【18歳未満進入禁止】みんなで創る18禁小説Ragnarok ♀×♀ 第6巻【百合】
[145:夜とカクテル2(2009/10/23(金) 01:19:00 ID:JdBGdoBw)]
明け方、ぱたん、とドアが閉まる音を聞いた気がした。
朝日が差してから目を覚ますと、やっぱりというか、彼女はいなかった。
髪の毛の一本も残っていなかった。
次の週の同じ曜日の同じ時間に、私はあの店に足を運んだ。もしかしたら、という淡い期待。
もし、今日彼女がいなかったら二度とここに来る気は無かった。
ドアを開けるとカラン、と鐘が鳴る。店の中は程よく薄暗く、程よく騒がしい。
そして、彼女は居た。
鐘の音は喧騒に紛れて、私には気づかない。先週と同じ席に座っていて、目の前に置かれたグラスをぼんやり眺めてた。あれは私が奢った桃のカクテルだと、直感的に思った。カウンターはほとんど埋まっているのに、彼女の隣はあつらえたように空いている。その意味を悟って、私は少し愉快な気持ちになった。
「あけておいてくれたの?」
そう声をかけると、彼女は弾かれたように振り向いて、そして微笑んだ。
「来るんじゃないかと、思ったので」
私は何も言わずに部屋を取り、彼女は何も言わずについてきた。ウィスキーも果実酒も買わなかった。
夜明けと同時に目を覚ますと、先週と同じように彼女は髪の毛の一本も残さずに消えていた。
いや、一つだけ、彼女は残していった。
サイドテーブルの上に、灰皿で押さえられて名刺大の白い紙切れが置いてあった。
「次は私がご馳走します」
そこに、綺麗な字でそう書いてあった。
それから三回、私達はそういう夜を繰り返した。私は彼女を貪り、彼女は私が与える快感を貪った。互いの名前すらも尋ねないまま、週に一度会って、彼女は濡れて小さく喘ぐ。明け方にドアの閉まる音を聞く。その間に私はあの日本当に帰りを待っていた男とは切れてしまっていて、そして彼女に口付けだけは一度もしなかった。
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