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【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ 十七冊目

[38:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2008/02/27(水) 17:56:15 ID:E13uF0yw)]
君の声3


チィィィンと小気味良い短剣の音が響き、腕にまで振動が伝わってくる。
敵の攻撃を避けるたびに、背中から流れる2本の赤い紐が宙に舞いながら、裏表と軽やかにひるがえり、
光を受けて綺麗な色に輝く。下半身を包む腰布も、まるで生きた魚のように滑らかに空気を泳ぐ。
私がFCASセージになった理由は、この舞に魅力されたからだった。
キラキラと輝く踊りをするダンサーとは違う不思議な動き。
ある日偶然見かけたFCASセージに衝撃を受けた。
流れるような動きに合わせて、2本の輪が優雅に動いていた。
時には同じ動きに。時には逆の動きに。
激しく動いていたかと思えば、宙で一瞬停止し、そして次の瞬間には、頭上からボルトの雨が降り注ぐ。
まるで踊っているかのような攻撃方法。
私はレベルが低いのでまだまだだけど、いつかああなれたら、と憧れを抱いていた。
空気が抜けるような音を立てて、プレゼント箱のような姿を持つミストケースが破裂して消える。
跡にはドロップ品の緑の球体のジャルコンが残った。
私はそれを拾い、腰から下げている小さな袋に仕舞いながら辺りを見回した。
傍らにいたリゼルが、興味津々に歯の生えた変な玩具を覗き込んでいる。
結局、リゼルの連れて行けコールに負けてしまったのだ。
久しぶりに狩場に来たのが嬉しいのか、とてもはしゃいでいるのがわかる。
そのうち段差に足を引っかけるんじゃないかなと思った瞬間に、リゼルは派手に転んだ。
それでも元気よく起き上がり、また玩具に突進する。

「なぁ、こんな物を人間の子供は喜ぶのか!?こんな変な歯が!」

目を輝かせながら聞いてくるリゼルを見て、思わず吹き出してしまう。
ガシャンガシャンと玩具を生産する大きな音や、その玩具自身の音が響き渡り、
その音で、私は小さい頃を思い出した。
冒険者になるずっとずっと前の事。
父親が泣いてる私を慰める為、木の玩具を作ってくれたなぁ
父親は不器用だったから、手が彫刻刀で傷だらけになってたけど。
私はそれが嬉しくって、ずっとその玩具を持ち歩いてたっけ。
自然と笑みが溢れた。
両親はもう二人ともいないけど、私はやりたい事を見つけた。
あとは頑張ってその目標に向かうだけ。

『オートスペル!!』

私は声に出さず詠唱を唱える。
声が出なくなって、最初に私の前に立ちはだかったのが詠唱だった。
人との繋がりは、身振り手振りの動きや筆記でどうにかなったが、これだけはどうしようもなかった。
どんなに頑張っても声が出なくて、悲しくなって泣いた日もあった。
それでも、諦めずに何度も何度も練習した。
やがてその努力が実って、声を出さずに魔法詠唱が出来るようになった。
初めてファイアーウォールを出せた時の感動は今でも覚えている。
嬉しくて興奮して、夜はあまり寝つけなかった。

「おい!ぼんやりするな!」

リゼルの声で、私はハッと我にかえった。
また物思いに耽っていたようだった。
気付くと、一体のクルーザーに攻撃の標準を合わせられている。
警告を発したリゼルはというと、すでに物影に隠れてこちらの様子を見ている。
考え込むと周りが見えなくなる癖を何とかしないとなぁそう考え、
少し焦りながらクルーザーの懐に飛び込んだ。
クルーザーはブリキの玩具で、銃と呼ばれる遠距離の道具で攻撃をしてくる。
これが中々避ける事が出来ない。
なるべく被弾を抑える為に、敏速な攻撃をしかけるのが一番だった。
クルーザーの攻撃を受けながら切りかかる。
右に左に動いて、敵を翻弄しようとするけど、クルーザーは素早く私に狙いを定め、引き金を引いた。
クルーザーの銃弾が私の左腕をかすめ、赤い血を飛び散らせた。
痛みに顔を歪めながら、私はクルーザーの左側に跳んだ。
そしてそのままの勢いで、クルーザーの背後に身体を滑り込ませる。
丁度クルーザーと背中合わせの形になった私は、鋭く息を吐き出しながら、右手に力を込め、
クルーザーの背後に短剣を突き刺した。
確かな手応え。
同時にオートスペルで生じたボルトが落ちてくる。
私は飛び下がり、クルーザーを正面に捉えた。
クルーザーが崩れ落ちるのが見てとれる。
跡にはドロップ品の手錠が残り、私は大きな溜め息をついた。
たった一体だけでこんなに大変なのに、囲まれたらもっと大変だなぁ…自分の力不足を痛感する。
けど嘆いてても仕方が無い。強くなる為に頑張らなくっちゃ。

「全く、危なかしいったらありゃしない!狩場でぼんやりするなとあれほど言っとろーが!」

物影から出てきたリゼルのお説教タイム。
私は怒っているリゼルを抱き上げた。
ふかふかとした毛皮が暖かい。
その暖かさで、リゼルはちゃんと生きているんだな、としみじみ実感する。
…けどお風呂も入れないとね。

「…?」

リゼルがどうしたとでも言うように、私の顔を見る。
リゼルの暖かさを堪能した私は次の敵を探す為に歩き出した。

「あ、コラ!傷の手当をしろー!」

傷の手当をする時間が勿体無い。
早く強くならないと…

『ばっかねぇ、そんな背筋張ってたら、疲れちゃうじゃん?自分のペースが一番よ。』

私はピタリと立ち止まった。
彼女の声が聞こえたような気がした。
空耳…?しばらく立ち止まっていたが、私は再び歩きだす。
彼女は、良くも悪くも賑やかな人だった。
黙っていたら美人なのに、喋り出すと、誰にも止められない。
彼女は、真面目に考える私をよく茶化していた。

『ホラ、私達なりたい職に向かって歩き出してるけど、まだまだ先は長いじゃん。
今から頑張ってたら疲れちゃうって。のーんびりこの世界を堪能しようよっ』

例えばどんな堪能の仕方?

『えー、かっこいい騎士様と出会って、キャー私守られてるー!とか?
筋肉ムキムキのブラックスミス様にお姫様抱っこされて求婚されちゃったりとか?
ローグ様のワイルドさもたまらないわ。
嬢ちゃん…黙って俺についてきな。とかとか!イヤー!そんな出会いが欲しいー!』

…。

『なぁによぅー溜め息なんかついちゃったりして。いーじゃない夢見てもっ』

彼女の言葉は、本気か冗談かわからない事だらけだった。
滅茶苦茶な人だけど、引っ込み思案な私をこの世界に引っ張り出し、一緒に行動してくれた。
そういえば、彼女はよくこんな事聞いてきたっけ。

『アンタの夢は、何なの?』


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