悪ケミハウスで4箱目
[299:起(2007/07/10(火) 23:16:00 ID:4/P/Thuk)]
今夜もまた寝ぼけた悪ケミにギュッと抱きしめられ、子バフォは目を覚ました。
胴に回された駄々っ子の手を優しくほどき、そっと寝床から起き上がる。
月の位置見ると夜中を回ったあたりの時刻だろうか。
抱き枕を失ってなお深い寝息を立てている主人を確認すると、子バフォは
愛用のカマを手に静かに外へ出た。
子バフォは嫌な胸騒ぎを感じていた。
王都であるプロンテラといえど、最近の治安は良いとはいえなかった。
枝により呼び出された魔物は凶悪化の一途を辿り、あの騎士娘でさえも手を焼く
程のモノまで現れているのよ、と少し疲れた顔で話していたのも記憶に新しい。
そして、その騎士子の追っ手から逃れたモノは、未だ街のあちらこちらで住民達を
襲い続けているのだった。
最も、そのモノが暴れているおかげで悪ケミ達製薬師は騎士団や有志の冒険者
ギルドから毎日のように大口のポーション作成を依頼されて嬉しい悲鳴を上げて
いるのではあるが。
子バフォは精神を集中し辺りの気配を探り始めた。
上級魔族に属するバフォメット一族である子バフォには、他の魔物が発する魔素を
感じ取る力がある。これまでもその力を使って悪ケミに害するおそれのある魔物達を
感知し、退けてきたのだ。
子バフォ「…徐々に近づいておるか。ならばこちらから!」
夜の暗闇に月光に受けて怪しく煌くカマの光は、瞬時に離れた所へとその場を
移していった。
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