【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】
[302:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2006/08/06(日) 00:56:04 ID:jfNbLxjQ)]
さらにお目汚す。
アラームは夢中になってスケッチブックに向かっています。
なにを描こうか・・・という当初の悩みは描きはじめるとともに消え、
今では楽しげにペンが軽やかにスケッチブックを舞います。
始まりはなにげなく描いたパンク。
そして一人、また一人と時計塔の住人が次々と描かれていきます。
それぞれの思い出に乗せ、ともに微笑みあったその日々を思い出すように、
スケッチブックに描かれた住人達はみな笑顔です。
その笑顔に導かれるようにアラームからも微笑がもれます。
その小さな胸にあったかな高揚が溢れ、心が高鳴ります。
気が付けば、アラームは懐かしい曲を口ずさんでいました。
懐かしい曲、バドスケが好きだった曲です。
アラームはお絵かきに夢中になるあまりそれに気付きません。
一人描いてはまた描かれていない住人を思い出し、既に描かれた仲間に加えます。
一通り描き終えると、一人ずつたどたどしく数え、さらに一人ずつをその姿を、
その思い出を確認しては漏れた人はいないか、確認します。
スケッチブックに集結したその仲間は、そう、アラームの家族そのもの。
スケッチブックに描かれたそれは、まごうことなき、家族の肖像画でした。
その誰もが彼女の優しく、そして微笑みかけます。
中心にはかつてここを旅立っていった優しい微笑みをたたえたあの人。
ハミングだったその曲を、彼が伴奏し自分が歌った日々を思い出し、
はっきりとした歌へと変わっていきました。
曲は思い出を紡ぎながら、時計塔に優しくどこまでも響いていきます。
彼が旅立つその日、アラームを保ちきれずに涙で彼を見送ってしまいました。
すまなそうに、心配そうに、去っていく彼の姿。
目蓋の裏に残るその情景は、涙でにじんでぼやけた景色です。
あれから何日が過ぎたでしょう。
彼が去ってしばらくは思い出しては泣き、歌を歌えばその日を思い出すようでした。
彼を忘れた日々はありません。
でも、泣いてばかりではあの日のように彼を困らせてしまいます。
彼が旅の途中、この時計塔へ立ち寄ることがあったのなら・・・。
そのときは笑顔で迎えられるように、とアラームは思いました。
時計塔に響く、あの日のような楽しげなアラームの歌声。
(・・・ほんのちょっとだけど、私も成長してるんだよ、バドスケさん。)
アラームはそう思い、笑顔をその満面に湛えます。
今も昔も変わることのない晴れやかな笑顔を。
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