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【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】

[264:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/03/27(月) 01:50:34 ID:d5QARTFs)]
荒武やライド姉さんなど、これからも設定等は勉強させてもらいますが
それでもご期待に沿えないような形でお目汚しでしたら申し訳ありません。
たまに上げさせてもらいつつ、少しずつでもディティールを調整していければ幸いです。

で、荒武隊長のお話。

凛としたMA格納庫の空気に、微かに少女の声と整備の音が響いていた。
冒険者よってまた壊されたMAをアラームが修復していた。

「・・・・いしょ・・・・いしょ、これで・・・終わりっと」
アラームは自分の体ほどもある重厚な整備用ハッチを力いっぱい閉じる。
勢い良く閉まる音すると、ハッチのダイアル型のドアノブが自動的に閉じられた。
軽い電子音が響くと、動作音とともにボディの切れ目から明かりが漏れる。
1〜2分の動作音が続いた後、明かりが消え、再び軽い電子音が鳴った。
―メンテナンスモード終了の合図だ。
それは自己診断プログラムを通し、メンテナンスが終了したことを意味した。

「やたっ、1発終了〜っ♪」
自分の機体、自分の作業とはいえ、アラームは整備作業が得意ではない。
普段は数回繰り返すメンテナンスの作業を1回で終わることなんて稀、もしかすると初めてかもしれなかった。

「・・・おー」
いつまでも終わらない作業を見かね、途中から手伝っていた荒武が拍手する。
作業用の軍手のままだったので、拍手は乾いた音が小さく響いただけが、誇らしげに胸をはるアラームに祝福の花を添えた。

「えへへ、手伝ってくれてありがとうー!」
アラームが感謝をあらわす。
彼女のうれしいそうな言葉と満面の微笑みには相応以上の対価があった。

「いや、お前もよく頑張ったな」
荒武はアラームの作業のたとだとしい手つきを覚えている
なるべく自分の手でやったという実感がもてるよう、手伝いも最小減にし、
あわあわと迷いながらも、それでも真剣に取り組む眼差しを覚えている。
年相応の素直さと、見た目以上の直向さを垣間見た。
荒武はそれを評価し、うれしそうにするアラームの頭を力いっぱいなでた。

「えへへ、痛いようw」
いやいやと軽く頭を左右に振りって嫌がりながらもアラームは素直に喜んでいた。

「さて、お前はもう寝る時間だな、部屋へもどってキチンと休息をとるように」
「はいっ!」
アラームは大きな声で返事をする。
正確には就寝時間に軽く差し掛かっており、整備の途中から、うとうとしていた。
返事の後、再び眠気に襲われて目をこすり、あくびをひとつとした。
そして、心配そうに見ていた荒武の表情を捉えるとアラームはえへへと笑う。

「じゃあ、おやすみなさいっ」
荒武に挨拶をすると、小走りで出口に向かおうとした、そのときだった。

・・・・・・・コロコロコロ・・・・。
アラームは軽くつま先になにかの感触を感じると、なにかが床を転がる音を聞いた。
「うっ!」
歩いたまま体がその感触に反応して膠着すると、目線をしたへと向けた。
ちょうど手のひらぐらいのギアが落ちていた。

荒武が近寄り、落ちているギアを拾い上げた。
「・・・これは」
荒武はアラームの作業を全て見守っていた。
ときに手助けをしながらも、全て不備のないよう、しっかりと監視をしていた。

(だから、俺が見た限りの整備に抜かりはないはず・・・)

荒武はそう思いながらギアの形状、ボディに刻まれたパーツのナンバリングを確認した。部品にもある程度の汎用性を持たせてあるとはいえ、整備し慣れた機体と、隊長としての知識がある、大体ではあるが、それが使われているだろう箇所は判る。
機構の外側から考えていっても、一番外側の場所を考えても、それはMAのかなり内部に
あった。
途中から手助けしたこともあり、アラームが一人で整備した場所―もっと深層での部品ということも考えられる。

「・・・ちっ」
自己診断プログラムはすでに終了し、正常終了が認められていた。
だが、MAが戦闘機械ゆえに万が一の手抜かりは深刻な事態へ直結する。
それもアラームの専用機体だ。
軍人特有の危機管理へ意識もあり、荒武にはそれを捨て置くことができなかった。

(確認するしかないか・・・)
「・・・・どうしよう・・・・」
荒武がふと気付いたとき、アラームがズボンのすそを引っ張りながら横へ立っていた。
潤めがちの目を向け、すまなそうな顔で荒武の顔を見ていた。
荒武は自分がいらぬ不安をいつのまにか与えてしまったことを悟ると、アラームへと声をかける。

「大丈夫、俺が見ていたんだ。お前の整備に抜かりなんてない」
「絶対?」
「ああ、絶対だ。誓ってもいい」
「絶対、絶対? 私のじゃないのかな???」
「ああ、きっとそうだ。誰かが落としたままにしたんだ。今度、ボロ出したやつがいたらとっちめてやる」

アラームはさらに言葉を待つように荒武を見続けていた。

(・・・こんなときアイツならなんと言うだろう。)

必死に考えるが、持ち前の不器用さから適切なフォローが浮かばなかった。
荒武は不安そうな顔をするアラームの表情を拭い去れない自分を恥じた。

「・・・・・・すでに交代の時間だ、お前は寝ろ・・・・」
「でもぅ・・・・」アラームは今だ不安そうな表情で隊長を見上げていた。
荒武はその訴えかけるような目からいたたまれなくなり、目線を背けた。
「これは命令だ。・・・この調査結果は追って全体へ連絡する・・・・」
荒武は表情を読み取られないよう、そう嘯いた。

「・・・・はい・・・・」
立場を強いて言う荒武の言葉に、アラームもまた作ったような声で答えると、荒武に背を向けて格納庫を後にした。
力なくしめられた格納庫の扉の音がすると、荒武が力いっぱいこぶしを握り、自分の顔に打ちつけた。
どんなに痛みつけても他人の痛みには変えられないことはわかっていたが、どこまでの自分を赦せない気がして、せめて迷いだけでも払いたかった。

「・・・今は己がすべきことをし、これからの後悔につながらないようにするのみ・・・」
自分へ言い聞かせると、荒武はアラーム用のMAと対峙した。

しばらくの時間が過ぎた翌朝、アラームは引継ぎのため、再び格納庫を訪れていた。
目の下には多少の泣いた跡がついていた。

「・・・・おはようございます・・・」
「お、どうした、お嬢?今日は元気ねぇなぁー?」
なんのけなしにからかうような陽気な声が飛ぶ。アラームは作り笑顔をすると、元気だよ、と答えた。

「集合ーッ!」
申し送りの時間となり、怒号のような大声が格納庫に響き、隊員の全員がまるで一体の動物のように統率、整列された列をつくった。
「申し送りの前に全員に連絡があるっ!昨日ッ、格納庫にてパーツがひとつ発見されたっ!」
荒武は手にひとつのギアを高々と掲げ、大声で叫ぶ。

調査の結果ッ、これは予備パーツと判明するが、これは整備、管理への意識の乱れッ!
由々しき事態である!よって、連帯責任で現時刻から次任務時間終了まで、全員、おかわり禁止ッッ!!!!」
どよどよと動揺のざわめきが聞こえ、「返事はどうしたッ!」と荒武の怒号が走る。
引継ぎはそのままつつがなく終わり、終了後、荒武はアラームを呼び出した。

「―というわけで、これは、お前のパーツじゃなかった、余計な心配かけてすまん。」
荒武は腰をかがめ、アラームの目線まで自分の目線をおろすとそう言った。
「えへへへへへ」アラームが微笑む。
「えへへへへへ」目の前の荒武にアラームは力いっぱい抱きついた。
「えへへへへへ」顔をうずめるようにしてなお笑う。


「・・・・・・ありがとう。」


顔を埋め、表情を見せないようにしながら、アラームが言った。

「・・・・礼を言われるようなことはした覚えが無い」
どうしようもなく、自分でも抑えきれない安堵の声だった。
荒武は抱きついたアラームの頭を撫でた。

短いような長いような数分が過ぎ、アラームは勢いよく荒武からと離れる。
そして、背筋をのばし、かかとをそろえ、敬礼をした。

「いってきますっ!」

その顔は微笑みながら、その声は今日一番の元気な声で、アラームは出撃を伝えた。

「・・・おう」
一言だけ荒武が答える。
アラームはMAまで走ってゆくと、大きく隊長に手を振りに乗り込んだ。
乗り込む最後までアラームは荒武に手を振っていた。

荒武は出撃を見送ると、そっと手にしていたギア
――形状こそ昨日のそれと同じだが、それとは違うギアを――
予備パーツの棚へ投げ入れた。


「・・・嘘、ですよね?」
荒武の背後から、管理者の声がした。
荒武は振り返らずに答える。
「なんのことですか?」
「あはははー、嘘ついても駄目ですよ。心拍に動揺と、かるい発汗が見られます」
「―まったく身に覚えの無いことです。」

「・・・・・・・・・」
二人はそのまま押し黙った。


「・・・私は元錬金術師、いわば真理の追求者でした。
ですから、この世界にある、嘘偽りの類は好きではありません。――ですが」

「あなたのような優しい嘘ならば、個人としてはとても好きです―」

「なにを仰っているのか、皆目検討がつきませんが。」

「いえ、失礼しました、それだけ、伝えておきたくて・・・優しき者よ」
そう言い残し、気まぐれな来訪者は姿を消した。

時折、知り過ぎた大人は子供に欺瞞めいた嘘をつく。
あきらめた希望の種を渡し、そして先々で華咲くことを夢見て眠る。
そしてまた嘯きながら、その罪の償いに彼らの進む道を開く。

「―そして、その先が楽園であるように―」

荒武もまた戦っている。


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