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【18歳未満進入禁止】みんなで創る18禁小説Ragnarok ♀×♀ 第6巻【百合】

[72:lily love(2009/01/27(火) 10:24:21 ID:f8uD9o0U)]
どんなに知識を蓄えても、それを使うことなく流れに身を任せることだって、人生の中では避けられないのだ。
その場合、身を任せた後にこそ、知識をどう使うかが問われることになるのだ……、
差し当たって、こうなってしまった状況を、より良い方向に持っていくために。
暖かくて、でも蒸れの残る寝床の中、隣で眠っている女の子の顔を見ながら、思った。

いや。
頭の中の考えを無理矢理に文章に仕立ててみたのだけれど、ほんとうはとても簡単な話なのだ。
――やっちゃった……これからどうしよう、そう、ただそれだけの。
何事でも問題の解決に当たっては、その全てを把握しておかなければならない。
恥ずかしい話ではあるのだけれど、一から思い出す必要があるだろう――。


セージの私と、その先輩兼友人でもあるプロフェッサーの彼女と、研究の気分転換のために行った狩り。
狩りといっても、あくまでも脳を活発化させるためにちょっと体を動かそう、ってだけの話。
コモドの海岸、オットー(これには果たして何か潜んでいるのだろうか?興味の対象ではある)を軽く小突き、
ぐるり一周したところで馴染みの宿屋に帰ったところから、この一件は始まったのだ。

今居るここは、ことさら安いわけでも高いわけでもない、冒険者御用達だがごく一般的な宿のありふれた一室である。
収集品の精算を先輩に任せ――何やら当てがあるというので――お先にチェックインした私は、
さっと入浴を済ませ新しい服に着替え、人前に出れる程度の身嗜みを整えると、
潮風に晒されたセージの制服を宿のクリーニングに依頼しetc……色々と雑用をしていた。

今はそれも落ち着いたところで、備付けの肘付き椅子に腰を掛け、セージの武器たる「本」の手入れをしている。
アルコール等の自前の手入れ用品と、ごく小規模な属性場を利用してのメンテナンス。
武器としての性能がなくなって単なる本になってしまったら一大事なのでここは手を抜けない。
物静かな室内、落ち着いた雰囲気の中、すぐに私は作業に没頭し始め――、

 「「 バンッ!」」

ビクッ!!?
あ、手が滑っ――………あーぁ。
突然けたたましい音が響き、作業が妨害――いや、台無しにされてしまった。
音を立てたその先に向くと、返る勢いでまた半分閉じかけたドアの向こう側に、赤い人影が見える。
もう犯人は分かっているので遠慮も容赦も無い非難の視線を投げつけた。

「あ、うるさかった?ごめんねえ。でも、この安物のドアが悪いのよ?ほら!目も覚めたでしょ?」

そうですね。おかげで私のおめめはとても爛々としてます。怒りで。
その人影は、とってつけたような言い訳をしながらするりと部屋に入る。
まったくもう、非を素直に認めないんだからこの教授さんは。
何が差さっているかしれたもんじゃないメガネの奥の翠色の瞳に反省の色は見られない。

「ハイハイ覚めましたよー。アリガトウゴザイマシタっ」

言いながら、無残に丸まり波打った本を彼女の目の前でひらひらと振ってやる。
買ったばかりのスロット付き風属性本だったのに……(やっちゃった雌盗虫3枚差しだけど)

「あ、あー…そゆことなのね?ごめん、ほんっっっとに、ごめんね!?」

どうやら状況を把握したようだ。
態度声色を察するに今度こそちゃんと謝ってくれている。

「分かってくれたらいいです。次は気をつけてくださいね」

とは今までに何度も言った言葉だったりする。いい加減にしてほしい。
そんな忘れっぽい彼女の、ぺこりぺこり頭を下げてハラリ垂れた桃色の髪の輝きが鈍いことに気付く。
そういえば。
収集品を知り合いだとかに高く買い取ってもらうのに出かけてもらってたんだっけ。
時間が云々との先方の都合に間に合わせるために、潮やら砂やら汚れた姿のままで…。

「もう絶対にしないから許してよ〜〜。せーちゃんの欲しいもの買ったげるから、ね、ねっ?」

そんなことを考えていて私の表情は仏頂面のままで固まっていたのだろう。
まだ許してくれてないと思ったらしく、もういいと言ったのにも構わず謝り攻撃の雨あられ。
――ちょっと抜けてたり自己ちゅー的なところもあるけれど、根は本当にいい娘なのだ。
そう、仮にも先輩のことを「いい娘」だなんて表現してしまうぐらい、彼女のことは可愛らしいと思っている。

ところで、ここでいわれる「せーちゃん」とは私の愛称ということになっている…不本意ながら。
私の心の中だけで呼んでいた先輩への愛称――セージの溢れる英知から生み出された!――をつい漏らして以来、
単なる対抗によってか私も同じように呼ばれてしまっているのはなんとも納得しがたい。


ともあれ。
怒ってるんだぞっ、と分かってもらうためにわざと作っていた表情を崩して――やんわりと話し掛ける。

「もう分かりましたから……それより先輩、お風呂入っちゃったらどうですか。綺麗な髪がべたべたですよ?」
「え――え!?きき綺麗だなんてそそそんなこと無いけど!」

あら何か私、変なこと言ったかしらね?

「あ、で、でもお風呂には入らなきゃ、ねっ!うんっ、そうしよそうしよ!」

何故テンパり口調。
右手と右足が一緒に前に動きそうな足取りでバスルームに向かっているけど。
着替え持っていくの、忘れてない?
仕方ない、彼女の荷物を開けて(謎の道具やぬいぐるみが多すぎる!)から下着と予備の制服を取り出す。
かき分けるのに必死で少し遅ればせながら更衣室へと向かう。

「先輩、入りますよ〜」
「はっ?―――――せ、せーちゃん!?」

こちらに振り返り半脱ぎ、否、8割脱ぎ状態の彼女がそこにいた。
互いに目が合って硬直するのも束の間、私の視線はその下の女体像に誘われる。
中途半端な布の被り方でおよそ隠れていない豊かな乳房、
お尻まで露わになった、肉感的でありながら雪のようなきめ細かい肌の太もも。
(うわぁ………)
特別にそっちの気が無い同性とて、つい伸びてしまわざるを得ない羨望の視線、
その先にあるのが自分の半裸であると気付いたのだろう、
脱ぎかけた衣服で体を隠そうとして――それに失敗し、まだしっかりと見えていながら――慌てふためく先輩。
女同士なのにそこまで恥ずかしいことなのかしら…?
――まあいいわ。
未だじたばたしている彼女の傍までスタスタと近づいて、すぐ横のカゴに綺麗に畳んだ下着制服を入れる。

「あの。着替え、持ってきたから、ここに置いておきますよ」
「え?ええ?……あ、ありがとう…」

ただ忘れ物を持ってきてくれただけという事実を悟ってくれたのか、ようやく大人しくなった。
動転した余韻でぽけーとしているみたいだけど、放っておいても大丈夫だろう。

「ごゆっくりどうぞ〜」
「……うん」

パタム、と更衣室から出てドアを閉める。
少ししてから再び衣擦れの音が聞こえてきて、水音が外まで鈍く響き始めた。
――事件は過ぎ去ったかな。
私は再び机に戻って可哀想な属性本をくず入れに放り投げ、ゆっくり椅子に腰掛ける。
代替の本の請求はどうしてやろうかと思った――けれど、考えがうまくまとまらない。

…。
あの先輩が、俯いてあんなに真っ赤になった表情だなんて、初めて見るかも。
思い出すと凄く可愛く思えて、なんだかこっちまで赤面してしまいそう…。
普段は、多少ボケてはいるけれど、ほんとうは理知的でとても頼りになる人なのに。
他の考え事をしようにも、さっきのインパクトが強すぎて――あんなにしおらしい先輩なんて――
(襲いたくなっちゃうじゃない)
っとととと。物凄く不埒なことが脳裏によぎってしまった。
無し!無し!
頭を振ってすぐさま消去しようと試みる。さっき考えていたのはえーと………なんだっけ?
思い出せないってことは、大したことじゃないってことかしら、ね。


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