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【18歳未満進入禁止】総合命令スレ20【inハァハァ鯖】

[133:生贄パラディン(2012/02/01(水) 23:11:07 ID:Q7DC34/2)]
濡れ場がありませんが、ご容赦ください。

>>131


「お待たせいたしました」
「ほう」
  面会場所として設定された部屋に現れた私を見た>>131さんが感嘆の声をあげました。
「お茶の席なのだから、と。アリスが」
 虜囚である私はかつて纏っていた鎧を身につけることは許されず、代わりにアリスのような青いエプロンドレスに身を包ん でいます。
「なるほど茶会だからか」
「はい。おとぎ話はもう卒業したつもりだったのですが」
「そんなことはない。まあまずは座れ」
 そう言って>>131さんが頷くと、監視兼給仕のレイドリックが椅子を下げ私に座るよう促します。
「失礼します」
  座ろうと椅子に歩み寄った私の足元で、ジャラリと鎖の音が鳴りました。
「失礼」
「随分と変わった装身具だな」
 足元まで伸びたエプロンドレスの裾から覗く、白タイツに包まれた足。
 それらを繋ぐ鎖を見て、>>131さんが呟きました。
  死刑囚である自分の足首には革製のベルトが巻かれ、オリデオコン製の鎖で繋がれているのです。
 腕も同様に革製の手錠が、肩幅と同じ長さの鎖で繋がれています。
「囚人であるならば、当然の処置かと」
「涼しい顔で言うな。まるで…いや他人事そのものだ」
 理解できない、という表情でつぶやく>>131さん。
 やがて、先ほどのレイドリックが茶器を手にやってきました。
 お茶会の始まりです。


「やはり理解できぬ」
 自分でポットに茶を注ぎ、ピンキギュラジャムをドバドバと入れながら>>130さんがおっしゃいます。
「死を前にして涼しい顔で平然としているのを見ると、助かる当てがあるとしか思えぬのだが」
「そうでしょうか?」
「当然だ。魔族の処刑を甘く見るな」
「それは…存じております。執行前のリハーサルも凄惨でしたので」
 脳裏に苗床になったときのことを思い描き、私は背筋を震わせました。
「…それなりに恐怖は感じているようだな。それでも死を望むのか」
「はい。アマツ人気質、とでも言うのでしょうかね」
「死して虜囚の辱めを受けず、か」
 彼の言葉に、私は静かに頷きました。
「ならば、なぜ虜囚になった時点で自決せぬ。アマツの武人は須く自決用の刃を持ち歩くと聞くが?」
「私は指揮官です。間違った指揮を執った以上、咎を背負うのは当然」
 共に虜囚となった同胞の助命。
 私がこうして生き恥をさらしている理由です。
「なるほど。それで自分の命で帳尻を合わせるとは、なんとも殊勝な事」
「恐縮です」
 そう言いながら、私はティーカップを手に取りました。
 じゃらり、と手元で鎖の音が響きます。
 昔に比べひどく重く感じるのは、腕の筋を失ったからでしょう。
「甘い…ですね」
「その割にはうれしそうじゃないが?」
「失礼しました。皆は未だに監獄に収監されているでしょうし…」
「クルセイダーの連中はよく分からんな…」
「貴方立ちと同じですよ。捕らえられれば死、あるのみ。いいえ、まだマシと言うべきでしょうか」
「……」
 気分を害してしまったのでしょうか、>>131さんが黙り込みます。
「聞く所によると、秘密を守るために毒をあおると言いますし…」
「確かにな」
 >>131さんは静かに頷き、再び沈黙しました。


 しばらくの間茶器の音と、私の鎖の音だけが響きました。
「それでも解せぬ」
「解せぬ、と申しますと?」
 私は首を傾げます。
「貴様からは敵意も感じられぬ。そして絶望もない。まるで貴様は人形…いや、人形たらんとしているのか」
 >>131さんの指摘に、私を縛る鎖がジャラリと踊ります。
「図星のようだな」
 和やかな空気から一転、部屋の中の空気がピンと張りつめます。
「無理なお願いかとは思いますが……監獄の者達には、どうか内密にお願いいたします」
「やはりな」
 >>131さんの溜息と同時に、室内の張りつめた空気が霧散しました。
「ジルダス嬢とて人形に鞭を振るう趣味はないだろうしな。命乞いも屈服もなく獄死される事が、彼女にとっての最大の屈辱だ」
「よく…ご存じですね」
「無理か願いかもしれぬが、内密に願いたい」
 そう言って苦笑する>>131さん。
「俺は上級魔族達とも繋がりがある。パラディンを続けることはかなわぬだろうが、無駄に命を散らす事は避けられるかもしれぬぞ」
「いいえ。申し出はありがたいのですが…」
 >>131さんの申し出は、正直行幸ともいえるでしょう。
 ですが私は屈するわけには行かないのです。
「…お前の戦いは、未だ続いているという事か」
 残念そうな表情で>>131さんは溜息をはきました。
「どうして、そこまでして私を?」
「なに、単純に少しうらやましいと思っただけだ」
 彼の言葉に、私は首を傾げました。
「同胞の助命ため、命を対価に出来る覚悟をな。それに、お前ほどのアマツ美人は早々居ない」
「恐縮です」
 私は深々と頭を下げました。
「墓碑にはなんと刻む?」
「建てることが叶うのなら、静かな場所に名前だけ…」
「掛け合ってみよう」
 彼がそう言ったその時、レイドリック達がやってきました。
 面会時間の終了です。
「貴方様がどの様な方かは詮索いたしません。ですが、楽しいひとときをどうも有り難うございました」
「達者でな…」
 お互いの一礼で、茶会は終了しました。


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