【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】
[339:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2009/10/18(日) 23:47:54 ID:KfR.ExtY)]
331、333、334、336、337続きです。
ちょっとだけ更新。感想ありがとうございます。
遅筆すぎですがご期待に沿えるように終わりまで書き続けたいです。
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「―助け・・・」
言葉がおわるよりも早く、それを映すモニタが切り替わる。
「―どうしました!?返事をしてくださいっ!!」
モニタに喰らいつくように錬金術師ががなった。
その声を無視するようにスフィアは一瞬、砂嵐を映すと、戻った映像はただ魔導炉の様子だけを流れ続けていた。
そこに広がる惨劇の中を舞い踊り、かいくぐるように映し続けていた。
「止め・・・止めて・・・止――――――」
抜けた腰を重く引きずりながら、ずりずりとひとりの男の魔術師が退く。
その姿に覆い被さるようにゆっくりと大きな影が覆っていった。
その目には息を荒げながら、ゆっくりと斧を振り上げるハイオークの姿が映り、
斧よりしたたる誰彼ともしれない血が、直下の魔術師の頬へと数滴落ちていた。
「止めて!殺さな―――――――――」
恐怖と叫びが交錯して加速する中、その声をふさぐように斧は無慈悲に振り下ろされた。ハイオークは斧から伝わる鈍い感触を振り払うように、斧を魔術師の肉体から引き抜く。そして異なる魔術師の姿を目で追う―――
その目にとらえられれば、それは次の獲物になるということだった。
ハイオークが次の獲物へとゆっくりと移動すると、背後に激痛が走る。
その背中を異なる魔術師が打った雷球が捕らえ、ハイオークが沈んでいった。
そこかしこで、先ほどまでともに行動していた魔術師達とオーク達が争っていた。
何が起きていて、誰が敵で、誰が味方かもしれないまま、ただ自らに襲いかかるものを敵とし、持てる力をぶつけ合うようだった。
「――凍れ、ただ静かに――時の静止するが如く!!!」
詠唱の最中、苦し紛れに振り下ろされたハイオークの斧がわずかに肩を掠めた。
わずかに裂けた皮膚の痛みを感じながらも、その手に集約された魔力を一気に解放する。
「ストームガスト!!」
あたりを白銀に染め、凍れる水蒸気が煌めく。
あたりの温度が急激に下がると、数匹のハイオークが絡め取られるように凍結した。
「ウ・・ガガガガガ」
凍結する体を振り解くように激しく左右すると、その身に亀裂が走り、砕けて落ちた。
「――あなた達が―――、襲ってくるから・・・・」
くやしそうにウィザードがつぶやく。強襲に興奮しているのか、手心を加えて放ったはずのストームガストが、思う以上の力で発動していた。
ふと握ったその掌に残った魔力の残滓を感じていた。
先ほどまでの作戦行動で疲れているはずの体から、なぜか沸き上がる力を感じていた。
(・・・どうゆうこと・・・?)
だがそこには、迷い、立ち止まる暇もない。
そこかしこで行われる争いは、少しずつではあるが魔術師の側が圧されつつあった。
オークの力と数に、圧される魔術師達の劣勢が見てとれた。
「ファイアーウォール!!」
攻撃を避け、敵と距離をとる魔術師を支援するように、その間に炎の壁を置く。
状況は麻のように乱れ、そこかしこで広がる戦闘に静まる気配はまったくなかった。
そこでふと頭をよぎった小さな疑問など、その喧騒にかき消される他に無かった。
(――――――――――きりがない―)
続けて放たれる魔法に、ウィザードは言葉をつむぐ間さえない。
その目は次の目標を追い、止むことなく詠唱と魔法が繰り返されていた。
体は舞うように襲い掛かる刃を避け、敵の集団を捕捉する。
「ストームガスト!!!」
一瞬にして、勢いよく襲い掛かるその姿そのままに、敵の一団が凍りつく。
その氷塊が砕ける轟音とともに、ハイオークの一団が沈んでいった。
(―だけど――今ならいける―)
繰り返される生死のやり取りに、その身はギリギリで掻い潜り、生き残る為のその方へ、ぴったりと寄り添うように動いてくれた。
体の奥から湧き上がる力も後押しし、ウィザードはそう確信する。
ウィザードは戦場を舞い、惹きつけるように多くのオークをその身に引き受ける。
劣勢の中、そうしなければいけない状況もあり、確信の全てをそこへ注ぎ込む。
―もっと―もっと―もっともっと――――。
多くの敵を束ね、攻撃の隙をついて魔導をその手に収束―詠唱を開始する。
―どこともつかなくなった限界まで―。
・・・"ドン"・・・・。
ウィザードが魔法を放とうとその手を掲げたその瞬間、背中に硬いゴム質を感じた。
一瞬にして体の熱を奪われ高鳴りはじめた鼓動を感じながら、背後に目をやった。
その背後で背中合わせにこちらを見遣るハイオークと目があった。
(拙い・・・・)
発動寸前の魔法を掲げて無防備な体をさらすウィザードの目に、振り返りざま斧を振り上げるオークの巨体が映っていた。
<続く>
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