎士になってからだけどな。
 こうやってまだ五体満足に生きているのは、一重にあいつがいるお陰かな。
 信頼できる相棒さ。
 (回答者:騎士(男))
Q.エグバートとのことどう思ってます?
A.ハンターになってからはずっと一緒にいるわね。そりゃあ、トイレとかお風呂とか
厳密に言ったら違けど。
 これからもつかずはなれず一緒にいると思うわ。わたしが冒険者をやめたときもね。
(回答者:ハンター(女))


「こいつが俺の愛鳥、名前はロージーだ」
 そう言って騎士はつながれたペコペコの首を優しく撫でた。
 飼い主の行動にペコペコは目を細めて嬉しそうに鳴く。
 騎士の傍らに立つハンターがペコペコの嘴にそっと触れる。
「よろしく、ロージー」

「どうして、ロージーって名前にしたの?」
 なんでもこのペコペコは雌なんだという。ハンターから見ては、ペコペコの性別な
どわかりはしないが。
「もしかして、初恋の人とか」
「……」
 図星、らしい。
 莫迦みたい、と相手に聞こえないように、ハンターは口の中で呟いた。なんでこう、
男はロマンチストなのだろう。
「そういうお前のファルコンの名前の由来はなんなんだ?」
「ん、私? 私は……」
 ハンターはわざとそこで言葉を止める。騎士がこちらに注目しているのを確認して、
彼女は言葉を続けた。
「死んだ弟の名前。
 私がどこに行っても私の後をちょこちょこついてくるような子だったわ。そんなと
ころが、似てるかなって思って」
 弟は五年前に流行病で死んだわ、と淡々とつけたした。
 騎士が動揺しているのがわかる。本当に見てくれ通りの、よく言えば素直な悪く言
えば単純な男だと心の底で思う。
 にっこりとハンターは笑う。
「なんてね♪」
 くるりとハンターは騎士に背を向ける。
「えへへ。本当のところはヒ・ミ・ツ」
 騎士がため息をついたのが聞こえた。
「お前、人をさんざん……」
「そのうち教えてあげるわよ。まだまだ会ったばかりのパートナーに教えられないぐ
らい深ーい意味があるんだからっ」
 ね、とハンターは肩越しにウィンクを一つ、騎士に送る。
 あぁ、この騎士ならいつか話せるかもしれない。そんな風に思った。




45 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2010/09/30(木) 23:17:27 ID:KAiYqykY

メンチって名前つけると非常食っぽいよね

46 名前:アルティ・エストランス 投稿日:2010/12/15(水) 21:49:47 ID:dijy0B96
   | \
   |Д`) ダレモイナイ・・トウカスルナラ イマノウチ
   |⊂
   |

といわけで、五年以上昔に書いた短編をこっそり投下してみます。タイトルは『RO迷作劇場:逆毛のアン』です。

47 名前:RO迷作劇場:逆毛のアン 投稿日:2010/12/15(水) 21:51:53 ID:dijy0B96
 昔々、あるところに逆毛の女の子がいました。女の子の名前はアンといいました。
 アンはいつもその髪型が原因で、村の子供たちに虐められていました。
「私だって……好きで逆毛に生まれたわけじゃないのに……」
 アンはいつも人知れず嘆いていました。
 ある日のことです。いつものようにアンが虐められていたとき、そこに一人の旅人がやってきました。
「うわっ、女の逆毛だ! キモッ!!」
 旅人の言葉にアンはぶちギレました。近くに落ちていた手ごろな棒を拾い上げて振りかぶり――
「逆毛って……逆毛って言うな――ッ!!」
 叫ぶと同時にボウリングバッシュを放ち、周りにいた子供たちごと旅人を弾き飛ばしました。旅人たちは青い空に吸い込まれるように飛んでいき、そのままお星様になってしまいました。
 アンは驚いていました。まさか、自分にこんな力があるとは思っていなかったのです。
「わ、私にこんな力があったなんて……そうだ! 冒険者になってこの力をみんなのために使えば……」
 今までのように疎外されることもなくなる。そう考えたアンは家に帰って荷物をまとめ、初心者修練場に行ってその日のうちに冒険者になりました。
「ええっと、まずはJOBを10まで上げて一次職に転職すればいいのか……何に転職しようかな……」
 修練場で貰った本を読みながらバッシュを放ち、近くにいたモンスターを粉々に粉砕するアン。そんな彼女を見ていた冒険者の一人が『お前転職する必要ないんじゃ……』と洩らしましたが、幸運なことにアンの耳には届かなかったようです。
 やがて、日が暮れるころには彼女のJOBレベルも10になりました。
「う〜ん……どの職も魅力的だけど……やっぱりここは剣士よね!」
 アンはイズルードの剣士ギルドへと向かいました。受付を済ませ、試験を待っていた彼女。そこへ通りがかった一人のギルド員が彼女を見て言いました。
「ん? お前女か? 女の逆毛なんて珍しいな……」
 逆毛。その言葉はもはや、彼女にとっては禁句でした。
「その言葉を……私の前で言うな――ッ!!」
 アンは壁に掛かっていたポールアクスを手にとり、ギルド員目掛けてスパイラルピアーズを放ちました。哀れな男は瞬時に肉隗に変わってしまいました。
 周りから悲鳴が上がり、騒ぎに気付いたほかのギルド員たちが彼女を取り囲みました。
「そこの逆毛女! 動くな!」
「……そう、あなたたちも死にたいのね……」
 あたかも幽鬼のごとくゆらりとポールアクスを構えるアン。
「……だったら、みんなまとめて消し飛べ――ッ!!」
 そして、彼女の全力を込めたブランディッシュスピアが放たれ――剣士ギルドの建物は完全に崩壊してしまいました。

48 名前:RO迷作劇場:逆毛のアン 投稿日:2010/12/15(水) 21:52:44 ID:dijy0B96
「……やっぱり、私には剣士は向いてなかったかも……」
 一筋の汗を垂らし、自らが成した結果を見つめるアン。その視線の先には崩壊した剣士ギルドの建物がありました。
「……まっ、いいか。次はシーフギルドに行こう!」
 すぐに気を取り直し、彼女は剣士ギルドを後にしました。
 それから彼女はいくつものギルドを回りました。シーフギルドではメテオアサルトで建物を破壊し、魔術師ギルドではメテオストームで建物を粉砕し、大聖堂では阿修羅覇王拳で建物を崩壊させ……まあ、そんな感じです。
「やっぱり、私には無理なのかな……」
 マリンスフィアーを呼び出して吹き飛ばした商人ギルドを後にしたアン。もう全ての一次職ギルドを回ったにもかかわらず、彼女は未だに転職できずにいました。
 しばらく鬱になりながら日々を過ごしていたアンでしたが、スーパーノービスという職業の存在を耳にします。
「ええっと……Baseが45以上か……私LV99だからこれは大丈夫よね……必要アイテムは……これなら全部倉庫にあるわ!」
 さらっとすごいことを口にしながらガッツポーズを取るアン。さっそく倉庫に向かい、必要なアイテムを取り出しました。しかし、ここで根本的な問題に気付きます。
「これで失敗したらもう後がないんだ……何て言われても大丈夫なようにしないと……」
 やがて、彼女は対策として耳当てを購入しました。
「これで大丈夫ね!」
 そう言うと、アンは自信満々にアルデバランにあるという転職場所に向かいました。
 アンの作戦が功を奏したのか、彼女は無事スーパーノービスになることが出来ました。
「やっと転職できた……今夜はお祝いね!」
 嬉しそうにはしゃぐアン。
と、そこにアンが今まで見たことのない白い服を着た男が現れました。男はアンに向かって何か話し始めましたが、彼女にはその内容がよく聞こえませんでした。
(何て言ってるんだろう……そうだ、耳当てを取らないと!)
 聞こえない原因が耳当てにあるとわかり、アンは耳当てを外しました。
「……聞いているのか、この逆毛女! 各ギルドの建物を破壊した罪でお前を逮捕すると言ってるんだ!」
 耳当てを外して男の声がはっきりと聞こえた瞬間、彼女の中で何かが音を立てて切れました。
「……みんなみんな……そんなに私のことが嫌いなのね……」
 瞬間、彼女の体が凄まじい光に包まれ、轟音と共にグランドクロスが発動しました。しかし男は咄嗟にバックステップし、破滅の光からかろうじて逃れました。そして、光が収まったときに男が見たものは……
「……っ!?」
 男に向けてルドラの弓を構えるアンの姿でした。
「そんなに私のことが嫌いなら……死んじゃいなさいよ!」
 血走った目で叫び、アローシャワーを放つアン。男に向けていくつもの矢が飛来します。男は咄嗟にニューマを唱えて風の結界を生み出し、どうにか矢の嵐をそらすことに成功しました。
「貴様っ! ゲームマスターであるこの私に逆らうつもりか!」
 ゲームマスターとはこの世界における支配者のようなもので、その強さはほとんどの者が知っています。ですがその姿を直接見たことのあるものは意外と少ないのです。男の言葉は自分がゲームマスターであることを知ってなお逆らうつもりかという意味でした。
「だから何? ゲームマスターだろうがなんだろうが……逆毛と言った者は消すだけよ」
 しかしアンはそれを聞いても態度を変えませんでした。説得は不可能と見た男は腰の剣――バルムンと呼ばれる、この世界最強の剣――を引き抜いて構えました。
「仕方あるまい! 今ここでお前を処刑す……」
「ストリップウェポン! スティール!」
 男が口上を言い終わる前にアンは男の剣を一瞬にして奪い取りました。
「私をどうするって? ふざけんじゃないわよ!」
「まっ、まて! 話し合おうじゃないか!」
 奪った剣を構えるアンを前に、男は後ずさりながら説得を試みようとしました。
 だが当然アンがそんな話に耳を傾けるはずがありません。アンはバックパックの中から小瓶――バーサークポーションと呼ばれるアイテムを取り出し、中身を一気に飲み干しました。
「ツーハンドクイッケン! コンセントレーション! オーラブレード! バーサーク!」
「ちょっ、ちょっと待て! お前本当にスパノビ……」
「問答無用! 喰らいなさーいッ!!」
 神速で放たれる連撃でずたずたに切り刻まれる男。
 ――男の仲間が到着したときには、既にアンの姿はありませんでした。

49 名前:RO迷作劇場:逆毛のアン 投稿日:2010/12/15(水) 21:53:25 ID:dijy0B96
 ゲームマスターを殺害した彼女は懸賞金1億ゼニーをかけられたにも関わらず、未だに捕まっていません。だからもしあなたがどこかで逆毛の女スーパーノービスを見かけたとしても、決して手を出さず、我々に連絡を……
「今、逆毛と言ったのはお前かぁぁぁぁ!!」
「えっ!?ちょっと待っ……ぎゃああああ!」

 …………合掌。  (終)

50 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2010/12/15(水) 22:15:58 ID:LGWoOww6
アンには悪いが爆笑したw

51 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2011/12/17(土) 14:56:00 ID:n7ydq/8Y
1年保守

52 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2011/12/25(日) 09:56:26 ID:cI/joxlM
保管庫のあったaaa cafeが消滅したんだけど、ssってもう見れないのかなぁ

53 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2011/12/25(日) 19:31:37 ID:iUuTbXlk
スレの過去ログ倉庫はあるから、
そこから過去スレ眺めればうpろだ使ってないのは全部読めるんでない?

54 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2011/12/26(月) 09:48:22 ID:M6ZiYw.Y
Wikiに直接UPしてた人もいるんよ・・・・。
upロダの投稿もあっただろうし。
なんかもったないというかね。
自分用に保存してなかったのが悪いんだけどさ。・゚・(ノД`)・゚・。

55 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2011/12/27(火) 10:35:53 ID:XuJ.9mcU
ども、他スレ用の保管庫の避難所を作って居た者です
実はここの保管庫の避難所も作る予定で居たのですが、
仕事が忙しくて手が回らず、結局aaacafe閉鎖までに間に合わなかったとです
本当に申し訳ない

今更ですが新規に保管庫的な物を設置出来ますが、どうしましょう?
希望があれば設置しますが

56 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2011/12/29(木) 22:49:24 ID:0oDKiIZM
出来るなら欲しいところ

57 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2012/01/08(日) 22:21:42 ID:j6CAsNYQ
板自体が停滞してるのが残念だけど、保管庫が新しくできることで少しでも活気が戻るんじゃないかと期待してます。

58 名前:55 ◆CM2d/No0eM 投稿日:2012/01/09(月) 09:40:23 ID:db1tc4lQ
遅くなって申し訳ない、>>55です

お待たせしました、設置が終わったので報告します

FrontPage - みんなで作るRagnarok燃え小説の保管庫 の避難所
ttp://mmo2ji.2kki.com/ro/pukiwiki/index.php

見て頂くと解る通りFrontPage以外はからっぽです
使い方は住人の皆様にお任せします

また、FrontPageは改変防止の為凍結処置をしております
何か要望等がありましたら、スレはチェックしていますので取り敢えずスレに
書き込んで下さい
後日各板避難所共通の掲示板を作ろうと思っています

59 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2012/01/09(月) 22:48:02 ID:a9AG1lUA

あとは作品が投下されるといいんだが

60 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2013/02/16(土) 22:48:09 ID:Jf9yR65s
旧燃えWikiにあったSIDE:A、SIDE:Bシリーズはもう見れなくなったのか。(´;ω;`)
あれ好きだったんだけどなぁ。

61 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2013/02/17(日) 11:58:48 ID:JIWSV/XE
あれ確かWIKIに直接投下されてたんだっけか
もったいない

62 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2013/05/03(金) 18:32:12 ID:TPbLCVjE
駄目…今は亡き御主人様の太い肉棒の味と逞しさが…忘れられないの…
駄目…もう我慢出来ない…ねぇ、あなた…貴方の逞しい肉棒…
私のここにご馳走…して…(クパァ)

んっ…つっ!…あぁ…いぃ、凄い…逞…しいわ…!
今は亡き御主人様までとは行かないけど…
良いわ…すごぃっ!…あぁん!おいっしぃ…
あ!も…もぅ駄目…貴方の逞しい肉棒からほとばしる白ポ…
こ、このまま…直に…注ぎ込んでぇぇぇ〜!!

私は、死に別れた御主人様のキューペットアリス…
今日も又、流れ込んで来る白ポの味が忘れられず、
疼いた体で、又、人を連れ込む
いけないキューペットアリス…

63 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2013/05/04(土) 13:10:57 ID:ElMnhHhw
こっちは全年齢向けスレなのでエロは18禁小説スレの方で書こう

【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ 十七冊目
ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1195568559/

64 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2015/02/17(火) 12:14:14 ID:1eU6HCw.
書き溜めてるぜー
形になったら投下するでー

と、意識表明を出さないと書かないままアイディアが消えそうだから
書くぜ書くぜー

65 名前:白きいちご<A面> 投稿日:2015/03/10(火) 22:04:33 ID:BKGOqiO6
SIDE話、おもしろそうだなー、と思ってたら手持ちの小説にそういうのがあった。
短編集でA面B面とあって、1編ごとに作家が違うやつ。
総勢12名で24話分。それぞれ特色あっておもしろかった。
というわけで、それ目指して私も書いてみたぜ。
B面は後日!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

役に立たないネタ職、と散々言われたし、自分でもわかってて選んだ。
ウィザードになれば大魔法でバンバン敵をやっつけられて気分爽快、経験値もおいしい。公平PT組んだらみんなハッピー。
それに付随する悩みやドロドロした人間関係を考えると、どうしても魅力的にみえなくて。
憧れてたのに、嫌気が優った。

いいじゃない、セージ。
わっか、ぴょこぴょこしてて楽しいもの。

大自然を満喫しながら芋虫を焼いたり、時計の針の音を一人で聞きながら時計を焼いたり。
炎は人類が最初に発明したうんぬんかんぬん省略。ファイヤー、さいこー。
うっかり死に戻ったりしても、同行者がいないのだから迷惑かからない。

それでも、一人が寂しくもなるのも、事実。

すれ違う人がパーティーを組んでたときなんて、自分が場違いな存在のように思える。
視界に入ってごめんなさい、といたたまれなくなる。
逃げ出したいけれど他人に迷惑をかけたくなくて、みえない距離まで移動したのに結局は蹂躙されて地面に伏せるのでした。
信念を守った達成感はある。
ただ、惨めなだけ。

街に戻って、ヒールクリップでちまちま回復してると、たまにアコライト系の方に回復と支援魔法をいただくことがある。
うれしいし、ありがたい。
だから感謝の気持ちを口にした。

それがいけなかったらしい。

「シロちゃんシロちゃん」

呼ばれて顔をあげると、同じギルドのプリーストのラズベリー君がいた。
腕を組んで不機嫌そうな顔。
わたしは驚いた。
だってラズ君、頭から流血してらっしゃる。
……ヒールしようよ。だくだくと流れてるよ。

「ラズ君。その傷どうし――」
「なんで俺以外の人にヒールとブレスと速度もらってなんでなんでなんで礼まで言ってアレはシロちゃんの知り合いですらないくせに狡い酷い狡い」

ダメだ、目が据わってる。
周囲の視線がすごく痛いです。
慌てて駆け寄ります。

「ちょっと落ち着い――」
「他のやつの支援なんて汚い汚い汚い信じられないなにあいつ在り得ないシロちゃんに笑顔むけられて支援かけやがったまじ有り得ない汚い汚い汚い」

ヒール、ヒール、速度上昇、ブレッシング、ブレッシング、速度上昇、ブレッシング、さらにブレッシングって、かけすぎ。
手を伸ばして、ラズ君の頬に指先でそっと触れる。
機械のごとく、動きが止まった。

「わたしの声、きこえますか?」
「女神の託宣のごとく、この胸に響き渡っています」

おっけー、いつも通りにバグってるラズ君です。
周囲の視線が犯罪者をみるような鋭いものから、生暖かい視線に変わっていく。
いやそういうのじゃないから……。

「頭から血が流れてますよ」
「ああ、道理で血生臭い」

痛そうなのに、においのほうが気になるのかー。
ラズ君がヒールしてる間に、気になってたことを尋ねます。

「どうしてケガしてたんですか?」
「シロちゃんにギルド会話で振られたショックで倒れたときに負いました」

……振られた?
ギルド会話を思い返してみます。
たしか、数分前――

『シロちゃんシロちゃん、暇してたら狩りいかない?』
『ごめんいま戦闘中』

あ、これですか。
……え、これですか?

「素っ気なくてごめんなさい」
「いえ、だから待ってました」

首をかしげます。
なにが「だから」なんだろう。

「返答の短さから混戦か激戦、おそらく場所は時計塔。
勝ったらその場から返事してくれるけど負けたら街へ死に戻り。
どちらにせよ数分で決着がつく。
万が一のためにプロンテラとアルデバランの帰還ポイントをポタで往復して待ってました」
「……相変わらずのすごい洞察力、いやポタ乱用って」
「それなのに他のやつにシロちゃん支援かけられててなんでなんで俺以外のやつから支援もらって汚された汚された汚された俺しか触っちゃダメなのに俺だけなのに」

うわーい、また壊れたー。
背伸びして、ラズ君の頭をわしわしと撫でながら、

「せっかく会えたのだし、わたしと時計塔デートしてください」
「ぜひお願いします」

よし、正気に戻った。
いや世間一般より狂ってるけど、言葉が通じるし。

「FWの置き方がうまくいかなくて、練習をしたいの」
「わかりました。後姿をじっくり堪能します」
「後半は言わなくていいってば」

PT作成っと。ラズ君に申請する。
『らぶらぶなデート中』
いやここまであれな名前にしておかないと、ダンジョン内ですれ違った人に嫌がらせをするから。
具体的には、ブレス速度キリエをレベル1でかけるという、悪意たっぷりの支援。
なぜわたしが把握してるかというと、主な被害者がギルメンだからです。
ギルド狩り中の出来事だし、まぁ許される範囲です……よね?

「エナジーコートは使わないでください。シロちゃんの姿が霞むから、俺あれ大っ嫌い」
「ラズ君がいるから使わないよ。頼りにしてるよー」
「光栄です。生きててよかった」
「じゃあ、30分くらい狩りして、そのあと、ちゃんとデートもしましょ」
「わかりました。楽しみです」

おそらく。
世間からみたら、わたしもどこかおかしいのだろう。
それでも、この嫉妬深い青年に懐かれてるのがとても心地いい。
彼は、わかりやすく、わたしを必要としてくれるのだから。

「ラズ君、あのね。いつもありがとう」
「いいえ、こちらこそありがとうございます」

きみに会えて、わたしは幸せものだよ。


<了>

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