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◆みんなで創る小説Ragnarok ♂萌え2冊目◆

[45:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2005/09/23(金) 20:47:04 ID:Z49IO7IQ)]
「こーら、こんなところで何やってるの」
かけられた声に、セージは大げさに思えるほどびくりと体を震わせた。
二度と聞かないかも知れないと思い詰めていたアルケミストの声だった。
薄暗い路地裏は人が通ることも少ないから足を休めていたのだが、どうしてここがと言いかけて、自分たちが
パーティーを組んでいたことを思い出した。一度登録すれば、解除するまで相手の場所は分かってしまう。
「用事は終わったのか? 約束忘れて……!?」
二、三歩セージの方へと踏み出して、アルケミストは瞬間絶句してその場に足を止めた。
セージが顔を合わせづらいと背けた結果、ざんばら切りの頭を目撃してしまったからだ。
「ど、どうしたの!」
慌てて駆け寄ろうとするアルケミストの顔を見たくなくて、セージは壁に預けていた背を離して数歩後ずさった。
何がしたいのか分からない、というように彼の顔がきょとんとする。
「……俺のこと」
ぽつりと言って、セージはこれから言う台詞のことを考えただけで泣きそうになった。
それでも言わなければなるまいと勝手に決心していたのだ。
優しい彼が、自分から別れを切り出せないだろうと考えているらしい。
「も、好きじゃないんだろう?」
「はい?」
アルケミストの目が丸く見開かれた。実験に使った薬品が突然歩き出した時よりも驚いた顔をしている。
「他に、好きなやつができたなら」
涙が浮かんでくるのだけはこらえられなくて、セージはぎゅっと唇を噛んだ。
「俺のことなんて、捨てたって……」
「ちょっと待っていやかなり待って」
大分考えた別れの台詞を邪魔されて、思わずセージは相手の顔を見てしまった。
心底困ったように慌てている顔さえ綺麗だなと思えるのは、自分が好きな相手だからだろうとぼんやり思う。
もう近くで見ることもないのかなとまで考えが及んで、じわりと景色が滲んだ。
「あああ、泣かないで、ねっ」
器用な手が俯いたセージの肩を支え、もう片方の手がざんばらな髪の切り口を軽く叩く。
近づかれる前に逃げようと思っていたのに、アルケミストの方が一枚上手だったらしい。
体温すら愛しくて、大泣きしてしまいそうになるところを辛うじてこらえた。


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