【アブラ】セージ萌えスレ【カタブラ】
[143:2/3(2005/10/23(日) 01:49:29 ID:UIOQRSqw)]
思ったとおりPvPはガラガラで、無人の町並みで私とウィズ君は距離をとって対峙した。
「さ、準備はいい?」
「こっちはOKだよ、先輩」
「じゃ、これが落ちたらスタートね」
100ゼニー硬貨を指で弾き上げる。キラリと陽光に煌めいてそれは落ちていき……
ちりん。
スタート。それと同時に私はウィズ君に向かって駆ける。彼もそれくらいは読んでいたようで、進路上にファ
イアーウォールを展開した。ま、これの詠唱には私もさすがに反応しきれない。火壁を迂回して進む私の正面に、
彼は後退しつつ次々FWを立てる。ふむ、距離の保ち方はなかなか。でも方向がよくない。そっちの路地は行き
止まりなのに。
FWを避けつつ、私は彼を追う。袋小路を背にして、ようやくウィズ君は振り返った。その顔に浮かぶのは追
いつめられた者の焦燥ではなく、策を成功させた者の会心の笑み。
「アイスウォール!!」
きん、と音を立てて氷壁が私の前に立ちはだかる。なるほど、袋小路で残る一方を塞いでしまえば、私に接近
する術はない、と。いままでFWだけ使っておいて、ここ一番にIWというのもちょっとした隠し球だ。
半透明な氷壁の向こうで、ウィズ君が詠唱を始める。きちんと詠唱を始めてからクリップを付け替えているみ
たいね。威力はどうあれ私も壁越しに魔法は撃てるから、それによる詠唱妨害を警戒しての事だろう。
……ま、そこまで考えておきながら私が何者であるのかを深く考えていないあたり、微笑ましくもある。私は
口元に笑みが浮かびそうになるのを堪えながら、詠唱の終了を待ってあげた。
そして。
「ユピテルサンダー!!」
ウィズ君渾身の魔法が私を襲う。たしかにこれを受けたら大打撃、なんだけどね。迫り来る雷球に向けて、私
は得物であるマイトスタッフを構える。
「マジックロッド」
雷級を打ち据えるようにマイトを振るう。必殺の威力を持つはずの雷球は、杖に触れたそばからあえなく吸収
されてしまった。氷壁ごしにウィズ君の動揺が伝わってくる。
「え……!?」
「魔法を吸収できるセージのスキルよ。ま、自分に向けた単体魔法に限られるけどね」
「な、なら!」
IWが念入りに張り直されると、今度は足下に大きな魔法陣が浮かぶ。ストームガストあたりかな。うんうん、
私の言葉を聞いて即座に範囲指定魔法に切り替えるあたりは優秀ね。でも。
私は詠唱が終盤に差し掛かるまで待って、
「スペルブレイカー」
『通常の』ブレイカーを見舞ってあげた。
「うわっ!?」
私のスキルレベルなら、ちょっとした反動も相手に返せる。発動中断と合わせて、けっこうな衝撃だろう。
「範囲魔法でも妨害できるスキルはあるのよ。ついでに言うと、これにはフェンクリも効かないの」
「う、あ、アイスウォール、アイスウォール!!」
パニックを起こしかけたウィズ君がIWを乱立させる。ま、こうやって立て籠もって、マジックロッドの失敗
を期待しながら詠唱時間を抑えた単体魔法を撃ち続けるくらいしか、取れそうな戦法は残ってないのだろう。
でも、それも無駄。だめ押しをすべく、私は2色のジェムを取り出した。
私が詠唱を始めたのに反応して、彼も慌てて魔法を唱え始めるけど、もう遅い。
「ランドプロテクター!!」
周囲の地面が光を宿す。自分に被害が無かったことに怪訝な表情を浮かべながらも、ウィズ君は詠唱を完成さ
せた。
「ストームガスト!! ……あ、あれ?」
「レベルを抑えて私を凍結させるつもりだったみたいね。
でも残念でした。LPの範囲内では設置・範囲魔法は発動できないの。当然……」
「あ、アイスウォール!! ファイアーウォール!!」
「無駄よ」
もはやこの子はほとんど無力。肉弾戦を挑まれても殴りである私が負ける道理はない。スタンインベでも使っ
てきたら、むしろ手放しで褒めてあげよう。そんなことを思いながら、私は悠然とウィズ君に歩み寄る。
「あ、うぅ……」
呻きながら後ずさっていくウィズ君。その背中がとうとう袋小路に付いた。
目の端に涙さえ浮かべているその表情を見て、思わず悪戯心が湧いてしまう。
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