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自分の使っているキャラに設定を付けたりして萌え燃えするスレ

[91:2/2(2005/10/21(金) 07:04:13 ID:HesBWdF.)]
------------再開(*´д`)-------ぐつぐつ----------


「行こう。僕と、一緒に」

その一言を皮切りに、彼は自分の素性を明らかにしていった。

南方で冒険者を営んでいた頃。背信兵の存在を知り、魅了され、自らそれを従えることを望み。
既に荒らし尽くされた南方より巻き上げた巨万の富を基に、自らが王となる一大勢力を築き上げることを望み。

そして、彼女をその新世界の花嫁として迎えることを望むのだと。


――ああ、なんて情熱的なプロポーズなのでしょう。

白く、細く、しかし数多の弓の修練の傷痕を残す力強い指先は。

――わたしも、あなたが大好きです。

跳ねる鼓動を抑えるように、自らの胸へと宛がわれたのち。

――いつまでも、あなたとふたりでいられたらよかった。

ゆるやかに、スカートの中へと埋め込まれ。

――けれども。

隠し持っていた、小ぶりの弓に一本の矢をつがえ――彼の心臓へと、狙いを引き絞る。
今にも全身を支配しそうな畏怖をちっぽけな勇気で押し隠し、凛とした声で答えながら。

――わたしは、騎士だもの。


『ごめんなさい。私は、一緒に行けない』

目を伏せ、その返答に聞き入っていた詩人は――少女と同じように――自分が教えたその構えで弓を引き。

「残念だよ」

『――!』

愛するひとの名を呼ぼうと震えた彼女の喉は、ふたつの弦の弾かれる音に掻き消され――――


『どうして、外したの?』
「わざとじゃ…なかったさ」

「背信兵どもも、じきに動かなくなる」
「君がこの街を守ったんだ、僕の愛した女騎士様がね」
『もう…喋らないで』

「助かったところで、僕を待つのは処刑台だけだよ」
「悔いはない。 …既に、僕の望みは叶えられたのだから」
『…望み…?』

「君が、僕の教えた…弓を受け継いでくれたこと」
「…そして、君なら…きっと」
『…』


翌朝、戦後処理も慌しい港の中で。
小さな弓を携えた質素な服装の少女が、イズルード行きの臨時連絡船に乗り込んでいたことを知る者は…少ない。


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