◆みんなで創る小説Ragnarok ♂萌え2冊目◆
[57:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2005/12/27(火) 22:12:20 ID:FB0N0Omg)]
布団から抜け出し、杖を寝台の脇に立て直すと、セージは部屋の中を見回した。
地味な部屋のあちこちには、無造作に本が積まれている。
本棚に入りきらなかったから、というのもあるが、大体は戻すのが面倒でその場に放置してしまったものばかりだ。
それらの本の影に、丸い物体が三つ、ちょこんと並んでいた。
出張中の本達を蹴倒さないように気を付けながら、セージは丸い物体の傍へ歩み寄った。
並んでいるのは、キューペットの卵だ。
三つまとめて危うげに胸に抱え込むと、そのまま引き出し付きの戸棚の前に向かった。
男性としては小柄なセージが前に立つと、戸棚は随分と大きく見えた。
足元に卵を並べると、セージは丁度胸の高さ辺りにある引き出しを開け、中から孵化機を三つ取り出した。
それの全てに卵を仕掛け、起動スイッチを入れる。
冒険者の規定としては、一度に連れ歩く事が許されるキューペットの数は一匹である。
が、それはあくまでも「連れ歩く」場合であって、自宅で可愛がる分には一匹だろうが三匹だろうが十匹だろうが構わない。
……ばれなければ。
小さな起動音が途切れたかと思うと、孵化機の回りに白い靄らしきものが浮かび上がってきた。
ポン、という音が立て続けに三つ聞こえた。
「おっはよーございまーす!」
「二日ぶりッス!」
ぴょこぴょこと飛び出してきたポリンとドラップスが、順に挨拶してくるのを聞いて、セージは自然と微笑んでいた。
「うん、おはよう。お久しぶり、かなあ」
言いながら、セージはもう一つの孵化機の辺りを見やる。
すると、そこから孵化したばかりのポポリンが、びくっと跳ねて孵化機の陰に隠れた。
三匹の中で最後に彼のペットになったポポリンは、元が人見知りの激しい性格なのか、
かなり長い時間付き合った今でも喋ろうとしなかった。
「隠れてないで出ておいでー」
「出てこないと三人で食事にしちゃうッスよー」
ポリンとドラップスがそうやって声をかけると、ポポリンはおずおずと孵化機の陰から出てきた。
けれど、何を思ったのか、ポポリンは辺りをきょろきょろと見回すと、ドラップスに向かって何かを呟いた。
ドラップスが困ったような顔になる。
同じようにポリンに向かって呟くと、やはりポリンも困ったような顔をした。
「どうかした?」
セージが問い掛けると、横目でドラップスの顔をうかがったポリンが、おずおずと口を開いた。
「……帰って、こなかったですか?」
誰が、とも、どこに、とも言わないポリンの言葉に、けれどセージはすっと目を細めると、小さく息を吐いた
「……ふられちゃったからね」
不安げな顔をした三匹に、セージは大丈夫だよ、と呟いて笑ってみせた。
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