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【自己犠牲】クルセ娘を愛でる会 その2【神々の守護】

[654:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/05/05(金) 16:18:17 ID:AIEM6IKA)]
この停滞っぷりに萌え。結局連投になっちゃうけど、いいよね?停滞してるんだもん、いいよね?

「あーん!ごめんなさいですのー!」
 なぜか街中で半裸状態になって茫然としている騎士に、ぺこぺこと必死に頭を下げながら、重厚な合金で組まれている筈の半壊した鎧を涙目で元に戻そうとする少女。
 だが、一度外されたその鎧は簡単に装着する事が出来なくなってしまっている。
 少女は今にも泣き出しそうな表情で、着けようとしてはするりと抜け落ちるように外れてしまう鎧を何度となく拾い上げながら、謝り続けていた。
 プロンテラ東口は平日の日中でも、人がまばらに往来する程度のひっそりとした空間だ。南口や西口とは一味違った大人の空間とでも呼べばいいだろうか。

 たまたまぶつかった相手に、弾みで発動してしまったストリップアーマーのおかげで、半泣きの少女は平謝りの格好だ。何が起こったのか理解できない様子の騎士が、ようやくはっとなって顔を赤くする。
「ヴァー!なんで俺の鎧脱げてんのーッ!」
「あうあう、本当の本当にごめんなさいですのー!るのったらドジっこだから、間違ってストリップアーマーを使ってしまったんですの。そしたら騎士さんの服、取れちゃったんですのー!うわーん、どうしようですのーっ」
「取れちゃったじゃねぇぇぇぇぇぇ!なんだそらー!どうすんだよ、脱げたらどうなっちゃうんだよ!これじゃあ猥褻物陳列の罪に問われちゃうよ!どうすんだよ、この変態女!自分でドジっことか言うな!キモい!」
「ふぇぇぇ……るのは変態さんじゃないですのー!わーんわーん!」
 遂に泣き出してしまった少女と、半裸の騎士。この画を、何も知らない一般人が見たら、どう思うだろうか。少なくとも、この場面ではどうあれ、騎士の方が圧倒的に不利な状況であった。
 奥の方でひそひそ話まで繰り広げられているような状況で、泣きたいのはこっちだとばかりに、騎士はこの状況を打破する為に若干干乾びた感のある脳みそをフル稼働させている。
(何で俺がアーマー脱がされて、この女に泣かれて、勘違いされてんだ?どっちかっていうとこの場合、被害者は俺だろうが!)
「くっそ!仕方ない、おい、一緒にこっちこい!」
 半ば無理やり少女の手を引くと、騎士は全力でその場から逃げ出した。
(おいおい……なんで俺はこんな変態女の手を握って全力疾走で逃げてんだよ……;)

 狩りの帰りで、替えの鎧を持ち歩いていた事で何とか予備の鎧に着替える。それからようやく落ち着きを取り戻そうと長く、ゆっくりと溜めていた息を吐き出す騎士。その隣ではしゅんとなって落ち込んでいる様子のローグの少女。
 何度か女ローグを見かけたことがあるが、ここまで小さい女の子のローグを見るのははじめてだった。騎士は、こほんとひとつ咳払いしてから。
「アレは俺じゃなくて、お前が一方的に悪い。わかるな?」
「……はいですの……ごめんなさいですの」
「ふん……ま、わかってりゃいいんだ。ところで、お前はどうしてあんな人気のない東口でぼーっとしてたんだ?」
「あそこは、るののお気に入りなんですの。ぽかぽか陽気が気持ちよくってお昼寝には最適なんですの。騎士さんこそ急いで何してたんですの?」
「俺は狩りの帰りでよ。店に収集品とかを売りに行こうとしてたんだ」
「そうだったですの。そんな大変な時にご迷惑をかけてしまってごめんなさい……」
「まあいいさ。お前、るのっていうのか?変な名前だな」
「そんな事ないですの!るのは可愛いと思うですの!」
「ははは、冗談だよ。俺はジェイルってんだ」
「騎士さんこそ変な名前ですのー」
「なんだと!」
「じょ〜だんでーすの!あはは」
「は、面白い奴だな、お前」
 妙な語尾ではあるが、確かに自分で言うように少々ドジな面もありそうな少女には、回りを明るくさせるような元気さが溢れている。
 騎士も少女の笑みにつられて、ふっと笑みを漏らしていた。
 ジェイルは最近ほとんど笑っていなかった事に気付き、少女につられて笑ってしまった自分に、内心驚いていた。
「あ。せっかくだから、お友達になってほしいですの!ぱぱとままも紹介するんですの!」
 何がせっかくなのかよくわからないうちに、少女はプリーストの父親とウィザードの母親を呼び出していた。少女は二人に飛び込んできゃっきゃっとはしゃいでいる。そうしてから、るのはジェイルを紹介しようと駆け寄った瞬間。
「聞いてほしいですの、この騎士さんは……きゃっ」
 少女がつまづいて、騎士の体に手をかけた瞬間。またもや、るのはいつものアレを発動してしまっていた。
 無情にも音を立てて滑り落ちていくアーマー。茫然の半裸の騎士。
 呆気に取られて唖然とする二人。
 瞬間――時は凍りついた。

「な、お、ち、違うんだ!これは俺のせいじゃ」
「ほほぅ。言い訳は後からじっくり聞かせてもらいましょうか」
「そうね、いっぺん。いや、さんべんほど、ぶちのめさせてもらってからね……ふふ……」
 少女の目の前で半裸になって慌てふためいている騎士に向かって、プリーストとウィザードの両親は指の間接をボキボキと鳴らしながらにじり寄って来る。
「いや、本当にこれは俺のせいじゃなくて!あっ、あっ!やめ、ほんと、いや、いやあああああああああああああああああ」
 その日。プロンテラ東側から、奇妙な断末魔の悲鳴が轟いていたという。

「ん?六子さん、今、何か聞こえませんでしたか?」
「気のせいだろう。ほら、ぼーっとするな、手を動かせ」
「は、はい……なんだったんだろ、今の?」


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