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【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第14巻【燃え】

[4:神の人・後編 12/13(2007/06/15(金) 17:22:29 ID:0fDIHQ5k)]
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 正面から近づいてくる司祭の姿を見咎めて、必至で駆けていた小銀狼達がびくりと震える。だが、
司祭はそんな子供らの脇をすり抜けて後ろの一団へと対峙した。子供達はキャンキャン言いながら
雪原に倒れる親の元へと一目散に賭けていった。

「あんだオメエはぁぁぁあああん?!」
「じゃましてんじゃねぇぞおあぁぁぁっ!?」

 等々、独特の未開言語が立ちふさがった司祭に浴びせかけられた。今は姿が余りにも違うので、
早朝に自分達が襲おうとした相手とは気が付いていないのかもしれない。まあ、そんな事はどうで
もいい些事である。
 ぎゃんぎゃん犬の様に吠え立てる連中へ、指を突きたて一つだけ確認を取ってみた。

「貴様ら、ハティの子等を捕らえて何処かへ売り飛ばしていたな?」
「それがどうしたんじゃこるぁぁぁぁああっ!?」
「まだアジトでかっちょるがそのうちまとめて売り飛ばすんじゃおらぁぁぁぁっ!!」
「つーかどきやがれつーんじゃうんどりゃぁぁぁぁっ?!」

 なるほど。
 なるほどなるほど、と何度も首を上下させて納得の表現を見せる。これで全ての辻褄があった。
子供が居なくなって怒り狂うハティ、それは氷雪を振りまいて人間に復讐を果たそうと企んだ。そ
して、その子供達を誘拐した犯人がこいつら盗賊団だという事だ。つまり――

「つまり、てめえ等全員俺様の仕事を増やしやがったクソ野郎共ってことで良いんだよなぁー!?」

 その時、司祭の正面に居た盗賊団達は、この世で最も恐ろしいものを見てしまい、四十人程も居
た人員を半数に見えるほどに縮み上がらせた。身を寄せ合い、理由は自分でも判らないが後悔する。
とりあえず、生まれた事をでも。
 雪原に、人の形をした修羅が再び光臨した。


 結局、異常気象の原因は子供を取られたハティで間違いはなく、しかしてその元凶たる窃盗団の
壊滅によりもう気象の変異は起こらないものと判断されそれ以上の調査は打ち切られた。
 窃盗団アジトにとらわれていた小銀狼達も一匹たりとも欠けることなく救出され、人と魔物の一
方的な狩猟関係は打ち崩された。今後とも共存すること無く争い合う関係かもしれないが、歪んだ
形にはならないであろう事を切に願う。

「と、まあこんなものだな」
「あーそーかいそーかい、そいつはハッピーエンドだなぁああ!!このやろう!」

 激昂して応接間のテーブルをガンガン叩くのは、冒頭からお馴染みの青髪の鍛冶師、守銭奴BS
である。そして向かい合わせに司祭がソファーに座り、脚を組みながら紅茶の香りを楽しむ。その
姿が余計にBSの怒りに油を注いでいた。

「確かに! 原因を調査してその元凶を断てとは言ったがな。誰が組織の時計塔支部を壊滅させて
来いと言ったんだぁぁぁぁ!!」
「ふん、組織に黙って使い込みに内職に密輸までするダニ共を一掃しただけだろう」
「だからって支部一個丸々はやりすぎだろうが!! お前には加減とか思慮とか采配とか言うもの
はないのか! 超人ハ○クか!? 暴れて元に戻るまでそれっきりなのか!?」

 やかましい奴だ、と言わんばかりに目の前で溜息を長く吐く。ブチブチブチン、と頭の中で何か
太いものが引きちぎれる音が連続する。

「もう報告する事はないから、帰れ」
「っっっっっっっっっっ!!!!! おう、帰るわぁ!! その前にギルドの損失さっぴいたぶん
の報酬でも食らえ!!」

 乱暴に胸元から貨幣の詰まった袋を取り出して司祭に投げつけ、青髪守銭奴がぷりぷり肩を怒ら
せて出口へと向かう。正確に顔面を捉えた豪速のつぶてを、造作も無く片手で受け止めて視線だけ
でその背中を見送った。

「はわっ! あ、すみません、もうお帰りですか? って言うか今日もお怒りモードですか!?」
「ああ!? あー……。よし、脱げ。むしろ色々着ろ。お前の身体で損失補てんだウラー!!!」
「きゃー!! 司祭様の言ったとおりですー! 司祭様? 助けて司祭様ー!?」
「写真と動画で一攫千金じゃーー!! 俺の為に花を売れーー!!! がはははははははは!!」

 ドアの直ぐ外で鳴り響く騒音に、思わず目頭を押さえる事数秒間。
 立ち直ってソファーに深く座り直すと、思い浮かぶのは神罰の手を止めたあの時の瞬間だった。

「我が身…、我が血…、我が命…、か……」

 背もたれに身を預けて、うつろに天井を見上げながら呟く。捧げ切れていないのだと、頭の中の
狂信者が叫んでいた。
 そんな事は判っているよと続けて呟き、ぽーんぽーんと貨幣袋を片手で投げ受ける。

「足りない…、足りない、まだ足りない」

 貨幣袋を胸に押し付けて、開いた手を中空へ――その先の空へ――神の御許へ差し向ける。

「今日も貴方が、遠ざかる……」

 この思い、届くのかさえ、正に神すら知りはすまい。


                                        終わり


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