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◆【18歳未満進入禁止】みんなで創る小説Ragnarok ♂萌エロ 第2巻◆

[11:古344(2005/07/12(火) 00:20:13 ID:1zY/c1e.)]
「良かった、気が付いた………ッ!!」
泣きそうな表情で覗き込んできたのは、焦げ茶色の髪………その顔は、心に思い描いていたものでは、
………ない。
声だって、髪の色だって、全然違う。
「あ――…」
そうだ、………そうだ、伊豆に、行ったんだったっけ。…こいつと。
ペノメナが、物陰から襲ってきたんだった。…そうだ、こいつを逃がそうとして、化物にやられたんだっけ


ああ………。
あいつが、戻って来るだなんて、ある訳ないのに。
馬鹿だな、俺も…。間違えようもない程…、あいつには、似てないのに。
「………まだ、痛む?持ってきたポーション全部使ったんだけど、ごめん…ごめんな」
俺が再び目を閉じたから、こいつは泣きそうな声でそう告げる。
俺は薄く笑んで、また目を開けた。
「いや…大丈夫だ」
あからさまにほっとした表情で、こいつが息を吐く。
俺は急激にはっきりとしてきた頭を緩く振り、ついでに辺りを見回した。
危険がないかどうか探る、いつもの癖。もう無意識でもそうするように身体に染み付いちまってる。
柔らかな緑の木漏れ日、微かに鼻先に香る潮風…。人の気配も、危険な化物の気配もしない。
あるのは静寂に時を刻む墓碑と、それを包む森…。どうやら此処は海底ダンジョンから抜け出た辺り、
道から少し外れた島の何処か…か。
「お前が…連れ出してくれたのか」
静かに問うと、こいつは微かに眉根を寄せて、真剣な表情で俺を覗き込んできた。
俺の身体は柔らかな草の上に寝かせられ、上体はこいつに抱え起こされている。覗き込まれると、
知り合ってから今までの数ヶ月間では気付かなかった、こいつの顔の細かな造作が目に映った。

いつも俺を見て明るく輝く瞳は、茶色だとばかり思っていたのに、こうして間近で見ると仄かに
金掛かって綺麗だ。骨ばった頬筋に、意思の強そうな濃い眉。それでいて優しげに軽く垂れた目尻、
その目元に影の落ちた真剣な面構えなんて、思ってたより………。
「近くで見ると、思ったより男前だ」
物言いたげな真っ直ぐな視線を向けて覗き込んだまま、いつまでも何も告げない相手に不安を覚えて、
俺は微かに笑んでそう茶化す。
いつもみたいに、赤くなって照れ隠しに笑うかと思ったのに、こいつは眼差しを変えないまま――…
否、眉間の皺を更に深めて、切なげに俺を見詰めた。
「俺………っ、俺、きちんと剣士としての技術を極めてから騎士叙勲を受けて、自分に自信と実力を
つけて、今みたいな危機でも必ず貴方を守れるようになってから、……それから言おうと決めてた」
ぐ、っと、俺を抱く腕に力が篭もったのが、判った。


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