【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ 十七冊目
[112:紅い風車(2/4)(2008/11/10(月) 01:01:38 ID:y3ewAWDA)]
「おかえり、怜。」
家に戻るなり出迎える声…リオ。
「ただいま」
テーブルに小瓶と種を置く。
「種?」
リオが不思議そうに種をつまみ上げて見つめる。
「ああ…ギルドマスターに貰った。半分は研究材料にするが」
「なら、半分は植えていい?」
花の咲くような笑みを浮かべてリオが言う。
承諾すると、彼女は早速庭から小さめの植木鉢を持ってきた。
その種を愛おしむように、楽しそうに土に種を埋めていく。
「どんな芽が出るのかな、どんな花が咲くのかな。楽しみだね」
種を埋め終わり、鉢を窓際に軽い足取りで持って行くその様子はとても嬉しそうだった。赤い服がぱたぱたとひらめく。
「植物が好きなのか?」
「うん。色んな種類を知ってるの。教えてくれた人がいたから…今でも思い出せるわ」
一瞬その金色に悲しみの色が混じる。それはすぐに消えたが。
誰だと問えば、リオはそれを笑みで制した。
「ごめんね」
「いや…」
ちりちりと脳裏が灼ける感覚。嫉妬、か。もう故人であり、二度と彼女の前に現れることはないとわかっているのに。
「…私は、何を大切にすべきか知らなかった、ばかなこどもなのね」
「リオ」
「今も怜を傷付けた」
「──!!」
澄んだ金色の瞳が俺を見
る。…見透かされた。
「それでも、愛している」
「優しいね。とても、優しいひと」
リオはまた植木鉢に目を戻す。そっと種に向かって何かを囁いた。
聞き取れないその声は何を言ったのだろうか。ただ、ひどく懐かしそうな目をしていた。
既に過ぎた出来事は変わることは有り得ない。そして往々にして過去は美化される。
彼女にとって"カリス"は"過去"であり、その"過去"に俺は手を出せない。それが、ひどくもどかしい。
「…くそ」
自室で壁に手をつき、悪態を吐いても収まらない。
彼女が死にたがっていたのは、彼岸に奴が居るからだろう。もし死が彼女のすぐ傍に来たとしても彼女は笑って受け入れるだろう。
「奪ってやる」
それは死者への宣戦布告。意味が無いと判っていてもせずにはいられなかった。
リオは今は鉢の傍にいない。それを確認して、鉢の土に紅色の風車を挿した。
種は彼女が植えた。風車を挿したのは自分。──彼女の世界に風車を挿すことで、風を廻そう。
女々しいと自覚しながら、自らがリオにとらわれていることを感じる。
狂おしいほどに、愛している。
「赤い風車。かたかた揺れながら廻るんだね」
ふと背後を振り向けば、リオがそこに立っていた。
「怜の髪の色と同じ色なんだね。意外と女々しいんだ?」
「…女々しくて悪かったな」
リオがふ、と微笑む。銀色の髪がゆらりと靡く。
「大丈夫だよ、私はいなくなったりしないから」
リオの目には涙は無いのに、何故か泣いているように見えた。
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