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【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ 十七冊目

[136:学者は触手の夢を見るか(2009/08/03(月) 20:35:55 ID:EpchtjR.)]
「そうだ。時計塔地下に行こう」
 また始まった。兄さんの悪い癖だ。
 脈絡もなくいろんな場所に出かけてはボッコボコにされて帰ってくる。
 何で毎回懲りもせずに殴られに行くんだろう。ひょっとしてマゾっ気でもあるんだろうか。
 なぜ一人で行ったんだと問い詰めると、毎回兄さんはこう答える。
「学問に携わる身として当然のことをしたまでだ」
 会話が繋がらないのは今に始まったことじゃないから良いとしても、心配するこっちの身にもなってほしい。
 今日だって、大聖堂からバイブルを持ちだしてこっぴどく叱られたばかりだというのに、日も暮れそうなこの時間になってアルデバランまで行くとか言い出した。
「虫は縦置きで焼くから良いだろうけど、オークに群がられて慰み者にされるよ」
「そんなこともあろうかとだな」
 兄さんは杖を投げた。宙を舞う杖に向かって指差し、持ち前の高速詠唱で魔法を唱える。
 次の瞬間、杖は凍りついて床に落ちた。
「準備は万端だ。早速出かけることにしようじゃないか」
 落ちた杖を蹴飛ばして氷を割り、大きなガラスのケースを担いで、兄さんは部屋を出ようとする。
 いくらフロストダイバーの練習をしたからって、一人では無茶だ。私も立てかけてあった愛剣をひっ提げて、バカな兄さんを追うことにした。

 それがそもそもの発端。


「無事に目的地に着いたわけだが」
「バカじゃないの……」
 到着したのはアルデバラン時計塔地下三階。毒ネズミと赤コウモリと卑猥な生物が跋扈する、じめじめして薄暗い嫌な場所だ。
 とりわけ、兄さんが興味を示したのは卑猥な触手お化けだった。ネズミは邪魔なので炎の壁で焼き払い、コウモリの始末は私にさせた。
 まずは、触手のお化けを凍らせる。そして、その触手をじっくり観察しつつ、担いできたガラスのケースに入れて捕獲完了、というわけだ。
 ここまで聞けば学者の鑑のような行動だが、肩に矢が刺さっていたり頭に大きなたんこぶを作っていたりと、人間としては少々無茶をしすぎだった。
 卑猥生物の入ったガラスケースをおいて、湿っていない地面に座って一休み。ポーションの一本や二本、持ってくればいいのに。何が「準備は万端」だ。
「私もポーションなんか持ってないよ」
「だろうな。だがその表現は半分間違っている」
 いつものようにわけのわからないことを言い始める。兄さんは物事をいちいち正確にとらえないと気が済まないタチで、それが会話を成立させない原因の一つだ。
 兄さんの目がだんだん細くなっていく。……まさかこんなところで寝るつもりではあるまいか。
「寝ちゃダメ。用が済んだんだから、さっさと帰るよ」
「う、ん……。おやすみ」
 ダメだ。なんかもう、色々ダメだ。
 こんな薄気味悪い場所でよく寝られるものだ。
 部屋も本で埋め尽くされて、掃除なんか絶対にしないからホコリ塗れで、それでもそんな場所で寝てる兄さんはきっと新種のモンスターか何かだ。
 そのモンスターがウネウネと気持ち悪い動きをしているケースの隣で、これ以上ないくらいに幸せそうな寝顔で寝ている。
「バカじゃないの……」
 バカなんだろう。バカに違いない。こいつはバカだ。
 これは担いででも連れて帰る必要がありそうだ。あんまり長居したい場所じゃない。
 気持ち悪い触手入りのケースは残念ながらここに置いていこう。せいぜいこんな気味悪い生き物が一匹でも多く餓死してくれることを祈って、私は兄さんの隣に立った。
「なーんか、嫌な音が聞こえる……」
 ミシリミシリって、そんな音を立てなきゃいけないような物体のあるダンジョンじゃない。
 あるとすればそれは、兄さんの持ち込んだガラスケース。気持ち悪い触手お化けにドンドンと叩かれて、ガラスケースにヒビが入っている。
 早いところ兄さんを引きずって避難しないと。もう担ぎあげるような時間はない。
 脇の下に手を入れて、とりあえず兄さんを崩壊寸前のガラスケースから引き離す。男のくせにすごく軽い。
 水の中に兄さんを投げ込んで、起きてもらおう。これだけ軽いなら投げるのも簡単だ。ついでに頭でも打ってバカが治ってくれればいいんだけど。
 深い水たまりの中に落とされて兄さんが慌てて起きる。いつも無駄に落ち着いてる兄さんが慌てるのは珍しいから、笑ってしまった。それが隙になった。
「あっ」
 かろうじて受身をとっても、すでに足は捕まえられたまま。今度は私が引きずられることになった。
 ぬめり気のある不快な感触が、足を這って登ってきた。体勢を崩して剣を抜けない私は、もがいてそいつを蹴っ飛ばす以外に何もできない。
「離せ……ッ!」
 スカートの中に潜り込んでくるそれは、余計に絡みつくばかり。
「ひゃ……あ!」
 そのうちの二本が、私の腰に巻きついた。兄さんなんかよりずっと力持ちだ。私の体を地面と垂直になるまで持ち上げて、びくともしない。
 足が地面につかないのは不安だけど、とりあえずこの触手をなんとか引きはがさないといけない。
 足に絡みついて上ってくるそれを引きはがすため、やむなくスカートをたくしあげる。赤い太いものが巻きついて、先端から白濁した液体が垂れていた。強烈な匂いで力が抜けていく。
「こ、の……」
 そのうちの一本を掴んではがそうとしても、滑ってしまってうまくいかない。一刻も早く逃れたいのに、それは決して私を離してくれなかった。
 腰につけた剣に手を伸ばす。引きぬくのにも時間がかかる。全身から力が抜けて、意識すら落ちそうだ。
「あ、……」
 終わった。もうおしまいだ。
 力の抜けた腕では重たい剣を支えることなんてできなくて、
 カラン、とつまらない音を立てて転がったそれにはもう手が届かなくて、
 上ってくる赤い太いそれは私の下着を強引に破り捨てて、
 もう、希望なんてどこにも
「手を離すな」
「え……?」
 落ち着きすぎた声が、後ろから聞こえてきた。腰を抑えつけられているので、顔だけ振り向く。きっと今、私はひどい顔をしてるだろう。
 涙は出てこない。何もかも諦めて、景色が虚ろに見えた。私の目は今、どんな風に見えるんだろう。
「スカートから手を離すな。見えなくなる」
 ああ、希望はどこにもない。兄さんだってどうしようもなくバカで、バカで、バカだけど、男なんだ。
「く、あ!」
 赤い太いものが秘部をさすった。全身に電撃が走ったようだった。
 白くて臭い液体を塗ったくって、私の意識をも白く塗りつぶしていく。
 まだ外からの侵入を許したことのない秘部を叩いて、赤いそれの中で一番太いものがこじ開けようとする。
 入口の部分に十分な潤滑油を塗り終えたそれは、バネのように縮んだ。
 来る……。


 世界から音が消えて、光が消えた。


 貫かれた感覚はなかった。想像していた痛みもない。
 暖かく抱かれている感覚で、自分が宙に浮かんでいるようだった。
 持ち上げられていたんだから、浮いている感覚は当然かもしれない。
 けれど、腰に巻きついていたあの嫌な感覚はなくなっている。
 音が戻ってきた。唄うように紡がれる言葉の後、轟音が鳴り響いた。
「最初から、助けてよ……」
 兄さんは何も言わなかった。無言で私を抱きしめた。全身に力が入らないのはさっきまでと変わらない。身動きが取れないのも同じ。
 それでも、なんだか悔しいけど、心地良い。あの触手お化けと違って、あったかい。
「何で、助けたの?」
 聞いておかなければならないことがある。どうせ、つながらない会話ではぐらかされてしまうんだろうけど。
「見たかったんでしょ。私がめちゃくちゃにされていくところ」
 あの時兄さんは、スカートから手を離すなと言った。私がスカートから手を離せば、それに隠れて触手になぶられる秘所が見えなくなるから。
「何を勘違いしてるんだ」
 兄さんはいつもの口調で言った。
「ペノメナが人間の女性を襲うところなんて、めったに見られるものじゃないだろう。
 絵空事かと思っていたことが実際に目の前で起きたんだ。学者として観察しないわけにはいくまい」
「ば、バカじゃないの……」
 本当にバカだ。結局、見たかったんじゃないか。
「しかし、非常に残念な――誰であろうと曲げることのできない不変の――原理が一つある」
 このもったいぶった言い方は、兄さんが一番言いたいことを言う時に使うものだ。
 どうせまたバカなことを言うんだろうと思っていたら、その通りだった。

「お前をめちゃくちゃにしていいのは俺だけだ」


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