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【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】
- 43 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/16(水) 19:12 ID:f4R.jC26
- クロックカード。
物理ダメージを受けた時、オートスペル[オートガード]Lv3が発動する。
オートガードLv10を取得しているならば、Lv3の代わりにLv10が発動する。
装備 : 鎧
- 44 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/16(水) 19:13 ID:f4R.jC26
- パンクカード。
物理ダメージを受けた時、オートスペル[クァグマイア]Lv1が発動する。
クァグマイアLv5を取得しているならば、Lv1の代わりにLv5が発動する。
装備 : 肩にかけるもの
- 45 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/16(水) 22:05 ID:WH2Z7yps
- 壁|ω・) イインジャナイ?
- 46 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/17(木) 03:55 ID:.ez0LCGw
- 古城にして魔城。廃都にして死都。様々な忌み名を以て知れ渡るグラストヘイム。
その中庭に、黒い騎士が佇んでいました。
人に呼ばわれる名は深淵の騎士。破壊の具象。武技の極み。そう畏怖される彼でしたが、けれどその姿は悲しげでもあ
りました。
「よう、大将」
まるで彫像のように動かないまま、どれほど時が流れていったでしょう。その騎士に、恐れ気もなく声をかけくる者が
居ました。
それは奇妙な仮面を被ったひとりの詩人でした。ギターを小脇に、親しげに手を上げます。
「まったくここは冷えるな。外でこれなら中はさぞかしだろう。石造りってのも考えものじゃないか?」
毒づきながら、詩人は仮面を外しました。その下から現れたのは全くの髑髏。ひとの姿を偽装した、それはアーチャー
スケルトンでした。合わせるように騎士が騎馬から降ります。
「…」
「石造りは時計塔も変わらないだろうって? そりゃそうだ。そもそもこの身に、」
詩人の声に、かすかに寂しそうな色が混じりました。
「寒い暑いの関わりはないな」
そう。彼らはそれぞれの事情によって、時計塔から去る事になった魔物でした。
「…」
「ああ、皆元気でやってるよ。婆さんなんかは元気が過ぎるくらいだがな」
最近塔に顔出ししてきたというアーチャースケルトンの土産話は尽きません。彼はグラストヘイムを離れられない騎士に
皆の消息を伝えるべく、こうして時折やってくるのでした。
「今も変わらず全員夢追いのままだ。まったく、馬鹿者揃いさ」
その言葉には、けれど懐かしむような、誇るような響きが籠もります。
「だが俺は思うよ。馬鹿が馬鹿らしいと理想を諦めたら、一体誰が夢を追うんだ、ってな」
「…」
「言葉ばかりうまくなったって? ま、詩歌いだからな」
詩人は少し照れたように頭を掻きました。この沈黙の騎士と居ると、どうにも饒舌になっていけません。思いもよらない
大言壮語をしてしまう時があるのです。でもそれは気恥ずかしさが先に立つから普段口を出ない、己が秘めている真情だと
も、彼は承知していました。
「最近な、言葉ってのを少しばかり信用してる。言わずとも伝わる。語らずとも解りあえる。そういう仲も確かにあるだろ
う。だがそこまでになるのに、どれだけの時間が入り用だ?」
だから装いと同じく仮面を脱いで、この騎士には伝えておこうと思うのです。それを受け止める相手と判っているから。
「解り合えない奴らが伝え合う。せめて思いやる。言葉ってのは、その為にこそあるんだと思うぜ」
「…」
――この詩人は、人と魔物との境界もまた、それで埋められると信じているのだろうか。
――いや、信じているのだろう。何故ならば彼もまた、誇るべき馬鹿の一翼であるのだから。
騎士は讃えるようにそう思いましたが、挙措としては静かに頷いただけでした。
「なんだよ、何笑ってやがる。…ま、大体想像はつくけどな」
かつんとその甲冑を拳で叩き、髑髏は青空を仰ぎます。彼らの上に在るには、不釣合いなほどに晴れ渡った空。
「言ったろう、言葉を信用し始めたと。街を巡り歩いてると、歌い歩いていると、なんとかなるんじゃねぇかって気もして
くるのさ。それに――」
詩人の視線が騎士の上に戻りました。けれど騎士を見てはいないようでした。
それは共通の、懐かしい誰かを思う目でした。
「――それに、オレたちはあの娘を知っている。あの瞳を、あの笑顔を憶えている。なら十分だろう。楽園の夢を見るには、
それで十分のはずだ」
「…」
騎士はやはり黙して語らず、けれど同意を示すかのように、黒馬が嘶きました。
「は、柄にもない話を語っちまったな。ま、また来るぜ、大将。馬鹿どもの話を持ってな」
仮面を被りなおし、死人は別れを告げて背を向けます。
古城にして魔城。廃都にして死都。様々な忌み名を以て知れ渡るグラストヘイム。
その中庭に佇む騎士は、常と変わらぬように見えます。
けれどその周りを、やわらかな春の風が吹き抜けて行きました。
- 47 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/17(木) 14:32 ID:qt/6yUpE
- 壁lω・)< …
壁lω・)< ハジマルマエニ、CMダヨー
- 48 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/17(木) 14:33 ID:qt/6yUpE
- 天呼ぶ、地呼ぶ、(いろんな意味で)人が呼ぶ!!
呼んで無くてもやってくる!!(欲深い人の下には)
誰だ? 誰だ? あいつは誰だ?
あいつ あいつ あいつは、あいつは…
正義の精錬工『クホルダー』!!(クホルダー!!)
鉄槌片手に武器を討つ!!過剰精錬何のこと!?
笑い、声がっ、木霊するぅぅぅぅっ!!(クホホホホホホ)
瞼閉じれば可愛いあの娘。討たせぬ為に武器を討つ!!
喰らえ、必殺クホハンマー!!唸る鉄槌武器を討つ!!
俺がやらねば誰がやる!!正義の精錬工クホルダー!!クホルダー!!
うた:○グレンのおにーさんと精錬工マッスルズ
作詞:ひ み つ
各地の精錬所で絶賛活動中!!
精錬所も、時計塔楽園計画に協賛しています。
- 49 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/17(木) 15:29 ID:qt/6yUpE
- 壁lω・)< …
壁lω・)b< GJ!! GJ!! バドスケサンカコイイ!>46
- 50 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/18(金) 09:49 ID:u2JfvW8M
- クホルダー!!
- 51 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/18(金) 18:57 ID:w4/vHb82
- 壁lω・)< …チョッピリ、ナガクナリソウ。
壁lω・)ノ (駄文)
壁lミサッ
- 52 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/18(金) 18:58 ID:w4/vHb82
- 1
国境都市アルデバラン。
南には、天を突くミョニル山脈を眺め、北には遠くジュノーの浮島が覗く地。
一つの大きな時計台を取り囲むようにして、その街は在った。
けれども、此処で語るは人の町ではない。
大きな時計塔。人に忌み嫌われ、傷つけられ、それでも楽園を目指そうとする夢追い達の物語。
「みなごろーし、みなごろーし、一人ものこさねーぇ♪」
そこは、遠く、歯車の音が聞える薄暗い通路。
ふわふわと浮く、羽根付きカビ団子…パンクが、機嫌良さそうに歌を口ずさみながら、進んでいた。
少し先からは、塔の外から差し込む光。外の人間達が、塔に入ってくる穴がある。
「レッツビギンさキリングタイム〜、とくらぁ。 …ん?」
瞳の端に、妙な木箱が一つ映る。
ふわふわと近づき、彼は中を覗く。
「…なんだぁ、こりゃ?」
その箱の中には、茶色い毛玉が一つ。
カビ団子は、生まれてこの方、時計塔から出たことなど殆どない。
そして、時計塔にある書籍はその殆ど(エルダーが最近持ち込んだ♀職大全集(D何某編)など一部除く)
が難解…というよりも、時計塔管理者やエルダーぐらいしか読めないような代物である為、読書などもしない。
よって、その物体は彼にとって初めて見るものであった。
「何かの生き物か…?」
小さく丸まっているそれは、呟くパンクをよそに目を閉じたまま身じろぎ一つしない。
浅く、呼吸を繰り返すそれは、彼の目からしてみても随分弱っているようだった。
「どうしたもんかねぇ」
少しばかり、浮いたままパンクは思案する。
何故こんな所で木箱に入っているのか知らないけれど、冒険者で無ければ排除するわけにもいかぬ。
このまま放っておいては、塔を訪れる凶悪な人間が何をするか判ったことではない。
けれども、彼はしがない見回り。そのうえ、この生き物の名前も知らぬ。
ふわふわと、上下に浮き沈みして判断に窮すること暫し。
「そうだ!!ライドの姐さん連れて来よう」
- 53 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/18(金) 18:59 ID:w4/vHb82
- 「犬ね」
本の前に展開された、理知的な女性のホログラフはきっぱり、一言で生物を判別した。
「多分、棄てられたんでしょう」
そして、テーブルの上の木箱を覗き込みながら、そう付加える。
「棄て犬っていうやつか?」
何処かで聞きかじった言葉を口にする。
「ええ、そうね。飼えないのなら、最初から飼うべきじゃないんだけど…」
そうは判っていても、ついつい過ちを犯してしまうのが、人の性ではあるのだけれど。
言って、浮かぶ本の前で幻影は腕を組みながら、こめかみに人差し指を当てた。
ふわふわと無言のまま浮かぶ、カビ玉と本。
「…で、姐さん。この犬って奴、どうするんで?」
言われて、幻影が目線を弱った子犬に落とす。
「…そうね。取り合えず、手当てをしてあげましょう。
餌をあげて、良く眠らせて、体力が戻るのを待って、この仔、どうするか決めましょう」
そうしないと、死んでしまうかも知れないから。
言葉に応じて、ぺちん、と敬礼するようにパンクが人間なら額に当る部分に自分の羽を当てた。
「合点承知の助っ。そんじゃ、俺はクロックじいさんや管理者の奴に知らせてくるからな」
- 54 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/18(金) 19:04 ID:w4/vHb82
- 壁lω・) < …
壁lω;) < ヤッパリ、ナガクナリソウ・・・ ツギカラハ、uプロダニアゲマス・・・
壁lミサッ <駄文失礼!
- 55 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/19(土) 01:19 ID:Tg.ulYDk
- 別にここでもいいと思うぞ
続き楽しみに待ってます
- 56 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/21(月) 05:05 ID:ko3/iegg
- 壁lω・)ノ(続き: http://f26.aaa.livedoor.jp/~alarmmoe/cgi-bin/source/up0147.xxx )
壁lミ
- 57 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/22(火) 15:17 ID:/aA1p5yc
- ふと、思った。
我々が、今認識している時計塔は、全体のほんの一部に過ぎないとっ。
つまり、時計塔の本来の大部分は地下にまだ埋もれたままで、
そここそが、楽園計画にとって一番大切なんだ、と思ってみるテスト。
最深部にアノリアンがいなくなったのは、水没部から
時計塔深部探索にでかけたのかも。
んで、更に時計塔本来の姿は1000年前の大戦の折、
「楽園」の為の技術を後世に伝えるシュワの墓所みたいな場所か
別の惑星にミッドガルドから避難するための箱舟だったり、とか。
後、過去スレ見てて、
錬金術師がとんでもない名前であることの理由をでっち上げ。
つまり、昔のこと過ぎて正確な名前が伝わらなかったと、推測。
実際、ギリシャ神話のゼウスもジュピターなんて名に変ったりしてますし。
- 58 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/22(火) 15:22 ID:/aA1p5yc
- 後、実は時計塔管理者って、一番見つけて欲しくない部分を隠すために
時計塔のほかの部分に冒険者の注意を向けさせてたりして。
…うう。へんなSFっぽい電波ですみません。
- 59 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/23(水) 16:47 ID:ji4Oj5v.
- 壁lω・)< …
壁lω・)< …ヤッパリ、UPロダジャ、スレガサミシイカラ、ココニアゲルネ
壁lミサッ < ツヅキハモウスコシマテーネ!!
- 60 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/23(水) 17:37 ID:KD4mHPBU
- 56を読んだ。
管理人「…嘆かわしいですね、最近の若い連中は正しい受け答えも出来ないとは」
荒武隊長「……」
管理人「そう、直接返答を要求されるか許可された時以外、部下は発言権はありません、知っていますね?」
荒武隊長「イエス、サー」
管理人「それくらいのことを分かるように、部下教育を貴方に要求するのは、過大評価でしたか?」
荒武隊長「サー、ノー、サー」
管理人「それと、アイアイ、サーとイエス、サーの違いも重要です。しっかり復習させておきなさい」
荒武隊長「アイアイ、サー」
管理人「…まぁ、部下と隊長の関係にこのように上司が口を突っ込むのもあまりないことではあるわけですが」
- 61 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/23(水) 18:16 ID:ji4Oj5v.
- OK、つっこみありがとう。早速くぐってみた
ttp://www.warbirds.jp/ansq/7/G2000197.html
ここの様な感じでいいのだろうか?
取り合えず、自分は
イエス・サー =>文字どうりに「はい、上官殿」
アイアイ・サー =>サイト引用で「命令を理解し、かつ、それに従います」
という風に、脳みそに格納しますた。
- 62 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/23(水) 20:24 ID:KD4mHPBU
- Σ
いあ、そんな真面目にぐぐられるとただの海軍小説好きのしったか厨な私は困ってしまう。
アイアイは命令された時に了解する返答。ちなみに、命令拒否する場合の返答パターンは多分ない。
ありえないので沈黙するべし。命令拒否はマスト逝きだっ。
疑問系で声をかけられた場合はイエス、かノーにサー。
アイアイ、とイエスを間違えてぶんなぐられるシーンは、士官候補生が士官に育つ過程を書く小説では
かなりの頻度で出てきます。というか、真っ先に叩き込まれることの一つらしい…。
で、アレです。重箱の隅をつついてゴメンナサイ
- 63 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/24(木) 00:28 ID:uN6s4M9A
- 壁lω・) <アヤマラナクテイイヨー タリナイ、チシキノ ホカンニ アリガタイカラ
壁lミサッ <サテ、ツツキヲ カクゾー!!
- 64 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/24(木) 00:40 ID:Q0QlZB7U
- お礼言うの忘れてたよ…コレジャ ジイシキカジョウナヒト ジャマイカ orz
突っ込みトンクス。知識の肥やしにさせてもらいまつ。
- 65 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/24(木) 04:35 ID:6FDgVMbc
- 壁lω・) < ……
壁lω・) < フクロウセンセイト、ジーチャンボウソウデ、ヨテイヨリナガクナターヨ
壁lω・)ノ(駄文)
壁lミサッ
- 66 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/24(木) 04:35 ID:6FDgVMbc
- 3.
てくてくと、長い廊下を歩きながらアラームは、考えていた。
荒武の言い回しは難しく、彼女の知らない言葉もあったけれども、
取り合えず、管理者のおじさん達が自分を呼んでいるらしい、ということは理解できた。
ただ、その理由が彼女には思い浮かばない。
いや、しばし考え込んで後、少女は一つの理由に思い至った。
彼女が『着ぐるみ』を壊す回数が増えているのではないか、と。
考えてみると、確かに最近、悪い冒険者に着ぐるみを壊される回数が増えた気がした。
『…どうしよう…』
実際に数えた訳でもなく、その考えは杞憂に過ぎないのだけれど。
しかし、彼女とて未だ幼い少女。一度掻き立てられた不安を自ら抑える術を知る筈も無い。
勿論、四六時中何時だって誰にだっていい子に振舞ってはいられないのだ。
一旦考え始めたが最後、どんどんと悪い想像ばかり膨らませてしまう。
具体的に言うならば、目を吊り上げ、眼鏡をぴかぴか光らせて睨むオウル先生や
蒸気を頭の辺りから噴出して怒っている管理者を思い浮かべて、彼女は恐怖した。
その背景は暗雲が立ち込め、遠雷がごろごろと鳴り響いていたりする。
『全く…貴方は何時も何時も機体を壊してばかりいて一体何を学んで(以下、延々と説教が続く)』
『このところ幾らなんでも壊し過ぎじゃよ。全く、ワシの身にも(以下、延々と愚痴が続く)』
『どうしよう、どうしようっ』
一瞬思い浮かべた恐るべき光景に真っ青になる、アラーム。
幾ら時計塔の一員として一生懸命に頑張ってるといっても、好き好んで怒られたい訳では無論、無い。
途端、足取りは重くなり、呼ばれた部屋までの距離が永遠と同じくらい長く感じられる。
「うー…」
回れ右。そして戦術的撤退を実行したい気持ちを必死で抑え、アラームは歩く。
その歩みはピラミッドのミノタウロスよりも遅かったりするが。
何時もの勉強部屋への曲がり角や、昼間、一緒に闘う皆が居る筈の談話室。
バースリーが腕を振るう食堂を通り過ぎ、目的の部屋が近づいてくる
勿論、憂鬱の度数もうなぎのぼり。じっとりと嫌な汗が手に浮かぶ。
そして、そんな彼女は背後の不埒で悪いジジイに気づかない。
「おおー!! アラームたんじゃっ!! 待っとったぞ!!」
ジジイ…新参にも関らずライドワード部隊に無断で秘蔵の写真集なぞこっそり追加しいの、
女冒険者にハアハアしぃのでこってりと時計塔の真面目な面々から絞られ続けたにも関らず、
反省なぞ皆無のエルダー老である…は、勿論、少女のブルーな心境なぞ一切知らぬ風に、大声で言う。突然に。
「わひゃぁっ!?」
「アラームたん。飛び上がっちまう程、ワシに会えて嬉しいかぁ」
全く予期していなかった大声に、飛び上がる程驚くアラーム。
一方、豪快に笑いながら、かさかさに乾いた手で少女の頭をなでる爺。
「え、あ、う…え、えと」
頭をなでられるまま、にへらーと曖昧な笑顔でエルダー老に答える。
「取り合えず、それだけは違うと言わせてもらいます。エルダー老」
そんな老人と少女に、部屋の中から現れた蒼でそろえた外套と山高帽を纏った一人の紳士が声をかける。
「う…」
「遅い。一体何をやっていたのだね」
くちばしからは、目の前で萎縮する少女に対する容赦の無い言葉。
彼は、梟の姿取る大悪魔。名を、オウルデュークと言った。
そして、言うまでも無く少女が今現在持つとも会いたくない人物である。
彼は、一度溜息を吐くと
「全く…私は何時も君に時間は大切にしろと言っているだろう。
人間の言葉を借りるのは癪だが、タイム・イズ・マネーという言葉もある…」
「は、はいっ先生!!」
しゃきっ、と背筋を伸ばしたアラームを前に、また何時もどおりの説教が始まりかけ…
「梟のぅ〜、別にそれくらいいいじゃないか。アラームたんが可哀想じゃよ」
「エルダー老!! 貴方は何と能天気なことをおっしゃるか!!
それと…私のことは梟と呼ぶなと何度申し上げたら老は理解なさる!?」
梟と呼ばれる事を、高貴な血筋の悪魔たる彼は我慢できない。
怒りに飾り羽を逆立て、エルダーへと詰め寄る。
「私の名前は前に申し上げた筈!!」
「とはいってものぅ…なんじゃったっけ?」
そんな怒れる悪魔を前に、老人力を発揮するエルダー。
ぽりぽりと立派な髭を蓄えた顎を指先で掻き、暫し黙考する。
「思い出されましたか?」
口元をひくつかせながら、デュークが言う。
「んー…デューク…」
「そうです、私の名前は…」
なにやら思い出しかけたエルダーを前に、梟が言う。
「デューク・更家じゃったか」
…その瞬間、隣で事態を見守っていたアラームは、
俯いているオウルデュークの蒼い外套が、一瞬、オウルバロンの様に紅く染まるのを、確かに見た。
ゆらり、と彼の周囲の大気が見えない圧力に歪曲し、迸る魔力に金属の床板に亀裂が走る。
「あわ、あわわわわ…」
まるで、ザ・ワールド。三者の時間は停止する。
「ク…ククククク…ククククククククク…」
肩が、揺れる。漏れる様な笑い声にあわせて上下に。
外套が揺れる。怒りのあまり、見境のなくなった魔力に。
「ん、違ったか? それじゃあ、デューク・東郷か?」
ぷちっ、という擬音。そして 時は 動き出す
一歩、デュークは歩みだし顔を上げる。
そこには、笑顔。但し、それは怒りに歪んでいて。
「エルダー。私には、誇りがある。貴族として生まれ、貴族として生きてきた矜持だ。
お前は、それを汚した。完膚なきまでに汚したのだ。その罪を支払え。今すぐにだ」
「…ほげ?」
しかし、悪くて不埒な老人は、それを惚けた表情で聞いていて。
「…………」
その所業で遂に、彼はキレた。もう、全く見境無く。人間の言葉を喋ることすら忘れるくらい。
「クケェェェェェェェェェッ!!(訳:ぶち殺すぞヒューマンがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!)」
「おわーっ!! 梟のがキレたわいっ!!」
ローブのすそをたくし上げ、脛毛の生えた足を見せびらかせつつ、
エルダーは反転、全力疾走で敵前逃亡を開始した。
ライトニングボルトが嵐の様に乱れ撃ち、デュークはエルダーを追いかける。
「………」
そして、後に残されたのは土煙を立てながら走り去っていく二人を呆然と見送るアラームだけ。
「………え、えと…うん。取りあえず、呼ばれてるし行った方がいいよね」
取りあえず、自分自身を納得させ、彼女はすぐ近くに見える目的地に向かった。
- 67 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/24(木) 05:19 ID:6FDgVMbc
- 訂正 ライトニングボルトが=>ライトニングボルトを
- 68 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/24(木) 07:26 ID:7V4cXlJw
- ふと駄文を書いていて気づいたんだが、
アラームたんって12歳だよね。
つまり、一番、好奇心旺盛な頃な訳で。
(僕の場合はゲーム漬けだったけども)
それなのに、毎々日日Wizやらなんやら冒険者の相手。
んー、何というかアラームたん、やっぱし外の世界にも興味があるのかなぁ、
とか考えてみたりしているわけです。楽園一直線じゃなくて。
たまに帰ってくるバドスケの話を聞いて、
時計塔から出るわけにはいかないけど、
わくわくして眠れなくなるアラームたんとか。
禁止されてるけど、少しだけ無断外出しちゃったりとか。
それで、帰ってきたら管理者&デュークにこってり絞られてショボーンとか。
いや、一生懸命なのも可愛いですけど、
それだけだと、何というか…もったいないじゃないですか、と言ってみる。
何というか、もう少しわがまま言って
我を通したがってるアラームたんも見てみたいなー、と。
うう。駄文書きの独り言でした。
取りあえず、全部終わるまでガンガリまつ。
- 69 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/28(月) 18:52 ID:U/i62IAU
- 読んでる人が居るかどうかわからないけど業務連絡。
大学入学に伴い、引越しのためちょっと一週間くらい
これなくなりそうです。ご了承ください。
追伸:
諸先生方、こういった萌えスレでは、これが通常ペースなのでしょうか?
後、このスレは下げ進行でFAでしょうか?
- 70 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/03/28(月) 21:38 ID:U/i62IAU
- 後、深淵スレに投下した時計塔の深淵さんの電波を投下。
ttp://f26.aaa.livedoor.jp/~alarmmoe/cgi-bin/source/up0148.xxx
- 71 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/02(土) 13:24 ID:ThqBhFhk
- 保守、ついでにここで点呼してみる。
- 72 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/02(土) 16:13 ID:qlMm3VKE
- ノ
ほんと人いないな。
- 73 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/02(土) 16:17 ID:sGTBX8VM
- ノシ
- 74 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/02(土) 16:18 ID:sGTBX8VM
- OK,時に落ちつけ、漏れ。
- 75 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/02(土) 16:45 ID:ThqBhFhk
- 時に藻前等、職人を待つばかりではなく
我々も我々自身でアラームたん萌えを活性化させないか?
- 76 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/03(日) 16:45 ID:1T2kRwY.
- >>75
ほう、たとえば?
- 77 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/04(月) 15:05 ID:eaKs3GSI
- んー・・・自分はとりあえず駄文を書き続けます。
でも、PCがなかなか届かなくて原稿できててもPCに打てない罠.orz
あと、ネタを考え中………
時事ネタだとお花見シーズンだけど時計塔はどうなんだろう…
花粉症でくしゅんくしゅんいってるアラームたんとか…
自作の雛人形でひな祭りとか…
鳥骨諸国漫遊記とかかなぁ…
ライドねーさんや婆3さんを深くキャラクタを掘り込むテストとか。
でも、こういうことばっかり書いてると
駄文書きぐらいしかできない自分のオナヌーっぽくて嫌な罠。
兎に角、正直人数の少なさをなんとかしたいです…
他の文神氏とか絵神氏が光臨しないものか…
失礼しました。
以下、何事も無かったかのようにスレを続行してください。
- 78 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/05(火) 12:32 ID:CzwlMvwQ
- 後、いっそのこと劇薬覚悟でしばらくageてみる…というのは如何か。
人が居ないとにっちもさっちも動きようがないです。
もちろん、それが毒薬スレスレの劇薬であることは認識していますが。
- 79 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/06(水) 23:41 ID:vzlKyVWg
- 遅まきながらRom専 ノ
- 80 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/07(木) 02:20 ID:/UCAu9O.
- Oh!こっちにあったのか!
あるとわかれば再び書くぞ!
配置変更の時に書き始めたものだけど!
…(´・ω・`)
- 81 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/07(木) 09:07 ID:9XWXcuHw
- 壁lω・)< ゼンゼンダイジョウブダトオモウヨー>80
壁lω・)< デモ、ココニアルノ シラナイヒト ケッコウイルノカナ・・・
壁lω・)< ソレハトモカク・・・
壁lω・)ノ(駄文)
壁lミサッ
- 82 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/07(木) 09:07 ID:9XWXcuHw
- 04
「ううう……」
扉である。そう、憂鬱な呻き(がおーではない)を上げたアラームの前には扉があった。
そして、少女には何やら、轟々と怪しげなオーラを放っているかの様に見えていた。
それは『会議室』などとこの塔の住人達に呼ばれている室の戸である。
また、管理人達が待っている場所でもあった。
「すぅ…はぁ。 すぅ…はぁ」
二度にわたる深呼吸。そうである。この場所は今は敵地も同じ。
だからこそ、落ち着かなければならない。
精一杯の勇気を振り絞った突撃に、気負いや焦りは禁物なのだ。
「失礼します」
息を整え、入室する。
足を踏み入れたところで、アラームは目線だけを動かし、室内を見渡した。
何時もの面々が大きな四角い机を囲んでいる。
管理者。クロック。バースリー。ライドワード。パンク。
三つの空きは、先ほど色々な意味で彼方へと走り去ったエルダーとオウルデュークのもの。
それから、何処とも知れない空の下に入るであろう、詩人の席。
だが。机の中央にでん、と見慣れない大きな木箱が一つ。
一体、これは何だろう?
アラームの視点は、箱に向ったまま停止。
一般的な時間にしてそれは、僅か数秒ほどの出来事だったのだろうけれど。
「アラーム?」
正確極まりない機械の集合である管理者からしてみれば、疑問の声を投げるのに十分な空白だったらしい。
「!!? ○■△★×〜〜〜!?」
結果として完全に不意を突かれアラーム、驚愕。
わたわたと慌てるも、一向に状況の解決に向わず。
- 83 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/07(木) 09:08 ID:9XWXcuHw
- 「アラーム、落ち着いてください」
「ご…ごめんなさい…」
傍目からは表情の読み取れない…そもそも彼には人間の様な顔が無い…管理者の言葉に、
ようやく落ち着きを取り戻したアラームは、入室時よりも更に縮こまる。
「どうしたんですか? いやに元気が無いようですが」
「なんでもないよぅ」
「本当ですか?」
こくり、とアラームは問いかけに頷く。
「まぁ、これ以上聞きませんが…体調を崩したら早めに言ってきなさい。
欠員補充や、荒武隊のスケジュール。クランプのオリデオコンの輸送スケジュールにも影響します。
なにより、貴方の同僚や仲間に心配をかけてはいけません。頑張るのは大変結構ですが。
兎に角、体調には十分気をつけ、決して倒れたりしないように。いいですね?」
「は、はいっ」
「…? 矢張り変ですよ、アラーム。早めに医務室に行くことを進めますが」
怪訝そうな顔をする管理者に対し、一方の少女は…体の硬度をガチガチに保ったままだ。
「あの、管理者さん」
「?」
戦況は極めて我が軍が不利であります。撤退を!!
荒武隊長の声を充てた、絶望的戦況報告が脳裏に響き渡る。
そして、彼女は覚悟を決めた。
具体的には、洗いざらい罪状をぶちまけて、管理者に謝ってしまう事にした。
「ごめんなさいっ!!」
言うか早いか、いきなり頭を下げる、アラーム。
「は?」
しかし、それに返されるのは管理人の間の抜けた声。
「いや…何を、謝罪してるんです?」」
その言葉に、今度はアラームが困惑する番だった。
何を?自分が呼ばれたのは着ぐるみの事じゃないのか?
それじゃあ、いったいどんな理由なのか?
まるで、心当たりはなかった。
「え…あ…う…」
「いや、別に何も咎めたりはしませんよ。落ち着いて」
その言葉に、はう、と色々な感情…半分は安堵である…が入り混じった吐息を漏らす。
つまり、無用の心配をしていた、という訳であった。
「あ…」
その後で、少女は一つの疑問にたどり着いた。
「でも、それならどうして私、呼ばれたんですか?」
- 84 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/07(木) 09:09 ID:9XWXcuHw
- 壁l< ナガクナッタ カラ フタツニ ブッタギッタンダヨー スグ、ツヅキモトドケルヨー
- 85 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/07(木) 09:51 ID:9XWXcuHw
- それから、管理者の口調が変わってるのは・・・
仕様です。気にしないでください。
ジイサマコトバガ サンニンジャア サベツカガ ドウシテモ コンナンデ・・・ orz
- 86 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/08(金) 02:12 ID:cPeSHACI
- 昔って管理人は真面目口調だったような
- 87 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/08(金) 14:41 ID:I6QYeuWA
- でしたっけ? タロットがおいてあるところのSSを参考にしたのですが。
- 88 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/09(土) 23:37 ID:HaQlRYjA
- ttp://776.netgamers.jp/ro/cgi-bin/ss2/data/IMG_001862.jpg
隊長お疲れ様です
- 89 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/11(月) 10:01 ID:DbbnxvdA
- 表示されないんですが…
- 90 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/11(月) 10:03 ID:DbbnxvdA
- 壁lω・)< …ハジマルマエニ CM ダヨー
- 91 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/11(月) 10:04 ID:DbbnxvdA
- 少女は、楽園がやって来ることを信じていた。
けれど…
「あのね」
「皆が幸せになれる楽園なんて、最初からなかったの」
ほんの僅かな齟齬。しかし、たちまち壊れた精密な時計の針は、逆さ巡りに動き始める。
誰もいない楽園めがけて、堕ちる様に針は進み始める。
嗚呼。けれども。
「だったら。それが最初からないなら。わたしは誰もいない楽園が欲しい」
真っ白い顔と黒い髪。虚無が、細長い切れ込みを笑みの形に刻み込む。
少女は、真逆となってさえ、楽園を目指していた。
「誰も、誰一人いない。穏やかで、優しい楽園がほしいの」
神も人も。魔も。誰も彼もがいなくなった、楽園を。
『畜生…っ!!たった一匹に騎士団一師団が容易に壊滅とは…っ』
『化け物め!!化け物め!!化け物…ッ!!』
『プリースト!! プリーストは何処だ!?俺の…俺の脚がっ!!』
『神様…神様…っ!! クソッタレ…一度ぐらい、頼みを聞いてくれ!!』
背には、機械を継ぎ接いだ翼。空っぽになった心には、真っ黒い液体をたっぷりと注ぐ。
そして、手には剣。時計針の形の大きくて歪な剣。
『どうして、あの娘がこうなるのを止められなかったのだ、管理者!!』
『……言い訳はしません。ですが、今は目の前の脅威に対応すべきです。ダークロード閣下』
『トリスタン、それに神軍に至急連絡をつけるとしよう。非常事態だ…文句はないな、ダークロード』
『早すぎるユミルの復活。そして人と魔、更には神まで巻き込むか…バフォメット、まるで、1000年前の再現だな』
振り下ろされる剣は、誰も彼もの首を刎ね。誰も彼をも分け隔てなく殺していく。
『進めーっ!!グラストヘイムの意地にかけても奴をジュノーに到達させるな!!』
『こうなってしまったのは残念だけど…絶対に、止めてみせるわ。アラームちゃん』
『…僕が相手だ。僕の子供達を、これ以上手にはかけさせない』
嗚呼。けれども。進んでいく時計の針は、全てを等しくひき潰していく。
『…彼らには、犠牲になってもらうつもりでした。
後の世、我々がエゴだの、悪魔だのと言われようと知ったことではありません。
それでも私は絶対に、取り戻したい。私達は…』
『あの娘の家族、だ。 解ってる』
こちこちと。真逆の楽園目指して時計の針は滑り落ちていく。
『貴様等は、これから最大の試練に直面する。
成功の二文字だけを脳に叩き込め!!いいか!!いかなる蛮勇も無謀も許さん!!
必ず、成功させるのだ!!荒武隊総員、最大最後の大仕事と思え!!』
『アイ・アイ・サー!!』
『征くぞ!!』
誰も彼も。少女自身さえ死に絶えた楽園で。
『…荒武達や剣、皆が稼いだ時間を無駄にはできんぞい。梟の。オババ。クロック殿、準備はできたか?』
『最後まで、貴方は私を梟と呼ぶか…まぁ、今ぐらいはいいでしょう。準備はできてますよ』
『アタシら以外は誰も、あの娘を許さないじゃろうが…四の五のいってられんわい。アタシ等にとっちゃハナから取り戻す為の戦いじゃ』
『みなまで言うな、バースリー殿…さて、時計塔一世一代の大仕掛け…起動するぞ!!』
その平らな地平を楽園と呼ぶ存在は何なのであろうか?
…けれども、戦の轟音に、天をつんざく砲声に、疑問の言葉は掻き消され。
「あのね。アチャスケさん」
楽園を、一途に少女は目指す。
無数の矢と魔法を身に。無数の死体で、その道を固め
「やっとね、楽園、できたんだよ」
人と魔と、神さえも死に絶えた大地。
望みと引き換えに翼をもがれ、剣を折られて少女は、漸く、微笑んだ。
「あれ…おかしいよ。よくアチャスケさんの顔が見えない…
でも、きっと笑ってるよね。アチャスケさん、笑ってるよね」
何もない。何処までも静かで穏やかな世界は続く。
『馬鹿だよ…お嬢は、馬鹿だ… 聞く奴のいない詩歌いに…何の意味があるってんだよ』
ただ一人。詩歌いだけが。やっと微笑みを取り戻した少女を看取る髑髏の、死者の詩歌いだけが其処に。
「あのね…あちゃすけさん。こもりうた、歌って。すごく、眠いの」
『なっ…』
「それにね…きねんにききたい…やっと…」
『ああ。ああ。解った…解ったよ。だから、静かにな。
とっておきを歌ってやる。歌ってやるから…』
だからせめて、俺が歌い終わるまでは、眠らないでくれ、アラーム。
……楽園。それは一体なんなのだろう?
そこに、相争う存在など必要なのだろうか?
白と黒は混じりあい、永久に続く灰色を作り出す。
劇場版『時計塔物語_Bad-end』
/主演:黒アラーム アチャスケ(バドスケ)
/出演:時計塔の面々と、台詞から連想される何かな人々
/監督:七誌乃伍ン之兵衛
2006/4/1上映未定
…少女は願う。ただひたすらに、楽園を。
髑髏は嘆く。誰も彼もが居なくなった楽園で、たった一人。
…モチロン、ゼンブジョウダンデス ホンキニ シナイデ クダサイ
アト、イロイロゴメンナサイ・・・アタマノナカニ ヘンナコビトサンガ スンデルンデス・・・
サイシュウヘイキカノジョ オモイダシテタラ、ヘンナコエガ キコエタンデス・・・orz
- 92 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/11(月) 10:55 ID:REHe/.Vs
- グッジョブだ、兄弟。お前の熱き想い、しかと受け止めたぜ。
- 93 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/12(火) 12:10 ID:4gMPmFRg
- 神光臨期待上げ
- 94 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/14(木) 02:27 ID:4r8eGTDI
- こういうの大スk…
- 95 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/14(木) 12:28 ID:GoRhZSK2
- 壁lω・)<…
壁lω・)<ダブン ノツヅキ ダヨー
壁lミサッ
- 96 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/14(木) 12:29 ID:GoRhZSK2
- 壁lω・)<…
壁lω;)<CDニ ヤクノ ワスレテタヨー
壁lミサッ< イエニ モドッテ トッテキマス
- 97 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/14(木) 13:25 ID:GoRhZSK2
- 壁lω・)<タダイマー
壁lつ(駄文)
壁lミサッ
- 98 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/14(木) 13:26 ID:GoRhZSK2
- 5
「でも、それならどうして私、呼ばれたんですか?」
「ああ、それはですね。先日、一階フロア巡回中のパンクが見回りの途上、
冒険者進入口付近でその箱を発見し…」
難しい言葉の羅列は、進撃のラッパを高々と吹き鳴らし始めた。
だが…肝心のアラームは、というと。
「……」
固まっている。いや、むしろラッパの音にくるくると目を回しているようだった。
と、不意にこれまでふわふわと浮かぶばかりだったライドが、ため息を吐くようなしぐさを見せた。
ゆっくりと空中を動き、少女の隣まで移動するとホログラフの女性は歩みを止める。
「つまりね、アラーム」
「ライドお姉さん?」
「…あのですね。私の話はまだ終わっていないのですが」
会話に割り込まれた管理者は、ぎり、と頭に相当する部分を女性に向けると、少し抑揚に欠ける声で言った。
「まぁ、管理者や。ここは大人しく引っ込んどきな。
アラームが、お前さんの説明で目を回してるじゃないか」
「バースリーさん、そりゃああんまりですよ」
「あんまりなもんかい…ほれ、見といてみい」
言って、バースリーは節くれだった指先で、アラームを指差す。
そして、一言尋ねた。
「アラームや。さっきの説明、よく理解できてるかえ?」
「う…え、えとっ…出来てますっ……」
「嘘お言いじゃないよ。バレバレさね」
尻すぼみに消えていった返事に、魔女は苦笑しつつ答える。
同じく女性陣のライドも肩をすくめながら、その様子を見ていた。
「判りましたよ…」
表情のない機械の顔に、管理者は不満そうな色を浮かべながら、渋々承知した。
椅子に座りなおすと、彼はもぞり、と動いて居住まいを正す。
「さて…と、アラーム」
そんな管理者を、すまなさそうに上目遣いに見ているアラームへ向け、女性が言う。
「ちょっと、この箱の中身、見てもらえないかしら?」
「えっ…でも…いいの?」
「大丈夫大丈夫。別に変なものじゃないから安心して」
にぱっ、と安心させるように笑ってみせる。
「……」
しかし、ライドが示してみせるそれは、正体不明の箱である。
住人達を疑うわけではないけれども…どうにも、少女には未知の物体に対する本能的な不安が過ぎっていた。
覚悟は決めた。おもむろに、アラームは机に近づき…恐る恐る、前のめりになりながらも上蓋に手を伸ばす。
『わふ』
…しかし、少女が中身を見るよりも早くか細い声で、箱が鳴いた。
「!?」
『わふわふ』と、更に続けて二度。その鳴き声に促される様に、そっと蓋を持ち上げる。
「わぁ…」
思わず、口から感嘆の声がついて出る。
箱の中には、一匹の子犬が居た。茶色い、綿毛の様な毛並みで、敷かれた白く柔らかな布の上に伏せている。
そいつは、自分に向けられた視線に気づいたのか…ゆっくりと頭を上げると、ふんふんと鼻を動かしながら、
潤んだ目を少女に向ける。一人と一匹の視線がぴったりと合っていた。
「……」
ぱちくりと瞬きを繰り返すアラームと、じっとそんな少女を見ている子犬。
机上に腹ばいになりながら……じっと、何をするでもなく見詰め合う。
「どうしたの?」
「あ、えと…… 本物の犬見たことなかったんです。
でも、ライドお姉さん。この子は?」
名残惜しそうに子犬から目をそらすと、物問いたげな目で女性を見る。
「そう。その仔のことで今日は呼んだのよ。パンクが、一階で見つけてね」
「ワシ等だけじゃなく、アラームの意見も聞こう、とライドさんが言ってのう」
ライドワードの言葉に、クロックがそう付け加える。
「私達だけで決めるのも横暴ですし…ちなみに、貴方を呼ぶ前に多数決をしたんですが、
棄権…というか、舌戦途中で退出ですか…を含めて、丁度半分半分で決着がつかなかったんですよ。
バースリーさんは、アラームと一緒でいいと仰いましたし。因みに、棄権されたのは…」
管理者が、言いかけたその時だった。
「クケーッ!!」「おわーっ!! おわぁぁぁーっ!!? ろ、ローブに火が付いたぞいっ!!」
ドアの向こうから鶏の如き怒声と、緊迫感に欠ける老人の悲鳴。それから、ひっきりなしに轟き続ける雷鳴。
そして、流れライトニングボルトが、部屋の扉を真っ二つに砕き折るにいたって、管理者が再び口を開いた。
なにやら、ぎしり、と錆びたゼンマイを無理やり動かしたかのような様子であった。
「…言わなくても、判りますね?」
「う…うん」
確かに、これならば仕方がなかった。
というか、横から口を挟みたくなるような状況ではなかった。
「話、元に戻していいかしら?」
「ええ。構いませんよ」
各人を代表して答えた管理者の言葉を受けて、ライドワードはこほん、と一度咳払いをする。
「さっき、管理者さんが言った多数決っていうのは、この仔を塔におくか、
それとも、人の町においてくるか、っていうのを決める為なの」
一度言葉を切る。
「アラームは、どっちがいいと思う?」
まっすぐ、少女の目を見据えて言った。
「……」
まっすぐに目を見つめられ、アラームは考え込む。
即答はしない。うー、という呻きにもにた小さな声が零れていた。
たっぷりと、数分はそうしていただろうか。おずおずと、アラームの片手が上がる。
「私は………」
その場に居る全員の視線が、少女に集まる。
くぅん、と子犬が鳴いた。
「この仔のこと、放っておくのはいけないと思う」
「どうして?」
再び、女性は問う。
「……」
答える事が出来なかった。
自分自身の判断を肯定する理由が、ぼんやりと浮かんではいるのだ。
それを意味のある言葉にくみ上げる事が出来ないだけ。
残念ながら、アラームはその為の冴えた言葉を知らなかった。
「いい?よく聞きなさい」
少女は、こくりと頷いて応える。
「この仔を放っておかないってことは、言い換えればこの仔の世話をする責任を持つってことよ?
ご飯をあげたり、散歩してあげたり、しつけだってちゃんとしなくちゃダメ。
生き物だから、もっと色々な問題だっておきるかもしれない」
真剣な目で、ライドはアラームを見据える。
「あなたは、それが出来る?」
矢張り、すぐに返事は返らない。
アラームは俯き、しかし、答えを紡ごうと懸命に言葉を捜す。
そして、小さな唇が、微かに震えた。
俯いていた顔が持ち上がり、ライドワードの瞳を見つめる。
「だって…」
不器用で、拙い。
けれど、それは何処までも真っ直ぐに、心のままを顕して。
「この仔には、傍に…誰も居ないもん。一人ぼっちで、お腹がすいてて、寂しくて…
そんなの、絶対駄目だもん。私だって…誰もいないなんて、いやだもん」
部屋にいる誰も彼もが、黙ってその言葉に聞いている。
「出来るもん。絶対出来るもん…絶対、そんな悲しい事はしたくないもん!!」
最後は、殆ど叫ぶ様にしてアラームは訴える。
それきり、少女は口を再び閉じた。
「アラーム」
涙を目を潤ませて、自分を見ている少女にライドは一度だけ、目を瞑りながら息を吐く。
「ごめん。如何しても必用な事だったけど…ちょっと、厳しい言い方だったわね」
アラームは首を横に振って応えた。
不意に、これまで黙って事の経緯を見守っていたクロックが、椅子から浮かび上がる。
そして、立派な髭を蓄えた老人の顔が言う。
「さて…それじゃあ、多数決は賛成で決まり、じゃのう」
そして、その言葉の直後。一際大きい遠来が、遠く響き…そんなことはともかく、結論は下された。
尚…しばらくして、時計塔の隅の方で、程よく焦げたエルダーが、
これまた別のパンクに発見されたのは、全くの余談である。
「……」
「げほっ…ごほごほ…梟のも、もうちっと老体をいたわらんかいな」
「……」
「…なんじゃいカビ球、その目はっ」
「…………」
- 99 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/15(金) 12:05 ID:weMNj1Ks
- 時に藻前様方に質問なんだが、
自分の駄文ばかりがスレを占有してる状態なんだが…
雑談とか萌え話しにくい、とかそういうことはないか?
なければ、このまま続けるが…
いや、いい加減自分の書き込みばかりが目立ってきたもので。
- 100 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/15(金) 17:38 ID:aSNnHJTU
- なに、問題などあろうものかね。
いわばここは酒場のような物、引っ越しのどさくさで常連の多くが見失ったものの、
まだ客はこうしてきてるじゃないかね。
かつてのように曲(物語)を奏でる者は多くはないし、それに声を上げる名無しの客達も多いとは言えないが、
それでもこうしてここに在るのは悪い事じゃああるまい。
少なくともあんたの曲、おいらは好みだし頑張って欲しいとも思ってる。
- 101 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/16(土) 17:31 ID:mCrDrTU2
- 了解。頑張ります。
- 102 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/16(土) 18:33 ID:mCrDrTU2
- というか、つまりこのスレは、
静かに呑むバーみたいな感じ、というわけですか。
雑談で恐縮ですが。
- 103 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/18(月) 13:28 ID:Z/kq58Ys
- 壁lω・)<…
壁lω・)<オリキャラ キライナヒトハ スルー シテネ
壁lつ(駄文)
壁lミサッ
- 104 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/18(月) 13:28 ID:Z/kq58Ys
- 6
そこは、時計塔のある町だ。名は、アルデバランと言う。
町中に水路が張り巡らされた、静かな町。ぱしゃぱしゃと、船を漕ぐ櫂の音が、風車の軋む音と遠く重なり合う。
その町の狭い通りの一角、石畳の上を男が一人、進んでいた。
「もう少しか…久しぶりだな」
呟き、彼は両脇の建物に、四角く切り取られた空に在る、時計塔を懐かしそうに見上げた。
何とはなしに愛用の古いギターへと手を遣り、そしてまた、下げる。
彼の顔には仮面。頭には、ターバンの様に巻かれた薄青の頭巾。
「……?」
声が聞こえた気がした。複数。
若い男が数人と、子供…少年だろうか?が一人。
男は、立ち止まり声のした方を向く。
彼の耳が示すとおりの、言い争う集団が、そこに居た。
屈強…とはいかないものの、それなりに経験を積んでいるらしい冒険者が数人と一人の少年。
「んな端金で、そんな危険な頼みなんて聞けるかよ」
そのうちの一人…珍しくも、前をきっちりと止めたシャツを着た細身のブラックスミスが、呆れた風に言った。
「何だよ、このケチ!! 俺の小遣い全部なんだぞっ!!」
「ケチも糞もねぇよ、ガキンチョめっ。いいか…?100zじゃ今時、肉も満足に買えねえ。
物事には、相場ってもんがあるんだよ。俺だって、よーーーーーっくそのへんは勉強したもんだ」
「うるさいやいっ!! 偉そうに言うなこのオッサン!!」
ぴしり、と鍛冶師の額に判りやすい青筋が浮かぶのを男は見ていた。
「あらあらまあまあ…オッサンだってさぁ。まぁ、あんた確かに悪人顔だしねぇ。
それにしても、子供に対してその言い方はないんじゃない?」
PTの中の一人、妙な口調の男ハンターが言う。
頭には、花の髪飾りを一本、咲かせていたりもする。
「うるせえ、このカマ野朗!!俺の後ろに憑いてくるなっ!!
というか、そこなガキンチョ!! 誰がオッサンだっ、ホルグレンばりに修正しちゃる!!」
不穏当な事を言いつつ、襟元をつかもうとする、鍛冶師。
しかし、ばっ、と真横に跳んで伸びてきた手をひらりと避ける。
…中々の、俊敏さである。
「俺の犬探してくれない奴なんかの言うことなんてきくかーっ!!」
大声で叫ぶや否や、身を翻し、走り出した。
「あ、コラァ手前ぇっ待てっ!!」
鍛冶師も、それを追いかけ…
「待ってなんかやるかよーっ!!」
少年は後ろを振り向き、あかんべーをしつつ、走るが…
「こっちまで来てみやが…うおわぁぁっ!?ど、どけーーーーーっ!!」
目の前に、高速で迫る…というよりも直線上にいた男に気づかなかった。
軌道修正すべく、慌てて無理やり体を捩ろうとする。
「……」
一方の男は無言でひょい、と後ろに一歩下がった。
その唐突な動きに少年は、一瞬思考が空になる。
少年は、全力疾走していた。これは前提だ。
続いて、全く注意が散逸した状況に遭遇した。
そして、この三段論法が示す結論は。
「のうっ!?」
一声。地面に出ていた出っ張りにつま先を引っ掛け、どべしゃっ、と躓く。
勢いあまって、ゴロゴロと転がり…尻を上に向け、ひっくりかえった状態でようやく停止。
そのまま全く動かなくなった所を見ると…どうやら気絶しているらしい。
「ったく…てこずらせやがって…観念しやがれ!!」
後ろの襟を掴み、猫を持ち上げる様にして少年を引きずり上げる。
「ああん…それじゃ、悪者みたいじゃない。もうちょっと、優しく言ったらどう?
なんていうかしらん…そう、囁くみたいに」
「喧しい!! 鳥肌立つから擦り寄るなぁぁぁぁっ!!」
「あら、つれないわねぇ…この、い・け・ずっ♪」
つん、と男ハンターが鍛冶師の首筋を指でつつく。
ぞわ、とその部分を起点として一斉に鳥肌が浮かび上がった。
「止めろ貴様物欲しそうな目で俺を見るなそれ以上続けると埋めるぞごるぁ!!」
「産める…? そんな…受けなら受けと早く言えば…愛ってすばらしいわぁっ」
「黙れぇっ!!」
絶叫と同時に放たれる拳は、がこんと顎を捕らえ、男性から両性?へと進化していたハンターをものの見事に吹き飛ばした。
くるくると錐揉みしながら宙を舞い、重力に従い落下。ずがん、と敷石に打ち付けられた頭が小気味良い音を立てる。
「痛いわねぇっ、何するのよっ!!」
しかし両性類はへこたれない。がばっ、と立ち上がると何事もなかったかのように鍛冶師に怒鳴り返す。
目を回した少年を片手にぶら下げたまま、ぎゃあぎゃあと言い合う二人。
後ろでは…もう一人の冒険者…女性の聖職者である…が、諦めたような表情でハンターにヒールを掛ける。
その行動一つとってみても、彼女がこの二人に関わらない方がいい人間だと理解できる。
「…あー、お二人さん?」
ややあって、プリーストに心中で同情しつつ男が二人に声をかける。
「何だっ!?」「あら、なぁに?」
「いや、単純なことだが…少し、落ち着いたらどうだ?」
男の言葉に、その二人は、お互いの顔を見合わせ…
それから、仮面の男に視線を遣り、漸く口を閉じた。
「…すまん。ははは…俺、今年で22にもなるのにな」
鍛冶師は、ようやく正気にもどったのか間が悪そうな様子で言い、
プリーストも何とも申し訳なさそうに頭を下げていた。
「それはいいんだが…少しいいか?」
「?」
不思議そうな顔をし、小首までかしげて両性類が男の方を見つめる。
「う…いや、その子供の事だが…何かしたのか?」
その視線に、思わず半歩後ずさりつつ、尋ねた。
「ああ、こいつ?」
ひょい、と片腕に提げた少年を示してみせる。
男は、頷いてそれに応える。
「そこに居たんなら見てたろう?いきなり…」
途中で言葉を切り、提げた方の腕を軽く揺らしてみせる。
「こいつが、知らない間に棄てられた犬を探してくれってせがんできてなぁ…100Zで」
けどよ、大体、俺みたいな貧乏ブラスミが一月どれくらい食費削ってるのか判ってるのかよ…とか
全然レアは出ないし、扱ってた商品が急に暴落するし、週に一回はテロに巻き込まれるし、毎日昼飯抜いてるんだぞ…などと、
悲しい独り言が、鍛冶師の口からはブツブツと漏れている。
「なるほど…」
一方の男は、悲しい呟きに気づかないふりをして頷く。
賢明な判断であった。
「馬鹿ねぇ。日々、理不尽な不幸と戦うのがあなたのライフワークじゃない」
「そんな腐った人生死んでもいやじゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
鍛冶師が喚く。プリーストが、重い溜息を吐いていた。
と…吊り下げられていた少年が、もぞ、と体を微かによじる。
う…ん、と微かな声。どうやら気がついたらしい。
…しかし。
「なーーーーっ!! 離せ離せ離せーーーーーっ!! この幼児(放送コード)!! ショ○×▼野朗ーーー!!」
気がつくか早いか。少年は正しく、野良猫の如くに暴言を吐きながら暴れまわる。
最も…吊るされた状態である。手足をばたばたと振り回し、身体をよじったところで、
右へ左へ、ぶらぶらと親猫にくわえられた子猫の様にゆれるだけであるが。
「まぁ…おマセさんね」
「お前な…」
頬に手を当て、艶めいた様子で感想を述べるOh-ハンタに、鍛冶師は呆れたように呟く。
「変な仮面のオジサン!! 仮面被ってるなら見てないで助けてよっ!!」
少年は、矛先を男に向け、叫んだ。
「…そうなのか?」
「そういうものだよっ!!1+1=2と同じくらい明らかだっ!!
っていうか、今すぐ助けろーーーーーーっ!!」
「ふむ…」
顎に手を当て、一瞬考え込むような様子を見せる。
「何考えてるのさうすのろーっ!! はやくしてよっ!!」
そして、彼は結論を出した。
「鍛冶師さん、どうぞ。存分に灸を据えてやってください」
少年の顔の中で、顎がすとんと垂直落下した。
「OK。任せとけ」
片腕に少年をぶら下げたまま、鍛冶師と連れの二人は歩き始め、逆の方向へと進んでいく。
『馬鹿やろーーー!!裏切り者ーーー!!それでも仮面つけてるのかーっ!!』などと叫び声が背後から聞こえてくるが、それには構わない。
一度、軽く息を吐くと彼は時計塔へ再び歩き始める。
塔の向こうの爽やかな空には、綿雲が静かに流れていた。
- 105 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/20(水) 12:26 ID:oYZh0K06
- まったりとした流れですなぁ…
アラームたんも、春の陽気にひなたぼっこでもしてるのだろな。
- 106 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/22(金) 12:19 ID:tFls6RS.
- 保守
- 107 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/24(日) 04:22 ID:QN7BXGlA
- ヾ(・з・)ノ"
- 108 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/24(日) 22:58 ID:pEy9g.to
- ttp://happy-honey.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/joyful/img/354.jpg
- 109 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/24(日) 23:05 ID:yqyGsDSo
- >108
>2
名前消しときなさい。ツール利用バレルヨ
- 110 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/04/25(月) 15:40 ID:GTS7gVVg
- 流れをぶった切って藻前様方に、SoundHorizon著「Elysion」というCDを薦めて見るテスト。
楽園つながりでGOです。
尚…聞けばもれなく、鬱になれる効能があります。
ですが、いい曲です。オススメ。
後、某スレでのクロスオーバー?に、出演許可賜りたく。
物が物故、一応許可は必要かと思った所存。
スレの所在地は下に。
バトルROワイアル:ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1103880460/
- 111 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/06/08(水) 15:14:31 ID:RXWH5GKE
- 8('A`)8
- 112 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/07/29(金) 13:12:31 ID:BvzXIe66
- 配置変更でアチャスケさんが戻って来てくれてたらなー…
- 113 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/07/31(日) 05:24:18 ID:yK5XcVgQ
- アラームたんは今でも待ち続けてるんだ。俺達も待とうじゃないか
- 114 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/08/06(土) 20:05:58 ID:BeKLOuc6
- アラームタンまだあったんだね
保存してある絵でちょっと復習してくる!
- 115 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/04(日) 04:01:29 ID:1wznz8/6
- 壁lω・)
壁l 某ロワスレひと段落したからこっちに戻ってきたよー
妙に過疎ってるけどただいま、時計塔。
- 116 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/04(日) 12:55:08 ID:11dme81g
- 日本独自仕様がはっちゃけてるのはわかったが、
「アラームたん12歳」ってmobを実装するのはどうかと思った。
ってここに情報何か乗ってないかと思ったんだが過疎ってる?
SSも撮った。myWiz娘のFWに焼かれて悶えるところだが。
ついでにどうやら経験値も普通のアラームより多めっぽ。
- 117 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/04(日) 16:19:30 ID:OntzUplE
- >116
>2
いい加減既出過ぎ。ツール利用告白乙
- 118 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/06(火) 12:49:46 ID:7I1BGpfM
- >>115
(*´∀`)おかえり
>>117
きっと釣られてる
- 119 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/06(火) 13:43:23 ID:tpdNhzAs
- 萌えの心を持つ者が不正をしちゃいかんなぁ( ´Д`)y━~
- 120 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/08(木) 14:51:35 ID:Xz6VTZIc
- 帰還記念にアラームたんと時計塔で握手してきた。
何故か、たたき出されましたがorz
矢張り、ログ娘だとイロイロと相性が悪いのだろうか…?
教えて時計塔の兄弟達。
- 121 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/19(月) 00:52:46 ID:dL4OKiuA
- 時計塔スレが静かで寂しい俺ガイル。
- 122 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/27(火) 15:31:04 ID:9GJW81tA
- 久しぶりだ…。
LiveROからこんなとこにきていたのか。
1年以上も見ていなかったからどうなったのかと思っていたが、ロワとかを見る限りまだ好きな人はいるんだなあ。
また投下するかもしれないから、そのときは生暖かく見守ってくれい。
じゃあ、またくる|ω・´)
- 123 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/28(水) 16:59:15 ID:XHXxQuNI
- バドスケさん・・・貴方何時の間に別の世界に行ったんですか・・・
ttp://f26.aaa.livedoor.jp/~alarmmoe/cgi-bin/source/up0149.jpg
アラームたんが悲しみますよ
- 124 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/28(水) 16:59:26 ID:XHXxQuNI
- バドスケさん・・・貴方何時の間に別の世界に行ったんですか・・・
ttp://f26.aaa.livedoor.jp/~alarmmoe/cgi-bin/source/up0149.jpg
アラームたんが悲しみますよ
- 125 名前:>123 投稿日:2005/09/28(水) 17:04:05 ID:XHXxQuNI
- エラー出たから書き込まれてないと思ったのに…すいませんorz
- 126 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/28(水) 22:04:08 ID:RX3NtoSI
- 小説投下ってそのまま文面のっけても大丈夫ですかね?|ω・`)
- 127 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/28(水) 22:04:47 ID:RX3NtoSI
- ageてしまった…_noゴメンナサイ
- 128 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/28(水) 22:27:20 ID:B9gzgPcA
- mabinogiコター
- 129 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/29(木) 10:08:34 ID:FcA1itgA
- 返事がないのでのっけるだけのっけてみようと思います|ω・`)
再活性を願って。
- 130 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/29(木) 10:10:03 ID:FcA1itgA
- 首都プロンテラのお膝元、港町イズルード。この街からしかいけないイズルードダンジョンは中級者が鍛錬するにはうってつけの場所である。そうガイドブックに書いてあった。なるほど、なり立てらしき2次職がカプラに群がっている。大体こういうガイドブックにはその地域のマイナス要素なんてのは載せない。当たり前といえば当たり前だし有名でもあるから言わなくてもいいことなのだが、イズルードダンジョンは『機械』の巣窟でもあった。それに実際カリカリきてる人間も少なくない。でも、ガイドブックに書いてあることは間違ってはいないからこの少女のような冒険者は後を絶つことはない。
赤いコートに扇情的な網タイツ。栗色の髪の毛をノービスカット(美容院のお姉さんはそう言って、よく似合うと褒めてくれた)にした少女にはその格好は少しアンバランスで、他人が見るとどうもその童顔では一部のロリータフェチの人間を興奮させてしまうだけにしか思えないのだが、少女はこれが大人の悪党の格好だと信じきっているようだった。
何故少女が「大人の悪党」なんかを意識しているのかという明確な理由はない。しいて言えば「それがカッコイイ」と思ったからにすぎないだろう。そばにあったベンチに座り、そこそこ愛用して柄が少し黒ずんだダマスカスを手の中でくるくる回しながら少女はまたガイドブックに視線を落とした。その仕草は子猫が丸い石ころで遊んでいる姿を彷彿とさせたが、それを指摘すれば彼女は機嫌を傾けてしまうに違いない。
ガイドブックには海の幸の素晴らしさとリーズナブルさが前面に押し出されていて、少女の知りたかった冒険者用の安くてツケのきく宿泊情報などが少しばかり欠けていた。本来ならここでギルドの人間を頼ったり、カプラからの支給品で友達にWISコールなりをすればいいのだろうが、少女にはそういう人物に心当たりはなかった。唯一の家族である兄は行方不明だし、大体その兄を探すために旅をしているのだ。ならば、少しばかり財布に相談して旅行者用の宿に泊まってしまえばいいとも考えたが…
「どうしよう、駄菓子も買えない。」
そう声に出しても何も変わらないのだが、そう声に出したいほど彼女の懐は寒かった。ガイドブックだって拾ったものである。裏表紙に定価1500zと表記されている、このガイドブックを読み捨てられるほど余裕のある人間が自分と同じ空間にいると思うと泣きたくなった。
「こんなことなら転職のときあんなにお金使うんじゃなかった…。」
今更嘆いても詮無いことなのだが、コモドの少し背伸びしたホテルでこれからの2次職生活に胸をときめかせていた自分が憎くなってくる。今の自分は鏡を見ないほうがいいな、と少女は思った。
- 131 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/29(木) 10:10:38 ID:FcA1itgA
- 少女がひもじさに打ちひしがれ、空腹をもてあましているとどこからかギターの音色が響いてきた。それは鼓膜と同時にすきっ腹にも響くために彼女の機嫌はすっかり傾いてしまった。顔を上げると小さな人だかりができており、その中心に逆恨みではあるが、不機嫌の原因があった。
まず印象に残るのは仮面だろう。白くいかついそれは何かのモンスターをかたどったものだと露店の売り文句にあった。頭を覆うバンダナにやたらと細身のシルエット。雰囲気の割りに若い声。そして違和感。だが、少女の目を引いたのはそのどれでもなく、おひねりとしてギターケースの中に放り込まれたzeny紙幣だった。
「(いいなあ、あれだけあったらしばらく食いつなげる…。)」
気づくのが遅かったかもしれない、そういえば彼女はローグなのだ。成り立てとはいえ。ということは、得意とするのは窃盗だとか恐喝だとかいう物騒な手段だろう。力なさそうな詩人をひねるだけの仕事効率のよさは今の彼女にとってはまさにうってつけの方法に思えた。
盗ろう。少女は奥歯を強く噛み締めて決心した。だってそうしなければ自分はこのまま飢えて死んでしまうかもしれないし、大体悪党になったのだからそれくらいできなくてどうする。よくよく考えればもっとマシなやり方がいくらでもあったのかもしれない。だがまあ、人が堕落する順路としては順当。後は詩人が歌い終わり、一人になるのを待つ。そうすれば少女には荒んだ悪党としての未来と今夜の暖かく幸せな寝床が待っているのだから。
少女は待った。その間詩人が歌っている詩を聴いていた。お金は必ず払うわけじゃなさそうだったからだ。題目は御伽噺だった。その楽園があれば自分もこんなこと考えなくてすむのかとぼんやり思ったが、現実逃避よりも今の飢えを収めなければならない。
やがて詩人の詩は終わり、人々は自分たちのあるべき場所へと帰り始める。辺りは夕闇に包まれ、人影も少なくなってきた。少女としては仕事をやるためのお膳立てが勝手に整っていく気がして、逆に不安になってしまうというのが正直なところだった。彼女の、やはり子猫を思わせる瞳がくるくると周囲を見回す。自分も素敵なホテルに帰りたかったがそんなものは用意されていないので、街灯の下にぽつんと立っている詩人にこっそりと歩み寄る他なかった。
ハイディングの技術があるので、気づかれはしない。はずだった。後ろまで回りこみ、飛び掛ろうとかまえたところで彼はゆっくりと彼女のほうに振り向いた。仮面の奥で光が強く揺らめいている。
「何か、用かい?」
「…いえ。」
まさか初っ端から躓くとは思っていなかった少女はどうにも返答できずに固まった。詩人は微動だにせずに少女に質問を続ける。
「じゃあ、強盗? 刃物がちらついてる。」
「…そんなとこ。」
「そうか、悪いが他を当たってくれないか。」
ここではいそうですかと退けるわけもない。考えていた悪党らしいセリフを思い出しながらすごむ。
「こっちこそ悪いけど、持ってるお金全部出して欲しいのよ。お腹空いちゃってね。」
「そうか、ピザくらいならおごるけど。」
- 132 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/29(木) 10:11:12 ID:FcA1itgA
- 何故こんなことになったのだろう。わからないが今、少女の口内はピザに占領されている。存分に味わったそれを嚥下し、すぐさま次の一切れをとっては口に運ぶ。炭火にとろかされたチーズにふんわり包まれたピザソースと、ジリジリ音を立てるサラミにまぶされたバジルの香りがこんなにも熱く、食欲を刺激するのは彼女には初めての経験だった。
隣で半ばあきれたように(表情はわからないがきっとそうだ)それを眺めている詩人におごってもらったものだ。
「よく食べるな、見ていて満腹になってきた。」
「ここんとこ、リンゴくらいしか、食ってなかった、のよね。」
「食べてから話すといい。」
少女は1枚まるまる食べ終えてからこいつを襲うことにしてよかった、と心から思った。そして礼を言うのを忘れていることを水を飲みながら思い出した。
「ありがと、助かったよ。」
「礼なんていらない。どうせ俺には使う当てのない金だから。」
「それでも礼は言わないと。兄貴に昔からうるさく言われててね。言わないと落ち着かない。」
「いいことだな。」
詩人の仮面からは表情が読めないが、目の奥にある光が揺れたりするのでなんとなく感情はわかる。
「それにしても、何であたしみたいのにピザなんかおごってくれたんだい? 強盗に一目ぼれ?」
「俺にロリータフェチはない。…妹…に似ていたんだ。」
「妹さんねえ。あたしそこまで幼いわけじゃあないんだけど。」
「まだ15、6ってとこだろう。十分に子供じゃあないか。」
「正確には17歳と3ヶ月よ。」
「変わらないさ。細かく年齢を気にするのは意識が若いってことだ。」
「アンタそういうとこあたしの兄貴にそっくりだよ。」
一通り話してから、詩人はなんと少女に宿泊施設情報と宿代までくれた。この骸骨のような詩人が悪運の神様か何かに見えてくる。少女が最初に感じた違和感などはすっかり過去のものだった。
彼女は絶対に宿代とこの借りは必ず返す、と悪党らしいセリフを言いながら走り去っていった。後姿に完全返済までは付き合おう、と約束した。ホテルの部屋はまだあるだろう。詩人はふと時計塔の方角を見た。アラームは、あいつらは、俺の家族たちは元気だろうかと。
「(楽園を創る…そのためにはきっとあいつらだけじゃだめだ。だから力を借りないと。誰かの、力を。)」
詩人の旅の中でこの物語に共感を示す者は少なからず、いた。だが足りない。一度諦めた物をもう一度最初から作り直すには不充分すぎると彼にはわかっていた。
「(アラームに嘘をついてまで出てきたというのに、これか。)」
アラームもいつか詩人の言葉が嘘だったと悟るときを迎えるだろう、彼はそれを何よりも怖がっていた。恐れていた、などと言うと何か違う。怖がっていたのだ。母親に嫌われたくない子供のように、ただ震えているだけの犬のように、彼はアラームに否定されることを忌避していた。
だからこそ彼の心はその長い旅の途中決して折れる事がなかったと言える。アラームがまだ自分を信じてくれているのだと、信じ込むことによって彼の心は守られていたのだから。
彼は、強くて弱い愚者だった。ただここでわかってほしいのは彼が決して気取っているのではなく、彼自身気づかないうちにそうなっていたということくらいだ。
- 133 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/29(木) 10:11:50 ID:FcA1itgA
- イズルードに滞在している間、少女はイズルードダンジョンに通い詩人に宿代を返し続けた。しかし、少女の宿代・移動費はかさむわ、ひよっこローグでは大して稼げないわとほんの少しずつしか返していくことはできない。でも、それでよかった。友人のいない少女はこの奇妙な詩人と話す時間が嫌いじゃなかったし、詩人もどこか懐かしく居心地のいい時間を楽しんでいた。彼女には詩人が話す昔話の妹が、少しうらやましかった。
さて借りは少しずつ返されていくが、返し終わることは詩人との別離を意味する。少女には詩人の詩や話がもはやこの上なく大切なものになっていた。いっそ旅について行こうか。街を渡り歩くだけだろうし、きっと足手まといにはならないはずだとまで彼女は考えはじめていたくらいだ。
2週間ほど経ち、そろそろ全額返済となるはずだった。詩人はいつもの場所でいつもどおり詩を歌っていた。本当にいつもどおりだったから気づかなかった彼に責任はない。誰も予想なんてしなかったし、できなかった。だからこれは仕方ないこのなのだ。
イズルードダンジョンで大規模な枝テロが発生し、進入禁止の警告が出された。もちろん、それまで中にいた冒険者の安否はわからない。ただ、あのモンスターの数で生きていられる人間がいると想像するのは難しいだろう。それを彼が知ったのは発生してから1時間ほど経ってからだった。
ここから先のことはあまり語るべきでもないかもしれない。彼の性格を知っている人間ならば皆容易に想像がつくからだ。彼は召喚されたパニックで荒ぶり、津波のように押し寄せるモンスターたちの頭上を飛び越えイズルードダンジョンを駆け巡った。彼が少女を発見したとき少女は奇跡的に生きていた。健康的に細かった腕が千切れかけ、不似合いに赤かったコートは黒く汚れていたが、少女は紛れもなく息をしていた。
詩人が彼女に駆け寄ると、彼女は昼寝をしていた猫がこちらを確認するように少しだけ目を開けた。摩擦の少ない、震える手で少女にポーションをかける。これがピクニック程度の狩りであったなら、なんだか白いと卑猥だと言って笑っただろう。
「ああ、アンタ、やっぱり、きてたのかい。」
「喋るんじゃあない。今喋ったら痛いぞ。」
「次でたぶん、借金は全部、返せるだろ? もうチョイ、待って。…だけどさあ。まだ、なんだよ。」
うつろな表情のまま囁く。傷は治ってきているのに、まるで肺病病みのように咳をする。
「借りがさ、まだなんだあ。」
「喋るんじゃあないって言ってるだろう。」
「だから、手伝おうと思ってさ。か、荷物もちくらいなら、できるだろお。」
「後で聞くさ、だから。」
傷がある程度塞がり、負ぶっても腕が千切れてしまわなくなったので詩人は少女を背負ってダンジョンを出た。入り口周辺のモンスターはほとんど鎮圧されていたから外に出るのには困らなかった。なんとか救急施設(といっても数人のプリーストがいる診療所だ)に駆け込んで当直していた巻き毛のプリーストに必死で頼み込み、なんとか緊急治療にこぎつけた。治療中も少女はうわごとをやめなかったし、やめさせる術もしらなかったから詩人はその言葉をずっと聴いていることにした。彼は少女が目を覚ませばきっとその内容に赤面するだろうことはもう容易に想像できるようになっている。そうだ、コイツを時計塔に連れて行こう。きっと俺の家族はお前を受け入れてくれる。だから、目を覚ましてくれないか。そう言って祈りを捧げる。
彼は謝っていた。彼が悪いわけじゃあないというのは誰だってわかる。しかし、彼は謝っていた。流れることのない涙を心の中で流して、許しを乞うていた。こんな想像は陳腐だと思われるかも知れないが、彼は少女とアラームを重ねていたのだろう。彼女を救えなかったら。彼女を救えなかったら彼は彼女に恨まれてしまう、憎まれてしまう、拒絶されてしまう。
これを自分勝手な感情と言うだろうか。少なくとも彼は彼女の身を案じていたわけだし、彼女にとっては彼が救い主にあたるのだから、そこに自分勝手だとかなんだとか言う余地は存在しない。ただ純然たる事実が存在するのみだ。彼は彼女を助けたかった、生きていてほしかった。それだけなのだ。
だが、彼は自分を利己的で弱い存在だと思っていた。彼は愚者だった。
- 134 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/29(木) 10:12:30 ID:FcA1itgA
- 翌日少女は息を吹き返した。やはりあの高価なポーションは初期治療としては最適だったようで、一週間ほど入院すれば完治するだろう、大した体力だと担当した巻き毛のプリーストは口に手を当てて笑った。目覚めた少女に会いに行くと体中包帯だらけでマミーを思わせる風貌になっていたが、昼食だったと思われるどんぶりのようなスープ皿は綺麗に空っぽだった。ゆっくりベッドに近づくと、彼女は素早くこちらを振り向いた。
「ネコがまわりを警戒してるみたいだ。」
「ネコに喩えられるのはあんまし好きじゃない。」
少女は冗談っぽく眉間にしわを寄せて笑った。その仕草は彼女のためにあるようだった。少女は指先でスプーンをくるくる回していた。二つの視線は、自然とスプーンの銀色に吸い寄せられていた。
「よく似ていると思うけど。」
「うん、だから嫌なの。兄貴にもよく言われたし。」
「死にかけたというのに元気だな。」
「いやあ、五体満足に助かるとは思ってなかったけどね。死ぬとも、まあ思ってなかったさ。」
「それは…甘い考えだな。」
「いやね、アンタが助けてくれるんじゃないかってさ。」
「…信じるものを間違っている。」
「そう思うよ、でもなんでだろうねえ、なんだかアンタの妹さんの気持ちがわかったんだ。」
「…。」
「あたしと同じさ。きっと、約束信じてるよ。」
「(約束、信じてるよ。)」
少女が詩人を見上げると、詩人もじっと少女を見ていた。
彼女の目には何故か、彼が親に抱きしめられた子供のように見えた。しかられると思ったけど許されて、泣き止んだ子供に。彼は少し呆然としてから、少し笑った。
「そうか。」
「また少し返済遅れちまうけどさ、許しておくれよ。」
「ああ、構わない。」
「借りもさ、返すからさ。」
「…もう返してもらったさ。」
「?」
「首をかしげると余計ネコに見えるぞ。」
やがて巻き毛のプリーストがやたら明るい声音で面会時間の終了を告げた。詩人はじゃあな、とだけ言って後ろを向いた。少女にはその背中が今までより少し大きく見えた気がしたのだが、何故かはそこにいる誰もが知らなかった。
また、彼女にはそれが彼なりの別れの挨拶であることはわかっていなかったが、部屋を出る瞬間はぼんやり寂しかった。そういうものなのだ。別れというのは。
次の日から詩人は少女に会いには来なくなった。三日目に巻き毛のプリーストに問いただしてみると、
「あの人なら入院費だとか全部置いていったわよお。『仕事を思い出した。ありがとう、全部とっておけ』ですって、いいお兄さんね。」
「…ええ、そういうとこもそっくりです。」
詩人は一応約束は守ったのだ。彼の行動を少女は勝手なことを、と判断したようだ。だが、旅支度をすませた少女は増えてしまった旅の目的をわずらわしくは思っていなかった。また彼に会いたい。彼の家族の話を聴きたい。彼の家族に会いたい。
そして、助けてくれてありがとうともう一度言わなくてはならない。
旅立つ朝、巻き毛のプリーストに礼を言ってから、冷たい空気を吸って彼女は歩き出した。
「まずは時計塔行くかっ。」
彼女はそれ以来、奇妙な詩人には再会していない。
- 135 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/29(木) 10:18:36 ID:FcA1itgA
- という>>130-134でございました。
掘り下げが甘いとこやら伏線回収してないんじゃ?なとこはスルーしてください。
感想がいただけると嬉しいです。
ではまた。
- 136 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/09/30(金) 13:58:08 ID:R9vvfQYM
- 焦燥のバドスケさん燃え。ちょっと口調が違和感あるけどかっこよかった。
しかしながら改行&句読点の少なさと、会話文最後の「。」が非常に読みづらかったデス。とくに改行は滅入る。
- 137 名前:130-134 投稿日:2005/09/30(金) 23:52:52 ID:qx/tgpAw
- >136感想ありがとうございます。ああ人がいてよかった…。
ご指摘いただいた
・改行、句読点の少なさ
・会話文の「。」
・バドスケのキャラ
は一応意図的に書いたものなのです。
以前LiveROで書いたときに指摘を受けて改行を減らし、句読点はありすぎると会話で詰まっている演出が
狙いづらい(そもそもの表現力が足りないところが大きい)こともあって減らしているのです。
見返してみると分量が適切とは言えず、改善の余地がありますね。
バドスケのキャラは『静かにジョークを言うような暗めの青年』を意識して書いてみました。
なんだか最初イメージしていたより熱いお兄さんになっているようで、なんだか軽くショック。
久しぶりに書いて、久しぶりに読んでもらえて、久しぶりにダメだしされて、なんだか嬉しいです。
また書きに来ますのでよろしくお願いしますね。
- 138 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/10/01(土) 00:14:44 ID:s8HT8vlk
- なるほどーそのような思惑があったのか>改行とか
改行の回数は普通の紙媒体の小説となら全然問題ないと思ったのですが、
ブラウザで見るっていう点で読みづらさからマイナスだっただけです。
あと今読み返してみれば、そういえば句読点の少なさが気になったのは冒頭のみでした。
(そしてこのスレで「キャラが違う」なんて感想は本来ありえないことも思い出した…ごめん)
個人的に孤独に一人旅を続ける(ハメになる)バドスケさんはかなりツボでした。
久々に時計塔物語が読めて嬉しかった。またお願いします。
- 139 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/10/01(土) 00:36:12 ID:t2hnsi7U
- 再度レスありがとう。
確かに、ブラウザで見ると紙に書くとでは全く見え方が違いますね。やはり意識しなければならない部分か。
バドスケのキャラは…以前自分で書いたのを見返して、今回のとあまりにキャラが違って愕然としたのです。
「〜ちまう」とか「〜じゃねえだろう」とか言わないと違和感が拭えませんね。熱さを、もっと熱さを。
熱さ欲しさに今度は荒武モノでも書いてみます。ではまた。
- 140 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/10/01(土) 00:57:32 ID:TaX1wwLA
- おお、萌え板にアラームたんスレあったのか
要チェックや
- 141 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/10/03(月) 19:23:17 ID:2RHqzCj6
- 他所にアラームたんスレってあるのか?
- 142 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/10/03(月) 23:48:31 ID:Iy7Tum0o
- >>141
ライブロの初代スレから3スレ目まで見てROから離脱
半年後ふとROを思い出し、ここに来て見つける
キタ(゚∀゚)コレ!!!!
だからいつの間にやら萌え板に来てたのかと思ってしまったわけだな
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