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◆みんなで創る小説Ragnarok ♂萌え2冊目◆

72 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/07/04(火) 15:18:13 ID:.bHY9Esw
こういうの書くの初めてですが、せっかく書いたので投下してみました〜。
お目汚し失礼(逃

73 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2006/07/05(水) 00:41:09 ID:6AmRiVM6
ジンガさんの装備に惚れた。

けど逃げて超逃げてー!
でも逃げないでー(*´Д`)
シアン君頑張れ!

74 名前:プリ騎士:1 投稿日:2006/12/17(日) 20:37:17 ID:pZv2Unig
クリスマスが近くなったプロンテラは、町中が綺麗に飾りつけられていた。
「お」
やはり綺麗に飾り付けられた、花屋の屋台前で、狩りの清算をしていたプリーストが声を上げた。
「何?」
プリーストと共に狩りに出て、今は隣で剣の手入れをしていた騎士が、プリーストを見た。
ほら、とプリーストが手に持ったものを騎士に見せる。
「銀の指輪」
プリーストの手の中で、小さな銀色の光が零れた。
「こんなの拾ってたのか」
「らしいね」
まじまじと見つめる騎士に、プリーストは指輪を手渡してやった。
手入れに邪魔だったのか、手袋を外した騎士の手が、指輪を受け取る。
薄汚れていた指輪は、騎士が剣の手入れに使っていた布で表面を擦ると、すぐに銀色の輝きを取り戻した。
騎士は指輪から視線を外すと、プリーストを見た。
「なあ、これ買い取って良いか?」
「どうすんの?」
プリーストの問いに、騎士は鼻の頭を掻く。
「うちのギルメンにアーチャーの娘がいるんだけどさ」
「知ってる」
騎士が言うアーチャーには、プリーストも会ったことがある。
快活な少女で、まだ自分や騎士程の強さには達していなかったが、
熱心に弓の訓練を行っているのを見たことがある。
「あいつが銀の指輪欲しがってて……」
「おいおい、こんな素敵な彼氏さんがいる前で、別の子にするクリスマスプレゼントの話かい?」
軽い口調で囁けば、騎士は声を荒げた。
「バッカ、ちげえよ!
 名前彫ってもらいたいから、指輪が出たら売ってくれって頼まれてたんだよ」
違う、という言葉が「素敵な彼氏」にはかかっていない事を確認して、プリーストは口元に笑みを浮かべた。
「そういう事ね」
けれど、それについては、何も触れないことにした。

75 名前:プリ騎士:2 投稿日:2006/12/17(日) 20:38:09 ID:pZv2Unig
プリーストは肩を竦めた。
「期待して損した」
「期待?」
うん、とプリーストが頷く。
「てっきり、お前の名前入れて俺にくれるもんだと」
「やらねえよ」
騎士が笑う。
「そんなもんもらったって、邪魔にしかならないだろ」
「お前は邪魔か?」
プリーストの言葉に、騎士は戸惑うような顔をした。
「……いや、邪魔つうか……似合わないし」
騎士は指輪を、軽く宙に放り投げる。
日の光を浴びて、銀の指輪は、街の飾り付けにも負けない輝きを放つ。
銀色の軌跡を残しながら、小さな指輪は、プリーストの手の中へと戻ってきた。
「男でも綺麗に手入れされてるなら良いかもしれないけどさ、俺の手、すっげえごついし」
騎士が目の前に手をかざす。
彼の言うとおり、その手はごつごつとした、騎士らしいものであった。
「そんなに卑下するもんじゃないぞ」
「卑下したわけじゃない」
「そうかねえ」
プリーストは騎士に向かって指輪を投げ返してやる。
騎士の手が、銀の指輪を捕まえるのを見てから、プリーストが囁く。
「俺はお前の手、結構好きなんだけど」
「……どこが良いんだか」
指輪を乗せた手の平を、騎士は軽く握りしめる。
その頬が、少し赤くなっているのを、プリーストは見逃さなかった。

76 名前:プリ騎士:3 投稿日:2006/12/17(日) 20:38:52 ID:pZv2Unig
握り締められている騎士の手に、プリーストはそっと触れる。
ぴく、と震えた騎士の手を、捕らえるように包み込む。
剣の手入れをしていたためか、むき出しの手は、随分と冷えていた。
自らの前まで引き寄せて、握り締められていた指を、一本一本解いていく。
プリーストの指と比べると、騎士の指は随分と力強いものに見えた。
けれど、プリーストが解こうとすると、騎士の指は小さく震えながら、されるままになっていた。
手の中に銀の指輪が生まれた頃には、騎士の手は幾らか温まっていた。
今騎士はどんな顔をしているのだろう。
そう考えながら、プリーストは銀色の指輪を隠すように、騎士の手に自分の手を重ねた。
「お前はこの手で剣を振ってくれる」
愛しげな仕草で、プリーストは騎士の手を撫でる。
「剣を握ってるお前が、俺は好きだし、安心できる」
「安心?」
プリーストは頷く。
「なんかヘマやらかして、化け物にぶっ殺されそうになっても、きっとお前が助けてくれるって思えるから」
重ねた手を、プリーストはぎゅっと握り締める。
「俺の命は、お前の手に預けてるんだよ」
握り締めていた手を離し、プリーストは、騎士の手の上から、銀の指輪を摘み上げる。
二人して握り締めていたせいか、金属で出来た指輪は、仄かに温かくなっていた。
一度光にかざすようにして眺めた後、プリーストはおもむろに、騎士の手を裏返した。
甲を向けた騎士の手を、自らの前に引き寄せる。
「……ああ、ぴったりだ」
嬉しそうな声で、プリーストが呟く。
銀色の指輪は、男性である二人から見れば小さいものであったが、騎士の小指には綺麗に収まっていた。
プリーストが騎士の顔を覗き込む。
先程より、騎士は更に顔を真っ赤に染めていた。

77 名前:プリ騎士:4(おしまい) 投稿日:2006/12/17(日) 20:39:49 ID:pZv2Unig
プリーストの視線から逃げるように、騎士が俯く。
「……そん、な、事……言ったら」
掠れた声が、騎士の口から漏れた。
「俺だって……お前が支援してくれるって、思ってるし。
 俺の命とか、お前が預かってるようなもんだし」
「はっはっは今頃気づいたか俺様のありがたさに」
「……お前なあ」
急にふざけた様子になったプリーストに、騎士は照れを隠すように顔をしかめた。
プリーストは得意げに笑ってみせる。
「今度は俺の名前入れた奴にするわ」
「まだやる気かよ」
「当然」
きっぱりと言い切ったプリーストに、うんざりしたような顔で、騎士は呟く。
「……じゃあ、今度はお前もつけろよ」
そして、小さな声で付け加える。
「俺の、名前が入ってる奴」
プリーストは、嬉しそうに笑った。
「了解」
指輪を嵌めたままの騎士の手を、プリーストが掴む。
騎士の指の付け根で、日光を浴びた銀色が優しく光る。
「んじゃあ、この指輪はギルメンさんに売ってあげることにして、俺らはあと二つ取りに……」
騎士の小指から指輪を外そうとしたプリーストの声が、途中で切れた。
「何だよ?」
不思議そうな顔で見つめる騎士から、プリーストは視線を逸らした。
「……取れない」
「はぁ?」
焦った様子で、騎士も指輪に手をかける。
が、小さな銀の指輪はびくともしない。
血の気が引いて白くなった騎士の顔に、怒りの色を見つけると、プリーストは静かに一歩退いた。
それに気付いたか、騎士がプリーストを睨みつける。
「どうしてくれるんだよ馬鹿、これじゃあ剣持つのだって大変じゃねえか!」
「あーあーうんまあ落ち着け、とりあえず石鹸水でも試してみよう、な!」
「な、じゃねえよ!」
銀の指輪が嵌った手で、騎士はプリーストに殴りかかった。
「うおっ!」
飛び掛ってきた銀の軌跡を、プリーストは辛うじて避けた。
「だ、大丈夫だって、嵌ったんだから取れないはずがない! 多分」
「多分とか言うなあっ!」
本気で怒っている事を察して逃げ出したプリーストの後を、騎士は怒鳴り声を上げて追いかけた。
走る騎士の手元で、銀色の指輪が笑うように光った。

78 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/02/19(月) 18:47:55 ID:13c6wP.A
久しぶりに来て、いいもの読ませてもらった
その騎士さんを嫁に欲しい

79 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/05(土) 23:39:51 ID:dTYu0cZM
「飛べ、ヴィル!」
 傷ついた右目を押さえて、プリーストは相方のウィザードに向かって叫んだ。
「もう無理だ。先にお前が行け!」
 慌ててウィルはウィザードの紅の衣のポケットを探った。常にそこに蠅の羽を挟
んでいるようにしている。ポケットから羽を引き抜き、ウィルは相方の方を見た。
「ヒンツ」
 プリーストの名前しか呼べなかった。その先の言葉が出なかった。
 ヒンツの背後には大きな影。
 それはカーリッツバーグ。
「……っ!」
 ヒンツの頭に振り下ろされる、大きな黒い黒い腕。
 直後床に崩れ落ちる体。
 その後のことは、ウィルも良く覚えていない。
――次に意識が戻ったときは、プロンテラの街中だった。
 日光の眩しさに――ついさっきまで薄暗い廃墟の中に居たのだ――ウィルは小さ
く舌打ちした。
「……やられたのか」
 狩りの調子は悪くなかった。相方のプリースト、ヒンツとはもう長い仲であるし、
狩場も何回か通った場所だ。
 強いて言うなら運が悪かった、というところか。
 手袋に付けられた小さなボタンに触れて、ヒンツは呟いた。
『まさか、あんなに溜まってるとはな……』
 同じパーティーに所属するものしか聞こえない回線で話しかける。
 しかし、期待していたヒンツの返事は来ない。
「? 調子が悪いのか?」
 先程よりもきつく、ウィルは舌打ちした。
 人の多い街中などでは、こういう事が起こる。パーティー会話が聞こえなかった
り、ギルドエンブレムを通した会話ができなかったり。
 そういう理由で、ウィルは哀しくも慣れてしまったいつもの不具合として処理す
ることにした。
「ま、明日になれば直るだろう」
 精算はそのときにしてしまえばいい。
 とりあえず自分が持っている収集品の数を確認し、きちんとメモを取る。
 それからウィルは宿屋に戻った。

 そして明日は今までのように、ヒンツと笑いあいながら狩りに行けると思ってい
た。


 ウィルが異変に気付いたのは次の日。
 一晩経ったというのに、未だヒンツと連絡が取れなかった。
 知り合いに聞いてみてたが、皆、ヒンツと話をしていないと答える。
 不審に思って、何度もヒンツに呼びかけてみた。パーティー会話でも、wisでも、
ギルド会話でも。
 それでも、全く返答が来ない。
 四方八方に手を回し、彼がヒンツと再会したのは一週間後であった。

 ここはアルデバランのカプラ本社の一室。
 ただし、一般人がいつも入れる開放された部屋ではない。
「どうしてっ! どうして無理なんだよ」
「待てウィル。落ち着けって」
 カプラ職員に詰め寄ったウィルはギルメンに後ろから羽交い締めにされた。
 それでも諦めきれずに、ウィルはもがきながら目の前の職員を睨み付ける。
「何で無理なんだ。だって、カプラのサービスだったら大丈夫なはずじゃないか」
 冒険者にとってモンスターとの戦いでの死は真の意味での死ではない。戦闘不能
状態になった途端、冒険者の体は予め登録された街に戻され治療を受けることがで
きる。
 だから、死なないはずなのだ。
 ウィルの大切な……濃い金の髪の、少し小生意気なプリースト、ヒンツも。
 だというのに、プリーストの体は硬い寝台の上で冷たくなっていた。
 泣きじゃくるウィルの姿にカプラは申し訳なさそうに視線を逸らした。
「確かにヒンツ氏の体は完全に復元できました。しかし……頭部の、いえ、脳の損
傷が著しく激しかった上に放置された時間が長すぎたのです。当社の技術でもって
も、脳の完全再生は不可能です」
「そんな……、だって」
 唖然とするウィルにカプラは淡々とした様子で言葉を続けた。否、彼女にとって
もそれは辛い出来事に違いない。しかしウィルには彼女が冷酷な人間にしか見えな
かった。
 カプラは報告書に目を落として読み上げる。
「報告に寄りますと、レイドリックアーチャーの矢が氏の右目を貫通。その後、
カーリッツバーグによって一時期的死亡状態に、とあります。その時脳を大幅に損
傷した模様です」
 訥々と状況説明は続く。しかしカプラの言葉はウィルの頭の中を素通りした。
 もうヒンツは帰ってこない。それだけわかれば十分だった。
「俺が、俺があの時……」
 あの時、的確に敵を倒していたら?
 街に戻った時に、急いで彼の元へ行っていたら?
 いくら悔やんだ所で後の祭り。
 そんなことウィル自身も頭ではわかっている。でも、納得はできない。
 泣き崩れながら彼は呟く。
「お願いだ。あいつを返してくれ。あいつを……」
 そんなウィルの姿に、ギルメンたちはやるせない視線を互いに交わす。
 ウィルにとってヒンツがなくてはならない存在だったことを知っているから、下
手に励ますこともできなかった。

「……本当にどんな形でも良いのですか?」
 ぽつりと、カプラが聞いた。硬質な、微かな声で。
 例え悪魔の囁きであっても、ウィルにとっては天使の救いだった。
「あいつが帰ってくるなら、また会えるなら、俺はどんなことだってしてやる」
 カプラが小さく溜息をつく。
 彼女は掛けていた眼鏡の位置を少し直して、言う。
「方法はあるかもしれません」

 その言葉にウィルは縋った。

 彼女が提案したのはホムンクルスの技術を応用した実験であった――ホムンクル
スのように新しい生命を作るのではなく、今ある生命の複製を作る――それが、実
験内容であった。ただし、モンスターを被験体にした実験でも成功例は少なく、人
間ではまだ試していないという。また、仮に実験が成功してヒンツの複製が生まれ
たとしても、同じ顔をした人間が生まれるだけであって、記憶や性格は一切継承し
ないという。

 ――記憶が残っていなくても良い。もう一度会いたい。
 だから、ウィルはその実験に縋った。


 数回の失敗を経て、実験は成功した――ヒンツの複製が生まれたのだ。
 研究所の中で彼は育てられ、そして彼はオリジナルと同じ名前を与えられてウィ
ルの元にやってきた。
 ギルドマスターに手を引かれ、おどおどした様子でやってきた一人の少年。彼が
新しいヒンツ。
 その顔立ちは、確かに死んだヒンツを若くしたと言っていいほど似ている。
 大きな違いは額がでるほど短く切りつめられていた髪が右目を隠せるように伸び
ていたぐらい。
 ウィルを始め、他のギルメンたち全員で彼を迎えた。
「あの、えっと……」
 ずらりと、見知らぬ二次職の人々に囲まれて少年は臆した様子である。
 全く記憶が残されていないことを知らされていたとしても、やはりウィルの心は
痛んだ。
 ぺこりとヒンツは皆に向かって礼をした。
「これからお世話になります。ヒンツです。えと、シーフ志望です」
 この言葉にウィルは息をのんだ。
 ――昔はプリーストだったんだから、やっぱりアコライトになるのだろう?
 そう思って装備も全部用意しておいたのに、彼は今なんと言っている?
「俺、シーフになりたいんです! えっと、お話で読んだアサシンみたいに強くて
格好良くなりたくて……」
 思わず周囲がいさめなければならないほど、昔の彼はシーフが嫌いであった。偏
見を持っていた。なのに、彼は今、なんと言った?
 シーフになりたいと。
 頭をがつんと殴られたような衝撃を受けた。
 例え姿が似ていても、名前が一緒でも。
 彼はもはや別人なのだと。
 頭では理解していたつもりだったが、やはり現実を完全に受け止めるのは苦痛を
伴う。

「俺の名前はウィリアム。ウィルと呼んでくれ」
 そう言って、ウィルはヒンツに右手を差し出す。
 ヒンツはにっこりと笑って右手を差し出した。
「初めまして。よろしくお願いします、ヴィルさんっ!」
 ヒンツが放った言葉に皆が一瞬言葉を失った。
「あぁ、ごめんなさい。名前を間違えてしまって。本当にっ、ごめんなさい。失礼
なことを……」
 半泣きの状態で頭を何度も下げる彼に、
「いや、構わないよ。君がそう呼びたければそう呼んでくれていいから」
「本当っにすみません。俺、どうしても直せないしゃべり方があって……。失礼な
ことを」
 周囲が黙り込んだ理由を、自身は呼び名を間違えたせいだと思っている。
 けれど、本当の理由は違う。
 プリーストであったヒンツもまた、ウィルのことをヴィルを呼んでいた。やはり、
直せない発音があったのだ。
「よろしく、ヒンツ」
 そう言ってウィルはヒンツの手を取って握手をする。
 声が震えているのをうまく隠せているだろうか。
 涙を堪えていることを隠せているだろうか。
 ウィルは必死で笑顔を作った。
「君を待っていた。歓迎するよ。
 ……立派なアサシンになれるといいな」


――彼は、もう、あの時の彼じゃない。
 でも、それでもまだ、あの時の彼が、今の彼の中にほんの一部でも残っているこ
とを期待しても良いですか?
 神様、俺は期待しててもいいですか?
 俺を愛してくれた彼が残っていることを期待してもいいですか?

 今の彼のことも、昔の彼のことも、ありのままを受け入れることができるように
ならないといけないけれど。
 でも、今はまだできない。
 だから。
 せめてもう少しの間、俺を愛していた彼が残っていると、思わせていてください。

80 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 00:44:26 ID:SlH50kOs
随分と亀だけど、ええ話や。
ヒンツ2号wにヒンツ1号の話をしてやれるようになるまでの物語が浮かんできそうだわ。

81 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/20(木) 18:17:02 ID:twsi/3.c
>>69-71
ものすごい遅レスだけど超萌えです…読み返しました。

つい感化されて一筆とってしまったのですが、今ってどこも小説投稿は過疎っているのでしょうか?
どこか盛んな処があれば投稿したいと考えたのですが…

82 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/12/20(木) 18:18:35 ID:rD3MFwps

「♂×♂の」小説投稿は でしたorz
脳内補完お願いします。

83 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/01/28(月) 18:37:42 ID:UmNk7g0I
ROのSSに初挑戦。
改めてスレを読み返していて、一部ネタが被っている箇所がある事に気付きましたが、どうかお目こぼしを。
ちなみに上の方とは別人です。

オトメンな♂アコ、&殴り♂プリ

「プリになったら楽になるからさ」
この言葉を、何回聞いただろう。
ギルドで狩りに向かうと大抵途中で精神力が切れて、スクワット歩きを余儀なくされる僕。
ソロ狩りのついでに摘んだイチゴはすぐなくなっちゃうし…はぁ〜。精神力を補おうと、強くなるたびにそれを増やしてるけど、まだ足りないみたいだ。
そんな僕に、ギルドの皆は「プリになったら楽になるから」って励ましてくれるんだ。…皆、いい人。
でも……僕、本当は。


ギルドのいつもの場所。
狩りに行く前に、皆でお喋りしてた。
ジッと正座して、うんうん頷きながら、僕の視線はいつも一人だけに向いている。
サキュバス角付けた、殴り♂プリさん。
彼のはだけた服から、ちらちら見える胸板が気になる。さすが殴りさんなだけあって、割と逞しいんだ。

…………。
僕、転職したら…彼と同じ服装になるんだよね。
自分の貧相な体格をチラリと見て、こっそり溜め息をつく。髪型もおとなしい感じだし、この体格じゃあ絶対にあの服は似合わない気がする。
それに…胸をはだけるのは、ちょっと恥ずかしいよ。
プリーストになった方が、皆の役に立つ。
早く転職するべきだと分かってはいるんだけど、どうにも気が進まなくて。
空いた時間には、ポリン島でのろのろと空きビンばかり拾ってる自分がいた。

「お前、中々転職レベルに近付かないなー」
ある日、例のサキュバス角のプリさんに言われて、僕はドキッとした。
最近は、迷惑かけるしレベルが合わないからと、ギルドでの狩りに参加しないでいた僕。
そんな僕に、彼はソードメイスを差し出した。
「今使ってないからさ、貸してやるよ」
ありがとうございます、と受け取ったそれは、沢山鍛えられていてとても強そうだった。純支援型の僕の腕力でも、かなり攻撃力が上がりそうだ。
……やっぱり、早く転職しなきゃ。気遣ってくれる彼や、皆に申し訳ないし。
ごついメイスなどよりも、杖の方が可愛くていい。そう思っていた僕だけど、このソードメイスはなんだか愛しく感じた。

それから僕は、そのソードメイスでスポアばっかり狩っていた。キノコの胞子に咳き込みながら、何匹も何匹も何匹も何匹も、延々と狩る。
ついでにイチゴもいっぱい貯まって、その効果もさることながら味や見た目も好きな僕はなんだかほくほくな気分だ。
荷物を入れている布袋を覗いては、つい口元が笑ってしまう。
……次に皆と狩りに行った時に、いっぱい食べるんだーえへへ。

そうして必死に狩っている内に、とうとう僕は転職できるレベルになった。
皆に報告すると、次々におめでとうと言ってもらえて、もっと早くこうすれば良かったと、転職を迷っていた時期を僕は少し後悔した。
「明日、大聖堂までついてってやるよ」
サキュバス角のプリさんが言ってくれる。
街の中だし一人でも行けるんだけど、プリーストになった僕を一番に見てもらえるのは嬉しい。
コクンと頷くと、ふと彼の視線が、正座している僕の膝辺りに向けられていて。
「このアコライトの服も、今晩で見納めか…。お前の金髪に似合ってたから、そこはちょっと残念だな」
思わず息を飲んだ。
そう、僕の髪は、この服に近い色合いをしている。プリーストになれば、その組み合わせももうない。
「プ、プリーストになったら染めようかな…服に合うように。あ、白とか?」
隣の彼の、サキュバス角が付いた髪を見ながら言う。
「ばーか、お前、俺と被るだろー。そんままでいいよ」
「う、うん……」
「…似合いそうな頭の装備、探してやっから」
「…うん」
頬を赤らめて頷くと、そっと頭を撫でてくれた。

翌日。プロンテラ大聖堂の前に立った僕は、ここまで送ってくれたサキュバス角の彼に手を振り、中へと入っていった。――プリーストになるために。


その頃、アコライトを送り届けたサキュバス角のプリーストは、露店街をウロウロしていた。
あっちを覗きこっちを見、華奢なアコライトの顔を思い浮かべながら品物を吟味していた。
ようやく選び終えた彼が大聖堂前に戻ると、窓に映した自分の姿を見ながら一人騒いでいる金髪のプリーストがいる。
「うわぁあ〜っ。やっぱり似合わないよー! 服もブカブカだし、それに何でこれ、胸はだけないといけないんだよ〜。うう…恥ずかしい……」
思わず吹き出した自分の頬をはたきつつ、彼はその場に座り込んでしまった新米プリーストの背後に近付いた。


やはり似合わなかったプリーストの服装にガックリうなだれていると、ふわっと髪に触れる感触があった。
驚いて振り向くと、サキュバス角の彼が立っていて。
「あっ、あっ、えーと…ぶ、無事プリーストになれました! 色々ありがとうございまし…あれ?」
頭に触れると、なんだか柔らかい感触が。
「転職祝いだよ。ほら」
窓ガラスを見ると…そこには、赤くて大きなリボンを頭の後ろに着けた、ブカブカのプリースト服の自分がいた。
「リ、リボンって…」
じょ、女装みたいに見えないのかな、いいのかな? 赤くなりながらそうっと彼を見てみると、サキュバス角の彼は笑いながら言う。
「だってお前、可愛いの好きだろ?」

思わずドキンとした。
知ってくれてたんだ……。うつむきながら、僕はかすれた声で「ありがとう、ございます…」と言った。
「あっ、で、でも…これ高くなかったですか?」
僕がつい尋ねてしまうと、彼はニヤニヤ笑って。
「あー、大丈夫大丈夫。その分、体で払ってもらうから」
「え、ええっ!?」
か、体っ!? それってどういうどういう。
「今欲しい装備あってさー。材料集めるの、手伝ってくれよ」
…………あ、なーんだ。びっくりしたー。
…勘違い、か。
「……あ、はい。もちろん!」
力いっぱい頷いた僕は、赤いリボンを揺らしながら、彼と一緒の帰り道を歩いていった。

84 名前:83 投稿日:2008/01/28(月) 18:49:54 ID:wpgut23k
うわ、文字数オーバーって言われると思ったのに…普通に投稿できた。
読みやすいよう分割すべきだったか悩みつつage
81さんも、ここに投下しちゃえばいいと思うんだ!

ちなみに殴りプリさんの方の心情描写がないのは仕様です。

85 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/01/28(月) 21:35:45 ID:K.nNAiJw
>>84
GJ!

どうせ心理描写しないのなら、「その頃、」からの2行をやめてアコ側の視点だけで書ききってもよかったんでない?
「ようやく選び終えた」ってのはプリの台詞で「ほら、随分探したぜ」とか振ってもいいし。

86 名前:83 投稿日:2008/01/28(月) 23:07:20 ID:K1XK3/kc
>>85
ありがとうございます。
なるほど、確かにそうですよね…。中途半端だった。


実は、プリースト転職試験を受けた事がないので別キャラ視点に逃げてたんだったりするorzゴメンナサイ
同じ理由(プリ持ちじゃない)で、続きや殴りプリ視点を書こうとしても書けない罠。
誰か書いてくれないかなあ(゚∀゚)とか言ってみr 〔サーバの接続がキャンセルされました〕

87 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/02/06(水) 23:23:25 ID:XZK4RBM6
 キィルがベッドの住人になって、一週間になる。理由は右足の骨折。
 凍結した玄関先で滑って転んだ、という原因が少々情けない。
 年のせいなのか、それともキィルの信仰心が足りなかったせいなのか、ヒールを何回か
使っても骨折を完全に治すことができなかった。
 愛用のチェインとプリーストの法衣を横目に、ベッドで大人しくしていて一週間。
 窓から見られる外の景色がわずかな慰めだ。
 一週間も観察していると、街角の花売り娘が郵便馬車の御者にホの字らしいとか、町の
案内人の中になにやら良い雰囲気の男の二人組みがいるとか、普段は気づかない人間模様
までわかるようになってしまった。
 この数日は冷え込みが厳しい。今も小雪がちらちらと舞っている。
 相方のアークはどこにいるのだろうか、とキィルは枕元に置いていた冒険者証を手にと
った。
 「この部屋に、大男二人は狭くて敵わない」、そう苦笑いしてアークは出かけて行った。
本当のところは、自分がキィルよりも冒険者としての位が低いことを気にしているのだ。
そこで、今のうちに追いつこうと励んでいるらしい。そのくせ、泊りがけで狩る事はなく、
必ずその日のうちに帰ってくる。そしてキィルの傍らで眠るのだ。
 キィルは冒険者証のパーティー情報欄を覗き込む。自分とアーク、二人の名前の横にそ
れぞれの現在地が示されていた。自分はプロンテラ街中、アークはモロクだ。
 ころころと変わる居場所がアークの飽きっぽい性質をよく表している。今日だけでも、
グラストヘイムのカタコンベ、オークダンジョン2F、ピラミッド地下、と場所を移してい
る。
 モロクに居るならば、プロンテラに帰ってきたときの寒さは堪えるだろう。相方のため
に温かい茶の一杯すらも準備できない自分が恨めしい。がちがちに固められたギプスに思
わずため息がこぼれた。
 視線を横にめぐらせば、窓に白髪が混じった青髪の男の顔が映っていた。自分の顔だ。
外はいつの間にか薄暗くなっている。街頭も灯りだした。
「腹減ったなぁ」
 動かなくても空くものは空く。今晩は何を買ってきてもらおうかとキィルは考える。簡
易キッチンがついているアパートに住んではいるが、キィルもアークも料理の腕は壊滅的
に悪い。自然、食事は外食やテイクアウト中心となっている。
 冒険証に浮かぶ相方の名前を無骨な指でなぞれば、それに合わせたかのようにパーテ
ィーチャットの回線から声が聞こえた。
『キィル、そろそろ帰るわ』
 夕飯、何がよいか? と言葉が続く。
「ミルクシーチュー以外なら何でも」
『カルシウムは今のお前に必要だぞ? じゃなきゃ怪我も治らないぜ』
 その主張は最もかもしれないが、さすがに一週間もそれを食べ続ければ飽きてくる。
「牛乳以外でもカルシウムは取れるぞ。たとえばアマツの料理で小魚を丸ごと食べるのと
かあるだろう」
『俺、魚は嫌いだ。骨を取るのが面倒だし、目玉が睨んでくるし』
 子供のように駄々をこねはじめた相方に、自然とキィルの顔に苦笑が浮かんだ。まもな
く四十路だというのに、アークのこういう子供っぽいところは昔から一向に変わらない。
 やがて、テイクアウトの食事を抱えてアークが帰ってきた。
 アークのファルコンを別室に休ませて、二人は共に食事をとる。
 キィルの分は魚、自分の分は肉を買ってきたのはアークなりの妥協だろうか。二人の好
物であるクレソンの入ったサラダはたっぷりと。スープはじっくりと煮込んだオニオン
スープ。
 食欲が満たされるのを感じながら、キィルはアークに問うた。
「今日は何してたんだ?」
 セロリをかじりながら、アークは答える。
「ん。カタコンで神速な美人プリさんとアイアンドライバーできめてるプリさんとか眺め
て、OD2で可愛いケミさん見つけて、ピラ地下でいちゃつく騎士BSに嫉妬したりとか」
 スープを一口すすり、アークは破顔する。
「今日も一日眼福だったぜ。枝のエルメスを観察していて逃げ遅れたのは誤算だったけど
な」
 なお、アークの鑑賞対象はたいてい男性である。美人や可愛いという形容詞がついてい
ても、男性だ。このあたりの感覚をキィルは未だに理解できていない。
「アーク、楽しそうなのはよいが、もう少しまじめに周りを見られないのか? よもや声
はかけてないと思うがばれれば変態扱いだぞ」
 肉をつまみながらアークが不機嫌に答えた。
「ばーか。これぐらいやっておかないと一人でLv上げなんかかったるくてやってられるか
よ」
 最後の一切れを咀嚼した後、彼は言った。
「お前と一緒ならどこでも楽しいんだけどな。だから、さっさと治してくれよ」



88 名前:鳥×剣士:キスと口笛 投稿日:2008/05/24(土) 18:46:04 ID:ikwXfrKc
真新しい剣士の装束に身を包んだ少年は、文字通り唇を尖らせていた。
考え込むように眉をひそめ、僅かに首を傾げてから、そっと息を吹く。
尖った唇から漏れるのは、空気の抜ける音ばかり。
「ぐあーやっぱり出来ない!」
頭を抱えて剣士が叫ぶと、その一部始終を見守っていたバードが、笑いながら声を掛けた。
「そんなに難しいものじゃないよ?」
そう呟くと、彼はヒュウ、と口笛を吹いた。
「ほら」
バードが剣士を見れば、彼は途端に不機嫌そうな顔になった。
「何で出来るんだよ!」
「何で、と言われてもねえ」
今にも掴みかからん勢いの剣士に、バードは苦笑して呟いた。
魔物の気を引くために、口笛を覚えたい。
そう言って、剣士が口笛を教えて欲しいとバードに頼んできたのが、数刻ほど前の話である。
教えるほどの事でもないだろうと思いつつも、バードは簡単な説明をし、実際に吹いて見せたりもしたのだが、
剣士の唇からは一向に笛の音らしきものは聞こえてこなかった。
何度やっても、聞こえるものは空気の抜ける音ばかり。
「気がついたら、自然に吹けるようになってたからなあ」
バードは口笛で、簡単なメロディーを奏でてみせる。
「そのうち、ある日突然吹けるようになったりするんじゃない?」
そう言って、バードは剣士を見るが、彼に納得するような素振りはない。
「そのうち、じゃなくて、今吹けるようになりたいんだってば」
剣士はそう言うと、もう一度唇を尖らせて、考え込むような表情をした。
必死に口笛を吹こうとしている剣士を見ているうちに、バードの中に、ちょっとした悪戯心が湧きあがった。
ひっそりと唇に笑みを乗せると、バードは悪戦苦闘している剣士の傍へと近付いた。
「少し力を入れすぎなんじゃないかな?」
剣士の頬に、バードはそっと手を当てた。
ぴく、と剣士の目元が震えた。
「もうちょっと力を抜いて」
「どんな感じ?」
剣士が見上げてくると、バードは頬に添えたのとは反対の手で、剣士の肩を押えた。
訝しげな顔をする剣士に、自らの顔を近づける。
見開かれた剣士の目の中に、バードの姿が映りこむ。
剣士が何かを言うより早く、バードは自らの唇を、尖らせたままの剣士の唇に重ねた。
「……こんな感じ」
すぐに唇を離したバードが、小さな声でそう囁く。
硬直している剣士の目の前で、ヒュウと唇を鳴らして見せた。
「……な、に、してんだよっ!」
我に返った剣士が、慌てた様子でバードを突き飛ばした。
「酷いなあ、教えてあげただけじゃないか」
よろける様子も見せずに、バードが剣士から離れる。
にやにやと笑うバードの目の前で、剣士は顔を真っ赤にしながら、口元をごしごしと拭った。
「この分だと、キスもあまり上手じゃなさそうだねえ」
「何の関係があるんだよ!」
分かってないなあ、とバードは肩を竦める。
「好きな子にキスするような、ちょっと尖ったぐらいの唇で、優しく息を吹くと良いんだよ」
「信用出来ない……」
「そう、じゃあもう一回やってみる?」
ひょい、とバードが近寄れば、剣士はぶんぶんと首を横に振った。
「分かった、分かったからキスの話はもういい!」
恥ずかしさのあまり大声で叫ぶ剣士を見て、予想以上の反応だと、バードは満足げに笑った。
ここまで可愛く振る舞われると、もっと悪戯してみたくなるのだが、それは流石にまずいだろう。
次の機会があるならば、とバードは胸中で呟く。
次の機会があるならば、剣士が口笛を吹けるようになった時だろうか。
キスとどれだけ似ているのか、もう一度教えてやれば良い。
「……練習してやる」
「キスの?」
「口笛!」
未だ赤いままの剣士に、バードは声を上げて笑った。

89 名前:教授萌え(ネタです) 投稿日:2009/04/12(日) 12:18:19 ID:5jXrJww6
☆ミキシング教授の卵料理☆

「ロリ☆ブランド、ギャルズ☆コレクション。」
爽快な音楽と共に始まった実演販売。
職業プロフェッサーの男がさわやかに微笑み、意味不明な言葉を言った。
発音はなかなか良さそうだった。
彼の前の机には一台のミキサーが置かれている。
「今日ご紹介するのは、私が作ったこのミキサー。
このミキサーは凄く高性能でどんな料理も簡単に作る事ができます。」
一旦教授の男は席を外し、何か卵を2〜3個持って戻ってきた。
「さっそくこのペコペコの卵を割って卵料理を作ろうと思います!」
教授はペコ卵をまず一個、テーブルにコンコンッと叩いてヒビを入れた。
それを蓋の開いたミキサーの上で割る。
ガゴンッ!!
なんと出てきたのはプラコンだった。
ガランッ!!
2個目は白い皿。
そして最後の卵からはペコペコの卵カードが出てくるのだった。
このままでは卵料理どころではない。
しかし教授は困った顔すらせずにそれらの入ったミキサーに蓋をし、スイッチを入れた。
ゴガガガガガガザザザザ、ガァァァァァァ!!
混ぜている間、教授はカメラ目線でにっこり微笑む。
そして、『卵料理』が出来上がる。
「どんぶりでぇす!」
またもや意味不明な言葉を残し、ミキサーの容器をドンッと逆さにしテーブルに立てた。
テーブルにはペコ卵のドロップ品の成れの果てが小さな山を作っていた。
「プラコンもお皿もご覧の通り!すごいですね〜。
しかもミキサーの刃には刃こぼれ一つありません!
こんな高性能なミキサーがお値段たったの3Mz!今すぐ123-4567にお電話ください!」

この番組はミッドガルド放送局の提供でお送りしました。


おしまい、またご縁があったらお会いしましょう・・・・。

90 名前:ノビ&ウィズ:1 投稿日:2009/10/11(日) 19:51:44 ID:zUjjg4T.
静かな宿の一室に、ぱさり、と紙を繰る音が響く。
遅い朝の光が入り込む窓辺で、ウィザードの男が本を広げていた。
部屋に注がれる日差しこそ暖かいものの、窓の向こうでは、冷たい秋の風が吹いているのだろう。
ひやりとした空気に、ウィザードはそっと首を竦めた。
「……先輩、これは酷いっすよ」
先輩、と呼ぶ声に、ウィザードは追っていた文字から目を上げた。
窓ガラスに映るのは、開いた本を持った自分と、その背後に立つノービスの姿。
「これもう、凝ってるとかってモンじゃないですよ。がっちがちに固くなってます」
ガラスの上のノービスが、げんなりした表情でウィザードに向かって呟いた。
彼の手は、座り込んでいるウィザードの肩を丁寧に揉んでいる。
その様子を、ウィザードは何も言わずに見つめていたが、やがて窓に映るノービスへと目を向けた。
「そんなにか?」
「そんなにです」
無頓着なウィザードの言葉に、ノービスは肩を揉む手にいっそう力を込めた。

91 名前:ノビ&ウィズ:2 投稿日:2009/10/11(日) 19:52:45 ID:zUjjg4T.
本を読んでいるウィザードの表情が、随分と険しいことに気がついたのは、朝食の後だった。
先輩と慕うその人が、元々にこやかではないことなんて、ノービスは嫌というほど理解していた。
それにしても、ただの魔術書を読む表情にしては、ウィザードの表情はあまりにも剣呑に過ぎた。
「先輩、もしかして肩凝ってません?」
ふと思いついて尋ね、拒否するウィザードをなだめすかし、肩揉みをさせてもらうに至ったのが、数分前。
拒否するぐらいだから、大したものではないだろうと思っていたのだが。
――よくまあ、今まで平気だったなあ。
凝っているどころか、石化しているのかと思うぐらいに固くなったウィザードの肩を揉み解しながら、ノービスは顔を上げた。
窓の中には、既に読書に戻ったウィザードの姿があった。
何食わぬ顔で本を読み続けるウィザードを見つめているうちに、ふっとノービスの口元に笑みが浮かんだ。

92 名前:ノビ&ウィズ:3 投稿日:2009/10/11(日) 19:54:23 ID:zUjjg4T.
「何だ?」
気付いたウィザードが、窓の中からノービスを見つめてくる。
「……いや、凄いなって思っただけです」
そう答えて、ノービスはウィザードの後ろ頭に視線を落とした。
何か言いたそうな顔をしたウィザードだが、結局、それ以上は何も言わずにまた読書に没頭した。
ウィザードが本に意識を向けたのを確認して、ノービスはちらりとウィザードの顔を盗み見た。
やはりウィザードは、特別な表情を見せることなく、ただ本を読み続けている。
肩を揉むノービスすら、気にすることなく。
その事実に、ノービスはひとり、笑いたくなるような嬉しさを覚えていた。
いつの間に、ウィザードはこんなにもノービスが傍にいることを許してくれていたのだろうか。
何かあればついていこうとするノービスを、目の前の先輩は、邪魔と言ったり、鬱陶しがったりする。
それなのに、手が触れるほどの今の距離に、ウィザードは何一つ文句をつけてはこない。
文句どころか、気にする様子すら見せない。
これって、実は凄いことなんじゃないだろうか。

93 名前:ノビ&ウィズ:4(おしまい) 投稿日:2009/10/11(日) 19:55:37 ID:zUjjg4T.
口元が緩むノービスに、ウィザードが気付いた様子はない。
それでも、ふと何かを思い出したかのように、彼はノービスに声をかけた。
「おい」
「何ですか?」
にやけた表情を慌てて取り繕って、ノービスは答える。
窓の中のウィザードは、自らの肩に置かれた手と、ノービスの顔を交互に見やってから、こう尋ねた。
「お前、本当に揉んでるのか?」
「……はい?」
予想しなかった質問に、ノービスは軽く瞬きした後聞き返した。
「えーと、結構力入れてると思うんですけど」
ノービスが呟けば、手が乗せられたままの肩を、ウィザードは竦めてみせる。
「さっきから全然感じないんだが」
心底不思議そうな表情を見せたウィザードに、ノービスは一瞬硬直した後、大きくため息を吐いた。
「そりゃあ先輩、肩凝り過ぎて、感覚おかしくなってるんですよ」
渾身の力を込めて、ノービスはウィザードの肩を掴む。しかし、ウィザードは全く表情を変えなかった。
「……本当だ」
「本当だ、じゃないでしょ!」
揉むのを止めて、軽く叩きながらノービスが言う。
「次からはこうなる前に言って下さいよ!」
つまるところ、ウィザードは気にしていないのではなく、気付いていないだけだったのだろう。
浮かれてしまった自分が、なんだか随分と情けなく思えて、
ノービスはやけのようにウィザードの肩を叩く自分の手へと視線を落とした。
だから、彼は気付かなかった。
窓ガラスに映るウィザードが、気持ち良さそうに目を細めていたことに。

94 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2009/12/23(水) 20:21:55 ID:X3DXkAus
 プリーストのディノは何度目かわからない溜息をついた。
 食卓の上で湯気をあげているのは、クリスマスターキー。
 戸外からは楽しげなざわめきが聞こえる。
 今夜はクリスマスイヴ。
 迷いながらも買ってしまったキャンドルに火をつけて、ディノは恋人の帰りを待っている。
「……身から出た錆じゃないか」
 ゆらりと揺れる炎を見つめて、また溜息をつく。
 恋人のチェイサー、セルヒとのやりとりをディノは今更ながら後悔していた。
 それは一月前の事だ。
 いつもより激しい情事の後にディノは聞かれた。
――なぁ、プレゼントは何がいい?
 機嫌を損ねていたこともあって、ディノはすげなく答えたのだ。
「青ジェム百個」
「おいおい、怒るなって。無理させたのは悪かった。
 でもな、せっかくのクリスマスなんだから、もうちょっと色気のある物にしてくれよ」
 後ろから抱きすくめられ、宥めるようなキスが一つ二つとこめかみに落とされる。
 けれど、それでも怒りは解けず、半ば八つ当たりでディノはセルヒに言ったのだ。
「クリスマスなんて、そもそもこの辺りの風習だろ。プロンテラ生まれの君には馴染み深いのかもしれない
けど、僕には縁がないんだよ」
 この言葉に嘘はない。
 ディノの故郷である沙漠の街にはクリスマスなんてものはなかった。
 だから、湿った寒さに負けない華やかな雰囲気は羨ましかった。と同時に少し妬ましかった。
 そんな軽い諍いと前後して、セルヒは狩場に籠もりがちになった。
 十二月二十五日、または二十四日。その日が近づくにつれて、恋人持ちもそうでないものも、浮き足立っ
ていく。
 それに対してディノの心持ちは冷えていく一方だ。
 この一週間、セルヒは一度も帰ってきていない。
 一人だけの夕飯は味気ない。独り寝も侘びしい。
「あんな事、言うんじゃなかった」
 今更後悔しても詮無いことだとは思っても、呟きはディノの口からぽろりと零れた。
『今日は帰る』
というwisがセルヒから来たのは半刻ほど前だ。
 慌てて少しはそれらしい物を、と買い物へ走ったのは懺悔と期待から。
 鍵が開く音を聞いて、ディノは思わず起ち上がった。
 振り返り、部屋に入ってきたセルヒを見やる。
 吹き込んできた冷たい風はプロンテラの空気、鼻先をかすめた潮の匂いはセルヒにまとわりついている香
りだ。
「なぁ、今日の飯は?」
 鼻をひくつかせる恋人にディノは言葉短く答えた。
「ターキー」
「へぇ、そりゃ良かった。
 イズでずっと魚介類ばかりだったからなぁ。肉だ肉」
 ファーのついた裾を翻し、食卓へと向かう恋人の言葉に、ディノはほっとすると同時に落胆する。
――やっぱり、今日がクリスマスイヴだってことを期待するんじゃなかった。
 馬鹿にしながらも希望を持っていた自分自身をディノは心の中で嗤う。
――やっぱり、僕には縁がないんだ。
 未練たらしくプロに居るのではなく故郷に戻っておけば良かった、とディノは思う。
 そうすれば、浮かれた雰囲気に流されることも、その雰囲気にあてられて不安になることもなかったかも
しれない。
 自分の考えに耽っていたディノを引き戻したのは、額に当てられたセルヒの掌だった。それはひやりと冷
たい。
「おい、俺の話を聞いてないな?」
「ごめん、考え事をしてた」
「たく……」
 セルヒが大仰に肩を竦める。
 顔は笑っているから、気分を害した訳ではないらしい。
「ほら、飯が冷える前に渡して置くぞ」
「渡す?」
 左手を取られながら、ディノは首を傾げた。何か貸していた物でもあったろうかと考えたが思い出せない。
 にやりといたずら小僧のようにセルヒが笑う。
「俺の手作りだからな。ちゃんと大事にしろよ?」
 言いながら、セルヒはディノの薬指に指輪を嵌めた。
 それを見て、ディノは言葉を詰まらせた。
「……」
「カードまで自力だからな。このために毎日イズに籠もったんだ」
と、セルヒは誇らしげだ。
 対して、ディノは贈られた指輪を凝視する。
 送り主の手と同じくひんやりと冷えている指輪には、フェンカードが刺さっていた。それを認め、ディノ
は左手の拳を、
「っ、馬鹿!」
 思いっきりセルヒへと振り上げた。
 ディノの反応を予想したのか、職業柄の身軽さからか、セルヒはひらりとそれを躱す。
「おいおい、せっかく考えたクリスマスプレゼントに馬鹿はないだろう、馬鹿は」
「馬鹿以外に何があるんだよ! この馬鹿! こんなネタ装備じゃ売れもしないじゃないかっ」
 右手も加えて殴りかかろうとするディノに、セルヒはけたけたと笑う。
「貰ってすぐに売り払うとか、酷いぞぉ?」
「どっちが酷いんだよ! 君のほうが性格(たち)が悪いじゃないかっ。どう見ても嫌がらせだ」
 ひょいひょいと食卓の周りを逃げ回るセルヒにディノは業を煮やした。
 殴れないならば、と指で聖印をきる。
「ホーリーラ……」
「こらこら」
 頤を捕らえられ、ディノはキスで口を塞がれた。
 けれど、ホーリーライトの詠唱は止まらない。
 なぜなら、彼の薬指にはまっているのは――。

 骸骨の指輪オブアンダーアキャスト


「んっ……」
 腹に直撃したホーリーライトを物ともせず、セルヒは恋人の唇を堪能し、その後呟いた。
「メリークリスマス……、いやそれともハッピーホリデイ?」

95 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2011/05/12(木) 08:08:07 ID:o1caLxv.
ノビWIZも葱プリも萌えた(゚∀゚)

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