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【18歳未満進入禁止】みんなで創る18禁小説Ragnarok ♀×♀ 第6巻【百合】

[146:夜とカクテル3(2009/10/23(金) 01:19:57 ID:JdBGdoBw)]
夏はもうなりを潜めて、どこからか金木犀が香る。吹き抜けていく風が心地良い、水曜日の午後。私はその日狩りには行かないことにして、魔法に使う触媒や生活物資を買い込もうと街中に繰り出した。必要な物を買い揃えてカプラサービスに預け、露天を冷やかしながらプロンテラ外周の大通りをうろうろしていたら、完全に切れたと思っていた男からどうしても会いたいこれで最後にするからとWisが飛んできた。
ここで素直に会いにいったら絶対に面倒くさいに決まっている。
どうやってこれを断ろうか。
言い回しをぐるぐる考えならあてもなく歩いて。

そして、彼女が居た。

短めの萌黄色の髪が風にさらさら流れていく。簡単なシャツと動きやすそうなパンツをはいて、紙袋を抱えていた。私服でも一目見て彼女だと分かった。まっすぐこちらへ歩いてくる。多分、まだ、私には気がついていない。私はただ呆然とそこに立ち尽くして、彼女が私に近づいてくるのをひたすら見つめていた。
なんで、どうして、ここに、彼女が。
普通に考えればあの店に来る時点で彼女だってプロンテラを拠点にしているわけで、会う可能性はいくらだってあるのだ。私は考えもしなかった。あの店以外で会うことを、どこかで恐れていたのかもしれない。

「あ」
そしてついに、あのウイスキーと同じ色の瞳につかまる。彼女はちょっと驚いた顔をして、それから微笑んだ。
「奇遇ですね」
嬉しそうに、そんな事を言う。私は頷き返すのが精一杯で、まるで雷に打たれたみたいにそこで棒立ちになっていた。その時自分がどんな顔をしていたのかは考えたくない。外で太陽の下に居る彼女を見たのはもちろん初めてだった。別人のようだと思う。こんなに綺麗に笑っただろうか。
胸が高鳴るのを制御できない。彼女を五回も抱いた過去の自分が信じられない気分だった。

つまり、私はもう、その瞬間に、馬鹿みたいに恋をした。

「これから時間があるならちょっと付き合いませんか?」
だから、彼女のそんな提案に、未だ棒立ちの私はあっさり頷いた。

路地を抜けていく彼女の後ろについて歩く。
『好きな人が居るから、もう諦めて』
すっかり忘れていたWisに返事を送って、ブロックをかける。前を行く彼女の背が私よりも少し高いことに、今になってやっと気づいた。


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