掲示板に戻る 最初- 前5 次5 前1 次1 最新5

【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】

[301:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/08/05(土) 00:30:36 ID:NYSxw95o)]
お目汚す。


今日は週に一度の安息の日。
冒険者は姿を消し、時計塔の面々も思い思いの時間を過ごしています。

天窓から差し込む光が優しく、構造の偶然が優しい風を誘う秘密の場所。
そこは、あらーむ達のお気に入りの場所でした。

いつもの喧騒を離れた優しい時間がゆっくりと流れていました。
ライドワードは普段は読めない少し厚めの本を幾つか持ち込んで読書を、
ジョーカーは手持ち無沙汰にアラームの髪を梳かしては柔らかな感触を楽しみ、
アラームはお絵かきをしながら、たまに何かを思い出しては微笑んでいました。

小さなハミングの音が連なり、やさしげな旋律を奏でます。
聞き覚えのあるメロディに、ライドワードは本から目を離してその旋律を辿ります。
視線の先、歌うのはアラーム。
アラームはお絵かきをしながらいつのまにか無意識にそれを口ずさんでいたようです。
耳に残る懐かしいその曲はそう、かつてここを旅立っていった一人の男の曲でした。

―バドスケの一番のお気に入りだった曲です。

「・・・・・・。」
ライドワードはアラームから目をそらし、再び本に向いましたが集中できません。
その曲にわれ先に気付いてしまったせいか、悪戯にその曲に誘われるようです。

(・・・そういえば、あいつがいつも演奏してたっけ。・・・)

ライドワードは本を閉じると、中空に目を向け、懐かしい思い出を追います。
微笑みながら演奏する彼、そしてその傍らで楽しそうに歌うあらーむ。
彼が旅立ってからだいぶ時間が過ぎ、ほんの少しセピア色に色あせ始めた光景。

ライドワードは性格的にか静寂を好んでいました。
もちろん、楽しそうな彼らの光景もまた、大好きではありましたが。
あのときもまた、その近くで自分は読書を楽しんでいました。
本を読み疲れてはたまにその光景を見て微笑んでもいました。

もともと歌が好きなアラームでしたが、彼が旅立ってからほんの少しだけ、
本当に少しだけ・・・歌を忘れた頃がありました。

―それからだいぶ時間が経ちます。

今日は伴奏もなく、何の気なしにハミングで口ずさむ程度かもしれません。
だけど、口ずさむ曲は、それはあの頃、彼女が歌っていたように――。

今日は週に一度の安息の日。
静かな世界で、本当に静かに小さくその曲が流れていました。

それが当たり前だと思っていた、あらーむの天使のような歌声が聞こえるあの頃、
ライドワードはたまに本に集中しすぎたときだけ、

「ほんのちょっと、ちょおっとだけうるさいかなぁw」

・・・なんて、悪戯に思ったこともありましたが、
今思えば、とても心地よいBGMだったのかも。


・・
・・・。

(・・・ほんの少しだけ静か過ぎるのも、ね?)
ライドワードはそう思いました。


掲示板に戻る 最初- 前5 次5 前1 次1 最新5
NAME:MAIL:

read.cgi ver4.20 by GlobalNoteScript (2006/03/17)