◆みんなで創る小説Ragnarok ♂萌え2冊目◆
[46:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2005/09/23(金) 20:47:46 ID:Z49IO7IQ)]
「順番に、順番に話してくれるかな。他に好きな人ってどういうこと?」
落ち着かせるように耳元で話すアルケミストの声は、セージの好きな優しいものだった。
「だって、すきなのは君だけだっていってた」
「……君だけ」
ぴ、とセージの鼻先に指を突きつけると、彼は思いっきり首を横に振った。
「俺じゃ、なくて……あの、ローグのひと」
「確かに今日会ったけど……あれ、宿に来たの?」
改めて聞かれて、セージは立ち聞きしたことがばれてしまうと気がついてはっとした。
それでもアルケミスト相手に嘘はつきたくなくて、仕方なく頷く。
「声かけてくれれば良かったのに」
そうすればあんなのすぐ追い出した、と呟くアルケミストの声は幸か不幸かセージには聞こえていない。
「取り込みちゅう……だったし。あいつのことがすきなんだろう?」
ゆるりと顔を上げたセージは、アルケミストが息を呑んだことにも気付かない。
恐ろしいタイミングで、ぽつりと一粒涙がこぼれた。
アルケミストは少しだけ狭い空を仰いで、ほ、と息を吐いた。
小さな声で落ち着け落ち着け落ち着けと呟いて、しっかりとセージの目を見据える。
「どこからそんな恐ろしい勘違いをしたの」
「こくはく、してたじゃないか」
「誰が」
少し逡巡したセージがはっきりと自分を指さしたのを確認して、アルケミストは再び空を仰ぎたい気分になった。
彼は心の底から数時間前の自分を殴りに行きたい、と思う。
「君、ちゃんと話の前後を聞いたかい?」
考え事に没頭すると聴覚がまともに働かないセージの特徴を思い出して、アルケミストが確認する。
そう真面目に聞かれてしまうと自信がないセージは、今度はゆっくり首を横に振った。
「あれは、相手のことが好きですよと告白してたわけではなく……そういうことが好きなのは君だけだ、と言ってたんだよ」
「そういうこと?」
「たいしたことじゃないから気にしないでいい」
その辺はあまり突っ込まれたくないアルケミストであった。
「え……じゃあ、あの人に乗り換えるから俺のこと要らなくなったわけじゃ」
「断じてない」
アルケミストはこれ以上ないぐらいきっぱりと断言した。
「私が好きなのは君だけだよ」
真っ直ぐにセージの目を見て、アルケミストが囁く。
残っていた涙を指先で拭われて、ぱっとセージの顔が赤らんだ。
「本当か?」
「大好きだよ、本当に」
そこでふわりとアルケミストは笑った顔をセージに見せた。計算尽くである。
セージの顔が更に赤くなるのを楽しそうに見てから、再び髪の切り口に手を当てる。
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