【18歳未満進入禁止】みんなで創る18禁小説Ragnarok ♀×♀ 第6巻【百合】
[49:レーニャとチェリム その3(前編) 1(2008/06/28(土) 19:25:38 ID:HOybdS02)]
チェリムと、組み始めたのはそれほど劇的な出会いというわけでもない。そう考えるべきと私は思うのだけれど、
かといってその出来事はさらっと流せる日常の一幕と片付けるにはあまりにも惜しい邂逅だった。
私はあのお風呂での出会いの後、ある日は亀島へ、ある日はジュノー近郊へ、ある日はコンロンへ足を運んで
狩りにいそしんでいたのだけれど、いつもなら専念すれば払拭できるはずの、その雑念とも呼ぶべき心の領域
は、もはや捨て置くものではなく、なくてはならないものになっていた。
理由を考えるのに要した時間は一瞬と言えた。
チェリムを恋してしまったから。好きになってしまったから。
一言二言で語るだけで十分だった。
そのころはもう腐れ縁ともなっていたセーテスと、頻繁にwisを交わしながら時折ペアを組んで狩り、修行に
いそしんでいた。私もセーテスも、お互いの道を歩むその途上は9割を過ぎたと思える。極めるのはもう、
時間の問題だろうか。
もっとも、転生していないセーテスと、転生済みの私とでは、その必要とする道のりの長さに明らかな差が
あるのだけれど。
セーテスとは出会う先の重なることは2度や3度ではなかったせいか、もともと人付き合いを大事にするタイプ
だったセーテスに誘われて、食事したり、酒を酌み交わすうちに、いつしか二人で行動する時間が増えていった
感じだった。
そこに、チェリムと組んだときのような、劇的な変化はない。
でも、私はセーテスといる時間がけして無駄には思えなかった。セーテスはどこか不安をあおり、私を振り回す
ふしはあるけれど、気遣いを忘れず、けして優しい心の感じられない人ではなかったから。
だから、恋にも似た感情を彼女へ抱くようにもなったんだ。少なくとも、チェリムに出会う前までは、あやふやでも
セーテスのことが好きな自分を感じずにはいられなかった。
その日行ったのは、よく二人で訪れた場所のひとつ、亀の住む島の地上。
亀の島の内部へ入ると、実際その固い亀甲羅に身を包んだ亀たちに出迎えられる。私はその甲羅をむしろ利用
した術をもって彼らを粉砕できるが、短剣の刃の鋭さが甲羅に阻まれるセーテスはかなり苦手な場所らしい。
逆に、亀島の地上は一度に複数への対応の難しい私には、何匹もたかってくる蜻蛉の群れが邪魔だった。
とはいえ、島の外の敵は分担するだけでセーテスも私もお互いが手を出せずにいた部分に触れられて、
あるいはそのさまざまな厄介さを解消することが可能だったから、ローグとチャンプというちぐはぐなペアでも、
それなりにやってこれた。
私はセーテスのような手さばきは持っていない。気を練り、撃ち出す術については他のモンクやチャンプに
比べてそれなりに優れているほうと自負できても、相手の刃を、爪を、牙を交わす手段にはやや疎い。
振り払い、受け止めて、拳を叩き入れる。時折その掌を幾重にも返して敵を打ちのめす。その際、無理に
食らわないようにする必要はなかった。
「やっぱりレーニャってすごいわ」
「無いものねだりだ。私にはセーテスの身のこなしがうらやましいくらい」
そんな会話を幾度交わしただろう。
セーテスが交戦中の相手に対して、ヒールをかけてくる野暮な緑色に発勁を叩き込んだことは2度や3度じゃ
ない。
セーテスの足元にひっついてくるペストを、指弾で吹き飛ばした回数も数え切れない。
代わりに、巨大な蜻蛉の群れに手間取っている私の側に潜んで、サプライズアタックで彼らを散らしてくれた
のは、きっとそのお礼なのだと思う。
そんな修行に明け暮れた日々の中、私にとってすべての運命を覆す出来事が起きたのは、私の初めてを
捧げたあの日のような、しとしとと降り続く長雨の夜だったんだ。
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