【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第14巻【燃え】
[65:白きいちご<A面>(2015/03/10(火) 22:04:33 ID:BKGOqiO6)]
SIDE話、おもしろそうだなー、と思ってたら手持ちの小説にそういうのがあった。
短編集でA面B面とあって、1編ごとに作家が違うやつ。
総勢12名で24話分。それぞれ特色あっておもしろかった。
というわけで、それ目指して私も書いてみたぜ。
B面は後日!
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役に立たないネタ職、と散々言われたし、自分でもわかってて選んだ。
ウィザードになれば大魔法でバンバン敵をやっつけられて気分爽快、経験値もおいしい。公平PT組んだらみんなハッピー。
それに付随する悩みやドロドロした人間関係を考えると、どうしても魅力的にみえなくて。
憧れてたのに、嫌気が優った。
いいじゃない、セージ。
わっか、ぴょこぴょこしてて楽しいもの。
大自然を満喫しながら芋虫を焼いたり、時計の針の音を一人で聞きながら時計を焼いたり。
炎は人類が最初に発明したうんぬんかんぬん省略。ファイヤー、さいこー。
うっかり死に戻ったりしても、同行者がいないのだから迷惑かからない。
それでも、一人が寂しくもなるのも、事実。
すれ違う人がパーティーを組んでたときなんて、自分が場違いな存在のように思える。
視界に入ってごめんなさい、といたたまれなくなる。
逃げ出したいけれど他人に迷惑をかけたくなくて、みえない距離まで移動したのに結局は蹂躙されて地面に伏せるのでした。
信念を守った達成感はある。
ただ、惨めなだけ。
街に戻って、ヒールクリップでちまちま回復してると、たまにアコライト系の方に回復と支援魔法をいただくことがある。
うれしいし、ありがたい。
だから感謝の気持ちを口にした。
それがいけなかったらしい。
「シロちゃんシロちゃん」
呼ばれて顔をあげると、同じギルドのプリーストのラズベリー君がいた。
腕を組んで不機嫌そうな顔。
わたしは驚いた。
だってラズ君、頭から流血してらっしゃる。
……ヒールしようよ。だくだくと流れてるよ。
「ラズ君。その傷どうし――」
「なんで俺以外の人にヒールとブレスと速度もらってなんでなんでなんで礼まで言ってアレはシロちゃんの知り合いですらないくせに狡い酷い狡い」
ダメだ、目が据わってる。
周囲の視線がすごく痛いです。
慌てて駆け寄ります。
「ちょっと落ち着い――」
「他のやつの支援なんて汚い汚い汚い信じられないなにあいつ在り得ないシロちゃんに笑顔むけられて支援かけやがったまじ有り得ない汚い汚い汚い」
ヒール、ヒール、速度上昇、ブレッシング、ブレッシング、速度上昇、ブレッシング、さらにブレッシングって、かけすぎ。
手を伸ばして、ラズ君の頬に指先でそっと触れる。
機械のごとく、動きが止まった。
「わたしの声、きこえますか?」
「女神の託宣のごとく、この胸に響き渡っています」
おっけー、いつも通りにバグってるラズ君です。
周囲の視線が犯罪者をみるような鋭いものから、生暖かい視線に変わっていく。
いやそういうのじゃないから……。
「頭から血が流れてますよ」
「ああ、道理で血生臭い」
痛そうなのに、においのほうが気になるのかー。
ラズ君がヒールしてる間に、気になってたことを尋ねます。
「どうしてケガしてたんですか?」
「シロちゃんにギルド会話で振られたショックで倒れたときに負いました」
……振られた?
ギルド会話を思い返してみます。
たしか、数分前――
『シロちゃんシロちゃん、暇してたら狩りいかない?』
『ごめんいま戦闘中』
あ、これですか。
……え、これですか?
「素っ気なくてごめんなさい」
「いえ、だから待ってました」
首をかしげます。
なにが「だから」なんだろう。
「返答の短さから混戦か激戦、おそらく場所は時計塔。
勝ったらその場から返事してくれるけど負けたら街へ死に戻り。
どちらにせよ数分で決着がつく。
万が一のためにプロンテラとアルデバランの帰還ポイントをポタで往復して待ってました」
「……相変わらずのすごい洞察力、いやポタ乱用って」
「それなのに他のやつにシロちゃん支援かけられててなんでなんで俺以外のやつから支援もらって汚された汚された汚された俺しか触っちゃダメなのに俺だけなのに」
うわーい、また壊れたー。
背伸びして、ラズ君の頭をわしわしと撫でながら、
「せっかく会えたのだし、わたしと時計塔デートしてください」
「ぜひお願いします」
よし、正気に戻った。
いや世間一般より狂ってるけど、言葉が通じるし。
「FWの置き方がうまくいかなくて、練習をしたいの」
「わかりました。後姿をじっくり堪能します」
「後半は言わなくていいってば」
PT作成っと。ラズ君に申請する。
『らぶらぶなデート中』
いやここまであれな名前にしておかないと、ダンジョン内ですれ違った人に嫌がらせをするから。
具体的には、ブレス速度キリエをレベル1でかけるという、悪意たっぷりの支援。
なぜわたしが把握してるかというと、主な被害者がギルメンだからです。
ギルド狩り中の出来事だし、まぁ許される範囲です……よね?
「エナジーコートは使わないでください。シロちゃんの姿が霞むから、俺あれ大っ嫌い」
「ラズ君がいるから使わないよ。頼りにしてるよー」
「光栄です。生きててよかった」
「じゃあ、30分くらい狩りして、そのあと、ちゃんとデートもしましょ」
「わかりました。楽しみです」
おそらく。
世間からみたら、わたしもどこかおかしいのだろう。
それでも、この嫉妬深い青年に懐かれてるのがとても心地いい。
彼は、わかりやすく、わたしを必要としてくれるのだから。
「ラズ君、あのね。いつもありがとう」
「いいえ、こちらこそありがとうございます」
きみに会えて、わたしは幸せものだよ。
<了>
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