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【18歳未満進入禁止】みんなで創る18禁小説Ragnarok ♀×♀ 第6巻【百合】

[19:冷麦(2008/03/05(水) 21:37:52 ID:du5kS1gY)]
 プロンテラの南門を城壁に沿って少し東に進んだところにある林。そこで一人の女ハンターが木の幹に寄りかかって眠っていた。ただし近くに転がっている得物はカードも刺さっていないクロスボウ。近くには鷹もおらず、まだ新米であることが窺い知れる。
 女、とは言ってもまだ幼さの残る少女であり、寝顔には小動物的なかわいさがある。黒絹のような長い黒髪が微かに風に揺れ、少女の頬をくすぐる。
 やがて目を開けた少女はゆっくりと体を起こし、その場で伸びをする。
「うっ、んん〜。……よく寝たぁ」
 そう言って少女はきょろきょろと辺りを見回す。まるで誰かを探しているようだ。
 この場所は彼女とその友人達のたまり場となっている。普段なら常に誰かがいて、賑やかに騒いだり喧嘩していたりするのだが、少女がここに来たときはまだ誰もおらず、特に狩りをする気分でもなかったため誰かが来るのを寝ながら待つことにしたのだ。結局人影どころか、ポリン一匹の気配すらしないが。
「なんだ、誰も来てないんだ。じゃ、もう一眠り……」
 そう言うや否や、少女は再び目を閉じるとあっという間に眠りについた。
 それから程なくして、バスケットを持った一人の女プリーストが彼女の前にやって来た。
 このプリーストも、ハンターと同じ長い黒髪の持ち主だ。しかし目の前の少女とは対照的に、大人の雰囲気を醸し出している。胸元や腰、法衣のスリットから覗く脚は女性らしいラインを描いている。顔つきは少女と似ているがあどけなさは無く、艶やかな微笑を浮かべている。
 プリーストは新米ハンターの前にしゃがみ込み、彼女の寝顔をじっと覗き込んだ。そして急に手を伸ばし、指でぷにぷにとした頬をつつく。
「ん……」
 微かに声を漏らし身じろぎするハンター。それを見てプリーストはくすりと笑い、優しく頭を撫でながら声をかける。
「ほぉら、ミナちゃん。こんなところで寝てると風邪引いちゃうぞ。ただでさえお腹出してるんだから」
 その声が聞こえたのか、ミナと呼ばれたハンターはゆっくりと瞼を開ける。そしてごしごしと目をこすり、そこにいるのが誰なのかを少し時間をかけてじっくりと確認した。
「あ……はやてお姉ちゃん。お祈り、終わったの?」
 プリーストは頷き、
「ミナちゃんがいつまでも元気でいてくれますようにって、ね」
 そう言ってもう一度ミナの頭を撫でてやった。
「ありがとう、お姉ちゃん」
 ミナはそう言うと立ち上がり、うんっ、と伸びをした。
「ふぅ……目、覚めたー。ずいぶん眠っちゃったなぁ」
 太陽はまだ気持ち西へと傾き始めたくらいなのだが、ミナがここに来たのは午前中だったのでかなり時間が経っている。
 その時、どこからか「ぐぅ〜」という音が。
「……それに、お腹も空いちゃった」
 えへへ、と笑ってごまかすミナ。はやてはもちろんその音を聞き逃さなかった。
「そうね。私もお腹ぺこぺこ。じゃあ、お昼にしようか。サンドイッチ、持ってきたから」
 はやてはその場にぺたんと腰を下ろすと、バスケットを開けた。中には卵やトマト、レタスなど、色とりどりの具が挟まれたサンドイッチがいくつも並んでいた。
「誰かいると思って少し多く作ってきたんだけど……まあ、ミナちゃんなら食べられるよね?」
「とーぜん! 育ち盛りだもん。いっぱい食べちゃうんだから」
 そう言って早速一つ目を取り出すミナ。
「いっただっきまーす!」
 ぱくりと頬張る。ふんわりとしたパンと新鮮な野菜が絶妙なハーモニーを奏でる。
「んーっ! 美味しい! ほら、お姉ちゃんも食べて食べて。早くしないと全部食べちゃうよ」
 ミナは瞬く間に一つ目を平らげ、早くも二つ目に手をかける。はやてはそんな妹を微笑ましく眺めながら、自らも一つ目を手に取った。

「ふぅ、お腹いっぱい。美味しかった〜」
 それからあっという間にバスケットは空になった。そのほとんどはミナのお腹に収まっている。
 そのミナは草の上に大の字になって仰向けに倒れている。お腹がきつくて動けないらしい。
「食べてすぐ寝たら、牛さんになっちゃうよ?」
 冗談めかして古い迷信を口にするはやて。ミナは全く意に介さず、大丈夫〜、と手をぶらぶらと振る。
「……ところで、ミナちゃん」
 はやてが急に真面目な声になる。
「ん、なぁに?」
 対するミナはいつもの調子だが。
「その武器、いつまで使うつもりなの?」
「え?」
 その武器、とはミナのクロスボウの事である。しっかりと手入れはされているが、それ以外では全く手の加えられていない、店売りの物。カードでも刺さない限り、ハンターの武器としては明らかに力不足だ。
「ミナちゃんなら、もう角弓くらいは使えるでしょう? プリーストの私が言うのも何だけど、ミナちゃんくらいの腕で狩るモンスターには火力不足じゃないかな?」
 はやてはミナにそう訊いた。ダメとは言わないけれど、と最後に付け加えたが。
 対するミナはと言うと、頬をほんのりと朱に染めて、
「だって……」
 そうつぶやいた。
「だって?」
「だって……これ、お姉ちゃんが頑張って買ってくれた物だもん。ずっと大事に使いたい……」
 ミナは視線を落とし、クロスボウを見つめる。
 これは昔、二人がまだ一次職だったころ、なかなかお金がたまらず困っていたミナを見かねたはやてが、ミナに内緒でお金を貯めて買ってあげたものだ。その頃のはやては駆け出しのアコライト。自分の装備もろくに整っていない中、何度も危ない目にあいながら必死になってモンスターと戦った。買ってもらった後にそれをとある人物から聞いたミナは、これを一生だって使い続ける、と心に決めたのだった。
 もちろん、一生なんて無理だと言うことは今のミナは分かる。それでも、できるだけ長く、大事に使っていたいのだ。
「ミナちゃん……。ふふ、ありがとう。でもね」
 その気持ちを知っていて、なおはやてはミナを諭す。
「武器って言うのは相手を倒すためだけじゃなくて、自分を守るためにも必要なものよ。一つの物を大事に使い続けることは決して悪いことじゃないわ。でもね、そんな風に我を通し続けて、そのせいで自分の身を守れなくて死んじゃったなんて事になったら、悲しすぎるでしょ?」
「うん。でも……」
「私は怒っているわけじゃない。ただ、心配なの。そうやって大事にしてくれるのはうれしいけど、そのせいでミナちゃんが死んじゃったら……私が買ってあげた物のせいでミナちゃんが、たった一人の妹が死んじゃったら……」
 その場面を想像してしまったのか、はやての目から涙がこぼれ、頬を伝う。
「お姉ちゃん……ごめんね、わがまま言って」
 しゅん、と頭を下げて謝るミナ。彼女にとって姉の悲しみは自分の悲しみと同じ。姉が悲しむことが、ミナにとって最も辛いことなのだ。
「ううん、ミナちゃんが謝ることじゃないよ。ごめんね、急に泣いちゃったりして。驚いたでしょ?」
 手の甲で涙をぬぐい、少し頑張って笑顔を作る。
「じゃあ、ミナちゃん。今度フェイヨン行ったら、私が新しい弓買ってあげる。もし余裕があったら、服とか、靴とかも……ね?」
「あ……うん! ありがとう、お姉ちゃん」
 はやての提案に、ミナは満面の笑みで答えた。
 こうして、うららかな午後は過ぎていく……


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