【18歳未満進入禁止】みんなで創る18禁小説Ragnarok ♀×♀ 第6巻【百合】
[128:Chase(2/5)(2009/08/17(月) 21:37:06 ID:p9I7vei2)]
――今日の午前中のこと。
私はいつものようにジュノーフィールドでスリーパーを狩っていた。
はるか陽炎の向こう側からPTがこちらへ歩いて来るのが見える。
「嗚呼、タナトスタワーPTかなあ、私も行きたいな……」
でもチェイサーにはあまりにも無縁すぎる。
ふとPTを先導するロードナイトと目があった。
黄金のように美しく輝く金髪に、湖に堕ちていくような錯覚を生み出す蒼く澄んだその瞳は
私が生涯忘れることができないであろう、初恋の人のものだとすぐに分かった。
18年間の人生のたったひとつだけの悔い。
もう会うことすらかなわないと思っていた彼女が目の前にいる。
「ミスティ……なの?」
私の名前を呼ぶロードナイトの声は震えていた。
「久しぶりだね、リリ……様と呼んだ方がいいのかな?」
「この馬鹿っっ!」
強がっておどけて見せたつもりだったんだけど、そのロードナイトは本気で私を怒鳴りつけた。
彼女はいてもたってもいられないと言った感じで、ペコペコから降りて私の近くに駆け寄って来る。
……8年振りに間近で見るリリは、私の記憶の中にある彼女の面影をそのまま残して大人になっていた。
金色のロングヘアーはふわりと風になびき、凛々しく結ばれた唇がそっと開く。
「どうして何も連絡くれなかったの!? 私がどれだけ貴女のこと探したか……」
リリは悲痛な面持ちで私の方を見た。
くるんとした大きな瞳には大粒の涙が溜まっている。
でもそれを見た私は本当に嬉しい気持ちで一杯になってしまった。
彼女はまだ私のこと覚えててくれたんだって。
「ほんとごめん……あのね、リリ。何から話していいのか――」
「うん、大丈夫だよ。ゆっくり聞かせてもらうから」
「でも……今PT中なんじゃないの……?」
私が恐る恐る訊ねると、後ろにいたPTMのハイプリーストが近付いて来てリリに声を掛けた。
「そうだぞリリ、そこのチェイサーには悪いけど、これから皆で狩りなのにお前が抜けたら困る」
「ユダ、ごめんね。悪いけどミスティと二人になりたいから、今日はやめとく」
「突然それはないだろ、もうここまで来てるのに他の人のこと考えないなんてお前らしくない」
「……うるさい」
「落ち着けよ、どうしたんだ?」
「うるさい邪魔しないでって言ってるの聞こえないのっ!? ミスティと二人にしてよっ!」
リリの声はあまりにもヒステリックだった。
普段の彼女からは想像できない悲痛な叫び。
悲鳴に近い罵声は後ろのPTMにも当然のように響き渡り、その場が凍り付いた。
「ミスティ、蝶は持ってるよね?」
「……うん」
「じゃあ首都の噴水前で待ってるから、すぐ来てね」
リリはそう言うとすぐさまポケットから蝶の羽を放り投げて、彼女の身体はすっと空に溶けるように消えていった。
残された私とタナトスタワーPTだったはずのメンバーは、ただ呆然とその場に立ち尽くすだけ。
私は何も言わず、PTMに軽く頭を下げて蝶を使う。
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