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【18歳未満進入禁止】総合命令スレ27【inハァハァ鯖】

[99:長耳戦乙女母娘と眼鏡アリス(2017/01/03(火) 18:30:19 ID:EBhFPWqU)]
>>98

明けましておめでとうございます。
聖職スレ側の二人はもうしばしお待ちを…

「……」
「……」
 エプロンドレスに身を包んだ青髪碧眼の女性が二人。
 一人はすらりとした長身に、不敵な笑顔を浮かべた大人の女性、ミシェラ。
 もう一人は憮然とした表情を浮かべた、あどけなさの残る少女、ミカエラ。
 一見姉妹にも見える母娘二人は肩を寄せ合い、ソファーに腰を下ろしている。
「約束は、約束だ」
「分かって…います…でも」
 どうして母上はそのような顔ができるのですか。
 顔を真っ赤にさせたミカエラがスカートの裾を握りしめながら続けるよりも前に、ミシェラが首を横に振る。
「約束は約束。守るべきモノで、理由を問うのモノではない」
「………」
 破れれば、その代償として魔物の慰み物となる。
 母娘は二代に渡り、魔族と取り決められた約束を遵守しつつ戦い続けていた。
「自分がここに居る理由は分かるな?」
「はい…」
 魔族相手に年始の挨拶をさせる、というなんとも馬鹿馬鹿しい目的のもとに戦いを挑まれたミカエラは、あえなく敗退した。
 いかに戦乙女とはいえ、マップボスクラスの魔物を数匹同時にぶつけられた上に長期戦に持ち込まれれば勝ち目はない。
 結果ミカエラは戦いに破れ、約束を履行することとなった。
 隣の母は誰を相手にし、どのような負け方をしたのかは分からない。
 もしかしたら『過去のツケ』を理由に呼ばれたのかもしれない。
 だが、母は責めを受けに行く時も戻ってくる時もこの顔を浮かべている。
 感情を失ってしまったかのようだが、自分を見る時の表情は母親そのものだ。
「奥様、お嬢様。準備が…できました」
 二人の前で共和国製の八ミリカメラを用意していたリンナが言う。
 彼女は同じようにエプロンドレスを纏ってはいるが、彼女のそれは誰かの趣味からの着用ではなく、立場その物を意味している。
 元司祭、元人間のリンナは、友と共に在るためにそれらを捨てたのだ。


 リンナがミカエラの隣に腰を下ろし、メイド姿の三人がフレームに収まった。
「では、現役のお前からだ…」
 そう言ってミシェラはミカエラに促した。
「…ミカエラよ。こんな姿だけど、戦乙女としてあなた達と剣を交えているわ」
 自分が晒した痴態を知っている相手が見れば、さぞかし爆笑するだろう。
 そう思いながら言葉を続けるミカエラ。
「負ける事ももちろん悔しいけれど、一番ショックだったのは…知らないところで私の為に友が犠牲となっていたこと…」
 彼女がそれを口にした時、隣に座っていたリンナが表情をこわばらせる。
「だから、今年は自分の咎は自分で背負うわ。そして、あなた達を駆逐する…以上よ」
 カメラをにらみつけ、ミカエラは挨拶を終えた。
 母のミシェラは無言で、友のリンナは申し訳なさそうな表情でそれを見つめていた。


「アリスのリンナです。戦乙女の従者として、お仕えさせていただいていました」
 リンナは言う。
 去年までの彼女は、司祭として、戦乙女の従者として、そして友として彼女の側にいた。
 だが、今は違う。
「今はアリスとして、お二人のお世話を、そして…約束の履行が決まりました際は、お二人の『管理』をさせていただいております」
 既に彼女は人間ではない。
 従者であることに変わりはないが、今はアリスとして、そしてキューペットとしてだ。
「立場故、人の真似事をすることもございますが、ご容赦を…」
 リンナはそう言って深々と頭を下げる。
 それをみたミカエラは、心臓がつぶされそうな気持ちになった。
 非力な彼女は、責めを受ける自分を見て身代わりを申し出た。
 だが、ミカエラへの責めが強化されゆく一方で、程なくして人の身では受け止めきれなくなる。
 彼女は人であることを諦め、自身を生け贄にする形で彼女の責めを軽減を懇願した。
 それが、ミカエラ自身に強い自責の念を抱かせることになってしまう。


「最後は私か。戦乙女のミシェラだ。先代とはいえまだまだ現役だ」
 胸を張り、カメラに向かい語りかけるミシェラ。
 顔には、いつもの不敵な表情が浮かんでいた。
「一番驚いたのは、まあ現状が暴露されたことだが…遅かれ早かれ、だ。悔やむつもりは無い」
 ミシェラは言う。
「約束は約束なので身体は委ねるが、手加減してほしいものだ。それと堕ちるつもりはない…もっとも意地を張っているだけで既にそちら側なのかもしれないが」
 そう言って苦笑してみせるミシェラ。
「もっとも、戦乙女への化身が出来るあたり、まだそちらには行っていない、という事なのだろう。いつまで続けられるか分からないが、戦乙女としての『責務』は全うする所存だ」
 ミシェラはそう言って小さく一礼し、目を閉じた。
 それから数秒後、フィルムが途切れカメラが停止する。
「……奥様、お嬢様。お疲れ…さまでした。その…よろしいのですか?」
「なにが?」
 浮かない顔で問いかけられ、ミカエラが問い返す。
「お嬢様への責めは苛烈です。一人で背負われるのは…」
「いいの。自分の受けるべき責めは、自分で受けるわ」
 そう言って儚げな笑顔を浮かべるミカエラ。
「お、奥様…奥様からも…」
 困惑した表情を浮かべ、ミシェラに助け船を求めるリンナ
「若いお前には辛いだろうが、大丈夫か?」
 珍しく神妙な面もちで問うミシェラ。
「はい」
「そうか」
 ミシェラは静かに頷いた。


 ビデオが方々に送られてから数日後。
 三人の元に小包が贈られてくる。
 中身は一見何の変哲もない銀の指輪が3つ。
 全ての指輪の裏側にはミシェラ、ミカエラ、そしてリンナの3人の名が掘られている。
「これは…」
「お年玉代わりだ」
 ミシェラが言う。
「え?」
「辛いときの拠り所になれば、と思ってな」
 ミシェラはそう言って、ミカエラにリンナの手を取るよう促した。
「結婚式…みたいね」
「解釈は自由だ」
 ミシェラの言葉に、見つめ合う二人。
 やがてミカエラは意を決し、一つ目の指輪を手に取った。
「…リンナ。あなたの苦しみ、私も共に」
 そう言ってリンナの薬指に指輪を通すミカエラ。
「お嬢様…もう盾にはなれないけど、共にいます。たとえ責め苦の中であろうとも…」
 今度はリンナが言葉と共に二つ目の指輪を手に取り、ミカエラの薬指に指輪を通す。
「もう、名前では呼んでくれないのね」
 指輪に視線を落としながら、寂しそうな表情を浮かべるミカエラ。
「義務の履行に差し障りが出かねません…そうなれば、お二人にも不利益が降りかかります」
「そうね…」
 納得するミカエラ。
 そして、2人は箱に残った指輪に視線を落とす。
「私も戦乙女で…しかし、必要とあらばアリスになる時もある。この歳でも、な」
 ミシェラが自嘲気味の笑顔を浮かべながら言う。
「だからといって、易々とそうなってやるつもりもないがな」
 そう言ってから、驚く二人を心配するなとなだめるミシェラ。
「私は、お前達が思っているほど強くは無い」
 そう言って、ミシェラが左手を差し出した。
「お嬢様」
 リンナが箱を手に取り、ミカエラの前に差し出した。
「母上。失礼します」
 娘の手で、母の薬指に指輪が通される。
「運命共同体か…悪くないな」
 指輪の通された薬指を点にかざしながら、いつもの表情を浮かべるミシェラ。
「娘がもう一人できた気分だ。ああ、義理ならば娘にできるな」
 リンナの薬指を見ながら続けるミシェラ。
「お、奥様?」
「義母様でも構わんぞ?」
「あっ、あの…」
「なっ…母上?」
 ミシェラの発言に、顔を真っ赤にして驚くリンナとミカエラ。
「お前が義理の娘になるのなら、娘にとってはパートナーか…」
 そう言ってミシェラは逡巡する。
「式はどうする?」
 戸惑う二人を交互に見ながら微笑むミシェラ。
 この児戯めいた、いやそのものである儀式が、今後訪れるだろう地獄のような日々の中で娘達と自分の支えとなることを祈りつつ。


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